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松井 二郎
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戦場と学校 [2014年11月17日(Mon)]

  ◆続・クローン病中ひざくりげ(98)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 視床下部、脳下垂体、副腎、これらをコントロールできればトラウマから抜け出せるそうだが、世界びっくり人間じゃあるまいし、そんなの無理だ。カウンセリングやワークでは埒(らち)があかなかったのは、ここに理由があったのだ。
 じゃ、何をすればいいのか?
 その答えを示してくれるのが、今回のキーワード「震え」である。この言葉に着目して、続きを読んでいただきたい。――

(以下は引用)

          ◇

 精神的、身体的アプローチは、話すことによるセラピーには限界があることから、20世紀になって発達しました。そして今では、心理的なセラピーと身体的なセラピーを組み合わせたセラピーが、数多く開発されています。(中略)こうしたテクニックに共通していることは、どれも交感神経の過剰な活動の現れとしての体の振動や震えに注目していることです。

 ライオンに襲われて何とか逃げ延びたガゼルは、しばらく体全体で震えています。この震えは過剰な興奮を振り落とすためのものです。こうしてアドレナリンを放出すると、ガゼルは群れに戻り、何事もなかったかのように池で水を飲みます。湖で2羽の水鳥が縄張り争いをすると、彼らはその後互いに離れてゆき、激しく翼を羽ばたかせて興奮を振り払います。雷を怖がってペットが震えるのも見たことがあると思います。怖い出来事に出遭うと、彼らは戦うか逃げるかするために必要なエネルギーを作り出します。しかしペットは自然の中にいるわけではなく、私たちの傍に来て安心することができます。そのため、作り出したエネルギーは必要なくなり、体はそれを放出するために震えるのです。

 他の多くの哺乳類と同じように、人間も動揺したり神経質になったりすると、自然と震えが起こります。たとえば自動車事故の後、どうしようもなく震えたという報告はたくさんあります。不安になると、顎が震え、歯がカチカチと音を立てることがあります。(中略)動物の本能的な震えと同じように、人間の震えも体と心をバランスのとれた状態に戻すために、ショックを受けた神経組織が行う自然の反応です。震えは私たちにつらい出来事を再体験させてトラウマを増幅させることがないので、トラウマからの回復を助けてくれます。震えは、逃げるか戦うか固まるかという反応を消去することによって、トラウマを取り去ってくれるのです。また、逃げるか戦うかという反応を中断したために余分になったエネルギーを放出してくれます。震えは体を超興奮状態から覚ますためにも役に立ちます。

 つまり、それは体がトラウマを解放する方法なのです。HPA軸を静めることによって、それは行われます。
 つまり、逃げるか、戦うか、固まるかという反応を完全に解除するために、体は震えを引き起こすのです。このような震えは「神経性の震え」と呼ばれています。脳の学習記憶に由来する原始的な体験であり、人間の体の中に初めから備わっている自然現象なのです。
 トラウマから上手に回復するために大切なことは、休息と元気な状態に戻るようにと体に信号を出す、自然の解放メカニズムを発動させることなのです。

デイヴィッド・バーセリ『人生を変えるトラウマ解放エクササイズ』

          ◇

 これはコロンブスの卵だ。トラウマを消し去るには、まさか、動物と同じように震えなければならなかったとは!
 その「自然の解放メカニズムを発動させる」方法が、このまえご紹介したエクササイズ、TRE(トラウマ・リリース・エクササイズ)というわけだ。
 いやあ、こりゃあ、ますますすごいことになってきた。

 かつてカウンセリングに1年半を費やした。それで私はだいぶ変わったと思う。少なくとも、ネガティブな考えをポジティブ・シンキングで打ち消せるようにはなった。笑顔ができるようになった。けれどもそれは対症療法で、根っこはあまり変わっていないように感じる。
 それもそのはず、「トラウマから上手に回復するために大切なことは、休息と元気な状態に戻るようにと体に信号を出す、自然の解放メカニズムを発動させること」だったのだから。

 では、その話の続きだ。トラウマを解放するために「震え」が必要なわけが、さらに詳しく説明されている。――

          ◇

 戦争の真っ只中に巻き込まれたアフリカの小さな村に住んでいた時のことです。その国はずっと戦争状態にあり、この村は頻繁に空爆を受けていました。ある日の午後、村の男たちが座って話をしていると、急に犬や鶏が狂ったように走り回り始めました。これは飛行機がこちらに向かっているという警告でした。
 飛行機が近づいてきた時、大人の仕事はできる限り大勢の子供たちを集めて、一緒に防空壕に逃げ込むことでした。狭くて粗末な防空壕に入ると、大人たちはベンチに座り、子供たちを膝の上に抱えました。(中略)その時、私は膝の上の子供たちが全身で震えていることに気がつきました。ちょうど雷が怖くて震えている犬や、寒くて震えている人のようでした。(中略)

 爆撃が続いている間、子供だけが震えていることに私ははたと気がつきました。なぜ大人は震えないのでしょうか?

 その日の午後、私は震えたいという自然の本能に逆らって、自分が体を緊張させていることに気がつきました。実際、まるで私の体は子供たちが体験している震えを体験したがっているかのようでした。でも、私は震えなかった、またはそうさせることができませんでした。そのどちらかは分かりません。ただ、もし、自分に許せば、全身で震えるだろうことは分かっていました。
 爆撃が終わった時、私は何気なく、子供たちが震えていたこと、自分も震えたいと感じていたことを、そこにいた大人たちに話しました。するとみんな、「自分も震えたいと思った。でも、子供たちに大人も怖がっていると知られたくなかったので、それはできなかった」と告白したのです。

 この反応はどの大人にも共通しています。神経学者はこの現象を次のように結論付けています。震えることによってストレスを解放する能力を社会的に失ってしまったと。子供や野生動物と違い、「恥ずかしいから」と言って私たち大人はこの自然に震える体験を抑圧してきたのです。
(同)

          ◇

 次の瞬間に爆弾が落ちて死ぬかもしれない、そんな状況は私には想像もつかないが、いつどこから殴られるかわからない状況なら経験したことがある。それは6年間つづいた。小学生のときにあった、いじめだ。

 面と向かって殴りかかってくる者はまだいいのだが、怖かったのは、後ろからの攻撃だ。音を立てず、そーっと忍び足で近づいてきて、いきなり殴られるのである。振り向く私をみて、彼らは嬉々として散っていく。
 はじめは休み時間だけだったので、それならまだいいのだが、やがて彼らは授業中にも、先生が板書している隙(すき)に私を殴るようになった。それもはじめはうしろの席の男だけだったが、離れた席からも、そーっと立ってわざわざ殴りにくる者が現れた。
 それでも、こぶしでやられるうちはまだよかったのだが、そのうち電流を流されるようになった。クラスメイトのあいだでは「カチンコ」と呼ばれていたが、使い捨てライターの点火部分を取りだしたもので、プラグの先を体にあてて「カチン」とやると、静電気を100倍、1000倍にしたような痛みが走るのである。それを授業中、うしろから突然やられるようになった。
 逃げることもできない。相手が1人ならまだいいのだが、5人6人がよってたかって襲うのだから文字通り手も足も出ない。

 こうして6年間、私は学校にいるあいだじゅう、びくびくしていた。たしかに、震えていた記憶があるのである。

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 いまの子供たちも同じ世界に生きているのだと思います。
 戦場なら逃げられますが、学校は逃げられません。
 戦場なら味方がいますが、いじめの世界は自分ひとり以外全員が敵です。
 戦場ならこちらも武器を持って反撃できますが、教室ではひたすら縮こまって耐えるしかありません。
 戦場なら戦いが終わりますが、小学校は1年からいじめられ始めると向こう6年は続きます。
 あの絶望感ったらありません。





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