(12/28)【ネパール】新型コロナウイルス感染症対策の最前線にいる方々を支えることができました! [2021年12月28日(Tue)]
ADRA Japanは2021年7月以降、 皆さまからのご支援と ジャパン・プラットフォームの 助成を受けて、 ネパールの バンケ郡・バルディヤ郡における 新型コロナウイルス対応能力強化 のための医療機材・物資配付支援 を実施しました。 バンケ郡は、インド国境に 位置していて交易の盛んな地域 であることもあり、 ネパール国内の感染拡大第1波 (2020年)、 さらに第2波(2021年)ともに 首都圏に先駆けて感染爆発が 起こりました。 バンケ郡内の感染拡大に次いで、 隣のバルディヤ郡にも感染が 拡がるという状況が繰り返され ました。 その中で、この地域の 新型コロナウイルス感染症の 重症患者の受け入れと治療を 担っているバンケ郡のベリ病院と バルディヤ郡の郡病院では、 治療に必要な医療資機材や 医療従事者を感染リスクから 守る医療資材が不足している という現実がありました。 ベリ病院の新型コロナウイルス 病棟の看護師長である シャイラ・シャルマさんは 「第2波のときの感染拡大の スピードにはとても恐怖を覚えた」 と言います。 2021年12月現在では100床の 新型コロナウイルス患者用病床が 確保されていますが、 第2波の感染ピーク時には 350名の患者が入院している こともあり、 廊下や床、屋外テントで 治療ケアを行うことも あったそうです。 その頃には人材も、 医療従事者を感染リスクから 守るための個人防護具等の 医療資材も足りておらず、 職員の多くも 新型コロナウイルスに 感染したそうです。 <看護師長のシャイラ・シャルマさん(左)とADRA Japan駐在員(右)> 看護師歴11年目の マドゥ・グルンさんは、 同じくベリ病院の 新型コロナウイルス 専用集中治療室で 1年半以上に渡って 勤務し続けてきました。 マドゥさんも 第2波の急速な感染拡大時の 恐怖を語りました。 「毎日15-20人が新たに入院して くる上に、その内の4-5人は 集中治療室での医療ケアが 必要な重症患者でした。 なのに、治療薬や個人防護具、 酸素供給、酸素マスクも何もかも 足りない状況でした。」 <看護師のマドゥ・グルンさん> そのためADRA Japanは、 ベリ病院でも特に不足していた 個人防護具とベッドサイドモニター、 血糖測定器を提供しました。 オーストラリア国際開発庁の 支援を受けて、 ネパール支部(ADRA Nepal)も 個人防護具や酸素濃縮器等を 支援しました。 <個人防護具を準備する新型コロナウイルス病棟看護師> <ベッドサイドモニターの設置作業を行うADRA Japan駐在員> <ADRA Nepalによる医療資機材支援> マドゥさんは、 新型コロナウイルス病棟での 勤務の中でも印象的だった ひとつの症例について 話してくれました。 「2021年7月上旬に入院してきた 36歳のカイラシュ・ガルティ・ マガルさんは、 入院当初は酸素濃度が75〜85%と 低値を推移していました。 2週間にわたり徐々に病状が悪化し、 CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸器) という、鼻から空気を送り込んで 呼吸を助ける呼吸器の使用が 開始されました。 CPAPによる治療と並行して、 カイラシュさんには見当識障害の 症状が見られ始め、 またCPAPマスクのよる 鼻の皮膚かぶれが起きるようになり、 それらの症状へのケアも必要でした。 CPAPによる効果が徐々に見られ始め、 25日後についにカイラシュさんは 呼吸器から離脱することができ、 一般病棟へ移りました。 彼が一般病棟に移ってからも、 私や他の集中治療室の同僚は 度々彼の元を訪れました。 その後、新型コロナウイルス感染症の 重症時を乗り越えて、 ついに2か月後にカイラシュさんは ベリ病院を退院できました。 彼のようなケースがあると、 看護師としてのやりがいと 誇りを感じることができます。」 <新型コロナウイルスに感染したカイラシュ・ガルティ・マガルさん> ネパール全土では 新型コロナウイルス感染症の 新規感染者数は1日200人程となり、 1日当たり9,000人以上の新規感染者が 出ていた頃より大幅に落ち着いていますが (2021年12月現在)、 ベリ病院は周辺地域の唯一の 公立三次救急病院として 引き続き新型コロナウイルス患者への 治療ケアを行っており、 ADRA Japanの支援した 医療資機材が活用されています。 <マドゥ・グルンさん(左)と同僚> 皆さまの温かいご支援により、 ネパールの新型コロナウイルス感染症対策の 最前線にいる方々を支えることが できましたことを心より感謝申し上げます。 (執筆:ネパール事業担当 大西由香) |