同じフィリピン人の奥様には検査や治療の前後にフィリピン人スタッフを通して説明をしていたのだが、昼休みに彼が点滴を受けている部屋に行ったところ、姿が見えなかった。その直後に彼の務めている会社から電話がかかってきているとスタッフが教えてくれた。電話を替わると上司だと名乗る男性が奥様から連絡があり、細菌感染があると聞いたが、どこに感染があるのかわからないとのことなので、話を聞きたいと言われた。奥様からは会社に話したとか、会社の人が電話して来るから病状を話してほしいとか、一言も聞いてはいなかったので、驚いた。会社の方には病気は個人のプライバシィであり、このケースでは本人、または奥様の許可がなければ話すことはできないこと、奥様から会社の方が電話してくるから話してほしいと言われたら、話しますと返事した。不満そうではあったが、納得はしてくれた。本人や家族の同意なく、僕が病状を話してしまい、日ごろから突然、休むことが多いなどという理由で会社を首にならないとは限らない。とくに外国人の場合、このような傾向が強い人がよくいる。ここは原則論を貫き通さねばならない。
点滴が終わってしばらくすると咳き込む声が聞こえた。咳はいつから?と訊ねると、一週間前から夜に出ていたと言う。さきほどはどこにもなにも症状はないと話していたのに・・・あわてて胸部レントゲンを撮影してみると、軽度の影があり、小児科で胸の音を聴いてもらうと湿性ら音が聞こえるという。感染巣は呼吸器系と診断した。奥様はパニックに陥っていて大きな病院で治療を受けたいと話すので、今日の朝一番に来てもらって、この二日間の熱型や白血球数、CRPの値を一昨日の値と比較して、近くの公立病院に紹介状を書くかどうか、判断することにしている。フィリピンでは肺炎になると、即、死につながることが少なくないそうだ。公的保険がなく、庶民には大きな病院に入院しての医療費が支払えないことによる。フィリピンの病院にもPGHを始め、マカティメディカルセンターなど素晴らしい医療を提供している医療機関は少なくない。問題は医療制度なのだ。奥様がパニックになったのはフィリピンで肺炎と診断されるとそのまま亡くなる人が少なくないからだと理解した。
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