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(4/7) ジンバブエ便りVol.46.〜ジンバブエの経済政策に翻弄される人々〜 [2020年04月07日(Tue)]


国に現金がない。

日本にいるとなかなか想像がつきませんが、その現実は深刻です。

街中では当然のことながら、空港においても、両替はどの通貨からもできません。

ジンバブエで流通している現金であるボンドノートが手に入らないとなると、一般的に支払いに利用されている電子マネー、Eco cashなどを購入する必要がありますが、そのためには携帯電話のシムの購入が必要です。

シムの購入に使える通貨はボンドまたは暫定通貨RTGSドルのみ。

シムを購入するための通貨が手に入れられません。

ツテや知り合いがいない人は、見知らぬ誰かにシムを購入してもらうなり、ボンドノートを恵んでもらうなりしない限り、ジンバブエでの生活をスタートできません。

2009年には100兆ジンバブエ・ドルが発行されるほどのハイパーインフレーションに陥り、その後、米ドルが流通して落ち着いていたジンバブエで何が起こっているのでしょうか。



複数基軸通貨制(複数外貨制)



2009年、ハイパーインフレーションが起こったジンバブエ・ドルの発行が停止され、米ドルと南アフリカ・ランドが法定通貨として導入されました。



ADRA_Zimbabwe 01.jpg

[かつて使用されていたジンバブエ・ドル札]



その後、2015年、ジンバブエ・ドルが公式に廃止され、米ドル、南アフリカ・ランドに加え、新たに日本円、中国元、豪ドル、インド・ルピーが法定通貨として導入されました。

翌2016年、さらにユーロ、英ポンド、ボツワナ・プラを加えた9通貨が法定通貨として採用されました。

一時、かつてのハイパーインフレーションは解消されましたが、2004年以降続いていた貿易赤字や米ドル高と相まって、米ドル現金不足の原因の一つとなっています。



ボンドノートとRTGSドルの導入



2016年11月、米ドルの現金不足を補うため、米ドルと等価交換されるボンドノートが導入されました。

ボンドノートは2ドル紙幣と5ドル紙幣の2種類で、ジンバブエ国内でのみ使用可能、国際取引には利用できません。



ADRA_Zimbabwe 02.jpg

[ボンドノートの2ドル紙幣と5ドル紙幣]



2019年2月には、十分な外貨準備がない中、ジンバブエ中央銀行が暫定通貨RTGSドルを導入し、さらに同年6月には暫定通貨RTGSドルを唯一の法定通貨に指定し、米ドルなど外国通貨の法定通貨としての利用を禁止しました。

RTGSは即時グロス決済(Real time gross settlement)の略で、現在、支払いの多くはRTGSドルで行われています。

RTGSドルは2ドルと5ドルの紙幣(ボンドノート)があり、それ以外は電子マネーの運用となっています。

電子マネーは会社によりEco cash、Tele cash、OneMoneyなどありますが、90%以上の国民がEco cashを利用しています。

今の日本に置き換えてみると分かりやすいかもしれません。


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現金_電子マネーの図.png

ADRA_Zimbabwe 03.jpg

[買い物はEco cashが最も一般的。レジ前に振込先の携帯電話番号が記載されており、携帯電話を使ってEco cashを通してその場で送金する。]



米ドルの利用は法的に禁止されましたが、大使館やNGOの利用は、現在のところ例外的に許可されています。

つまり、現在実際に使われている通貨は、RTGSドル、米ドルになり、支払い方法としては、現金(ボンドノート)や電子マネーの他、銀行送金やデビットカード等が可能です。



ADRA_Zimbabwe 04.jpg

[米ドルの取引は一般的には違法のため、米ドルが使えない店も多い]



ボンドノート(Bond)、RTGSドル(RTGS)、米ドル(USD)



2016年11月にボンドノートが導入されたときには米ドルと等価、1 USD = 1 bondでした。

また、RTGSドルが導入された2019年2月には、1 USD = 2.5 RTGSと設定されました。

それが、2020年4月2日現在、おおよそ1 USD = 28 bond= 37 RTGSにまでボンドノート、RTGSドルの価値が下落し、通貨の序列はUSD > bond > RTGSとなっています。

多くの支払いがRTGSドルで行われている一方、商品の価格の多くは米ドル建ての価格設定となっています。

中央銀行の公式レートは発表されていますが、実際のレート設定は店舗によって様々であり、物品やサービスを購入する客は、あくまで店の言い値を支払うのみです。

通常、現金での支払いは電子マネーでの支払いよりお得です。

電子マネーでの支払いも、どの会社の電子マネーで支払うのかにより、レートは変わってきます。

また、米ドル現金での支払いが通常一番安いですが、法的には米ドルの利用は禁止されているため、店舗によってはRTGSドルでの支払いよりもレートを高く設定してくる場合もあります。



銀行と現金



一般的に、銀行口座のボンドノートの引き出し、銀行口座への入金をすることはできますが、ボンドノートの引き出しは一人当たり1日100ボンドまで、1週間で300ボンドまでと制限があります。

一方で、銀行口座から米ドル現金を引き出せるのは大使館、国連機関、NGOおよびそのスタッフのみであり、例えばADRA Zimbabweでは約10事業が稼働しているにも関わらず、引き出し額は合計で1日10,000 USDまでと制限があります。

また、スタッフの1日あたりの引き出し可能額は、1,000 USDのみとなります。

事業内のみならず、事業間でも業者への支払い等を調整しないと、業者への支払いが滞ったり、支払いができないという事態が容易に起きてしまいます。

ADRA Japanのフィールド事務所があるチテケテには銀行がないため、銀行から現金の引き出し等を行いたいときは、車で約4時間かかる別の都市まで行く必要があります。

このように、銀行に、物理的にアクセスが容易でないことに加え、一日に引き出せる額に限度がある、銀行の信用度の下落により、多くの人が銀行にお金を預けなくなっています。



庶民の経済状況



大使館やNGO職員の給与は米ドルで支払われている場合も多いですが、国の行政職員をはじめ、多くの国民は給与をRTGSドルで受け取っています。

この1年間で40倍近く価値が下落したRTGSドルですが、国民が受け取るRTGSドル給与額はこの1年でせいぜい2倍か、ほとんど変わりません。

例えば2019年2月に500 RTGS (=200 USD)もらっていた人の給与は、1年後の現在でもせいぜい1,000 RTGS (=27 USD)です。


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インフレの例.png
        
紙幣の数は2倍になっているように見えますが、価値は1割程度になってしまっています。

一方で、物の値段はレートの変動によりRTGS額で値上がりしています。

例えばパン1斤の値段はRTGSドル額で見ると、2019年1月の2.5 RTGS (=1 USD)から1年後には37 RTGS (=1 USD)に跳ね上がっているのです。

RTGSドルでは給料は減り、物価は急激に上がっています。

米ドルベースでは変わらないのですが、米ドルにアクセスできない庶民の経済状況は非常に厳しいものとなっています。


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インフレの例02.png


別の例を挙げると、2019年11月7日に私が購入した1 GBのData bundle(インターネット通信費)は20 RTGSでした。

翌朝、価格をチェックすると、たった1日で、1.2 GBが50 RTGS、600 MBが30 RTGSと大幅にRTGS価格が変更されていました。

RTGSドルへのアクセスのみしか持たない国民にはとても残酷な状況です。

日中は電気が一切来ないゴクウェ・ノース地区。

夜、電気が来るのは10:00pm以降のため、日の入り後はどこのお店も真っ暗です。

そんな中、どんなに小さなお店でも、お菓子一つを買うのにも、携帯電話による電子マネーシステムでの送金が行われていました。

この一年で価値が暴落した電子マネーに翻弄される庶民。

そのままの形で手元に置いておいても、いつその価値がなくなるかわからないため、人々はなるべく貨幣・紙幣や電子マネーではない形、例えばヤギ等に変えて、保持するようになっています。

事業地では多くの買い物が物々交換で行われていました。

このようなインフレを引き起こしている現在の現金不足は、独立以降の脆弱なガバナンスや数々の経済政策の失敗に加え、政府役人による賄賂や汚職も大きな要因の一つです。

元々教育水準は高いジンバブエの人々が、インフレに翻弄されることなく、またしっかりと自国の産業で収入を得て生活していくことができるようになることを願わずにはいられません。



綿花.png

[ゴクウェ・ノース地区の綿花畑]



(執筆:ジンバブエ事業担当 堀真希子)



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Posted by ADRA Japan at 13:49 | ジンバブエ便り | この記事のURL