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小さな村の薬草園[2013年02月03日(Sun)]


カンポット州の村の小学校が行っているユニークな取り組み


カンポット州は南シナ海につづくタイランド湾に面した小さな町。標高1,000mのボコ山脈から海にむかった河川にはマングローブの林が広がり、静かで美しい景観は、観光開発で人工的な趣となってしまったシハヌークビルやケップといった海沿いの街とは異なり、どこか大人の雰囲気が漂う。のんびりとしたバケーションを楽しむヨーロッパ人観光客に人気の高いスポットで、古くは貿易港として栄え、塩田と胡椒栽培が盛んである。東南部はベトナムと国境を接し、ベトナム戦争ではカンボジアにありながら戦火に見舞われた暗い過去を持つ。

街の中心地、国道3号線上にあるカンポット橋の袂からは、舗装されていない土色の道が北に伸びている。そこには観光者が足を踏み入れる事のない寒村地帯が広がっている。

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卒業生 クルクメール ウイ・トン村長と


今回、その沿道から3キロの場所にあるカンプン・クレイ村。この村の村長、ウイ・トンさん(46)は、現役のクルクメール(カンボジア伝統医療師)で、CaTMOが運営しているカンボジア伝統医療師研修校の卒業生。CaTHA(カンボジア伝統医療師協会)の会員でもある。この村で、ウイ・トンさんが公共の場所を使った大変ユニークな取り組みをしているとの情報がありCaTHA事務局のメンバーと共に訪問した。

ウイ・トンさんが案内してくれたは畦道を100m進んだところにある小学校。校内には緑が多く植えられ、あちらこちらにクメール語で書かれた教訓の標識が多く目に入り、教育熱心な学校の雰囲気が伺える。休日にも関わらず多くの児童がサッカーやおしゃべりに興じていた。

正門のすぐ脇には小さなサンプル農園があり、各植物にはクメール語とラテン語のパネルが添えられている。植えられているサンプルは、すべて村人が日常使っている薬草であるという。

この薬草園を発案し管理しているのはマウ・ルンさん、58歳。この小学校の校長先生である。ウイ・トンさんもマウ・ルン校長の教え子で、村のクルクメールだったウイ・トンさんの父親や、お爺さんとも旧知の仲であったという。

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マウ・ルン校長とウイ・トンさん


長く続いた内戦時代。慢性的な物資不足に陥る中でも、豊かな山林と水に囲まれた村の近くでは様々な種類の薬草が手に入り、伝統薬がこの村人の健康と命を支えた。その経験から、今も続く村の貧困に対し“薬草の知識は必ず役に立つ”という思いから、5年前より、週に一度、5・6年生の高学年を対象に校長自ら、校内や周囲の薬草や薬木を使った薬草実習を始めた。

学校の正規のカリキュラムには「農業」の授業はあるが、その内容については各学校の状況や采配に任されているという。児童にも大変好評で、教わった薬草を自分で使ってみて「あの薬草はお腹が痛いのに効くよ!」などと大人顔負けの会話をしているのだとか。また、この薬草実習は児童を介して村人にも影響をあたえた。教えられた薬草を使って長く患っていた病気が治ったと礼を言いに来た保護者もいた。

2010年初め。クルクメール・ウイ・トン村長が、保健省が主催する伝統医療師研修校の入学試験に合格した。これに併せ、小学校では、村人や海外からの支援団体から500ドルの資金を募り、学校の敷地内に薬草園を造園した。ウイ・トンさんは、研修で教わった薬草を中心にクメール名とラテン名のパネルを設置する手伝いをした。園内の一角には空心菜などの野菜も栽培し、児童たちがこの世話をしている。

マウ・ルン校長は、もうすぐ定年を迎えるが、副校長をやっている息子が、この薬草園を引き継いでくれると安心している。少々の維持費は自分達で補っているが、もし次に資金ができたら、校内の他の空き地に村人達が共有できる薬草や薬木を栽培したいと考えている。校長の夢は、この小学校の薬草園をモデルに、“全国にある学校にミニ薬草園と薬草実習が広まっていくこと”である。

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薬草園を案内してくれたウイ・トンさん


CaTHAでは、全国にいる会員のネットワークを活かした薬草栽培プログラムを計画している。開発や乱獲、さらには温暖化の影響もあって、どの森でも手に入っていた薬草が、年々入手困難となり、中には多く使われるにもかかわらず市場での値段が釣り上がっているものもある。そこで各産地の地勢にあった薬草を栽培し、会員でシェアする事により伝統医療に使われる原料の安定供給が狙いである。

しかし、自立運営していく事を考えると課題も多い。資金面において農家に栽培を依頼すれば地代や賃金がかかる。また、基本的に世話をする農業に慣れていないカンボジアの人々にとって、マニュアルがなく試行錯誤を必要とする薬草の栽培と農園の運営を誰がどのように管理するのか。また、一年の約半分は雨が全く降らない乾期である。水道設備がない地方の村で水源から水を引くには、これまた経費がかかるのである。

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児童たちと記念写真


今回の学校の薬草園には、これらの問題を解決するヒントがあった。薬草園は公共施設を活用しているため土地代はかからず、授業の一環ということもありメンテナンスに賃金はかからない。また、薬草園の管理には教養のある教師が関わる。教師は女性も多い。カンボジアの女性は責任感と連帯感に定評がある。

乾期の水の問題に関しては、この学校では大変ユニークな解決法を実践していた。児童に自宅から2リットルのペットボトルに水を1本ずつ持参するように頼むことで乾期の水不足を解決していると言う。小学校の児童は250人。これだけで500リットルのタンクを一杯にすることができるのである。

ここに研修をうけたクルクメールが専門的な薬草の知識をアドバイスする事により、児童への学校教育を通じて、村人にむけた情報共有を可能としている。もちろん、児童たちはやがて大人になり次世代に、クメールの文化である薬草の知恵を継承してくれることだろう。

もし、「村の学校を介した伝統医療モデル」で扱う薬草の効果と安全性を認める登録作業を政府(伝統医療局)が進めたとすれば、村のヘルスセンターとの連携も生まれるだろう。さらに、CaTHAや企業から薬草栽培の契約をとりつければ学校の薬草園の管理費はおろか地域の活性化に繋がる可能性もでてくる。

学校という公共施設を利用した低コストの「薬草園および薬草ファーム」という社会装置が各地で定着すれば、学校も、生徒も、村人も、クルクメールも、また、CaTHAも伝統医療局も“Win Win” であるに違いない。

小さな村で始められている取り組みであるが、地域の貧困対策を解決したいカンボジア政府をはじめ、伝統医療による地方のプライマリーヘルスケア活用を支援しているWHO(世界保健機構)、伝統医療を用いて地方の医療アクセス改善やラジオを使った遠隔教育でカンボジアを支援している日本財団、地球温暖化対策、BOPビジネス、マイクロファイナンス、等さまざまな側面からの事業になりうる可能性を秘めていると強く感じた。

来週開催されるCaTHA年次報告会の席上で、この取り組みを紹介する予定である。(CaTHA会員、保健省伝統医療局、薬剤局、医科大学薬剤研究所、農業省森林局が出席)

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