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2022年12月02日

令和4年12月2日金曜

親しい年上の医師から私の携帯に電話があった。診断書の用紙が欲しいとのこと。すでに退役して医療機関を閉めてしまっている彼に診断書の用紙が必要なのか、思わず訊ねてしまった。すると・・・某アジアの発展途上国から来日している女性が、県内の某がん専門病院を受診することになっていて、その受診予定日が許可滞在期間を過ぎてしまってからなので、許可滞在期間を延長してくれるように彼が入管に診断書を書くのだという。この某がん専門病院ではたしか、短期滞在者である日本の公的保険を持たない外国人患者は診ないという方針だったはずだ。訊ねると、たしかにそのように病院から返事をされたので、納得がいかずに、事務のトップに掛け合って診察はしてくれることになったと教えてくれた。
 観光や親族訪問など在留期間3か月以内の短期滞在者は日本の住民基本台帳に登録ができないゆえに日本の公的保険には加入できない。ゆえに自費での診療しか道がなく、これが母国で民間医療保険にも加入していないとなると、がんや先進医療の治療を行えば、医療機関に未納金を積み上げることは目に見えている。溺れる者はわらをもつかむというが、過去に「必ず支払いますから」ということで善意で彼らの治療を引き受けた医療機関に未払い金を残した例は後を絶たない。だからこそ、医療滞在ビザが創設され、日本での検査、治療を望む外国人は故国の日本大使館に病気の経過などの診断書、そして銀行預金の残高証明など治療費がまちがいなく支払えるという証明、さらに日本の医療機関の引き受け証明などを添えて医療滞在ビザを申請、許可をもらってから来日し、医療機関を受診する仕組みになっているはずだ。
 このような医療滞在ビザを取得するための条件が満たすことができない人たち、主には医療費支払いの証明ができない人たちはあらゆるコネクションを使って来日して医療を受けようとする。その典型が観光ビザで日本に来てしまうことだ。数年前まではやってきたうえで在留資格を変更し、日本にいる親族の国保や社保に加入して医療を受けるなんてこともあった。これについては治療が終わると故国に帰国してしまうので、「健康な時には皆で保険金を支払い、病んだときには皆で積み上げた保険金を使わせてもらい、再び健康に戻ったときは再び保険金を支払う側にまわる」という我が国の公的保険の在り方からは外れてしまう。このような人が多数存在すれば、我が国の公的保険の「つまみ食い」がひどくなるわけで、公的保険の存続にさえ影響を与えかねない。このように理由から国会で議論の末に、我が国に在留実績のない、あるいは適切なる中長期滞在ビザを持たない外国人が公的保険に加入することはできないという内容の法律が制定された。
 聞けば、この女性は肺がんのかなりの進行度だそうだ。個人的には気の毒にと思う。電話をかけてきた親しい関係の医師は、この女性のご主人となんらかの関係があるのだそうだ。そもそも、入管が在留資格の変更に応じるとは思えないが、しかし、いざ、診療を開始し、手術をするとか抗がん剤を使うとなると、保証人が必要だろう。彼が保証人となれば、未納金が出た場合には彼が代わりに支払わねばならないという状況になりかねない。これはかなり危険なことで、私なら「必ず」断るだろう。
 この3年ぐらい。新型コロナのために海外との人の往来ができず、ゆえにこのような話も耳にしなくなった。しかし、人の往来が急激な勢いで再開したとたんに、このような話が立て続けに二つ入ってきた。人のいい医師にとっては死ぬかもしれない人を前にすると、引き受けてあげなくては・・という人道上の善意が強く沸き上がるのだろう。ただし、それについてはすべての責任が自分にも降りかかるのだという危機感を抱いてほしい。
posted by AMDAcenter at 08:54 | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)
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