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2022年01月20日

令和4年1月20日木曜

18日火曜の午後5時、もう患者もいないし、検査もないと確認して検査会社にPCRの検体を20個運んでもらった直後にシャッターを下ろそうとしたら、外から小柄な外国人女性が入ってきたと受付から連絡があった。フィリピン人らしく、すぐにフィリピン人スタッフが事情を聴いてくれて報告してくれた。いたって元気そうで、のどが痛いだけで発熱はないという。とりあえず、クリニックの外に出てもらい、中を別のスタッフが消毒した。その程度の症状でこんな時間にやってきたということは新型コロナに感染していることを心配してきたのだろうと推察したが、すでに検査会社のスタッフが検体を持って帰ってしまっている。翌水曜日は休診日なので、僕のクリニックでPCR検査を行うとすると二日後の木曜日になってしまう。ほぼ日本語は通じず、どうすべきか考えてしまった。症状はいつからか?と訊ねてもらうと15日の土曜日からという返事だったので、簡易抗原検査を行うことにした。検体を採取するときに外は寒いと言われたが、入れてあげることはできないと話し、中に戻って検査を施行すると・・・1分もしないうちに陽性反応が出た。結果が陽性と告げると信じられないような顔つき、写真を撮らせてほしいとのことで、捨てる直前のキットを持って行って写真を撮らせてあげた。薬は?と訊ねるので、すでに喉用のスプレーを所持していたこともあり、何も処方しないと答えると、これもまた信じられないようす。そこで抗生物質はウィルス性疾患には効果がないこと、症状に合わせた薬を処方するのだが、彼女の場合は喉が少し痛いというだけなので、それで内服薬は必要がないことを説明した。仕事を訊ねると、某所で英語の教師として勤めているという。同居している親族、友人はいないようなので、必ず、雇い主に陽性だという結果をすぐに伝えるように話した。それからがまた問題。医療費の請求をスタッフが行ったところ、現金がなく、近くのATMまで行ってお金をおろして来ると言う。すでにクリニックの終了時間を過ぎていて、これ以上、スタッフを時間外労働させたくないこともあるが、最大の問題はATMに行けば、いやでも手で機械を操作することになり、それが次に利用する人への感染をおこしかねないので、自己負担分については新型コロナが治癒したと認定されたそのあとに持ってきてもらえばいいと判断し、伝えた。さらに問題は続く。自宅まで徒歩では帰れず、来るときと同様に電車に乗らねばならない。マスクをひとつ手渡し、できるだけ人が少ないところに乗って、何も触らずに行先まで行くように話した。
 しかし、この程度で新型コロナに感染していると言われたら、ほんと?という気持ちになるだろうし、仕事も10日は出られない、外にも出るな、電車にも乗るなと「ばい菌」扱いするようなことを言われたら、違和感に襲われることだろう。新型コロナはすでにこの程度の疾患になりさがったというのが臨床医としての僕の意見だ。これで濃厚接触者も自宅待機、学校も休校なんてことをしていたら社会がおかしくなる。医学的にではなく、別の理由で社会がたちいかなくなる。東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の知事の要請でこの首都圏4自治体にも蔓延防止法が今日か明日にでも出るらしい。昨日のYAHOO ニュースによると我が国の第六波での重症者はデルタ株のころの1/10程度であり、死者はこの間、10人程度だそうだ。このような現実を見ずに、感染者の急増だけで以前と同じ方針を採ることは社会にさらなる混乱を招くだけだ。重症者が増えるのではなく、医療従事者の中に濃厚接触者が増えたり、医療従事者のこどもたちの中に感染者や濃厚接触者が増え、その面倒を見るために医療従事者が職場に出られず、その結果、医療崩壊を起こしかねない。重症者が増えたからではなく、二類感染症であるがゆえに救急車を使い、救急隊が疲弊している。そんな状況にあることを専門家会議や政府はどのようにとらえているのだろうか。
posted by AMDA IMIC at 08:24 | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)
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