インドシナ難民として37年ぐらい前に日本に定住目的でやってきたベトナム人のご夫婦、奥様が80台半ばで数年前から認知症で、ご主人がそれに振り回されている状態だった。奥様の介護保険の意見書も書いたりはしていたのだが、デイケアに出かけて行っても、日本語がわからないため、すぐに行きたくないと言い出し、ご主人がお子さんたちの手を借りてなんとか奥様の面倒を見ていた。ご主人も前立腺肥大や過活動膀胱があり、なにより奥様の面倒を見ることで鬱状態になったこともあった。生活保護を受けていた彼らだが、役所から生活保護打ち切りの連絡があった。理由は先月も役所に連絡をすることなくベトナムに出かけており、それを確認したところ、1月にベトナムに帰国することに決まったそうだ。奥様の認知症がかなり悪化し、言葉のわからない日本にいることに限界を感じたらしい。複雑な気持ちになったが、一番の複雑な気持ちの原因は言葉がわからない本人たちからではなく、日本語が達者な近くに住んでいるはずのお子さんたちから僕のクリニックに帰国に関して何の連絡もないことだ。生活保護は11月で打ち切るそうで、12月の医療費は自費で支払うことになる。ご夫婦合わせて6万円ぐらいになることがわかった。
日本に住む人口の3%近くが外国人だ。多くは労働できる世代の若い人たちだが、日本人と結婚しているフィリピン人や中国人、韓国人、南米からやってきた日系人やインドシナ難民など、70代、80代の人たちもじわりじわり増えてきている。こういう方々が介護を受けるような時代はすでに始まりかけている。認知が始まると、後で覚えた日本語は忘れ、日本に来る前に使っていた言葉しかわからなくなってくる傾向が強い。どのような対策を取るべきか、まずは厚労省等が問題認識を持っているかどうかだろう。
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