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相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チームの「中間とりまとめ」について、厚生労働大臣に申入書を提出しました [2016年10月04日(Tue)]
相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チームの「中間とりまとめ」について、厚生労働大臣に申入書を提出しました。

2016年10月4日

申 入 書

〜「中間とりまとめ」に対する意見と要望〜


厚生労働大臣 塩崎恭久 様

〒530−0047
大阪市北区西天満5丁目9番5号 
谷山ビル9階
認定NPO大阪精神医療人権センター
代表理事 位 田 浩 大 槻 和 夫
TEL 06-6313-0056 FAX 06-6313-0058


 さる9月14日、厚生労働省を中心にした「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」が事件の検証結果を「中間とりまとめ」として公表しました。
 当センターは、事件をきっかけに措置入院の制度や運用の在り方の見直しのため有識者会議を設置しようとする動きに対し、精神医療を治安の道具にするような議論が予想されたことから、その設置に強く反対することを表明し、貴大臣に申し入れを行いました(本年8月1日付申入書  )。ところが、上記検討チームによる「中間とりまとめ」は、当センターの懸念がまさに現実のものになるものでした。
 私たちは、精神医療制度を犯罪防止のために用いるような議論ではなく、精神障害者に対する差別と偏見をなくし、精神障害者が地域で穏やかに暮らし、安心して精神医療にかかることができるような制度や社会をつくるための議論を行うことを求め、以下のとおり申し入れます。

1 「中間とりまとめ」は、容疑者の緊急措置入院と措置入院の各判断、入院中の診療、措置解除の手続、措置解除後の対応などについて、時系列をおって、現時点で把握できている事実関係をもとに、それぞれの時期における担当医や病院、自治体などの対応の問題点をあげ、事件の再発防止のための今後の検討課題を指摘しています。
  はたして容疑者は精神障害者であったのかという根本的な疑問はおくとしても、措置入院制度に原因を求めようとする検討チームの議論では、犯罪防止を目的とするため、いきおい措置入院期間の長期化や措置解除後の管理や監視を強める方向につながっていかざるをえません。
  たとえば、「中間とりまとめ」では、容疑者の入院中に、措置解除後を見据えた退院後の治療方針や治療継続のために必要な対応の検討が不十分であったとしたうえ、医療観察法に基づく入院医療が参考になるとしています。しかし、医療観察法に基づく入院医療は、入院期間の長期化が問題となっており、受け入れ先がないために入院継続をよぎなくされる社会的入院化が進んでいます。医療観察法を参考にすることには賛同できません。
  また、容疑者の退院後の継続的医療など支援内容が検討されることなく措置解除がされたことが問題とされ、措置権限を有する都道府県知事等が退院後の支援内容や関係機関の役割を確認して必要な調整を行うことができるような制度を検討することが指摘されています。しかし、本件では入院時に措置要件を備えていたかどうかに疑問が残るうえ、仮に措置要件が備わっていたとしても、その後に措置要件が消失すれば入院を強制することはできません。上記のような制度をもうけると、措置要件がなくなっているにもかかわらず、退院後の支援内容や関係機関の役割を都道府県知事等が確認できないことを理由に退院できず、入院が長期化する事態が生じかねません。
  さらに、容疑者が措置解除後に通院治療を中断したことが問題とされ、地方自治体が関係機関による支援を調整して患者に必要な支援を確保していく仕組みや、患者が通院中断に至らないようにするするための仕組みを検討することが指摘されています。これらの仕組みについても、退院した精神障害者を保健所や病院などの監視の網の中においたり、あるいは強制的な通院を制度化することにもなりかねず、精神障害者の自由と人権を制限していくことにつながります。
  「中間とりまとめ」は、措置入院制度を犯罪予防のために見直そうとするもので、精神障害者の福祉の増進を目的とする現行精神保健福祉法からも逸脱するものです。そのほか措置要件の有無を判断した精神保健指定医の資格に疑義があったことがほとんど取り上げられておらず、入院者の人権保障の視点を欠いているのではないでしょうか。

2 日本の精神医療制度のもっとも重要な問題は、世界に類をみない30万床を超える病床数をいまだに温存し、多くの精神障害者が長期入院や社会的入院を強いられ、その自由と権利を奪われていることです。人口あたりの強制入院者数は欧州平均の約10倍に及んでいます。措置入院や医療保護入院といった強制入院を中心とする日本政府の精神医療政策が、精神障害者は何をするか分からないから社会から排除しようとする差別・偏見を生み出し、精神障害者がともに地域で暮らす共生社会の実現を阻害してきたのです。
  容疑者は、措置入院前に、「障害者は不幸を作ることしかできない」「障害者を殺すことは不幸を最大まで抑えることができる」などとして、障害者の大量抹殺を宣言した手紙を衆議院議長に提出していました。容疑者がこのような観念を持つにいたった経過や犯行動機などについては、容疑者が精神障害を有していたかどうかを含め、今後の司法手続の中で明らかにされていくことです。ただし、少なくとも事件の背景に、「劣等な障害者を社会から排除する」という優生思想が存在していたことはまぎれもない事実です。
  容疑者の持っていた優生思想は、現行の精神医療制度に内在する精神障害者排除の論理と軌を一にするものではないでしょうか。
  精神障害者が病院を退院し、他の人々とともに地域で穏やかに暮らすことができ、安心して精神医療を受診できる、そうした受け皿づくりを早急に進めること、このような作業を通じて精神障害者が何をするか分からないといった差別・偏見をなくしていく努力をしていくことが、優生思想に基づく今回のような事件の発生を防止することにつながっていくと考えます。
  厚生労働省においては、精神科病床を減らして長期入院者と社会的入院者をなくし、精神障害者が地域であたりまえに生きていける社会の実現に速やかに取り組むことが求められています。

3 「中間とりまとめ」は、現行の精神医療制度のもとで精神障害者が地域社会で共生できていない現実に対する認識が欠けています。逆に精神障害者に対する監視と管理を強化する方向での議論が進められています。
  当センターは、このような「中間とりまとめ」を前提として今後策定されようとしている「再発防止策」について、精神障害者の自由と権利を奪うような内容になるのではないかと危惧せざるをえません。
  私たちは、精神障害者との共生社会を阻んでいる精神保健福祉法上の強制入院制度の廃止を含む見直しを求めるとともに、精神障害者が地域で平穏に暮らし、安心してかかれる精神医療を実現するための受け皿づくりを検討課題にすることを強く要望します。
以上
Posted by advocacy at 21:09
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