(1/21) ジンバブエ便りVol.45 〜人々の生活を圧迫するインフレと水・電力・食料の不足〜 [2020年01月21日(Tue)]
皆さん、こんにちは。 ジンバブエ事業担当の堀です。 私は普段、東京本部にて ジンバブエ事業をサポートしていますが、 2019年11月に事業視察のため、 ADRA Japanが教育支援を行っている ジンバブエのゴクウェ・ノース(Gokwe North)地区を訪問しました。 ゴクウェ・ノース地区は首都ハラレから車で7時間ほどの場所に位置します。 昨今のインフレと現金不足により 国内での両替は一切できないと聞いてはいたものの、 いざハラレの空港に降り立ち、両替所を覗いてみると、 掲示版には主要通貨のレートが示されているにもかかわらず、 USDをはじめ一切の通貨の両替ができませんでした。 国内に現金がないという事実を突きつけられました。 2019年に入り急速に進んだインフレは深刻であり、 一般市民は外国通貨が使えなくなり、 国民は2000年代に経験した超ハイパーインフレの再来を恐れています。 2019年2月に導入された暫定通過RTGSドルは、 当初米ドルと1 USD = 2.5 RTGSドルとされていましたが、 11月にはもう1 USD = 約20 RTGSドルにまで跳ね上がり、 米国通貨を取得できない人々の生活は非常に厳しくなっています。 国全体としての問題であるインフレに加え、 7-8時間車を走らせて向かった事業地、 ゴクウェ・ノース地区では、水不足、電力不足、食料不足が深刻でした。 学校建設を行っている小学校では、 資材のコンクリートに使用する水を、 近くの井戸からバケツに汲み、 徒歩で往復して運んでいました。 [バケツで近くの井戸から水を運ぶ] チリサ小学校近くのダムからは水がなくなり、 干上がった大地が横たわっています。 [干上がったダム] クシンガ小学校近くの川も干上がり、 延々と、水のない川底が見えるだけです。 住民はその川底を掘り、 わずかに染み出してくる水を バケツで汲み上げて生活用水として使用しています。 [干上がった川] [川底を掘り、染み出す水を汲む] 川が近くにないチリサでは、 村で唯一の井戸が、 約1,000世帯の住民の生活を支えていました。 半径にして約15km。 一番混んでいる夜8時頃、 井戸に水を汲みに行ったら、 水を汲んで家に帰ってこられるのは朝4時頃とのこと。 徒歩で往復3時間かかる道を、 水の入ったバケツを持って歩くか、 ロバにひいてもらわなければなりません。 [井戸に群がる住民] 井戸は手動のポンプ式で、 住民が絶え間なく水を汲み続けていました。 ジンバブエの大地の下には 石炭が多く含まれているため、 井戸水にも硫黄成分が溶け出し、 また塩分も含まれます。 それでも貴重な、唯一頼れる水源。 人々の生活がまさにこの一つの井戸にかかっていました。 [住民がポンプで絶え間なく水を汲み続けていた] この水不足の原因の一つには、 例年では雨季が始まるこの時期にも雨が降らず、 源流であるジンバブエとザンビアの国境に流れる ザンベジ川から水が供給されないということがあります。 電力が供給されるのは 基本的に夜10:00pmから朝4:00amまで。 その時間でも、 日によっては来ないことも多く、 日中は電力供給が一切ありません。 学校では小さなソーラーパネルを置いて 携帯電話を充電するなど 電力不足を賄っていますが、 決して十分ではありません。 学校へ向かう途中、 立ち寄らせてもらったスタッフの実家では、 家まで電線が引かれているにも関わらず、 「去年(2018年)の12月から電気は一度も来ていない。」 と同僚はあきらめ顔でした。 [電線が通っているが、電気は約1年来ていない] ジンバブエは電力の約70%を水力発電に頼っていますが、 ここ最近の渇水により、 水力発電による電力供給量が大幅に不足している現状があります。 ジンバブエの主食は メイズ(トウモロコシ)の粉をひいて調理したサザ (粉をお湯で練って作ったお餅のような、固いおかゆのような食べ物)。 それを鶏肉やヤギ肉の煮込みと一緒にいただきます。 ヤギ肉は臭みがなく、淡泊なサザの味と合い、とても美味しいです。 [食事の支度] [サザとヤギ肉の昼食] このサザも、以前は学校給食として 政府から各学校に支給があったものの、 食料不足により、 現在その配給は止まっており、 家から食事を持ってこられない子どもたちは 昼食が食べられません。 ADRA Zimbabweでは、 一部の学校で学校給食の提供をしています。 ランチを学校で食べられることで、 子どもたちはようやく朝と昼、 一日二食の食事が確保できます。 学校に向かう途中、 病院らしきものは一つも見当たりませんでしたが、 小さなクリニックの脇を通りました。 一般的な出産もこのクリニックで行われています。 交通手段がない地域なので、 最も遠方に住んでいる妊婦は10-15km先のクリニックまで、 臨月にもかかわらず出産のために歩く必要があります。 そのため、当然皆がクリニックまで歩いて行けるわけでもなく、 自宅で出産しようとする人も多くなってしまいますが、 政府はその危険性から家での出産は違法としています。 クリニックでできる診察は 胎児の心音チェックと血圧測定の2つのみ。 ほとんどの妊婦が出産のタイミングまで受診しません。 緊急の場合は地区の病院で 輸血等を受けることができますが、 私たちの事業地であるゴクウェ・ノース地区の面積は 7,268 ㎢と広大です。 東京都の3倍以上の面積があるこの地区で 病院は一つしかありません。 ゴクウェ・ノース地区を網羅する救急車も この病院の1台のみ。 つまりこの1台が出払ってしまったら、 病院には自力で向かうしかありません。 緊急時に、車もない中、 それほど遠方の病院にどのように向かうのか。 想像をしただけで、 この地での出産がどれほどリスクを伴い、 命がけで行うものなのか、 と考えさせられました。 果たしてこのような環境で 自分は出産しようと思えるだろうか…。 [ネニュンカ小学校の生徒たち] 生きていくために必要な 最低限の水、食料等も手に入らず、 また、経済破綻によるインフレが 人々の生活を脅かしている様を目の当たりにしました。 彼らの生活を支えるために、 今後私たちに何ができるのか、 改めて考えていきたいです。 ※この事業は外務省の日本NGO連携無償資金協力と 皆さまからの寄付金で実施しています。 (執筆:ジンバブエ事業担当 堀 真希子)※写真はすべて筆者撮影 ADRA Japanのホームページはこちらです ADRA Japanフェイスブックページ ADRA Japan Twitterアカウント |
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