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松井 二郎
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最終兵器! すごいよフラジール [2014年04月10日(Thu)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(76)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 2013年6月(治療開始から3年1ヵ月)。

 いつもどおり漢方薬をいただくため松本先生にお電話すると、
「松井さん、ガスは出ない? それもすごい悪臭のガスがいっぱい出ない?」
 唐突におっしゃった。
 えっ?
「それほど悪臭ではないですが、ガスはものすごく出ます」
「うん、そしたらね、フラジールっていう抗生物質があるんやけど、これを飲んでみてほしいのや。で、1週間したらどうなったか電話してや〜」
「あ、はい、わかりました」

 詳しいことをお聞きしたかったが、お電話したのは日曜日、この日しか松本医院に行けない人や電話できない人がいるうえに半ドンなので、ただでさえ忙しい先生はいつにもましてお忙しそうで、そこで電話が切れてしまった。
 でも、話の流れからして、これって……オナラを改善できるかもしれないってことだよね!?
 だとしたら、これはうれしい。かな〜り、うれしい。
 クローン病になってからというもの、私のおなかはガスタンクなのだ。

 体重44キロの私は、棒切れのようにやせてガリガリだが、おなかだけは中年オヤジのように立派にふくらんでいる。原因はガスである。いつもパンパンに張っている。このオナラがたまるのも、クローン病の合併症とされているのである。
 それでも、たまったガスがオナラとして出てきてくれればいいのだが、そこがまたクローン病ならではの問題があって、そうはならない。つねに下痢便が直腸付近に存在するため、「あっ、オナラかな」と思っても、それを出すのはそうとうの勇気がいる、というより危険きわまる賭けである。発射してみたら、空砲ではなく実弾だった、なんてことがある。この賭けは、勝ったときのよろこびも大きいが、負けたときの悲惨さは筆舌に尽くしがたい、というよりあまりにも放送禁止の惨状を呈するため書くことができない。
 いま1日に30回もトイレに行っているが、半分はこのオナラのせいである。猛烈な便意をもよおし、大急ぎでトイレに行ったらオナラだった、ということはしょっちゅうだし、空砲でないときでも、オナラとともに実弾が出るケースがほとんどである。だから、下痢に耐えられずにトイレに行くというより、オナラで直腸の圧力が高まってがまんできなくなり、それでトイレに行くことがほとんどなのだ。ガスさえたまらなければ、トイレの回数が減るかもしれない。
 これは、楽しみだぞ〜。

          ◇

 翌日、そのフラガール、じゃなかった、 "フラジール" が届いた。250ミリグラムのやや大きめの錠剤で、服用は朝夕、食後1錠とある。
 さっそく夕食後に飲んでみた。寝るころには効いてくるだろう。
 夜中もひどいときは10回くらいトイレのために起きている。少しでも減ったらいいなあ。
 なんてね。1錠目でいきなり期待しちゃ、むしがよすぎるってもんか。では、おやすみなさ〜い。

          ◇

 翌朝。
 い、1回しか起きなかった……。
 なんじゃこりゃあーっ!
 す、すごいよフラガール、じゃなかった、フラジール! いままでの夜中のトイレ地獄はなんだったんだ。おなかもほとんど張っていない。ガスがたまっていない感じだ。すごすぎる。ウソみたい。たった1錠。

 まだたった1錠飲んだだけでガスよ!

 ただ、まえの日に食べたのは、1日1食だけ、おなかに優しい玄米クリームだった。それもあるかも。これで、ふつうにごはんを食べてどうなるかだ。

          ◇

 ところで、これ、何の薬なんだろ? 抗生物質と言っておられたが……。ネットで調べてみよう。


 【 フラジール内服錠250mg 】

 ヘリコバクター・ピロリの菌体内でニトロソ化合物に変化し、DNAらせん構造の不安定化を招いて抗菌作用を示します。通常、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎(除菌治療)に用いられます。

 (「QLifeお薬検索」http://www.qlife.jp/meds/rx14166.html


 ――ピ、ピロリ菌っ!?
 ピロリ菌を胃から除菌する薬だ!
 ってことは、だよ、おれの胃にはピロリ菌が住みついていて、そいつが悪さをして、このパンパンのガスが発生してたってこと?
 いやいや、そんな単純な話なのかな? 松本先生は、ふつうだったら帯状疱疹(たいじょうほうしん)の人にだす抗ヘルペス剤を、難病治療に使われる方だぞ。なにかもっと深い理由があるのかもしれない。
 ともかく、これでトイレに行く回数が激減するのはありがたい!

          ◇

 実験、というわけではないが、玄米クリームではなくふつうのごはんを1日2食たべてみた。昼は蕎麦、夜はごはんと魚、量は少なめ。すると……。
 オナラは出る。が、常識の範囲内である。ガスタンクにはならない。
 そして、やっぱり下痢の回数が減る。夜中にトイレに立ったのは5回であった。これまでは10回のときもあったのだから、まさに半減だ。1日を通しても、20回を切るまでに激減した。
 さらに驚いたことに、おなかの痛みまでが減ってしまったのだ。こりゃ抗ヘルペス剤よりもすごい!

 あ、あたし、もう、このクスリなしじゃ生きていけなァ〜い(アブナイ奴か)。

          ◇

 1週間がたち、松本先生にお電話した。
「フラジールの結果をご報告しようと思いまして」
「おお、どうやった?」
「それが、すごいんです。まず、ガスがほとんど出なくなりました」
「そやろー!」
「あと、下痢が半減しました。おなかの痛みもほとんどなくなっちゃいました。これは何なんでしょうか?」
「ク●△※☆□▲○パ☆※△●□※☆を殺すのや」
 え……ええっ? なんですか?
 やたら長い名前の細菌をおっしゃった。覚えられなかった……。
「化学物質と、ヘルペス、それとク●△※☆□▲○パ☆※△●□※☆、」
 また覚えられなかった……。
「この3つと免疫が腸管で戦っているのがクローン病や! それがわかったのや! 長いこと、悪かったなあ〜。この薬があることはまえから知ってたんやが」
 いえいえ、そんな、いまわかっただけで、じゅうぶんです。

 やはり、ピロリ菌を殺す薬だからピロリ菌を殺す目的で使う、という単純な話ではなかった。またまた松本先生の凄さに脱帽した。

 (つづく)


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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 kao07.jpgあとはオナラをする勇気が欲しい。





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ついに数値の変化が [2014年04月19日(Sat)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(77)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 血液検査をした。1〜2ヵ月おきに地元の病院にも通っているのだが、行くたびに血を抜かれている。

 いま私の状態は「西洋医学的にみれば」極めてよろしくないわけで、いつ腸が破裂して緊急入院ともなりかねないと病院側からは見られている。そのためつねに数値で状態を確認しておきたいらしいのである。
 これは、私も素直に応じている。もし私が西洋医学の医者であったら、こんな瀕死(ひんし)の病人、心配でならない。

 その血液検査だが、今回はちょっぴり楽しみなのだ。体調がじつにいい。"フラジール" がいきなり効き始めたし、れいの "プロタンディム" も、飲み始めて2ヵ月、こちらもそろそろ血液の数値に何らかの変化として現れていいころだ。
「では松井さん、これが今日の血液検査の結果ですが」
 診察室で担当医さんといっしょにパソコンのモニタを見る。
 う〜ん、あいかわらず栄養状態をあらわす数値はひどいが……。
 おっ?
 おおおっ?

 きたあァァァァァッ!

 CRP(炎症のひどさ)が! 前回の6.8(mg/dl)から……2.8に激減しているゥーッ!
 これは2年前、4週間も入院して栄養剤ばかり飲んで過ごしてようやく到達できた、そのときと同じ値である。その後はいつ血液検査をしても、10とか8とか、よくても6で、いっこうに下がってくれなかったのだ。それが、とうとう減ったぞッ!
 おいおい、それと、ちょっとぉ!
 リ、リンパ球が! すごいことになっているゥー!

  <前回の値>
 白血球全体の数 5800個/μl
 うちリンパ球の割合 10%

  <今回の値>
 白血球全体の数 4800個/μl
 うちリンパ球の割合 19%

 白血球全体は減っているけれど、リンパ球の割合はハネ上がっているぞッ!
 いろんな種類がある白血球のうちリンパ球の数が免疫力の高さを示すのだ。
 えっと、これって個数に直すと……。暗算がニガテな私はその場ではわからなかったが、家に帰って電卓を叩いて驚いた。

  <前回のリンパ球の数>
  5800×10%
 =580個/μl

  <今回のリンパ球の数>
  4800×19%
 =912個/μl

 げ、激増してる。約1.6倍じゃないかッ! うひょひょひょひょーっ!

 と、場面は病院に戻るが――担当医さんはモニタを見て、まじめな顔で話し始めた。
「ずっと、栄養状態の悪い、低空飛行が続いてしまっていますねえ。これですと、少なくとも、長生きはできません。松井さんは、もうクローン病になられて10年ですか。いまの体が当たりまえになって、慣れてしまっているのでしょうが、下痢も気にせず、おしりも気にせず、行きたいところに行ってやりたいことができる、そういうふうにもなれるんですよ。松井さんには松井さんのやり方があるのだと思いますが、それで良くなっているならいいんですけど、なっていません。どうですか。そろそろ発想を大きく転換して、レミケードをしてみませんか」
 熱心な担当医さんが、この日の説得はいつもよりさらに熱心で、時間としては短かったのにずいぶんと長く感じた。く、空気重てぇ……。
 担当医さんの視点では、この検査の値はよくなっていないのかもしれないが、私の視点では、今回はびっくりするほどよくなっている。いま、ここで、レミケード? マラソンのゴールテープが目の前にきているのに、ここでリタイアせよと? そんなわけにはいかない。
 ああ、早く、もっと結果を出してお目にかけたい!

 しかし、まあ、あせってどうなるものでもない。最近のひどすぎた状態を思えば、これでじゅうぶん、大きな結果だ。

          ◇

 数日後。

「どう? フラジールは効いてる〜?」
「はい、てきめんに効いてます」
 松本先生と電話で話す。
「うん、そしたらこれ、1日4錠にするといいってわかったから、これからは4錠飲みなさい」
 おおっ、それはまた楽しみ。
「で、いまいちばんつらい症状は何〜?」

 痔瘻(じろう)です、といままでなら即答していたのだが、このごろは痔瘻までもが、ちょっと、いいのだ。明らかにおしりから出るウミが減った。
 痛みも減った。少し前までは、あお向けに寝るにはおしり周りをクッションでかためてガードしなければならなかったが、いまはクッションなしで横になれるのだ。さすがにまだ座ることはできないが、少なくともこの日いちばんつらいのは痔瘻ではなかった。
「下痢です。1日15回から20回あります」
 つらい症状の二番手だった下痢が、トップに踊りでたかたちである。
「そりゃしんどいな〜。よう耐えとる。そしたら水を飲まないといかん、電解質もとったほうがええから、スポーツドリンクも飲みなさい」
 えっ? スポーツドリンク、飲んだほうがよかったの!?

 じつは、ひどいときは水を飲んでも下痢になり、吸収できている感じがせず、こりゃちょっとやばいんじゃないか、水分が足りていないかもしれない、スポーツドリンクを飲んだらどうだろう、いやいや、でもあれは、点滴みたいなもので、吸収しやすいどころか、しやすすぎて、腸を甘やかすことになる、あれはファイナル・ウエポン(最終兵器)だ、死にかけている病人が飲むものであって、ふつうに水が飲めるうちは、やっぱり水を飲むべきだ、そう考えて避けてきたのである。
 だが、松本先生のご指示となりゃ話は別だ。さっそくアクエリアスを購入した。べつに「おれはポカリよりもアクエリ派だぜ」というこだわりのゆえではなく、こっちのほうが安いのである(笑)

 この日は熱が37.6℃であった。フラジールを飲むようになって発熱はほとんどなくなったが、それでもときどきはこうなる。ただでさえ免疫のリバウンドでグッタリしているので、熱が加わるとトイレのために立ち上がるのもしんどい。
「さ、アクエリ飲むか。久しぶりだな」
 飲むと……いきなりおなかが痛くなった。とたんに、便意。腸反射ってやつだ。
 あ、あれェ? これじゃ、ふつうの水を飲んだときといっしょじゃん。

 ところが。いつものようなひどいピーピー下痢ではない。軟便である。
 30分くらい休んでいると、ずいぶん気分がよくなってきた。熱を計ってみる。なんと! 下がっている!
 それからは、ひとくち飲んでは、すぐノドが渇くかんじがして、またひとくち飲み、ちょっとすると、また渇きをおぼえ、またひとくち飲み、をくり返した。こ、こんなに体が渇いてたのか。
 そしてこの日から37.5℃をこえる熱はめったに出なくなったのである。
「もしかしておれ、脱水状態だったぁ!?」

 すみません、死にかけている病人とは私のことでした……。

 それにしても、すごいなアクエリアス。いまは枕元にアクエリアスを置いて、チビチビ飲んでいる。
 どうやら、いまの私は、腸を甘やかしてはいけないんじゃないかとか、そんなこと言っていられない状態であるらしい。ファイナル・ウエポンでも何でも投入して、命をつながねばならぬ。

 (つづく)


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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
kao01.jpg ほんとうはポカリ派です(笑)





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本当は怖い2日目のカレー [2014年04月28日(Mon)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(78)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 2013年7月(治療開始から3年2ヵ月)。

「松井さん、どやぁ? フラジールの効き目は」
 受話器ごしに松本先生が問いかける。この抗生物質のおかげで腹痛も下痢も半減していたのだが、1日2錠から4錠へと変更されたのだ。
 私はこれに、大いに期待した。もうこれで、症状がピタリとおさまっちゃったりなんかして。とうとう私も、ほとんどふつうの人と同様になるときが来たか。はっはっは。と胸が躍ったのだが、2錠が4錠になったことで何か変わったようには感じなかった。むうう。クローン病、やっぱ、甘くねぇ。
 しかしだ。
「熱が、出なくなりました」
 腹痛と下痢が半減したのがスゴすぎて見過ごしていたが、あれ? そういえば最近、いつも夕方になると出ていた熱が出てないぞ、と気がついたのである。

「やっぱりな。もう、ウェルシュ菌や! 腸管には善玉のビフィズス菌とか、乳酸菌あるやろ、それに対して、悪さをするウェルシュ菌、別名クロストリジウム・パーフリンジェンスってのが、ウェルシュ菌いうねん。これがとにかく悪さしてるいうのがわかったんや。結局ウェルシュ菌との戦いが、発熱や。で、いま残ってる症状は何?」
「腹痛がけっこうきついです。それと下痢が1日15回以上あります」

「結局ウェルシュ菌との戦いで熱が出てると。だけれども、それで(フラジールで)抑えこむことができない部分は腹痛と下痢15回や。その部分はやっぱりヘルペスだと思わない?」
「はい。そう思います」

「下痢はウェルシュ菌を排除するためではない。その下痢は何を出しているかということやなあ。アトピーは出とるか?」
「首から上だけ出ています」

「おなかに出なアカンのやがなあ。ちょっと方針を変えて、煎じ薬ね、皮膚に使うアレルギーの煎じ薬を、腸管のアレルギーにどんだけ効くかっていうことをやります。これでよくなった人もいるねん。フラジールは、もう飲まないでいこう。よけいな菌はもう殺したはずやから。困ったらまた電話して〜」

 そんなわけで漢方薬がひとつ変更された。
 そして“フラジール”が殺してくれたナゾの細菌の名前も判明した。
 “ウェルシュ菌”!
 そりゃ、腹痛も下痢も発熱もおきるはずだ。……と、詳しい話はあとにして、フラジールを飲むのをやめてどうなかったか?
 ――サイアクの体調になった。

          ◇

 しばらくはよかったのである。飲むのをやめても、飲んでいたときと同じように、腹痛と下痢が半減、熱はピタリとおさまった状態がつづいた。
 ところが、じわ、じわ、悪化。日を追うごとに悪くなってきて、2週間くらいで最悪状態に戻ってしまった。激しい腹痛に、1日30回ていどの下痢、しかもピーピーのときが多く、熱も37度後半となった。

「松井さん、その後、フラジールの効き目はどこで止まったあ?」
「10日間くらいは効いてたんですが、14〜5日でだんだん悪くなってきて、いまはもう元に戻っています」
 あとで知ったが、この薬は月に2週間ぶんしか出せないそうなのだ。
「フラジールがいちばん効くのは、腸管の悪玉菌の代表がウェルシュ菌や、それを殺しやすいんですよ。免疫をずっと抑えてると腸管の細菌叢(さいきんそう)が変わってね、悪玉菌が増えるわけですよ。警察も力が弱まったらヤクザが大きい顔しよるやろ。そういうことなんや。じゃフラジールもういっぺん出すからね」
 そして待望のフラジールが送られてきた。飲むと……シャキーン! と効果音がつくまでにはいかないが、サイアク状態は脱出、腹痛も下痢もやわらいだ。
 フラジール……あ、あたし、もうマジあなたなしじゃいられないィ〜!

 そしてこのたび、れいの悪玉菌の名前も判明した。“ウェルシュ菌”だ。最初に先生が言われたのは、別名の、長いほうの名前だったのでわからなかったのだ。ちなみに長いほうは“クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)”という。
 パンプルピンプル・パムポップンなら「クリィミーマミ」の変身の魔法だとすぐにわかるが、こりゃ電話でいっぺん聞いても覚えられまへん。
 ウェルシュ菌なら、私も、知ってはいたのだ。だって……自分の本に書いた(笑)
 自分で自分の文章を引用するのもグロテスクであるが、引用する。
「宿便はウェルシュ菌などの悪玉菌をつくり腸の粘膜に炎症やただれを起こします」(『朝食を抜くと、なぜ健康になるのか?』
 と、2行ですませてしまったが。

 このウェルシュ菌について詳しく書いておこう。

 まず、ウィキペディアではこうである。

          ◇

 ウェルシュ菌(ウェルシュきん、学名:Clostridium perfringens)とはクロストリジウム属に属する嫌気性桿菌である。河川、下水、海、土壌中など自然界に広く分布している。ヒトを含む動物の腸内細菌叢における主要な構成菌であることが多い。少なくとも12種類の毒素を作り、(中略)一般に、ビフィズス菌などと対比され、悪玉菌の代表とされている。臭い放屁の原因、悪玉の常在菌である。(中略)至適増殖温度は43-47℃。分裂時間は45℃で約10分間と短い。37℃で最も多くの毒素を産生する。

(ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A5%E8%8F%8C より引用)

          ◇

 さらっと書かれているが、これは恐ろしいことだ。
 前半を要約すると、「悪玉菌です。酸素を嫌います。どこにでもいます」。後半は「冷めつつある料理の中で、10分に1回、倍々ゲームで分裂して増えまくります」ということ。
 これによってウェルシュ菌は食中毒を起こすのだ。

 以前、NHKの「あさイチ」で“本当は怖い2日目のカレー”という特集がされていた(2011.6.30)。カレーは一晩ねかせるとウマいけれども常温でしばらく放置したカレーはウェルシュ菌だらけになっていて食あたりを起こす危険がある、といっていたのだが、その理由が、さっきのウィキペディアの説明の中にあるのだ。どういうことかというと――。

 ウェルシュ菌は、悪玉菌の代表である。そしてもっともありふれた菌の代表でもある。土の中にもいるから、ジャガイモやニンジンにもくっついている。カレーをつくればウェルシュ菌はどうしても少々は入ってしまうのだ。
 しかしそのカレーを食べてもなんともないのは、10個や100個のウェルシュ菌が腸に入ったところで害はないからだ。
 危険なのは10万をこえたときである。
 2日目のカレーがヤバいゆえんはここにあって、ウェルシュ菌は45度のとき最もさかんに分裂して増える。10分に1回というものすごいスピードで分裂するので、たった1個のウェルシュ菌が、10分後には2個に、1時間後には64個に、このへんはまだおとなしいが、2時間すると4096個に、3時間で26万2144個と、この時点で危険レベルを突破し、4時間で1677万7216個に、5時間で10億7374万1824個に、6時間で687億1947万6736個というとんでもない数になる。
 常温で3時間放置したカレーはもうだめだ。6時間もしたらもはやこれはウェルシュ菌を食べているようなものである。

 やっかいなのは、こんな状態になったカレーが、まったく味も香りも変わらなくて、おいしくいただけてしまうこと。
 ウェルシュ菌じたいは無味無臭なのである。
 あのクサいおならの原因がウェルシュ菌だときくと、さぞやウェルシュ菌というのはニオうんだろうと思いきや、カレーの風味は何も変わっていない。むしろうまみが増しているから困る。
 しかもだ。ウェルシュ菌は、煮ても死なない。100度で何時間加熱しても死なないのだ。
 殺すにはレトルトパウチ食品をつくる機械をつかうか医療器具を消毒するオートクレーブといわれる滅菌処理をしなければならないが、家庭では不可能。
 ウェルシュ菌が入るのはしょうがないので、調理したあと増やさないようにするしかない。
 そしてカレーという料理にまた、ウェルシュ菌が増えやすい特徴があるのだ。
 ウェルシュ菌は酸素を嫌う。いわゆる“嫌気性菌”で、酸素がないほど元気になる。
 カレーは煮込み料理であるから酸素が抜けてなくなる。しかもナベで作るから中心部分がなかなか冷めない。ウェルシュ菌が大好きな

 ・酸素のない状態
 ・45度くらいの温度

という環境が揃ってしまうのである。
 じゃあ2日目のカレーを安全に食べるにはどうするか?
 粗熱がとれたところですぐ冷蔵庫にしまうのだ。必要なら小分けにして、とにかく速攻で冷ます。
 なにしろ45度でガンガンに増殖するので、いかにしてこの温度付近で放っておかないかが勝負になる。60度くらいまで冷めたらイッキに5度くらいまで下げてしまうことが大切だ。逆にいうと、45度付近の温度帯をすばやく通過させてしまえばまったく怖くない。

 この2日目のカレーにあたると、腹痛、下痢、腹部膨満(おならがたまる)という食中毒症状にやられる。のだが、これ、クローン病の人が毎日苦しんでいる症状とピタリと合う。
 どうやら私は毎日このウェルシュ菌食中毒にやられていたらしい。
 クローン病の人は腸がズタズタだから菌を体内に入れないためのバリア機能が失われている。ふつうの人なら中毒にならない数のウェルシュ菌でも、私にはダメなのだ。
 ウェルシュ菌を“フラジール”で駆除したら、腹痛も下痢もガスも半減してしまった。クローン病の腹痛と下痢は、根本原因は化学物質とヘルペスウイルスなのだが、それらと免疫が腸管で戦っているときは、ここへウェルシュ菌食中毒が加わってくるという図式だ。

 これがクローン病の全貌だったのだ!

 (つづく)


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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
kao05.jpg 子供のころ、実家では何でも前の晩のおかずを常温で放置し、翌日の朝食に供されていました。夏でも、カレーをひと晩おいとくの。ガス台の上で。そういえば毎日のように下痢していたよ……。





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