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2023年05月25日

令和5年5月25日木曜

中国人女性51歳、県央A市の消化器を標ぼうするクリニックから紹介状を持ってやってきた。そこそこ、日本語も上手で、僕のクリニックでは北京語の通訳はいないので、そのクリニックではなく、僕のクリニックでなければいけないということはないはず。それでも紹介されてしまうのは外国人だから面倒だから診たくないとか、国際クリニックという名前だからそちらのほうがいいだろうと考えたのか・・・そうとしか思えない。疾患の内容もB型肝炎キャリアであることと胆石症であって、外国人特有の疾患を疑うというわけでもない。前回、血液検査の結果は肝機能、腎機能、脂質代謝などまったく異状なく、ウルソのみを前医の処方通りに処方した。僕の説明に、にこにこと日本語で返事をしてくれる彼女を見ていると、ただ申し訳なく思った。
 昨日のAMDA国際医療情報センターに寄せられた米国人からの相談だが・・・・いっしょに旅行していた奥様が関西で腕を骨折、米国にいる兄弟が医師なので相談したら、そのまま航空機に乗って帰ってくるのは不可能と思われるのだが、大阪などにはいい医者はいないので東京の〇〇〇〇病院の整形外科を受診するようにとアドバイスされ、成田経由で帰るのでその病院に行きたいという内容で・・・・宿泊施設近くの病院の整形外科を紹介しようとしてもいい医者がいないからと断られたという、そういう内容だった。こういうケースは僕も経験がある。日本の医療のことは何もわかっていないのに、母国の医師だというだけで誤った情報を垂れ流している。〇〇〇〇病院でなければいけないという理由が見当たらない。きっと学会で〇〇〇〇病院の医師と知り合ったか、病院の名前だけを知っているのだろう。米国からみたら日本は小さいが、それでも大阪にいて東京の病院を受診するのは大変だ。それが通院が必要だとなると、これはもう不可能に近い。国際学会などでこのような誤ったアドバイスはしないように申し合わせすることはできないものか? 
気をつけないと同じようなことを日本の医療従事者もやりかねない。外国人患者が帰国するに際してその国の医療機関に紹介状を書きたいので探してほしいと言われることがある。いつも言うのだが、大阪に住んでいる人に東京の病院を紹介しても意味がない。チェンマイに住んでいる人にバンコクの病院を紹介しても意味がない、ジョクジャカルタに住んでいる人にジャカルタの病院を紹介しても意味がない。通院できない。それよりは住まいの近くの大きな病院に行きなさいと情報提供書を書くだけでいい。するとあとはその国の医療システムに乗っかってことは進んでいくはずだ。
 僕の記憶にあるのはスマホを出してニューヨークにいる主治医と話をしてほしいと言った米国人男性だ。その主治医は僕の話を聞くというよりはあの検査をやってほしい、この検査をやってほしいと畳みかけるように話しかけてきたが・・・患者は日本の公的保険を使っての診療を受けている。すると腫瘍マーカーを検査しろと言われても、画像診断でがんを疑う所見がなければ自費診療になってしまう。検査や薬、すべてそうだ。日本の医療制度、保険制度により診療上の縛りがあって、検査に順番があることも彼らには理解できまい。
 最後にもう一度、母国の専門家という「善意の第三者」が口出しすることで患者の治療がややこしくなることをわかってほしい。
posted by AMDA IMIC at 08:03 | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)
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