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2022年09月26日

令和4年9月26日月曜

9月24日の土曜は総患者数80人、うち外国人患者は23人だった。23人は全員が再診の患者で、珍しいことに初診の方はいらっしゃらなかった。そのためか、人数の割合にはあまり疲れたということはなかったが・・・この時期、会社や事業所での健診結果を持って相談に来る外国人が多い。会社や事業者側から健診の精密検査該当項目については医療機関を受診するようにとの指示を受けるし、受診しないといつまでも催促されるので、彼らにとってはいやでも受診せざるをえないというわけだ。こういうシステムはとくに発展途上国にはないシステムだ。ある意味、日本で働いていてよかったと思われるケースが少なくはない。故国なら医療費の支払いができないと想像されるがゆえに受診しないとか、受診しても手術は受けることができないとか・・・このような話はフィリピン人からはよく聞く。やはり、国民皆保険制度はすばらしい制度であり、その結果が長寿国家日本であるのだと思う。
もう15年近く前になるが、マニラでAMDAフィリピン支部の医師やほかのカソリックのボランティア団体と貧しい人たちが暮らす地区で無料の検診を行ったことがあった。検診といっても、ただ「検診」するのではなく、富裕層や各種のボランティア団体からいただいたお金で医薬品を買い込み、診察の結果、高血圧なら降圧剤を処方し、同行した薬剤師が当該薬剤を受診者にさしあげるシステムであった。これはもう検診というより、青空診療所に近い立派な医療行為であった。降圧剤をせいぜい1週間分、さしあげても、もちろん継続的医療にはほど遠く、いったいこのような行為が何になるのかと思ったが、生活保護法のようなセーフティネットがない国では、このようなボランティアによる医療活動がよく言えばセーフティネット、悪く言えば社会に不満を持つ人のガス抜きになっているのだろう。およそ集まってくる人たちは見るからに高齢者であったが、その中で妙齢のお嬢さんがやってきていて目を引かれた。彼女の順番になると、足の親指を見せてくれた。腫れあがって、膿が溜まっており、化膿性の巻き爪だった。ここまで悪化してしまうと、抗生物質の内服だけでは治まらない可能性が極めて高く、病院を受診するようにと話した。すると・・・「病院を受診するお金がないから来た。だからなんとかしてほしい」と言われ、やむをえず抗生剤を1週間ほど処方すると満足したように帰って行った。その直後、僕自身は無力感に打ちのめされていた。
こんな経験をすると、日ごろは当たり前のはずの国民皆保険に守られていることがいかに幸せなことか、実感する。フィリピン人の患者も異口同音に言う。
posted by AMDAcenter at 09:21 | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)
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