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(12/16) vol.95 新しい事業がはじまりました [2022年12月16日(Fri)]
こんにちは。
南スーダン難民事業を担当している羽鳥 憲伍です。

私たちは2014年からエチオピア西部のガンベラ州の
難民キャンプで、水・衛生分野で活動してきました。
今回のブログでは、2022年9月より新しい段階に入った
クレ難民キャンプでの支援活動についてご紹介します。

クレ難民キャンプは2014年に開設され、
現在5万人以上の人々が住む大きな難民キャンプです。

難民キャンプ開設から8年間が過ぎましたが、
いまだに南スーダンに帰れない人が多くいます。
こうした状況には不安定な治安や、南スーダン側の
受け入れ態勢が整っていないなど、様々な要因があります。

難民の人々の多くは、南スーダンに帰っても
家や財産が残っていなかったり、仕事がなかったり、
インフラが破壊されたままになっていたりと、
国内避難民のような立場になります。
また、生活基盤を再構築するためにも
資金や時間や様々な手続きが必要になります。

5万人以上が生活するクレ難民キャンプの様子.jpg

5万人以上が生活するクレ難民キャンプの様子


ADRA Japanはガンベラ州でトイレの建設と
衛生啓発活動を中心に活動しています。
人口密度の高い難民キャンプでは
排泄物の処理は大きな課題です。
トイレがなければ、屋外排泄が増えて
感染症が拡大するリスクが
増えてしまいます。

これまでの活動ではトイレを建設して、
難民の人々に供与してきました。2021年からは、
難民の人々にトイレ建設に参加してもらい、
トイレの作り方を学んでもらうようにしました。


トイレの構造を学ぶ研修参加者.jpg

トイレの構造を学ぶ研修参加者


2022年9月から始まった新しいプロジェクトでは、
前年の活動を発展させる形で、難民の人々を対象に
建設研修を実施し、自分自身でトイレを
作れるようになってもらいます。
また、建設技術を学んだ難民がグループを作り、
自分のトイレを修繕したり、他の人のトイレを
作れるようになってもらいます。

建設資材も難民キャンプ周辺で手に入れられる
枝や土壁にすることによって、NGOなどの
支援団体がサポートしなくても、自身で安価に
作れるようになります。

多くの難民は南スーダンの農村部から来ています。
そして、ほとんどの難民が、いずれは故郷の
南スーダンに帰ることを望んでいます。
難民キャンプで学んだ建設技術を使い、
故郷に帰ったあとにトイレや家を作れるように
なることも目指しています。

前事業で難民の人々が作ったトイレ.jpg

前事業で難民の人々が作ったトイレ


また、過去1年間でクレ難民キャンプに居住する
難民は約5000人増加しました。
難民キャンプのような多くの人が密集して
生活する環境は、ほとんどの人にとって初めての
経験となります。

新しいプロジェクトでは、新たに難民キャンプに
住みはじめた人びとに、基本的な衛生知識と衛生習慣の
啓発を行い、難民キャンプの衛生環境が
悪化しないようにします。

さらに、以前から住んでいた難民と
新しく住みはじめた難民の両方を
対象として、手洗いを推進する啓発活動を行います。
手洗いは感染症対策の基本的かつ安価な手段です。
新型コロナウイルスはもちろん、コレラやチフス、
大腸菌による感染症は難民キャンプでも大きな脅威です。
これらに起因する下痢は、難民キャンプにも
多く住んでいる子どもたちにとっては命の危険になります。

さらに、今回の事業で取り組むのは
学校の衛生活動支援です。
5万人が住むクレ難民キャプには
5つの小学校があります。
それぞれの学校には学校衛生クラブがありますが、
これまで活発な活動は行われていませんでした。

昨年の事業から、学校衛生クラブの
活動支援を行っていましたが、
新しい事業でもこれを継続します。
衛生クラブに所属する児童にレクリエーションを
取り入れた衛生に関する授業を行い、
楽しみながら学びます。
そのあと、学校衛生クラブが主導して
衛生知識や衛生習慣を他の児童にも広げていきます。
これによって子どもたちを感染症から守るとともに、
子どもを通して各家庭にも衛生習慣が
広がっていくことを期待しています。

学校で手を洗う子どもたち.jpg

学校で手を洗う子どもたち


事業期間の約半年間、日本人スタッフ、現地スタッフが
一丸となってこの事業に取り組んでまいります。

みなさまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

今後もブログを通じて事業進捗を紹介していきます。
ぜひチェックしてみてください。

*この事業はジャパンプラットフォームによる助成金と
支援者の皆様からの寄付金で実施しています。

(南スーダン難民事業担当  羽鳥 憲伍)
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Posted by ADRA Japan at 09:15 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(11/25)南スーダン便りvol.94 南スーダン難民支援の軌跡 [2022年11月25日(Fri)]


こんにちは。
南スーダン難民事業を担当している羽鳥 憲伍です。


ADRAは、2005年より南スーダンに
スタッフを派遣し、
長い間、紛争の影響を受けてきた
南スーダンの人々に寄り添う活動をしてきました。



写真1-1 南ス帰還民再定住支援2009-13.jpg

ADRA Japanが南スーダンの
避難民・帰還民を対象に実施していた
生計支援事業(2009−2013年ごろ)




しかしながら情勢悪化により
南スーダン国内での活動を断念せざるを得ず、
2014年からは隣国エチオピアで
南スーダン難民支援を続けています。


今回のブログでは、
ADRAのこれまでのエチオピアでの
支援活動についてご紹介します。




現在、エチオピアは約40万人の
南スーダン難民を受け入れていますが、
そのうち90%以上にあたる37万人が
ガンベラ州に住んでいます。


ガンベラ州はエチオピア西部に位置し、
西隣にある南スーダンに
突き出すような形をしています。




ガンベラ州には現在7つの難民キャンプが設置され、
数十団体の国連機関やNGOが難民の支援をしています。


支援団体は定期的に集まってミーティングを行い、
最新の情報共有を行ったり、
支援が偏らないように調整したり、
また課題や解決策を共有しています。


ADRAの活動分野や活動地についても、
こういった調整プロセスを経て決定しています。




ADRAは、(特活)ジャパン・プラットフォームの
助成も受けて、


2014年から8年間にわたり
ガンベラ州内3か所の難民キャンプと
国境のエントリーポイントにおける
支援活動に取り組んできました。



写真1-2難民登録.jpg

国境地点の難民登録の様子



難民キャンプが開設されたばかりの時期には、
食料支援、飲み水、傷病者治療のための医療支援、
住居の支援など、
とにかく生存するための緊急支援が必要でした。


難民キャンプでの生活が長くなってくると、
テントに暮らしていた難民は「トゥクル」という
木と土でできた伝統的な家屋を建てて
住むようになります。



トゥクル.jpg

伝統的な家屋「トゥクル」




医療支援も治療だけでなく、
感染症の防止や衛生啓発といった
予防医療に近い活動も行われるようになります。


また、簡易的な自給自足ができるように、
難民キャンプ内で家庭菜園をするための研修なども
行われています。


自分たちでできることは自分自身でするという、
尊厳ある自立した生活の回復に向けた支援が
中心となってくるのです。



写真1-3テレキディ難民キャンプ.jpg

エチオピア、ガンベラ州の
テレキディ難民キャンプ(2016年ごろ)




2017年からはガンベラ州にある
難民キャンプの一つである
クレ難民キャンプにおける活動に集中し、
その中でもADRAは水・衛生分野の支援に
注力することになりました。


ADRAが担当する水・衛生の分野は、
給水や衛生設備(トイレや手洗い用設備)の整備、
衛生啓発活動や衛生用品の配付といった
活動が含まれており 、


難民キャンプ内の衛生環境の維持・向上や
それによる感染症の防止などを担っています。


水衛生分野で活動を始めたときには、
多くの人が共有できる公衆トイレを建設して
すべての人がトイレを使えるようになることを
目指していました。


その後、徐々に公衆トイレの支援から
世帯ごとのトイレの支援に移行していきました。


これは、利用者の安全やプライバシーを守る役割や
利便性の向上のほか、
自分自身でトイレの清掃や管理を行う意識や
責任感の醸成を考えてのことです。




さらに、昨年開始した取り組みでは、
難民の方々が、自分たちの手で
安全に使えるトイレを
作れるようになることを目指し、


難民の方に対してトイレの建設技術研修を
はじめました。


そして、今年の活動では
それをさらに発展させています。




多くの難民が大量に流入して
難民キャンプを形成した初期と、
難民キャンプの生活が長期化してきた現在では
必要な支援の形も変わってきました。


衛生知識や衛生習慣の普及を目指す
「衛生啓発活動」でも、
難民の参加度をより上げて、


「NGOが支援して難民が受益する」
という関係から、
「難民が主体となって活動するのを
NGOがサポートする」


という形に変化していっています。




次回のブログでは、
2022年9月から新たな段階に入った
支援活動についてご紹介します。
ぜひ、チェックしてみてください。


*この活動は皆さまからのご支援と、
ジャパン・プラットフォームによる助成金で
実施しています。



(南スーダン難民事業担当  羽鳥 憲伍)


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Posted by ADRA Japan at 13:51 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(2/10)南スーダン便りvol.93 インターネットのニュースでは見ることがない日常的なエチオピアを駐在員がご紹介します! [2022年02月10日(Thu)]


皆さま、こんにちは。
エチオピア駐在員の辻本です。


今回はエチオピア食べ物、装飾、乗り物など
エチオピアの日常や文化をいくつか
ご紹介します。



★エチオピアの食べ物「インジェラ」


エチオピア人の主食と言えばやはりこれ。
インジェラです。
テフという植物から作られており、
鉄分とカルシウムを多く含みます。


レストランや大衆食堂など、
どこに行ってもインジェラを
見つけることができます。


当たり前の食べ物過ぎて、
レストランで具材だけ注文すれば
インジェラと一緒に出てくる、
日本人にとってのお米のような存在です。


パスタを注文したら
インジェラと一緒に出てきた、
ということもあります。



1.jpg


(ブヤイネット:インジェラと数品の野菜料理を組み合わせたもの。)




2.jpg


(ティブス:肉を炒めた料理)




★おもてなし時に床に敷く草「ケテマ」


エチオピアではおもてなしの場に
青草を敷く習慣があります。


自然の中にいるという演出のためと
いわれています。


敷く草に決まりはないようですが、
基本的に細い草が多いです。


インジェラを紹介した一枚目の写真にも、
草が地面に敷かれているのが分かるかと
思います。


上を歩くと柑橘系にも似た清々しい匂いが
します。



3.jpg


(ショッピングモールの中でも青草が敷かれている)



4.jpg


(青草が敷かれている伝統的なコーヒーセレモニーが行われる場所。このような場所はホテルの1階などにも設置されている。)




★エチオピアのコーヒー


エチオピアといえばなんといってもコーヒー
です。


コーヒー発祥の地と言われるエチオピアでは、
都会、田舎関係なくいたるところで
コーヒーが飲まれています。


また、コーヒーはエチオピアの最も多い
輸出品目でもあります。


エチオピアのコーヒー屋さんでは
スプリッスと呼ばれる、
コーヒーと紅茶を混ぜたものも飲めます。
さわやかで飲みやすく、
コーヒーと紅茶の両方の香りを感じられます。



5.jpg


(首都アディスアベバで飲んだコーヒー。
レストランなどでコーヒーを頼むと
ポップコーンと一緒に出てくることがある。)



6.jpg


(事業地ガンベラ州の田舎で飲んだコーヒー。
日本円にして1杯10円ちょっと。)




★エチオピアの飲み物「アンボ」


飲み物繋がりでもう一つご紹介したいのが
こちら。
何かわかりますか?



7.jpg




正解は、炭酸水です。
日本で炭酸水と言えばウィルキンソンや
ペリエなどかもしれませんが、
エチオピアは違います。


炭酸水を注文したければ、
アンボと言えばほぼ100%通じる
エチオピアの炭酸水です。


ラベルに「AMBO WATER」と
書いていますが、
レストランで”Water”(水)を注文すると、
これが出てくることもあるくらい
馴染み深い飲み物です。



★移動手段のひとつ「青タクシー」


首都のアディスアベバにはたくさんの
タクシーが走っています。


ウーバーのようなアプリを使って
呼ぶことができる車もありますし、
そうでない昔ながらのタクシーも
走っています。


写真に見える青色の車が
昔ながらのタクシーです。


ほとんどの車が中古車で、
修理に修理を重ねて使っているものも
少なくなく、
年代物が今も元気に走っています。


一度、運転手に聞いたときは、
70年代のカローラだったことがありました。



8.jpg




以上、インターネットのニュースでは
見ることがない、
日常的なエチオピアをご紹介しました。


いかがでしたでしょうか?


今回のブログで読者の皆さまに、
ADRA Japanの事業地であるエチオピアを
少しでも感じていただければ嬉しいです。


次回は、活動の様子をお届けいたします。
どうぞ楽しみにしていてください。



(執筆:エチオピア駐在員 辻本)

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Posted by ADRA Japan at 21:31 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(12/9) 南スーダン便りvol.92 エチオピアでの水衛生事業の進捗報告 [2021年12月09日(Thu)]


皆さま、こんにちは。
エチオピア駐在員の辻本です。


今回は、活動状況について
ご報告します。




2020年9月からスタートした
エチオピアにおける南スーダン難民
への水衛生支援事業は
2021年8月14日をもって
無事に終了しました。


この事業でADRA Japanが
エチオピアのクレ難民キャンプで
建設したトイレは合計350基。


そのうち333基が世帯別トイレ、
17基がバリアフリー型世帯別トイレ
です。


また、新型コロナウイルス対策の
手洗い啓発をはじめとした
衛生啓発活動は当初の目標よりも
56%多く実施することができました。




ADRA Japanは引き続き
クレ難民キャンプで、
2021年8月17日から
南スーダン難民への
新たな水衛生事業の活動を
始めています。


この事業では、難民の能力向上に
より焦点を当てています。




これまでの事業では、
トイレ建設への難民参加は
部分的でしたが、
今回はADRA Japanが確立してきた
難民キャンプでのトイレ建設の技術を
まるごと難民に伝えていきます。


指導員によるサポートのもと、
難民がすべての建設作業工程に
参加することで、
より一層の人材育成を行います。




また、トイレの仕様も変更し、
住民の方が建てている住居と同じ
土壁を採用するなど、


可能な限り難民キャンプ内で
調達できる資材を利用した
世帯別トイレを導入する予定です。


これにより、事業終了後も
難民自身が建てたトイレを
メンテナンスできるようになります。



写真1.jpg


(クレ難民キャンプのADRA敷地内にある新型の世帯別トイレ(試作品))




ほかにも、クレ難民キャンプ内の
小学校5校(うち1校は中学校と合同)
にある水衛生クラブの活動支援
および手洗い場の整備を
計画しています。


新型コロナウイルスの感染者は
キャンプ内でも確認されており、
キャンプ人口の約30%を占める
子どもたちが集まる学校の
感染症対策は不可欠です。


今現在の学校内の手洗い場は
標準とされる数を満たしていないため、
子どもたちが水衛生について
必要な知識を得て、
より安全に学校に通えるよう
支援していきます。



写真2.jpg


(難民キャンプ内の学校にある手洗い場。
水源から水が届かず、水が出ない状態で放置されている。)




また、前事業に引き続き
衛生啓発活動や難民自身が
水衛生啓発を行う自治組織の体制支援、


難民が自力で入手できる代替衛生用品
(石鹸の代わりに灰など)を普及する
活動支援にも力を入れ、


人材育成や難民組織の体制強化のほか、
身近な物資の利用に重点を置いた内容で
事業を進めていきます。



写真3.jpg


(ADRAスタッフ(中央)と研修に参加している難民の人々)




現在のエチオピアは、
治安が悪化しており、
支援団体が難民キャンプに行くことは
以前より難しくなっています。


しかし、治安の状況を見ながら、
引き続き情報収集に努め、
関係団体と連携しつつ、
十分に治安に注意して活動を
進めていきます。




今後とも皆さまからの
温かいご支援をよろしくお願いします。


最後まで読んで頂き
ありがとうございました。



*本事業は皆さまからのご支援と
ジャパン・プラットフォームの助成を
受けて実施しています。



(執筆:エチオピア事業 現地事業統括:辻本俊平)


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Posted by ADRA Japan at 10:37 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(8/16) エチオピア見聞録。「エチオピア人」の共存は難しい? [2021年08月16日(Mon)]


みなさん。こんにちは。
エチオピア駐在員の辻本です。




最近エチオピアでは選挙があり、
治安悪化が心配されたため、
選挙の熱が落ち着くまで、
私は首都のアディスアベバに
いました。


幸い大きな事件は起こらず
良かったです。




今回はエチオピアの歴史や多様性
について私が見聞きしたことを
少し綴りたく思います。




首都のアディスアベバでは
大きな博物館がたくさんあります。


中でもアディスアベバ博物館と
民族学博物館で展示されている
エチオピアの戦争の歴史が
興味深いです。



エチオピア1.JPG


(民族学博物館。
アディスアベバ大学内にある。)



エチオピアは2回イタリアと戦争を
しています。


1回目は19世紀後半のことです。


これは第一次エチオピア戦争と
呼ばれます。


当時、他のヨーロッパ諸国と同じ
ように植民地主義政策をとっていた
イタリアはエチオピアを植民地に
するために侵攻します。


しかし、エチオピア皇帝率いる
大軍の抵抗により失敗に終わります。




エチオピア勝利の決定打となったのが
アドワの戦いと呼ばれます。


博物館にはその当時のエチオピア兵士
の服装、武器、戦闘の様子を描いた
絵画などが飾られています。


アドワの戦いの勝利はエチオピア人の
誇りであることが感じられました。



エチオピア2.JPG


(アディスアベバ博物館に
展示されているアドワの戦いの絵画)



エチオピア3.JPG


(民族学博物館に展示されている
アドワの戦いの絵画)




両方の絵画には中央上に聖人ジョージ
が描かれており、神の加護があった
ことが示唆されています。


右側のイタリア兵はみんな同じ顔ですが、
左側のエチオピア兵の顔は少しずつ
違っているのが興味深いです。




イタリアとの二回目の戦争は
1935年のことです。


イタリアはムッソリーニ独裁政権下
でした。


この時はイタリアの軍事技術が勝り、
皇帝はイギリスに亡命しました。


イタリアは全土占領を宣言しますが、
皆さんもご存じの通りイタリアは
第二次世界大戦で負けるので、
エチオピア占領は短くして終わります。


こういったことから、エチオピアは
アフリカで唯一植民地化されなかった
国とも呼ばれています。




エチオピアにはこのように国家と
しての歴史があります。


しかし、エチオピアには別の側面も
あります。


それは、エチオピアは様々な人々で
できた国家だということです。


エチオピアには80を超える民族が
存在しています。


宗教も、キリスト教
(エチオピア正教、カトリック、
プロテスタントなど)、
イスラム教、ユダヤ教、土着信仰
などがあります。


言語も複数存在し、
ADRAのスタッフでも
4、5言語話せる人がいます。




こういった多様性は、
残念ながら根深い民族問題に
発展することがあります。


読者の皆さんも
ニュースでご覧になったことが
あるかもしれませんが、
ティグレイ紛争もその一つです。


エチオピアは、
周辺国から約78万人
(2021年6月30日UNHCR)
の難民を受け入れている一方、


逆に難民を出す側になることが
あるのも事実です。




ADRAの事業地である
ガンベラ州でも民族対立構造は
あります。


今は比較的治安が安定している
方ですが、過去には大きな事件が
起きたこともありました。


(※ADRAは常に治安状況に
注意を払いながら事業を
進めています。)



4.JPG


(アディスアベバ博物館がある高台から。)




現地スタッフは


「エチオピアの子どもたちは
エチオピア人としてではなく、
それぞれの民族アイデンティティを
与えられ育っていく。
対立は終わらない」


と、残念そうに話していました。


また、どこの民族出身なのかは
選挙でも重要なポイントに
なるようです。


まだまだ表面的ではありますが、
エチオピア人について、
考えさせられる機会となり、


事業の管理や駐在生活を通じ、
エチオピアの人々について
もっともっと知りたいと
思うようになりました。




このような国内事情がある
エチオピアでADRAは
南スーダン難民支援の事業を
行っており、たくさんの
エチオピアの人々の協力によって
成り立っています。


ADRAはエチオピア国内の
民族対立に配慮しつつ、
クレ難民キャンプでの
南スーダン難民支援活動を
継続していきます。




今後とも皆さまからの
温かいご支援を
よろしくお願いします。


最後まで読んで頂き
ありがとうございました。



*本事業は皆さまからのご支援と
ジャパン・プラットフォームの
助成を受けて実施しています。


(エチオピア事業 駐在員 辻本峻平)


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Posted by ADRA Japan at 09:44 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(6/22) 南スーダン便りvol.90 難民が難民でなくなる日は来るのか [2021年06月22日(Tue)]


皆さん、こんにちは。
現在エチオピア事業で
現地担当をしています辻本です。


一昨日の6月20日は
世界難民の日でした。

今回は、難民について
少々文章をつづることが
できればと思います。



世界難民の日は、
難民支援や保護について
世界的な関心を高め、
国連機関やNGOの活動への理解を
深めてもらえる日にするために、
2000年12月4日に国連総会で決議されました。

エチオピアのクレ難民キャンプで
南スーダン難民支援事業を続けている
ADRA Japanとしても
是非この機会を活用し、
情報発信したく思います。

本稿では難民の人が
難民でなくなる日は来るのか
について
考えられればと思います。



難民の解決策は
大きく分けて3つあります。
これを難民支援の業界用語で
”Durable Solutions”
(デュラブル・ソリューション; 恒久的な解決)
と言われます。



1つ目は自分の国に
帰還することです。

2つ目は難民として
避難している国の
国民として定住することです。

3つ目は別の国に
移住すること、
つまり第三国定住です。



第三国定住は
大抵欧米圏を指し、
難民の経済力や文化が
大きく違う国で暮らすことなど
ハードルが高いので、
3番の難民は少ないのが
現状と思います。


それでは、
1はどうでしょうか。
自分の国に帰るということは、
大前提として、難民となった原因が
解消されている必要があります。


例えば、
クレ難民キャンプの難民であれば、
南スーダンの紛争が
終わっていることが
前提となります。


しかし、
紛争は武装勢力が
平和条約にサインをして終わるほど
簡単なものではありません。

紛争の根本原因が
解決されている
必要があります。


南スーダンを例にとれば、
部族対立の構造が色濃く、
まだお互いが
平和的に共存できているとは
決して言えません。


また紛争から逃げてきた
難民のいた土地や
住んでいた家が、
そのまま残っている
とも限りません。

敵対関係にあった
人々が住み着き、
さらに問題は
深まってしまうケースもあります。


そんな中、
平和条約が結ばれたから、
南スーダンに安心して
帰還するという人は
ほとんどいない
と思われます。



写真1.jpg


[衛生啓発活動に協力してくれている難民]



1つ目の
自国への帰還が難しいのであれば、
他のDurable Solutionは
2の避難国で定住
ということになります。


まず、
第一にこれが現実的かどうかは
受入先国の政府の政策によります。


ちなみにエチオピア政府は、
現在、難民に対して
統合政策の方針を
とっています。


しかし、
いくら隣国といえども、
社会のルール、言語、
経済力、民族の違いなど
課題は沢山あります。


こうした点を考慮せずに、
難民を市民として
受け入れた場合、

地元コミュニティとの
軋轢(あつれき)、
治安悪化、経済格差、
差別の問題などが
発生するリスクがあります。


現在、
クレ難民キャンプ内では
エチオピア政府の難民担当機関
(Agency for Refugee & Returnee Affairs:ARRA)
が5つの学校を管理しています。


教育を通じ、
徐々に受入国に慣れていく
という方法はあります。


しかし、
教育は長期的な効果を
期待する分野であり、
数値化も難しいため、
短期的なロードマップとしては
明示しにくい難しさがあります。


また、
難民キャンプは
市街地から離れた
国境近くにあることが多く、
教員不足も課題の一つです。


難民の言語が使える
先生となれば
なおさらのことです。


これはクレ難民キャンプも
例外ではありません。



ここまで3つの解決策を
大きな枠組みとして
記してみましたが、
どれも課題があることが
ご理解いただけたかと思います。


では、難民が難民でなくなる日は
いつ来るのでしょうか。


残念ながら、先行きは不透明です。


現在、ほとんどの難民は
シリア、ベネズエラ、
アフガニスタン、
南スーダン、ミャンマー、
パレスチナなどの出身で、

ざっくりとではありますが、
上記のような理由から、
難民キャンプが
長期化していると
いっていいと思います。





写真3.jpg


[クレ難民キャンプ内の食料配給所]




難民キャンプとは
そもそも緊急対応のために
設置されるものですが、
もはや「キャンプ」は
学校、水場、床屋、トイレ、
電気製品店
(もちろんとても小さいですが)
や教会があり、
「町」のようになっています。


しかし、
同時に難民キャンプを
運営しているのが
難民自身ではなく、
受け入れ国政府、
国連機関やNGOであることも
事実です。


こうした
外部の支援組織によって、
難民キャンプの全体的な管理、
食糧配給や診療所などが
運営されています。


そうした中、
ADRAはクレ難民キャンプで
水衛生分野を担っています。

避難生活の長期化に伴い、
国連やNGOは
難民の自立支援に向け
試行錯誤しますが、
支援されることが
常態化している難民との関係から、
自立を促すことは
一筋縄ではいきません。


例えばADRAの事業では、
難民のトイレ建設への
参加を促進していますが、
支援される側
という意識が定着し、
あまり参加したくない
という難民も
中にはいます。


難民キャンプでの生活が
長期化する一方、
新しくやってくる
難民もいます。


難民支援は
新規難民への緊急支援と
既存難民の自立支援の
2つの側面があります。

その中で、
我々NGOや国連機関は、
難民の生活レベルの維持と
将来の難民の自立、
この両面を
考えていく必要があります。





写真2.jpg


[新規難民用のUNHCR仮設テント]




長文になりましたが、
ここまで読んでくださり、
誠にありがとうございました。


上記に記した難民問題は
アカデミックな議論でも
よく取り扱われています。


Durable Solutionの
専門家ではない私が、
限られた知識から
記したものなので、
正確ではない部分も
あるかと思いますが、
難民問題の複雑さと、
適切な支援を
考えていくことの大切さを伝えたく、
記事を書かせていただきました。


世界難民の日という節目に、
このブログを通して、
読者の皆さまが難民について
考えるきっかけに
なっていただければ幸いです。


これからもADRAは
難民問題の複雑さを
考慮しながら
適切な支援を考え、
クレ難キャンプでの
南スーダン難民支援活動を
継続していきます。


今後とも皆さまからの温かいご支援を
よろしくお願いします。



*本事業は皆さまからのご支援と
ジャパン・プラットフォームの
助成を受けて実施しています。


(エチオピア事業 駐在員 辻本峻平)



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Posted by ADRA Japan at 18:17 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(6/15) 南スーダン便りvol.89 クレ難民キャンプでの新しい取り組み [2021年06月15日(Tue)]


こんにちは
エチオピア駐在員の羽鳥です。

エチオピアでは5月後半から
雨季が始まりました。
時折、ゲリラ豪雨のような
激しい雨が降っています。

本日は昨年9月から始まった
南スーダン難民支援事業の進捗を
報告します。


ADRA Japanは
エチオピア西部のガンベラ州にある
クレ難民キャンプにてトイレ建設と
衛生啓発活動を行っています。




写真@.JPG

<クレ難民キャンプ内の住居>



昨年は新型コロナウイルス感染症の
影響もあり、事業はいつもより
遅れてスタートしました。


エチオピアでは事業開始時に
関係機関から事業実施許可を
取得する必要があります。

しかし、コロナ禍で政府機関等が
在宅勤務になり、事業実施許可取得に
時間を要しました。


現在は約20名の現場スタッフとともに、
これまでの遅れを取り戻すために
スピードアップして事業に取り組んでいます。


ADRA Japanは2014年より
ガンベラ州で活動してきましたが、
現在行っている新しい取り組みについて
紹介します。


@トイレのデザインの変更
過去の事業ではトイレ壁に
トタンを使用してきました。

しかし、難民キャンプでは
金属のような価値のあるもの・
売れるものは盗難のリスクが
あります。

そこで、昨年から今年にかけては
壁の下の部分は
コンクリートブロック、
上の部分は
竹を使用することにしました。


これにより、
もし竹の部分が一部壊れても、
トイレを使用している住民自身が
竹をとってきて修理できます。

難民の人々は木材や土を使って
自分たちで家を作っているので、
竹で作られたトイレの壁を
修理するのはお手の物です。





写真A.JPG

<建設中の世帯別トイレ>


Aコロナ禍の活動
昨年よりエチオピアでも
新型コロナウイルス感染症が
拡大しています。

クレ難民キャンプでも
十数人の感染者が出ています。


コロナ禍初期から、
私たちも難民キャンプ内で
新型コロナウイルス感染症対策の
啓発活動を行い、

感染した場合の症状の特徴、
その予防対策、

感染しているかもしれないと
思ったらどうすればいいか、

などを難民キャンプの人たちに
伝えました。



また、これまでやっていた
手洗いキャンペーンの頻度と
場所を拡充しました。


難民のほとんどは手指消毒液を買う
経済的余裕がありません。

そのため、効果的な
日々の手洗いを推奨しています。


また、クレ難民キャンプには、
難民で構成されている水衛委員会
という組織があり、
難民キャンプ内で
衛生啓発活動をしています。


しかし、コロナ禍に対する
エチオピア政府の方針により
集会は禁止されているため、
衛生に関する研修の実施が
難しくなりました。


そのため、参加予定であった
水衛生委員会のメンバーに
難民キャンプ内の衛生状況を聞いて
ニーズを把握し、
研修の代わりに資料を配布しました。


水衛生委員会は
ADRAスタッフといつでも
連絡できる状況なので、

活動の中で生じた疑問や
課題については個別に
対応しています。


そして、クレ難民キャンプには
5つの小学校がありますが、

手洗い場がないため、
コロナ禍への対策として、
今後、手洗い場設置の支援を
予定しています。




写真B.jpg

<手洗いキャンペーンの様子。以前は人が密集していたが、現在は間隔をあけて実施している。>



B新たな難民の受け入れ対応
南スーダン難民がエチオピアに
着いたら、まず国境の
エントリーポイントで
2週間の自主隔離を行い、

その後、
複数ある難民キャンプの中から
指定されたキャンプに移動します。


しかし、半年以上、
難民キャンプへの移動が
行われておらず、
エントリーポイントに難民が
多く滞在している状況でした。


2021年4月、
数千人の難民が各難民キャンプに
移動し、私たちが活動する
クレ難民キャンプでも約1,000名の
新たな難民が到着しました。


新型コロナウイルス感染症を含む
感染症の予防は、難民の人たちが
難民キャンプに到着したときが
一番大事です。


すぐに衛生啓発活動を実施し、
難民キャンプ内での感染症感染の
リスクを下げることに努めました。


今後は、新たに到着した難民が
衛生的な生活基盤を
整えていくうえで、

公共トイレや世帯別トイレも
必要になるため、設置を
継続していく予定です。


世の中の状況が
変わるのと同じように、
難民キャンプの中の状況も
日々変化しています。


難民キャンプの外の物価が
上がるのに連動して
難民キャンプ内の物価や、
難民キャンプで働いている難民の
賃金も変化します。


最近エチオピア全土で起こった
ガソリンやセメント不足も、
難民キャンプ内の活動に
影響を及ぼしました。


そして、難民キャンプ内は
人口が密集しているので、
新型コロナウイルス、コレラ、
マラリアといった感染症が
急速に拡大するリスクもあります。


これからもADRAは状況に合わせて、
柔軟に支援活動を継続していきます。

今後とも皆さまからの
温かいご支援をよろしくお願いします。


*本事業は皆さまからのご支援とジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。

(エチオピア駐在 羽鳥)




=================
Yahoo!ネット募金にて支援金を募っています!
IMG_0337.JPG


2021年6月15日現在、
手洗い場2基分の資金が
集まっています!

お手持ちのTポイントでも
寄付ができます。

只今の達成率48%です。
ぜひ応援していただけましたら
大変大きな支えとなります。

よろしくお願いいたします。

Yahoo!ネット募金はこちらから
https://donation.yahoo.co.jp/detail/5186007
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Posted by ADRA Japan at 08:00 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(3/30) 南スーダン便りvol.88 クレ難民キャンプでのトイレの作り方 [2021年03月30日(Tue)]


こんにちは。エチオピア駐在員の羽鳥です。

ADRA Japanはエチオピアに住む南スーダン難民への支援を行っています。

南スーダンとの国境にあるガンベラ州のクレ難民キャンプで、各世帯用のトイレの建設と衛生啓発活動を行っています。

2014年から続けているこの事業ですが、2020年度はエチオピア政府やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からの活動許可の取得に時間がかかり、年明けから本格的な活動を開始しています。

ガンベラ州には7つの難民キャンプがありますが、難民キャンプでは下水道が整備されていません。

そのため、もちろんトイレは水洗式ではなく、ピットラトリンと呼ばれる簡易式トイレを作っています。




写真@クレ難民キャンプ.JPG

[クレ難民キャンプの風景]




今回は、事業の進捗とトイレのつくり方を紹介します。



まず、トイレの穴を掘ります。直径は80p、深さは2.5mのサイズが基準になります。

この作業は、トイレを使用する難民自身で行ってもらいます。

作業に参加し、自分で使うトイレを自分で作ることで、完成後のトイレをより大切に使うようになるからです。

実際に、過去にはトイレを引き渡したあとにトイレを解体して資材を売ったり、ほかの用途に使ったりする人がいました。

自ら建設に携わったトイレに愛着を持ってもらい、長く大切に使ってもらえるように工夫をしています。




写真A穴掘り.jpg

[穴掘りの様子。ここから2.5mの深さまで掘ります]



次に、完成したトイレ穴にスラブ(穴の開いたコンクリート製の円形の板)を置きます。

これがトイレの土台となります。

この土台に合わせてトイレを囲う壁を作ります。さらに屋根とドアを設置して完成します。

これまで、事業で設置する世帯別トイレの壁には鉄製のトタンを使用していましたが、今回の事業ではコンクリートブロックと竹を使用することになりました。

鉄製のトタンは市場価値が高く、転売や窃盗されてしまうリスクがありました。

また、竹を使用することで、トイレが損傷したときに自分たちで壁の一部を取り換えたり、修理することができる利点もあります。

完成のタイミングで、施錠のための南京錠、清掃用のブラシ、手洗い用の水をためるポリタンクと石鹸も配布しています。

こういった道具を配布することも、安全に、清潔に、できるだけ長く使われるようにする取り組みのひとつです。




写真BスラブJPF8.JPG

[コンクリート製のスラブを乾かしています(写真は前事業のもの)
これで掘削した穴を覆います。]




スラブの製作や壁・屋根の建設は難民を雇用して行います。

難民としてエチオピアに移住する前に、南スーダンで建設業などの経験がある人を雇います。

建設作業の経験をさらに積むことができ、収入にもなります。



ガンベラの難民キャンプではこのように、援助団体からの仕事を請け負っている難民が多数います。

医療や教育といった知識や経験を生かしている人、警備員や荷下ろしなどの労働をする人、事務作業を行う人もいます。

また、難民キャンプの近くに住むエチオピア人で、難民キャンプ内の援助団体の職員として働く人もいます。

ADRAの事業で働いている難民の人たちは、建設作業員のほかに、衛生啓発員、コミュニティ動員者、清掃員、警備員などがいます。

ADRA はこうした人々に対し、定期的に研修を行い、基本的な知識の確認やアップデートを行っています。



2月から、現地ではトイレの穴掘りとスラブの製造を本格的に開始しました。

受益者の人々は、研修を受けたコミュニティ動員者の指導・サポートのもとで、安全に配慮しながら作業を進めています。

トイレ穴の大きさの指導はもちろん、掘削中の穴に人や家畜が落ちないように対策をしたり、児童労働が起こらないように確認したりと様々な面からサポートしています。



このトイレ穴を掘る作業は1週間から2週間かかります。

ガンベラの気温は年間を通して高く、35度から40度になります。

その中で作業することは大変ですが、受益者やスタッフの体調にも気を遣いながら活動していきます。




写真4完成予想.jpg

[完成予定のトイレの外観です。(写真はガンベラ州内の他キャンプのもの)]


これから、スラブの設置、そして壁や天井の設置を行っていきます。

安全に、受益者と協力して、スタッフ一同活動してまいります。

引き続き、皆さまの温かい応援をよろしくお願いいたします。

*本事業は皆様からのご支援とジャパン・プラットフォームの助成金で実施しています。

(執筆:エチオピア事業担当 羽鳥憲伍)



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Posted by ADRA Japan at 17:43 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(2/3) 南スーダン便りvol.87 クレ難民キャンプの難民自身による公衆衛生活動 [2021年02月03日(Wed)]


こんにちは。

エチオピア事業を担当している羽鳥です。

ADRA Japanでは、9月よりエチオピア西部のガンベラ州にあるクレ難民キャンプで水・衛生分野のプロジェクトを実施しています。

ガンベラ州には7つの難民キャンプがあり、約36万人の南スーダン難民が暮らしています。



クレ難民キャンプは、南スーダンとの国境から車で1時間ほどの場所にあります。

南スーダンで内戦が激化し、多くの難民がガンベラに流入した2014年に設立されました。

現在、約4万5000人の難民が暮らしています。

難民キャンプはとても広く、キャンプの入り口から奥までは徒歩で1時間ほどかかります。

そのため、普段、私たち支援団体は車で移動しています。



2camp_view.jpg

[クレ難民キャンプの様子]




クレ難民キャンプには6つの幼稚園、5つの小学校、そして中学校がひとつあります。

また、診療所が2か所、水汲み場は50か所あります。

ここの難民キャンプでは国際機関やNGOなど27の援助団体が各分野の支援活動を行っています。

上述の教育、保健・医療、給水もこれらの団体によって支援されているほか、シェルター(住居支援)、生計支援・職業訓練、障害者支援や高齢者支援、心理的ケアなどを行う団体もあります。



私たちADRAは、水・衛生の分野で衛生啓発とトイレの建設を行っています。

難民キャンプは人口密度が高く、衛生環境も悪いため、感染症が発生するとすぐに拡大してしまいます。

そのため、ひとりひとりが衛生面に配慮して生活することが大切になってきます。



しかし、難民の中には、南スーダンの農村から避難してきた人たちが多くいます。

そういう人たちにはトイレを使う習慣がない人や、トイレの後や食事の前に手を洗わない人が含まれます。

ADRAは衛生知識の普及と実践による習慣化を通して難民キャンプの衛生環境を向上させることを目標に事業を実施しています。



慢性的なトイレの不足は難民キャンプの抱える課題のひとつです。

トイレが家にないため、そこに住む人たちは屋外で用を足します。衛生的ではなく、特に夜間は危険が伴います。

ADRAでは、このような状況を改善するために、トイレの建設を行っています。




4irosheet_HHL.jpg

[過去にADRAが作ったトイレ]




これまで、ADRAでは金属製のトタンを壁に使ってトイレを建設していました。

しかし、数年前よりこのトタンの窃盗が事業地周辺で頻発しています。

盗まれたトタンは売られたり、家などの建物の建設に使用されているようです。



そこで、今年の事業より木や竹などの素材を使ったものに変更することにしました。

これによって窃盗被害の防止だけではない効果が期待できます。

それは、自然素材を使うことで難民が自分たちで修繕できるようになることです。

難民キャンプに住む人の多くは、木や土を使用して自分で家を建てます。

家を囲う塀や家畜小屋を作ってしまう人もいます。

そういう人たちであれば、木や竹を使ったトイレを修理することは難しくありません。



また、難民はトイレをただもらうのではなく、建設の段階からトイレの穴掘りや修繕作業に関わります。

これによってトイレは自分たちのものという当事者意識が育まれ、トイレをより大切に扱うようになることを期待しています。



また衛生啓発の分野では、難民から選出した91名の衛生啓発員に研修を実施し、衛生啓発員が主体となって衛生啓発活動を実施しています。




3hygiene_proomoter.JPG

[手洗いキャンペーンを実施する衛生啓発員]




難民の自立は、エチオピア政府の掲げる目標のひとつです。

長年、エチオピア政府は難民を帰還させる方針を取ってきましたが、2017年11月から包括的難民支援枠組み(CRRF)に参加し、2019年1月には難民法が成立し、難民の出生証明、教育や就労機会の権利を与えるなど政策を転換しました。

そのため、支援団体が実施している難民のための活動には主体的・積極的な参加を求めています。



また、難民キャンプ開設から6年が過ぎ、国際社会からの注目や支援は減ってきています。

南スーダンに帰還することのできない難民にとって、自分たちの手で自分たちの生活を作ることはますます重要になってきています。

現地で活動する団体の事業内容を見ても、難民が生計を立てられるように職業訓練を実施したり、難民キャンプの中でできる家庭菜園の指導を行ったりと、難民の自立を目指したものが増えています。



現在実施しているエチオピア事業は今年4月までを予定しています。

本事業を通じて、難民の人々と寄り添いながら支援活動をしていきます。

今後もご支援、ご協力をよろしくお願いします。



*本事業は皆様からのご支援とジャパン・プラットフォームの助成金で実施しています。

(執筆:エチオピア事業担当 羽鳥憲伍)



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Posted by ADRA Japan at 11:15 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
(12/24) 南スーダン便りvol.86 エチオピア首都アディスアベバの生活 [2020年12月24日(Thu)]


こんにちは。エチオピア駐在員の羽鳥です。



報道でご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、11月よりエチオピア国内で戦闘が発生しています。

ADRA Japanの駐在員と現地の事業スタッフは全員無事です。

関係機関と情報を共有し、今後も安全第一で事業を実施してまいります。



今回は事業地ではなく、エチオピアの首都アディスアベバの生活について紹介します。



ADRA Japanは南スーダンとの国境に近いガンベラで難民支援事業を実施しています。

エチオピアでは今年3月に最初の新型コロナウイルスの感染者が確認されました。

そして4月から9月までの期間に非常事態宣言が発令され、学校の閉鎖や集会の禁止、公共交通機関の規制が強化されました。



私も事業地であるガンベラに住んでいたのですが、6月からは首都のアディスアベバへ移動し、基本的には遠隔勤務という形でガンベラのスタッフとやり取りを通して業務を進めてきました。



アディスアベバにはエチオピアに住む約1億人のうち480万人が暮らしています。

アフリカでも有数の大都市で、アフリカ連合の本部も設置されています。

事業地であるガンベラは地方の農村地帯にあり、その生活は天と地ほど違います。



写真3.jpeg


[ADRAエチオピアの事務所からの風景。周辺には建設途中のビルが多くある]



エチオピアの中でアディスアベバにしかないもののひとつが、食事のデリバリーサービスです。



「Deliver Addis」というウェブサイトが運営されており、そこにエチオピア料理はもちろん、イタリアン、ハンバーガー、中華料理、韓国料理、インド料理、パン屋さん、そして日本食まで様々なジャンルの150近い飲食店が加盟しています。



コロナ禍で外出を最小限にしなければならず、ホテルで暮らしていたため自炊もできなかった私にとっては本当にありがたいサービスでした。

利用者は多いようで、昼食時や夕食時には注文の受付をストップすることもあります。



エチオピアは1941年までイタリアに占領されていました。

そのせいか、国内のいたるところでパスタやピザが食べられます。

どちらも作りたてがおいしい料理なので、コロナが落ち着いたら、また食べに行きたいと思います。



写真1.jpeg


[ある日のデリバリーで注文した食事。ビビンバと韓国風すし。
2品と配送料で約1700円。
現地の食事が300円以下で食べられることを考えると高級です]



食事のデリバリーのほかに、ここ数年で台頭してきたのが配車サービスです。

Uberはエチオピアには進出していないのですが、類似のサービスが利用できます。

RIDE、Zay Ride, Feres, Taxiye, Pick Pickなど、雨後の筍のように多くの業者が現れており、いずれもスマホのアプリでサービスを提供しています。



これまで、タクシーを利用するときは目的地を説明して、さらに乗車前に価格交渉をする必要がありました。

目的地を説明するのが難しかったり価格の相場もわからなかったりする外国人にとっては、配車サービスによってアディスアベバ市内の移動が格段に楽になりました。



また従来のタクシーよりも安価で、これまでの半額程度で移動できることもあります。

ただ、従来のタクシードライバーからは価格競争や顧客の奪い合いがおこるので、評判はあまりよくないようです。



写真2.jpeg


[アディスアベバのいたるところにある配車サービスの看板]



さらに、エチオピア唯一の通信会社のエチオテレコムが近いうちにモバイルマネーを開始する計画があるなど、ますます発展して便利になっていくエチオピアに注目です。



その一方で、エチオピアでは頻繁に政府によるインターネットの規制が起こります。

今年も6月末から7月にかけて3週間にもわたるインターネットの遮断がありました。

また停電も頻発しています。



上記のデリバリーサービスはインターネット遮断中も電話やSNSで注文を受け付けていましたが、業者にとってもネットや電気の安定は懸念事項です。



2015年に市内を走るアディスアベバ・ライトレールという電車が開業し、また多くの高層ビルが建設されています。

数年後にはウェブサービスの利便性はもちろん、街の様子も大きく変わっているかもしれません。

今後ともみなさまのご支援をよろしくお願いたします。


(執筆:エチオピア事業担当 羽鳥憲伍)



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Posted by ADRA Japan at 09:04 | 南スーダン便り | この記事のURL | コメント(0)
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