新型コロナが始まって以来、昨日までの3年近くで僕のクリニックで見つけた感染者は4091人だが、そのうち、660人は外国人だ。しかし、新型コロナが下火になってきて、以前にも増して外国人患者が増えている印象が確かにある。これは技能実習生の増加や近隣の厚木や座間の米軍キャンプからの患者増加によるものと推察している。
政府は技能実習制度や研修制度の不備や欠点を見据えて、あらたな制度への意向を発表しており、またあらたな制度の下では電車バスなどの運転手や車掌、林業なども対象職業に入れるらしい。そしてあらたな制度の下では一定の条件を付けて家族の居住も許可するとのことだ。政府の口からは決して漏れてこないが、これはもう移民という言葉で表現するのがふさわしい。
移民国家という言葉を使わずともなし崩し的にそのような社会に変化していくことは目に見えている。しかし、それでよいのかと思う。言葉がなんとか話せても育ってきた社会通念や常識が異なる場合もある。日本の良いところ、勤勉さや嘘をつかないところ、治安の良さを保持しつつ、「移民」の文化や考え方に一定の理解を示さなければ、今の欧州が抱える移民という少数民族との軋轢を日本も抱えるようになるだろう。互いの理解や我々の側に少数者受け入れの理念がなければ、今の川口市に代表されるようなトラブルが日本全国に広がり、外国人に対する過激なヘイトも感情的には一部の日本人の賛同を得ることになるだろう。
僕がひしひしと感じているのは僕のクリニックに対するニーズがひときわ高まってきているということである。それは開業して33年、いまだ、僕の掲げた理念は達成されていないということだ。多くの医療機関や関連社会がたまたま外国人患者を迎えて悩んでも、だれかの助けでのど元過ぎるとその苦労を忘れてしまうことだ。そのうちに外国人患者は彼らが思うような「例外」ではなくなることだろう。一つの希望は日本医師会執行部が外国人医療の大切さに気がついているという点だ。僕は今、74歳、あと3か月で75歳、次の世代とともにしばらくは並走し、僕の理念の達成度を見極めたい。
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