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松井 二郎
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ゲリピー1日40回のしあわせ [2014年03月08日(Sat)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(73)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 歯はえらい目にあったが、体のほうは、ちょっと、いい。

 いいといっても、悪いなりにいいということだが、異常なだるさはおさまって、まともなだるさになり、「歩いてみようかな」という気になった。
 といっても、まだ、スニーカーをはいてヒモを結んで、という段階ではない。
かがんでヒモを結ぶ体力がない。スリッポンをサッと突っかけて、とりあえず外に出てみた。
 「うん、歩けるかも」
 以前よく散歩していた、ご近所一周5分間コースを歩きだした。
 よし。いけそうだ。

 このコースには美しい川があるのだ。天気がよければ川のむこうに赤い橋が見え、その遠景に山々が映える。
 じつに数ヵ月ぶりに、この川を見た。川面が日光をうけてぱちぱち輝く。
 さらに運がよければカモの群れが泳いでいるところも見られるのだが、残念、きょうはいないようだ。
 あっ! よく見たら、岸に1匹、休んでいるカモがいた。
 そうか、きみも、休みか。私も、もう休もう。

 その川が散歩コースの折り返し点なのである。引き返して、家に戻った。きょうのところは、これで上出来。
 距離にして往復500メートルくらいだと思うが、たったこれだけで、歩いているさいちゅう筋トレでもしているように太ももが張った。
 「こりゃ、リハビリはそうとう大変だろうなぁ」
 でも楽しみである。その日も案外、近かったりして?

          ◇

 これはヌカよろこびであった。
 じわ、じわ、症状がひどくなってきた。
 腹痛は息ができないほどで、下痢は1日30回以上、しばらくおさまっていた夕方からの高熱も復活した。ここしばらく午後も仕事ができるようになってよろこんでいたが、もう午後はできない、どころか、午前から何もできない。
 気がつけばまた "ほぼ寝たきり" の病人になっていた。

 ど、どういうこっちゃあ?

 って、免疫のリバウンドに決まってるだろう。松本医学を知らん人みたいな反応するな。
 でもなぜまたこんなに……。

 あっ! 漢方薬か?

 ここのところちょっと元気が出たので、漢方薬を1日8回キチッと飲むようにしたのだ。
 いままでは、飲むと下痢がひどくなるので、それが怖くてついつい「できるだけ飲めばいいや」と、1日8回が1日7回に、6回にと減り、気がつけば3回になってしまっていた。
 「ワシんとこ来たら、ワシの言うとおりにやらんかい!」
 とまえに松本先生に叱られているのに。
 これじゃいけない、言われたとおりにしないで治るわけねえだろ、とずっと気にかかっていたのだが、それでも下痢のあまりのひどさに、どうしても飲めずにいた。
 それを、ちょっと体調がよくなったところで性根を入れかえ、再び1日8回キチッと飲み始めたのだ。それで停滞していたリバウンドが進行したのではないか?
 とにかく、完全に病人というかんじになってしまった。

          ◇

 下痢はひどいときは40回近くになってきて、トイレットペーパーが1日1本はトイレのもくずと消え去り、しばらくおさまっていた水みたいな便もみられるようになった。
 がーん。
 過去の「クローン病中ひざくりげ」を読み返してみると、一時期は1日10数回にまでおさまっていたらしい。いまでは信じられない。
 それだけ減ったら、ああ、どんなにラクだろう!

          ◇

 「下痢が、またひどくなってきてるんです」
 松本先生に電話でご報告すると、
 「そうか〜」
 と、べつに驚かれるでも何でもなかった。
 こんなことは、よくあることなのだな。だったら私も、べつに落ち込むでもなく、よくある治療の過程と思っていればいいか。
 「それで、狭窄(きょうさく)の漢方をやめて下痢の漢方にしたらどうかと思うんですが」
 「そやな、うん、そしたらちょっと待ってな〜」
 カルテに何か書いておられる様子である。

 翌日、届いた漢方薬をみると、
 「あれっ」
 私がイメージしていたのとは違った。私は、1日8回のうちの一部を変更してもらうつもりだったが、届いたものは1日6回に減っている。そのうちの一部の漢方が変更されていた。
 これなら、飲むのがずいぶんラクになるぞ。ありがたい!
 1日目からさっそく改善がみられた。ちょっとずつ回数が減って、水っぽさもおさまってきた。1週間もすると1日40回近い日はなくなった。それでも30回はこえる。

 もしかして、だけど〜、

 これってクローン病がよくなってるからひどいんじゃないの〜?

 免疫寛容が近づくと "IgA抗体" が増えてくるからだ。それで腸管アレルギーとしての下痢になってきてるんじゃ……。
 そのあたりのことを松本仁幸先生はこう書いておられる(免疫の用語テンコモリなので、難病でない方はむりに読まれなくてもよいだろう。なお文中のUC、CDとは、潰瘍性大腸炎、クローン病のことである)。

          ◇

 「既にご存知のようにUCやCDの敵は化学物質ですね。それでは化学物質は殺す意味があるのでしょうか?
 死んだ化学物質を殺すなどということは狂気の沙汰であることはお分かりになるでしょう。だからこそ、以上に述べた殺しの世界を排除の世界に変える必要があるのです。この排除の世界がIgEの世界であるのです。
 このIgEを作るキッカケは皆さんご存知でしょう。これが全身の粘膜下や皮膚の下の結合組織に、殺さなくてもいい異物を排除するために常時待ち構えている肥満細胞なのです。

 (略)

 この肥満細胞は、殺しの世界で作られたIgGが無限に作られることがないように待ち構えているのです。というのは、殺せない異物をいつまでも殺すためのIgGを作っても、人体の結合組織に溜まるばかりであり、全く意味のないことであるからです。
 元来、肥満細胞はIgEと結びつくレセプターを膜の全面に大量に持ち合わせているのですが、ところどころにIgGのレセプターもあるのです。化学物質が入ってくると、排除しない限りは溜まるばかりであり、はじめはこれを殺すべき敵だと考えるように作られている免疫は、どんどんIgGを作り続けるのですが、殺せないどころか排除もできなくなりIgGが増えるばかりです。この増えすぎたIgGは肥満細胞の少ないIgGのレセプターに結びつき始めます。すると肥満細胞の核にメッセージが伝わり、IL-4を作らせ始めるのです。

 (略)

 このIL-4と徐々に結びついたTh0はTh2に新たなるサイトカインを作らせるようになっていきます。そのサイトカインが、まさにIL-4でありIL-5でありIL-13であります。これらは全てIgGを作らなくさせる一方、IgEを作らせようとする働きを持っているのです。

 (略)

 IL-5は、アレルギーを起こすヒスタミンを作る肥満細胞や好酸球を増殖させます。かつB細胞にIgMをIgAに、かつIgGをIgAにクラススイッチさせるのです。
 このIgAは人体に最も多いことはご存知でしょう。とりわけ粘膜に多い抗体として知られています。UCやCDの粘膜においてもIgA抗体は化学物質と結びついて、便から異物を出そうとする働きがあります。つまりIgGの炎症と殺しの世界を排除の世界に変えてしまうのです」

 ( http://www.matsumotoclinic.com/column/column_28.html より引用)

          ◇

 これは免疫寛容の一歩手前の状態とのことなのだ(全容が知りたい方は上記サイトをお読みいただきたい)。
 もしかしていまその段階にきているのか? だったら、いいなぁ〜!

 まえにも書いたが、いまトンネルのどのあたりにいるのかまったく見えない。もう出口付近なのか、まだまだ中間くらいをウロウロしているのか。
 とにかく進むだけだ。ほかのクローン病患者は、出口のないトンネルを歩いているのである。私はなんとしあわせ者だろう。

 (つづく)


 ※松本医院での診療を希望される方は
  松本医院ホームページ http://www.matsumotoclinic.com
  熟読のうえにも熟読されてからになさいますよう、
  お願いいたします。




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

kao01.jpg 久しぶりに松本先生の言葉をのせたら、やっぱ締まるねぇー。





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ゆるモード断食10日間チャレンジ [2014年03月18日(Tue)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(74)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 じわ、じわ、ひどくなってきたのは下痢だけでなく、腹痛も、痔瘻(じろう)も、熱も、およそクローン病の症状すべてがひどい。

 「これ、ほんとに免疫のリバウンドなのか? う〜ん、なんか、へんだ。たんに体調が悪くなってるだけなんじゃ……」
 だとしたらなぜ?
 あ、まさか!
 鉄?

 じつは2週間前から鉄を飲んでいるのである。

          ◇

 「鉄の錠剤を飲みませんか」

 地元の病院の担当医さんが、血液の数値をみて言った。あまりにも長く貧血が続いているので、それを改善しましょうというのだ。
 「えっ、鉄、ですか」
 いりません。と内心では即答したが、う〜ん……いつもいつも勧められるものを断ってばかりなのも、申し訳ないし、私の肩身も狭い。免疫を害しないものなら、たまには受けいれ、私も病院も共存共栄をはかっていくのが好ましい関係、大人の態度であろう。
 それに、たしかに貧血はつらいのだ。歩いているとふらつくし、それ以前に寝ているところから起き上がるのがたいへんだ。トイレに行くために1日30回、ひどいときは40回くらい布団から起きねばならないのだが、それがいちいち重労働である。免疫とヘルペスとの戦いで脳神経10番に炎症が起き、そのせいでだるくなっているのだが、貧血によるところもあるだろう。これが改善されてトイレに立つのがラクになれば、たしかに、うん、ありがたい。

 「じゃあ、飲んでみます」
 こうして、朝夕1日2錠、鉄剤を処方されたわけなのだが、それをかれこれ2週間飲んでいるのである。
 考えてみたら、じわ、じわ、悪くなってきた時期と一致する。

 アヤシイ〜。

          ◇

 最初は何ともなかったのだ。
 いや、最初からおかしいことが、2つあった。

 まず、便が真っ黒になる。これは副作用として明記されているので驚くにはあたらないのだが、それにしても、汚い話で申し訳ないが、スミでも出たように見事に黒い。
 さらにこれが、汚い話で申し訳ないが、便器にへばりついて流れない。「大」で流しても流し残しが出てしまうのである。それどころか、汚い話で申し訳ないが、掃除しても黒い色が落ちない(掃除してくれるのは家内だが)。うちの便器には底に黒く色がついてしまった。賃貸だぞ、ここ。どーする。

 「これって……おなかも同じ状態になってるってことだよなあ?」
 便が異様に粘っこいためであろうか、汚い話で申し訳ないが、下痢なのに便秘とでもいうような、もよおしてつらいにもかかわらず便が出にくいのを最近感じていた。もしかして、おなかにずいぶん便がたまってしまっているのではないか? ちょっとふつうじゃない体調不良は、そのせいなのでは? 免疫が上がっていることを考えても、あまりにひどい。1日40回近いトイレは、とうぜん夜も含まれ、眠ることもできず、ただでさえやつれているのが、いっそうやつれた。

 こんなときは、アレだ。

 断食だ(オーッとぉ! ずいぶん久しぶりのワードが出たァーッ!)

 もし、たまった便が原因であるなら、いちどおなかをキレイにしてやらねば。それで体調がよくなったら、鉄剤が悪かったと確定する。

          ◇

 断食、といっても、ごくユル〜い断食をしようと思っている。

 まず、1日600キロカロリー飲むよう指示されている栄養剤(エレンタール)、これを、いままでは夜中に飲んでいたのを食事の時間に持ってくるのだ。飲む時間は昼から夕方にかけてとする。
 そのあとで、1日1食、夕食をとる。エレンタールと合わせて1日900キロカロリーといったところだ。
 ちなみに、一時期は見るのもイヤになっていた玄米クリームが、このごろはまたおいしくいただけるようになった。もっとも「なに食べてもええで〜」と言われているので、好き勝手に、カレールウを入れてカレー玄クリにしたり、シチューのルウを入れてシチュー玄クリにして楽しんでいる(作ってくれるのは家内だが)。これはうまい。ふつーに食事としてイケる。断食中はなるべくこの玄クリをいただくこととする。
 なお午前中は、これがなくては発狂してしまう手作りソイラテを1杯だけたしなみ(エスプレッソマシンがないのでコーヒーに豆乳を投入するだけのなんちゃってソイラテだが)、あとは漢方薬と青汁を飲むだけとする。

 以上、久しぶりに甲田療法の、"半日断食" よりは厳しめ、"本断食" よりはユルいモードをやってみようというわけだ。
 さあ〜、どうなる?

          ◇

 1日目。
 まだ体調に変化はない(あたりまえ)。明日どうなるかが楽しみだ。
 ゆるモードながら、久しぶりの断食はやっぱりおなかがすく。
 だがそれがいい。

 2日目。
 さっそく変化あり。
 便が! 出るわ、出るわ。汚い話で申し訳ないが、「おいおい、いったいどこからこんなに出てくるんだ?」とツッコミたくなるくらい出る。
 どこからも何も、自分のおなかからに決まっているのだが、それにしても、こんなちっこいおなかに、こんなにたまっているものか。断食は経験済みだけれど、久しぶりなものだから、あらためて驚いた。
 それにしても、ああ、おなかがすく。
 だがそれがいい。

 3日目。
 宿便らしき便がどんどん出る。そして、ちょっと、体調よくなる。やっぱり鉄の錠剤がアヤシイと判断、この日をもって飲むのを中止した。

 4日目。
 体調、だいぶよくなってきた。引き続き宿便がガンガン出る。そして、
 「うおっ! なんじゃこりゃ?」
 汚い話で申し訳ないが、トイレットペーパーに何やら真っ黒いカタマリがついた。
 これは……て、鉄の錠剤だ!
 カタチは崩れているが、あの錠剤にまちがいない。きのうから飲むのを中止してるのに!
 やっぱりこいつは、アヤシイ〜。
 飲んで貧血を改善するどころか、これのせいで起きるのもシンドくなったのだ。

 以後、5日目、6日目と、日を追うごとに体調がよくなっていった。そして、食べている量よりも多い便が、毎日出た。
 1週間で、体調が、元に戻った。おなかの痛みがずいぶん減り、下痢も1日25回ていどに。熱ももう出ない。そしてなんと、クローン病が治るまではどうにもならないと思っていた痔瘻(じろう)のウミまで減った。断食前は午前からヘトヘトだったが、午後も仕事ができる!
 だ……断食おそるべし。
 いや、宿便がおそるべし、だ。これだけの悪さをしていたのだ。
 「免疫のリバウンドじゃなかった。宿便で体調を悪くしてただけなんだ」
 宿便の怖さをあらためて思い知った。甲田療法の偉大さも。
 そして、鉄の錠剤。もうぜってぇー飲まねー。

 10日目。
 宿便はだいぶ出尽くしたかんじがする。おなかがずいぶんへこんだ。それでも、まだ、食べたよりも多い量の便が出てくるのだ。このようなユルい断食では、10日やっても宿便一掃というわけにはいかないようだ。
 けれども、まあ、目的であるところの体調の回復は、成った。このへんで、もういいかな。

 ユルユル断食、終了〜。おつかれさまでした!

 ところで体重はどうなった? 1ヵ月前は46.5キロあったけど、46キロくらいに落ちてるかもなあ。どれどれ。
 「げっ!」
 よ、44キロ……。
 まあ、しかたのない代償だ。勲章であろう。やつれた顔が、いっそうやつれた。
 だがそれがいい。

 アパートから外に出て、ちょっとぶらぶらしてみる。
 うん、歩ける、歩ける。
 川が見えるご近所一周コースに出ようかとも思ったが、やめておいた。きょうのところはこれで上出来。

          ◇

 なお、おなかの痛みであるが、減ったといっても相変わらず痛い。身がよじれるほどだ。やっぱりこれはヘルペスなのか。なら、免疫も上がっていると考えていいのか。
 それならば。
 痛いのは、つらい。だがそれがいい!

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
kao01.jpg 「だがそれがいい」とは
   ↓
  (ニコニコ大百科)
  http://dic.nicovideo.jp/a/%E2%86%90%E3%81%A0%E3%81%8C%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%84





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毒で治る? ホメオパシー体験記 [2014年03月28日(Fri)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(75)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 2013年5月(治療開始から3年)。

 「松井さん、これはまあ、聞き流してくれたらいいんですけどね」
 と前置きをしてから鍼灸師さんが、
 「まえに、うちの嫁がホメオパシーを勉強してるって言いましたよね。そういえばホメオパシーを日本に広めた人って潰瘍性(かいようせい)大腸炎だったよね、って話になって、それだったら松井さんにもいいんじゃないかと思って。もし、やってみられるときは、言ってください」
 う、うむぅ……。
 どうしたもんだろ。
 いま私は、松本医学一本で、クローン病を治そうとしている。そこへこのあいだ、フクヤマさんからNrf2(ナーフツー)とやらを活性化させるサプリ "プロタンディム" をすすめられ、迷ったあげく導入したところである。さらにこのうえ、新しいことを始めるべきかどうか?
 とにかく、そのホメオパシーがどんなものか、わからなければ始まらない。
 「じゃあ、さっそくネットで調べてみます」
 「あ、うちにホメオパシーの本ありますから、よかったらお貸ししますよ」
 こうして本を一冊、お借りした(由井寅子著『ホメオパシー in japan』)。それを読んでわかったことを私なりにまとめてみると、ホメオパシーとは――

 トリカブトや水晶など、約3000種類の鉱物、植物、動物、病原体などからその人の症状に合ったものを1つ選んですりつぶし、それを100倍に希釈すること6回〜30回、もとの物質の分子が1コも含まれない状態になったものを、1日1回、数日間にわたって摂取することにより、その物質そのものではなく物質の持つ性質が作用し、健康な人がこれをとれば毒となるところがその人には薬となって症状がなくなる、というものである。
 クローン病の私であれば、摂取するのは水銀をもとにしたものがよいらしい。健康な人がこれをとるとクローン病のような症状が出るが(ただしすぐ治る)、すでにクローン病の私がこれをとると、治ろうとする反発力が生じ、クローン病であることをやめてしまうという。
 このように、その人の病気と同質(ホメオ)の症状(パシー)をあてるからホメオパシーというのである。

 ――以上。
 となると、だ。
 これって漢方薬の変形じゃないの?
 自然界の物質から、その物質ではなく物質の持つ性質だけ取りだして使うというのだ。漢方薬が物質を利用するならホメオパシーは物質をこえた見えざる性質を利用する、のである。
 面白いッ!
 少なくとも松本医学との矛盾はない。それに、毒には毒をってところが、わたし好みでもある。
 これを日本に導入した人(さきほどの本の著者)は潰瘍性大腸炎が1ヵ月で治ったそうだ。そんな短期間でよいのなら、試してみることに躊躇する理由はないであろう。
 ただ、もしこれでよくなったら、松本医学で治ったのだかプロタンディムで治ったのだかホメオパシーで治ったのだか、判別不能になる。
 けれども、私はべつに松本医学一本でクローン病が治るかどうかをレポートする体当たり芸人ではない。また、
 「松本医学でクローン病が治った」
 という手記は、すでに松本医院ホームページにいくつも掲載されている。なにもいまさら私が理論の正しさを証明する必要はない。治りゃ、いいのだ。

 やってみっか!

          ◇

 さっそく、水銀をもとにつくったという薬を入手した。
 「えっ? こんななの?」
 イメージしていたものとはまったく違った。ホメオパシーの薬は(薬ではないのだが、そう表現しておく) "砂糖玉" だと本に書いてあった。てっきりアメ玉くらいの大きさだと思っていた。実物をみてびっくり。ピーマンの種かトマトの種ほどの、それこそ豆ツブというべきもので、容器(これもまた小さい)から手にとったとたん、うっかりすると転げ落としてなくしてしまいそうなものである。
 この豆ツブみたいな砂糖玉に、水銀を10の60乗倍に希釈した液体がしみこませてあるという。水銀の原子は1粒も残っていないのだ。これが効くというのだから、う〜ん、フシギ。
 口に入れてみる。
 うん。ふつーに、砂糖ですな。

 その夜のこと。
 ウトウトしていると、突然、体のあちこちがかゆくなった。
 えっ? これってもしかして、さっそく好転反応?
 いやいや、こんなことは、たまにあるのだ。決めつけるのは早計である。いましばらく様子をみねば。

 翌日。とくに変わったことはなし。

 その翌日。とくに変わったことはなし。

 その翌日。とくに変わったことはなし。

 次の日も、また明くる日も、とくだん、なにか起こるでもなく、体調に変化があるでもなく、一応の目安である30日が過ぎてしまった。
 あらら。
 薬が合っていれば、たいていの症状は30日で何らかの改善がみられるはずなのである。水銀がハズレだったか、ホメオパシーが私には効かないのか。
 もう一冊、本を読んでみたが(由井寅子著『毒と私』)、どうもこのホメオパシーというもの、療法家との出会いがすべてのように私には感じられた。
 いや、これは何でもそうであろう。
 本の著者は、優れた療法家に出会い、病気のことよりも生い立ちや性格についてくわしく聞き取りがなされ、このひとは潰瘍性(かいようせい)大腸炎といって名前こそ違うけれどもクローン病とまったく同じ病気であって、それならば私と同じ水銀が処方されてもよさそうなのに、処方されたのは "がん細胞" と "ヒ素" からつくった薬であった。そして30日で治ってしまったのである。
 薬は3000種類もある。そのなかから、聞き取りによって病気の根っこを見極め、そのひとに最適なものを処方する。ここがホメオパシー療法家の腕の見せどころなのだ。
 こりゃ、ドシロウトの私が本を1冊や2冊読んで自分で選び出すことは不可能である。
 じゃ、ホメオパシー療法家に会いに行こうか、と思っても私の住むところからは車を飛ばして1時間かかる。そんな移動、いまの私にはムリだ。いや、行けたとしても、保険がきかないこの治療法に出せるお金がない。すでに闘病貧乏におちいっている私に、このうえホメオパシーを追加することは、あきらめるほかなかろう。

 残念でしたっ!

 ともあれ、毎晩、寝る前に砂糖玉を口に放り込み
 「治るかな〜」
 とワクワクするのは、楽しかった。
 いい経験しました♪

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
kao07.jpg すすめられるものを、なんでもかんでも試してるわけじゃありません。明らかにいいとわかっているものでも手を出さないことのほうがほとんどです。でも冒険もしないとつまんないしぃー。このへんのバランスがむずかしいよね。
 先立つものがあれば何もむずかしくはないのだが(笑)





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