フィリピン人女性57歳、2週間前に降圧剤を一か月処方しているのにやってきた。僕のクリニックの夏季休暇を避けるつもりでやってきたのかな?とも思ったが、少し早すぎる。こういう時期に再び、一か月処方するとレセプトの保険審査ではねつけられてしまい、薬局から提出したレセプトの費用、すなわち調剤に関する処方料や薬そのものの費用など、全額、処方箋を書いた僕のクリニックへの支払いから減額されてしまう。これはレセプトを審査する審査委員の考え方によるので、僕は必ず、「海外渡航または一時帰国のために追加で処方した」という一文をレセプトに追記として打ち込んでもらう。すると通してもらえる。要するに審査委員に事情がよくわかるように文章を添えればよいということなのだ。僕自身が国保の審査委員を務めていたのでわかる。
午後になり5年近く拝見していた方のご家族から電話あり。記憶では初めての来院直後に内視鏡検査で食道がんを見つけて、ご本人の希望で彼と私の母校の外科で手術をしていただいた。その後、しばらくはよかったが、リンパ節に再発が見つかり、放射線治療やら闘病生活を送っていらっしゃった。目が不自由なこともあり、住居のもっと近くの医療機関をお勧めしたこともあったのだが、僕のクリニックまで来ますと強い口調でおっしゃった。
3か月前の受診が最後で、そのときにもう緩和ケアの医療機関に行くしかない、一か月しか持たないと大学病院で言われたとのことで、診察室の椅子から立ち上がる彼の手を思わず、握りしめたことがあった。そして、きのう、電話の主は娘さん。49日を過ぎたら、小林先生に電話してお礼を申し上げるようにとの遺言だったと教えてくださった。
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