◆電磁波特集 4章
あふれる家の中の電磁波
〜家電ってどうなの?(13)
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わが家はパソコンのネット接続を有線LANにしている。
無線LAN(Wi-Fi)にすれば、あれもできる、これもできる、仕事の効率が圧倒的によくなるのは、わかっている。
でも……電磁波が怖い!
これはパソコンや家電とちがい、そもそもが電磁波を出すことを目的とする機器である。不便をがまんして、仕事の効率が悪いままにしておいたほうが、まだ、いいんじゃないか? と思って有線にこだわり続けている。
では実際のところ、無線にしたらどれくらいの害があるのか? あるいはないのか?(以下は引用)
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【無線LAN(Wi-Fi)】
携帯電話についで急速に普及が進んでいるのが無線LANだといえます。パソコンのインターネット通信はまだ有線と無線を選べますが、iPadやゲーム機など無線でしか接続できないものも増えています。スマートフォンでは従来の携帯電話の電波と無線LAN両方を利用できるようになって来ています。無線LANの電磁波は携帯電話の電磁波より出力は小さいものの、体の至近距離でばく露した場合の影響は無視できないようです。
無線LANの電磁波の有害性を指摘する研究が報告され始めました。精子への影響を調べた論文でアルゼンチンと米国の共同によるものです。健康な男性29人の精子のサンプルをとり、それぞれのサンプルを2つに分けて、一方はばく露群としてWiFiにつながったパソコンの至近距離に置き電磁波を4時間照射しながら培養しました。もうひとつはコントロール群としてパソコンなど電子機器のない別の部屋で培養しました。その後に両方の精子に生存率や運動率(動いている精子の割合)、DNAへの異常などを比較しました。精子が置かれたシャーレからノートパソコンの距離は3cmです。ノートパソコンをひざの上で使った時に精巣が照射される条件を想定しています。実際のばく露された電磁波の強さは0.5〜1.1μW/cm^2程度です。
実験の結果、運動率(運動している精子の割合)ではコントロール群が80.9%に対して、電磁波照射群は68.7%と12.2%の差がありました。またDNA切断の割合についてもコントロール群3.3%に対して電磁波照射群は8.6%と高くなっていました。
精子のDNAの切断は不妊や流産の原因、また長期的には生まれた子どもの小児がんの原因ともなりうると論文では指摘されています。ただ今回の実験は精子を外に出してシャーレの中で培養した状態で電磁波を照射した実験であり、人体の中にある精子にも同様の影響があると決断を下すのはまだできないとのことです。
ただ携帯電話と同様に無線LANの電磁波でも至近距離でぼく露した場合、人体に影響がある可能性が示されたといえます。少なくとも無線LANに接続したノートパソコンをひざに乗せて長時間使用するのはやめておいた方が良いでしょう。
ではどれくらい離せばよいのでしょうか? 無線LANはアクセスポイントと呼ばれる親機と子機に相当するパソコンの無線LANカードやスマートフォンなど端末機器の間で通信を行ないます。それぞれの無線LANの電磁波について、海外でいくつか測定されたデータが紹介されています。
先ほどの実験で精子が照射された電力密度の平均値である0.6μW/cm^2は、電界強度に直すと1.5V/m程度です。安全側に考えて1〜1.5V/m以下のばく露になるように考えてみましょう。
1V/m以下にするには、数10cm以上は離す必要があります。無線LANから出る電磁波は通信状態によっても変化します。大きなデータを送受信しているときが電磁波もより強くなります。
無線LANには国際的にいくつかの規格が設定されていますが、PCカードやiPadなどの情報端末での測定では、1802.11bという規格だけ周辺の電磁波が強くなっていました。その場合、精子のばく露を1V/m以下にするには150cm程度は離す必要があります。スイス政府はこのデータをもとに1802.11bの規格を使わないように勧告しています。他の規格の機器では周辺の電磁波はより低く、大体30cm離せば1V/m以下になります。30cmとは一尺で肘から手の先の長さなので、スマートフォンやゲーム機などでそれぐらいの距離を離すことはちょっと気をつければ簡単にできるでしょう。ノートパソコンやiPadの場合もひざに乗せて使うのではなく、机の上に乗せて使うようにすることなどで30cm離すことは可能だと思われます。
一方、コーヒーショップなどの無線LANのホットスポットなどでの電磁波はどうでしょうか?
大体70cm〜1m以上離れれば1V/m以下になるようです。通常こうしたアンテナは天井や壁の上の方に設置されているため1m以上離れるというのは無理な話ではないでしょう。問題は自分は無線LANを使わなくても、アンテナの近くの人ほど電磁波を浴びてしまうことです。
アンテナがどこにあるか確認して離れた席に座ることで不必要なばく露を減らすことができます。
スイス連邦政府の内務省公衆衛生局は、ホームページの中で無線LANを使用する場合の注意事項を勧告しています。
「現在までのところ、無線LANからの電磁波が健康へのリスクを及ぼすかどうかは不明だが、個人的ばく露をできるだけ小さくしたいという人たちには以下のような提言を勧告する」といい、以下の7点を勧告しています。
(1)無線LANは使用するときにだけスイッチを入れる。特にラップトップパソコンで無線LANを使う場合は、使わないときにはスイッチをオフにしておくことを勧める。さもないと何度もネットワークに接続を繰り返すため、不要な電磁波のばく露を受けるし、バッテリーの寿命も短くなる。
(2)無線LANに接続中のラップトップパソコンは抱え込まない。できるだけ体から離して使う。
(3)職場などでアクセスポイント(ルーターなど)を設置する際には、人々が長時間居る場所(机や休憩場所)から1m以上離すこと。
(4)アクセスポイントを職場の真ん中に設置すれば、すべての機器が良い受発信環境で作動する。
(5)LANの基準では802.11bよりも802.11gを選ぶこと。データ伝送が効率的でばく露が少なくなる。
(6)もしルーターの出力を調整できるならば、最小限になるように調整する。
(7)規格にあった専用のアンテナを使うこと。不適切なアンテナを使うと出力も過剰になる。
(植田武智、加藤やすこ『本当に怖い電磁波の話』)
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やっぱ有線LANを使い続けよっと……。
しかし。
しかし!
試しに一瞬だけパソコンをWi-Fi(無線LAN)の設定にしてみたら、
「え? Wi-Fiが……10コ!?」
接続可能なネットワークが10コ表示されてるぞ。これはいったい……。
同じアパートの住人さんのだああぁ!
つねにこの10コのWi-Fiの電磁波にわたしの体は貫かれているのね……。まあ1メートルは距離をとれてるだろうけど、いや、でもカベのすぐ向こうがWi-Fiルーターってことも……。
みなさん、ネット使わない夜中とか、Wi-Fiの電源切るようにしませんか。公害だし自分と家族にも良くないです。
(つづく)
◆ 編集後記
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お笑いコンビのメイプル超合金のネタで
「ここWi-Fi飛んでんな」
「見えんのかーい」
というのがあるが、笑いごとじゃなーい