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亀井善太郎
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政党のガバナンスを考える/政党法・政治とカネ [2010年09月16日(Thu)]
ここのところの台風や低気圧は喘息のわが身にはこたえます。
今日はこれから福岡、あちらの天気は良さそうです。

代表選が終わりました。
人事、そして、いよいよ国会が始まります。
雇用、経済、社会、外交・・・。文字通り"待ったなし"です。
そして国会は"ねじれ"ていますが、菅さんに打開策はあるのかはまったく見えてきません。

それにしても大事なのは人事です。
"政策"論はいろいろありますが、結局は"人"。
とくに政治主導を発揮するのであれば、○○省ではない大臣、つまりヨコ串を担う△△担当大臣が大切だと思います。
自民党政権当時からヨコ串担当大臣は軽く見られていますが、政権交代したからこそ、政治主導の具体化としてヨコ串担当大臣にがんばってほしいのです。
まちがっても関連する省庁の大臣と兼務させるような愚かなことを繰り返してはいけません。
改めるべきはしっかりと改めてほしいと切に思うのです。

さて、今日は皆さんへのご案内です。

構想日本で毎月実施している恒例のJIフォーラムですが、今月は9月30日に開催されます。

テーマは「政党の自己統治能力(ガバナンス)の確立を」です。

我が国では、「政党交付金を受ける政党に関する法人格付与に関する法律」という特殊目的のものを除いて、政党運営全般について定めた法律はありません。
そして、この法律は一定の要件を満たせば政党を"公益法人"と擬制して、通常の社団法人や財団法人と同視するだけです。
政党助成金という国民の税金(国民一人あたり300円くらい)を受け取っていること、そして何よりも、日本の舵取りに直接影響を与えることなどを考えれば、その組織や意思決定、機関、政策綱領・マニフェスト決定、選挙に関する候補者選定、事業計画立案、予算管理など団体としての基本事項について、最低限の基準を定めるのは当然のことです。
ドイツや韓国など諸外国では、こうした趣旨のもと、「政党法」を制定しています。

政治とカネの問題、国民との約束であるマニフェストの問題、代表選や総裁選のあり方等々、政治の多くの問題は、実は我が国の政党のガバナンスが未成熟だからと考えることもできます。

こうした根本の問題でありながら、政治家にとっては、自分自身のことで、より厳しいことを要求されるからなのか、そもそも、そうしたことに無頓着な人が多いからなのか、前向きな議論にはなりません。

こうした問題について、皆さんと共に考え、議論を興すきっかけとするのが、今回のJIフォーラムの目的です。
(このフォーラムの前後のタイミングで、国会議員向けアンケートも実施する予定です。)
僕自身もパネリストとして参加します。
(ちょっと前の予定があって、遅れての参加となります。)

皆さんも是非ご参加いただき、議論を興すきっかけを作っていただければと存じます。

代表選、また別の見方/"司令塔"のあり方 [2010年09月10日(Fri)]
民主党代表選も終盤を迎えました。

政策論というか、この国が向かうべき道すじについての議論は相変わらず低調ですが、少しだけ見えてきたことがあります。
それは"財源"をどうするかということ。
そんな議論からいろいろなことが見えてきます。今日はそんな話です。

菅さんは、税制改革による国民負担増は必要と主張しています。
これは、「まあ、常識的判断」という評価もあれば、「財務相時代の財務省官僚のご進講が効いた」といった揶揄する見方もありますが、まあ、双方とも当たっているのでしょう。
国民から集めて、そのまま国民に返す"社会保障"分野を見れば、明らかです。
高齢化の進展に伴い、毎年1兆円もの社会保障費が拡大している中、それだけの財源を捻出はできていません。
世代間の負担の格差をこれ以上拡大させないためにも、消費税の税率アップは避けられないと僕も思います。

一方、小沢さんは、「まだ無駄がある」、「自分ならまだ削れる」と主張しています。
こうした発言は耳ざわりがよいので、有権者受けするものですが、じっさいのところ、国の将来を考え、決めていかねばならない政治家の発言としては極めて無責任です。
「増税の前にやることがある。」
そうした発言でどれだけの時間が過ぎてしまったことでしょうか。
気がつけば、膨大な借金、世代間格差はますます拡大しています。

財源については、今さら、どちらに軍配を上げるかは改めて申し上げるまでもありません。
ところが、この議論ですが"意志決定システム"から見ると違った見方もできます。

昨年の総選挙後に実施された"事業仕分け"は「財源捻出」が目的でした。
しかしながら、事前に期待されただけの財源を捻出することはできませんでした。

"事業仕分け"では、「○○という政策目的があるが、いまのそのやり方では目的に照らした成果は十分に出ていないので、やり方の見直しが必要」とか、「長年やってきた事業だが、すでに目的としていた○○は環境の変化で存在していないので、その事業は不要」といったカタチで、予算を削減することができます。

違う言い方をすれば「政策目的ははじめにありき、これを踏まえて、やってみてどうだったか」というやり方でしか、財源の捻出に対するアプローチはできないということです。

"事業仕分け"による財源捻出のやり方には、限界があると考えるべきです。

では、財源をもっと大きく絞り出すやり方はないのでしょうか。

財源を絞り出すというよりも、お金の使い道を大胆に見直すやり方として、ポートフォリオマネジメントがあります。
ポートフォリオマネジメントとは、限られた予算のもとで、組織の方針に沿って、最大限の成果を発揮するために、ヒトやカネなどのリソースを配分することです。
もちろん、その配分に伴って、予算が出ない事業もありますし、その一方で予算を増やす事業もあります。
民間でも、多くの企業が取り組んでいます。
公の場合、"方針"なるものが難しいので、企業のようには単線的には進めることは難しいのは現実ですが、同じように取り組むべきなのは言うまでもありません。

ポートフォリオマネジメントをする上で重要なのが"司令塔"です。
トップ直属におくことが重要です。

ここで、民主党のマニフェストを振り返ってみましょう。

まずは、2003年、菅代表の下で作られた最初のマニフェストからです。



"司令塔"機能をしっかり担えそうな見事なまでの構想が書かれています。

ここでのポイントは、予算の編成・調整機能を首相官邸に置いていることです。
何を優先して、何を止めるかが、官邸で判断できるようになっているのです。
「国家戦略局」構想の原案はここにあると思われます。

さて、次に2005年の岡田代表当時のマニフェストです。
こちらは2003年に比べて少し進化しています。



字が小さいので、少し大きくしてみましょう。



「行政刷新会議」は、まさに今あるもの。
「国家経済会議」が、ポートフォリオマネージメントの"司令塔"ですね。

この方向で進んでいれば、よかったのですが、その後、マニフェストからは、この種の記載が消えてしまいました。
2007年、小沢代表のマニフェストには「国民の生活が第一」と言うだけあって個別政策に重点が置かれたのか、どこにも、そうした記載がありません。

ところが、2009年の鳩山マニフェストでは「5原則・5策」というカタチで復活しました。



確かに「国家戦略局」構想が書いてあります。



僕自身の実感としては、国民がなぜ政権交代をさせたかといえば、個別政策への期待もあるかもしれませんが、というよりは、今までの"国の意思決定プロセス"を替えてほしいという声が一番大きいと思うのです。

今まで通りの財務省主導の査定型予算編成プロセスでは、"事業仕分け"的な個別事業ごとの限定的削減にとどまります。

意志決定プロセスを"司令塔"型に変えることができれば、「これをやめて、これを増やす」といった判断になるので、従来とは異なる大きな金額の予算の入れ替えによる財源の捻出が可能になるのです。

そんな大事な「国家戦略局」だというのに、菅さんは"断念"したと伝えられています。
(じっさいのところ、"断念"したかどうかも定かではありません。)

さて、代表選の話に戻りましょう。

「意志決定プロセスを変えない決断(をしたと伝えられている)」し、そして「財源はない」と主張する菅さん。
「財源はあるはず」と主張したけれど「意志決定プロセスをどうするかは何も言わない(むしろ、過去には優先順位を落とした)」小沢さん。

たしかに増税は避けられない道です。

しかし、だからといって、これまでと同じやり方でカネの使い方を決めてよいわけではありません。

代表選の結果は誰にもわかりません。
誰がトップになろうとも、トップ自身の構えが問われています。
足元にあるポテンシャル/大分県竹田市を訪問 [2010年09月02日(Thu)]
この週末は静岡県沼津市で事業仕分けの仕分け人。

一日置いて火曜日、水曜日は大分県竹田市に行ってきました。
城下町、温泉町、豊かな農場、自然溢れる高原などなど、多くの魅力を持った町です。

竹田市は大分県と熊本県の県境。

空路では、じつは大分空港よりも熊本空港の方がアクセスの便がよい所です。
じっさい、観光圏はお隣の熊本県阿蘇といっしょに展開されています。

そんなアクセスはちょっと不便な竹田市ですが、多くの先進的な取り組みが光ります。

農村回帰によるUターンやIターン、農村商社を活用した"農"の流通改革、エコミュージアム、東京事務所長や政策審議官などの外部人材の登用、大学との連携(分校の開校等)、海外都市との市民レベルの交流、農家民泊、温泉療養保険制度の創設などなど・・・。
これら数々の取り組みを市役所庁内ばかりでなく民間も巻き込んだ横断プロジェクトを立ち上げ、推進しています。

そのリーダーとして、こうした取り組みを引っ張るのが1年4カ月前に就任した首藤勝次市長です。
今回の訪問では、市長に様々なお話を伺うことができました。
驚いたことに、なんと、上に挙げたプロジェクト、市長就任から1年4カ月で67ものプロジェクトを立ち上げ、進めているのです。

中でも、日本初の温泉療養制度の創設には大きな期待が寄せられています。
来年4月からの立ち上げを前に、様々な課題を克服すべく、組織の壁を越えてプロジェクトが進められています。

"湯治"は古くから伝わる病気療養の方法です。
現在の医学でも、湯治の効用は評価されていますが、我が国の保険制度では対象としていません。
こうした取り組みは、病気になってから対処する"治療"ではなく、病気にならないようにすう"予防"までを視野に入れたもので、我が国の医療費の削減にも寄与するかもしれません。

日本にはたくさんの温泉地があります。
ところが、多くの温泉地が、かつてのにぎわいを失い、元気を無くしています。

竹田市の先進的な取り組みが評価され、各地に広がることができれば、各地の温泉地が元気になるばかりか、日本の医療保険制度そのものを変える力を持つようになるかもしれません。

それこそが、本当に日本を変える力なのだと思うのです。

首藤市長がおっしゃいました。
「多くの人が自分の町のポテンシャルを見ていない。
 自分たちの足元をもっとよく見るべきだ。
 この町が持っているポテンシャルをしっかり活かすことができれば、
 どんな町でも大きく変わり、もっと元気になることができる。」と・・・。

まったくそのとおりです。

自分たちの町がつくってきた歴史、織り重ねてきた文化、そして自然。
そうした風土に向かいあい、もっときちんと見ることで、我が町を生き返らせるヒントを得ることができます。

国から補助金を取ってくるのが政治の力ではありません。
自分たちが持つ本当の力、本当の価値に"気付き"を与え、その町に住む人を本気にさせるのが政治の役割だと改めて気付いた竹田訪問でした。

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右側写真は竹田市の名産の姫だるまです。
家庭円満や厄よけなどの御利益があるそうです。
写真だけでは、御利益は薄いかしら・・・。