タイ人女性50歳、上記男性に比較してしまうと、彼女に理解をしてもらうことはさらに難しい。僕のタイ語ではなく、タイ人スタッフにタイ語で説明してもらっても理解力が低いのだ。おまけにぼそぼそと思いついたように話す。いつもやってくると、こちらの説明が本当に理解できたか、一抹の不安がつきまとう。
僕のクリニックにやってくるタイ人はバンコク出身の都会人や旅行者ではない。ほとんどの患者の出身地はイサーンと呼ばれる東北タイ。貧しいと一概には言えないが、行ってみるとやはり貧しいというか、つつましい生活をしている人たちが多い。一台のバイクに家族5人が乗ったり、小学生と思われる年頃のこどもがバイクを運転していたりと驚かされる。お祭りがあるとラムシンという軽快な音楽が朝までとどろくように鳴り響き、酒が入るともめごとも少なくない。イサーンの中でも北と東を中心にラオス系の人たちが多く、顔つきを見てもそれとわかる。それもそのはず、タイとラオスが戦争をしてラオスが負けてタイに領土を奪われるまで、イサーンはラオス領であった。イサーンの人たちが話すイサーン語はほぼラオス語だ。そしてイサーン南部はカンボジアと国境を接しており、クメール系の人たちが住む集落が多い。おとなの中にはカンボジア語を話す人が少なくないし、話すことはできないが、話の内容は理解できるという人はかなり多い。
ついつい、脱線してしまったが、二日目の実習にやってきた北里大学看護学部の学生に最後に僕のクリニックの感想を訊ねたところ、患者の目を見て話しているところが印象に残ったと言われた。当たり前のことが印象に残るとは・・・・患者が日本人であれ、外国人であれ、誤解なく説明や気持ちを理解してもらおうと思うなら、目を見て話すことは基本中の基本なのに。
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