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亀井善太郎
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facebookをご覧ください。 [2017年03月31日(Fri)]
最近はもっぱらブログはお休みしています。
考えや活動については、facebookに書いています。
ご関心がある方は、こちらをご覧ください。
https://www.facebook.com/zentaro.kamei
Posted by 亀井善太郎 at 21:26 | この記事のURL
軽減税率の導入を懸念するアカデミア有志による声明 [2015年12月14日(Mon)]
2015年12月14日

軽減税率の導入を懸念するアカデミア有志による声明


2017年4月の消費税率引き上げに合わせて食料品全般を対象とした軽減税率制度の導入を含む税制改正が与党において合意された。

軽減税率制度は、欧州等の先行実施している諸国の実情を実証分析しても、所得再分配効果を期待できない(低所得者対策にならない)、その実施に際しては多大な社会的コストを伴い国民生活の混乱を招きかねない、軽減税率の商品別採択を巡って利権政治が横行しがちである等の問題がある。したがって、我々は、社会保障・税一体改革の原点に立ち、軽減税率制度の導入には反対の態度を貫いてきた。

軽減税率制度の導入は国民生活や経済等に直結する政策決定であり、かりに、社会的合意を経て制度導入をする場合にも、欧州型インボイスを採用し、いわゆる益税や不正の防止徹底等、消費税をはじめとする税制への信頼を確保していくことが不可欠である。こうした十分な準備を整えることなく、現状の内容や課税方式によって導入されることがあっては、将来に禍根を遺す税制の改悪になりかねないと我々は大いに懸念している。

政策関係者はもちろんのこと、広く国民全体で、この制度に内在する、メリットをはるかに超えたデメリットを議論し、あるべき社会的な合意形成を図っていかねばならない。我々は、まずは、アカデミア(経済学者、法学者、政治学者、シンクタンカー等)を対象に本声明を行うこととした。


発起人(五十音順)

赤井伸郎 大阪大学経済学部教授
井伊雅子 一橋大学国際・公共政策大学院教授
小塩隆士 一橋大学経済研究所教授
加藤久和 明治大学政治経済学部教授
亀井善太郎 東京財団研究員兼政策プロデューサー
川出真清 日本大学経済学部教授
佐藤主光 一橋大学国際・公共政策大学院教授
田近栄治 成城大学経済学部特任教授
土居丈朗 慶應義塾大学経済学部教授
冨田清行 東京財団研究員兼政策プロデューサー
西沢和彦 日本総合研究所調査部上席主任研究員
三原岳 東京財団研究員兼政策プロデューサー
森信茂樹 中央大学法科大学院教授

賛同者の皆さま(五十音順、12月24日23時時点まで)

浅妻章如 立教大学法学部教授
安部和彦 国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授
池田信夫 アゴラ研究所所長
板谷和也 流通経済大学経済学部准教授 
市橋勝 広島大学国際協力研究科教授
伊藤隆敏 コロンビア大学教授、政策研究大学院大学教授
井堀利宏 政策研究大学院大学教授
石瀬寛和 大阪大学国際公共政策研究科講師
岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授
大竹文雄 大阪大学社会経済研究所教授
大崎貞和 野村総合研究所未来創発センター主席研究員
大湾秀雄 東京大学社会科学研究所教授
岡室博之 一橋大学大学院経済学研究科教授
小黒一正 法政大学経済学部教授
加藤淳子 東京大学大学院法学政治学研究科教授
上村敏之 関西学院大学経済学部教授
川崎一泰 東洋大学経済学部教授
川田剛 明治大学大学院グローバルビジネス研究科前教授 
熊谷哲 政策シンクタンクPHP総研主席研究員
小林航 千葉商科大学政策情報学部准教授
小林庸平 三菱UFJリサーチ&コンサルティング副主任研究員
河野敏鑑 専修大学ネットワーク情報学部講師
酒井克彦 中央大学商学部教授
島澤諭 エコノミスト
鈴木 泰 立命館アジア太平洋大学大学院経営管理研究科教授
竹田憲史 青山学院大学国際政治経済学部教授
竹田陽介 上智大学経済学部教授
田中弥生 大学評価・学位授与機構 評価研究部 教授
中泉拓也 関東学院大学経済学部教授 
中島朋義 環日本海経済研究所主任研究員
中田大悟 創価大学経済学部准教授
永久寿夫 政策シンクタンクPHP総研代表
中室牧子 慶應義塾大学総合政策学部准教授
西沢利郎 東京大学公共政策大学院特任教授
深尾光洋 慶應義塾大学商学部教授
別所俊一郎 慶應義塾大学経済学部准教授
星岳雄 スタンフォード大学教授
細川甚孝 政策支援合同会社代表
本間正人 京都造形芸術大学教授
溝口哲郎 麗澤大学経済学部准教授
宮崎智視 神戸大学大学院経済学研究科准教授
安田洋祐 大阪大学大学院経済学研究科准教授
山田肇 東洋大学経済学部教授
油井雄二 成城大学経済学部教授
横山泉 一橋大学国際・公共政策大学院講師
渡辺智之 一橋大学国際・公共政策大学院教授
渡邉真理子 学習院大学経済学部教授

引き続き、本件にご賛同いただけるアカデミアの皆さま(経済学者、法学者、政治学者、シンクタンカー等)においては、その旨、事務局(亀井 メールアドレス:kamei(at)tkfd.or.jp、at部分は@に変更)までメールください(お名前、ご所属を記入の上)。
随時、賛同者のお名前を社会に共有していきます。
Posted by 亀井善太郎 at 13:30 | この記事のURL
久しぶりなので近況も含め・・・。 [2013年05月19日(Sun)]
この週末から2013年度開講しました「東京財団週末学校」。
暮らしに一番近い役所・役場である市区町村職員を対象とした人材育成プログラムです。

全国から集まる精鋭の皆さんと共にまた新しい半年が始まります。
ある参加者から言われた一言。

「亀井さん、ブログ更新待ってます。」

そうなんです。ずっと心のどこかで気になっていたことでした。
facebook(こちらにはほぼ毎日いろいろアップしています。すいません。)は便利だし、そっちに書いているとブログとの使い分けがよくわからなくなってしまい、だんだんとブログは放置ということになってしまっていました。

こりゃいかんと近況報告や最近の問題意識も兼ねて、少し書きておきたいと思います。

以前まとめた政策提言、このブログの左にもアップしていますが、このうち「将来推計」の話は着実に具体的な政策として進んでいるところです。
昨年の1月に日経新聞の経済教室にも要約を掲載し、いろいろな形で取り上げていただいたこともあって、超党派の国会議員の皆さんとの議論を重ねるところまできました。
来月をめどに具体的なプランを示し、参院選後にはロードマップに載せ、進めていきたいと思います。

この話のポイントは、政策の検討や決定の根拠となる「数字」や「情報」の政府による独占を崩そうというものです。さらに申し上げれば、個々の省庁(局)が自らの政策立案に都合のより"お手盛り"の数字になってしまっていることは最近では誰もが知ることです(年金はその代表例ですよね)。そうした問題に加え、国会の機能強化も併せて考え、具体的なプランとしているところですので、もうしばらくお時間をいただければと思います。
(具体的な提言の趣旨等はこちらをご覧ください。)

新しく立ち上げたのがCSRプロジェクトです。
基本的な問題意識は、先日、東京証券取引所で講演させていただいたレポートにも書きましたが、publicの実現です。

社会をよりよいものにしていくには、政府による政策の実行はもとより、市民自身によるアクションも必要ですが、企業の行動も大切です。政府の役割が相対的に小さくなっている現代では、より重要になっているかもしれません。

しばしば、"public”とか"公"というと政府のやることだと考える人もいるかもしれませんが、それは大きな誤解です(まあ、冷静に自分のまわりで起きていることを考えれば、すぐにわかることですよね)。
講演でも申し上げたことですが、現在、日本経済をめぐっては、アベノミクスという言葉を通じて、政府の役割の再認識が行われています。しかし、これは、民主党政権期と比較しただけの話であって、社会の課題に対して相対的に政府の守備範囲が小さくなっているトレンドは世界共通であり、我が国に限った話ではありません。

そもそも「社会の課題」は何なのか、そのために企業や市民は何ができるのか、何をすればよいのか、そんなことを問題提起していきたいと思っています。
例えば、「子どもの貧困」の事実はほとんどの人が断片は知りながら、見たくない現実であるが故に見逃されている「社会の課題」です。
こうしたことは冒頭の週末学校同様、じっくりと時間をかけてやっていきたいと思っていますが、折に触れていろいろ「問いかけ」をしていきたいと思っています。

改めて考えてみれば、いまやっていることをすべてここに書けるはずもなく、ホントに頭出しのようなことになってしまいました。

そんな中、この記事のお話として、先日の議論から考えたことを少し書いておきたいと思います。

CSRの関連で、ある方(誰でもご存じの方ですが、どなたかはナイショです)とお会いし、いろいろお話をさせていただきました。その議論からヒントになった話であり、皆さんに共有しておきたいことです。

上にも書きましたが、日本で"公"というと古くは「お上」のことでした。
朝廷や幕府を公儀と呼んだりもしましたよね。
ところが"public"は、いわゆる政府のことではありません。

丸山真男はタテの"公"、ヨコの"public"と呼び、これは福沢諭吉が最初に唱えたのだと言います。
僕もそのとおりだと思います。
社会が対話を重ねることにより、議論を活発にすることにより、社会全体によってよりよいことを見出し、そのための方法をみんなで実践するのヨコです。

福沢諭吉は「学問のすすめ」でこう書いています(第五編)。

国の文明は上政府より起るべからず、下小民より生ずべからず、必ずその中間より興りて衆庶の向かうところを示し、政府と並立ちて始めて成功を期すべきなり。

古の政府は力を用い、今の政府は力と智とを用ゆ。古の政府は民を御するの術に乏しく、今の政府はこれに富めり。古の政府は民の力を挫き、今の政府はその心を奪う。古の政府は民の外を犯し、今の政府はその内を制す。(中略)この勢いに乗じて事の轍を改むることなくば、政府にて一事を起せば文明の形は次第に具わるに似たれども、人民には正しく一段と気力を失い文明の精神は次第に衰うるのみ。


福沢が言う独立自尊とはそういうことなのだと思います。
独立した人民による議論やそこから作られる世論や意識こそが文明の根幹であり、政府が自らの役割を間違えると、むしろ、その根幹を弱めてしまうことを懸念しています。

この言葉は明治の言葉です。
しかし、いまこの時代こそ、よりその意味は重いように感じるのです。
政治に携わる人はその懸念があることを肝に銘じておかねばなりませんし、何より、私たち自身が"public"を担う気概と力を持たねばなりません。

日々伝えられるニュースは「文明の精神」を衰えさせるには十分なものばかりのように感じます。
政治家の力量を嘆いたり憂うのは簡単なことです。しかし嘆いても憂うばかりでは何もよくはなりません。
自分自身で担うべきことをいかに探し、具体的な実践につなげることができるか、そここそが大切なのだと思っています。

これは皆さんへの問いかけであると同時に僕自身への問いかけでもあります。

governmentではないpublicをもっと大きくしていくこと。

道のりは容易なものではありませんが、地道に愚直にがんばっていきたいと思います。







Posted by 亀井善太郎 at 23:00 | この記事のURL
心のデフレを乗り越える [2013年01月16日(Wed)]
今日の話、なんか新しい宗教みたいですが、そういうハナシではありません。

昨日、大垣で出会った地元の経営者とお話しているときにふと自分の口から出てきた言葉が「心のデフレを乗り越える」です。

まずは昨日の岐阜訪問のあらましを共有しておきます。facebookで読んだ方は重複してしまいますので、以下3段落くらい(写真のちょっと上まで)読み飛ばしてください。

昨日訪問したのは岐阜県を中心に活動されているG-netというNPO法人、そして、彼らと協働している企業経営者や大学教授の皆さんのところです。

G-net(代表理事:秋元祥治さん)は、大学生が地元の中小企業に長期(半年程度)のインターンシップをする"つなぎ役"となっているNPOです。
インターンシップというと遠い言葉に聞こえるかもしれませんが、要は大学生が本気で中小企業の社長の下に弟子入りし、社会の厳しさと温かさ、そして、自分自身の可能性を見極める場をつくることにほかなりません。
地元の企業にとっては、大学生を受け入れることで新しい販路を開拓させるなどの事業拡大のきっかけとすると共に、時には、長年コリ固まってしまった社長と社員の関係に変化をもたらす等のいろいろなインパクトを産み出しています。

そんなうまいハナシがあるのかしら?と思うかもしれませんが、そのための準備はここに書ききれないほどのものがあります。
コーディネーターと一言ならおしまいですが、G-netがやっていることは多岐に及びます。
大学生向け説明会の開催、やる気溢れる大学生人材の選抜、受入企業の掘り起し、半年間のテーマの設定、学生・企業双方への進捗状況の確認、1か月ごとのフィードバック面談、次に来るインターン学生への引き継ぎサポート等々・・・。
これだけのことをやり遂げる彼らの専門性はきわめて高いものがありました。なるほど、これだから、うまくいくのですね。。。
こりゃなかなか、神奈川県西部あたりで同じことをやるにしても、いろんな準備が必要そうです。
(そこらへんの話はまた改めて・・・)

そんな中、出会ったのが、大垣の経営者の皆さんです。
「心のデフレ」の話は、その中の一人、大橋さんとのお話の中でふと出てきた言葉でした。

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大橋さんは大垣市で大橋量器という会社を経営されています。
檜(木曽等の産地で出た建築資材の木材の端材)から"ます"を作っていらっしゃいます。
9名の従業員の皆さんが手分けをして"ます"を作っていらっしゃいます。
檜を削っているので工場全体がなんだかよい香りです。

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もともと、大垣は全国のますの8割を生産する日本一のますの町です。
けれども、ますを使う場面をちょっと想像してみればわかりますが、ますの需要は先細りです。
そんな"ます"のすばらしさをもっと伝えたい、日本全国はもちろん、世界にも・・・。でも、いまいる従業員は生産で手一杯だし、営業もいままでの得意先を回るのは自分だけ。それでは、思っているばかりで何も現実化しない、そんなことに悶々とされていたと言います。

G-netの学生インターンを知った当初は、そんなに期待はしていなくて、学生を育てるのも社会貢献かなあという軽い気持ちだったということです。
しかし、G-netの皆さんや学生さんとお話しているうちに、ずっと悶々としていた思いとつながったのでしょうか、新しい販路開拓のため、ますの魅力を新鮮な観点から再発見するため、学生との協働が始まりました。

学生がインターンとして来るのは半年間と期間は限られていますが、限られているからこそ、具体的な結果を追求し、結果を出すことにこだわり、気がつけば、売り上げも拡大していたと言います。

五角形のます、合格祈願ますの販売拡大もそうした活動の成果だと聞きました。
いまでは、海外での展示会の準備や新しいますの使い方の開発等、いろんなことを学生に任せているそうです。
ついには、インターンで来ていた学生が大橋量器に入社するところまできてしまいました。

思わぬ副産物は、社員と社長の関係に変化が生まれたことだと言います。
新しい風が入るとギスギスもすることもありますが、そういうよい効果ももたらすのですね。

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(インターン学生が売り込んだ「ますフラワー」:大橋量器webshopより)

大橋さんのお話を伺っていて、ふと感じたのが、大橋さんがとにかく前向きなことです。
学生との協働といっても、全部が全部、うまくいくはずはありません。
(僕も学生さんといっしょにやることが多いですから、よくわかります・・・。)
期待以上の活躍をすることもありますが、期待外れはけっこう多いものです。まあ、それが学生さんといっしょにやる面白さでもあるのですがね。

面白そうだと思ったら"やってみよう"。
やりたいという彼の気持ちを信じて"やってみよう"、"任せてみよう"。
ダメになるかもしれないけど、ダメだと思える理由はいくらでもあるけど、それでも"やってみよう"。
失敗したとしても、失敗する経験ができるから"やってみよう"。

組織で仕事をしていると、しばしば、できない理由ややるべきでない理由をたくさん言える人に出会います。
僕の経験で申し上げれば、偏差値の高い組織ほど、そういう人が多いような気がします。
たしかに、彼が言う「できない理由」はもっともらしいですが、それでできなければ、何もかもどんどん小さくなるばかりです。

以前、自分が成長するためには1.01の掛け算を続けなければならないということを教えていただいた話をこのブログに書きました。
1.01を掛けていけばどんどん成長できるけれど、0.99を掛けはじめた途端、それはゼロに向かうという話です。

その話をふと思い出して、大橋さんとの会話の中でふと口から出たのが、
「心のデフレを乗り越える」です。

未来がわかる人はどこにもいません。
リスクのない、苦労のない未来はどこにもありません。

物質的に豊かになった結果、心のデフレが起きているのだとすれば、なおさら、僕たちはこれを乗り越えていかねばならないのだと思います。
ふと考えれば、自分自身、いろんな場面で心のデフレに遭遇します。
そこをどう乗り越えるのか、その逆に考え前に進むこと、そう考え行動していきたいものです。

「アベノミクスが効くのか」という議論が盛んにおこなわれていますが、GDP成長率とか、株価ばといった経済の数字ばかりを見るのではなく、また、ちょっと消費に踏み出すとか、そういう話でもありません。
大切なのは、もしかすると多くの日本人の中に深くある「心のデフレ」を乗り越えるために、私たち自身が何ができるのか、それぞれに考えなければならないのだと改めて思いました。

大橋さんとお話させていただいたのは「ますや」のお店の中でした。
お店にあるたくさんの"ます"は、ます=立方体という僕たちが知っているますを超えたものばかりです。
ますを追求していくとこれだけのものができてくるし、そこには無限大の可能性があるようにも感じました。
もしかすると、ますという制約があるからこそ、自由なカタチを産ませることができるのかもしれません。
そう言えば、福沢諭吉が言った「不自由の中に自由がある」という言葉ともつながった気がしました(厳密に言えば、福沢先生が使ったのはこの意味ではありませんが・・・)。

心のデフレを乗り越える。
これは、日本の国全体というちょっと遠いハナシではありません。
自分自身の問題であり、自分の周りの組織の問題でもあります。
それが積みあがって、日本社会全体になっていくというボトムアップの話なのです。

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いただいた"ます"を手に考えたいと思います。
まずは、この取組みを神奈川県でどうしたらできるものかなあ・・・。
Posted by 亀井善太郎 at 23:32 | この記事のURL
2013年、新政権への期待と注文 [2013年01月11日(Fri)]
遅ればせながら、今年もよろしくお願い致します。

ブログの更新がなかなかできず、すいません。
facebookに慣れてしまうとブログはどうしても後回しになってしまいます。
日々の活動や考えていることをちょこちょこ書いていますので、そちらもご覧いただければ幸いです。

さて、本日の東京財団フォーラムは「新政権への期待」です。

東京財団フォーラム(U-STREAM中継)

東京財団のメンバー総動員でやりますので、当然、一人あたりの時間は少なく、十分にお話はできません。そんなわけで、今日申し上げることの趣旨を補足する意味でも、少し、ここに書いておきたいと思います。

今年の経済がどうなるのか、エコノミストの方々がいろいろな意見をおっしゃっているので敢えてそこは控えたいと思います。
しかし、政策を専門に見ている立場から申し上げれば、もっとも大切なのは、いまやっていることがどういう影響をもたらすのか、やがて何が訪れるのか、やがてくるイベントやスケジュールも含め、そこを論理的に考えねばなりません。

そう考えると、政策面から経済財政を見れば、今年のポイントを3つ挙げたいと思います。

1.景気は本当に回復するのか
2.企業経由の政策は本当に社会をよくするのか
3.政府のものの決め方や検証の方法はいままでとおりでよいのか

そもそも、アベノミクスとは何か、改めて整理しておきましょう。
この図は昨年末の総選挙の対立構造を示したものです。
これをご覧いただくとわかるのですが(英語ですいません、総選挙前に外国人に説明した資料の一部なもので・・・)、縦軸は消費税増税への賛否、横軸が市場(企業等によって構成される供給者サイド)の信頼の高低です。
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市場への信頼が低い民主党等は国民に予算を直接給付することにより、政策を進めます。市場への信頼が高い自民党は市場を使って社会にアプローチをします。
もはや、どちらが大きい政府がわからない状況においては、政府のお金の使い方、そのアプローチの違いがもっとも大きなところでしょう。
というわけで、アベノミクスは市場経由で社会にお金を出す政策です。
産業や企業優遇と言われますが、そういうわけではなく、そのほうが家計に対しても効果が高いと考えているからです。

では、これを踏まえて3つのポイントを考えてみましょう。

まず1点目、景気の回復です
財政・金融の政策を総動員している現政権ですが、おそらくGDPは改善するものと思われます。乗数効果がどれほどのものかは別にして、これだけ巨額の財政支出をし、日銀が金融緩和をすれば、GDPは伸びるに決まっています。

しかし、リスク要因もあります。もっとも大きなリスクは財政の悪化による国債の信用失墜、これに伴う金利上昇です。日銀がお金を刷るわけですから、インフレーションも同時におきる可能性もあり、注意が必要です。
すでに長期金利は上昇しており、そうした懸念を映じているものと思われます。
これ以外の要因でいえば、例えば3月で切れる金融モラトリアム法案です。麻生金融相は打ち切りの意向を示していますが、中小企業を中心に影響は甚大です。デット・エクイティ・スワップ等の環境整備等も進められていると伝えられていますが、総動員された政策と共によい方向に働くのか、効かなかったときの追加的な対応も含めて、どのような政策対応が打ち出されるのか、ここは注目しなければならないポイントです。

2点目の企業経由の政策の是非ですが、これは予てから議論されている内容です。
企業の利益水準も現預金水準も高いのに、それが雇用や投資に流れないという問題です。
原因としては事業の取捨選択が進まない企業経営の問題や為替の変動の大きさ等、様々な指摘がありますが、少なくとも、これまでの企業経由の政策が社会全体に広く及ばなかったのは事実です。
これらの反省を踏まえれば、企業経由の政策ばかりでなく、個人にいかに手当てをするのかという政策もきわめて重要です。

民主党政権下で指摘されたような「もらいっぱなしで堕落していく」モラルハザードはいけませんが、いまの若年層の働き方や家計の現状、さらに言えば、1月から始まった復興増税(所得税等)も考えれば、上記の中小企業も含めて、家計に近いところにとっては厳しい材料も多いの現状です。
経済再生と社会保障制度改革はクルマの両輪です。
「新聞やTVでは景気がよくなったと言うけど、自分には関係ない」といった声が聞かれることが無いよう、これまでの反省を踏まえた丁寧な政策対応(セーフティネットの構築等)も忘れずに(これは後で話しがあると思いますが)、しっかりとやっていかねばなりません。

・税・社会保障制度の抜本改革を考える上での7つのポイント
(丁寧な政策対応の詳細は↑をご覧くださいませ)

最後に3点目「政府のものの決め方や検証の方法はいままでとおりでよいのか」です。本来、政策というのはうまくいったか、いかなかったのか、この評価検証が肝心です。
ところが、我が国では、政策の検討においては「推計」、評価においては「評価検証」、それが、行政、それも個々の政策を担当する各省が評価検証に必要な数字を独占し、言わばお手盛りでやってきました。
これでは、ちゃんとした評価もできませんし、政策の追加や変更もうまくいきません。

とくに今年のような、誰も経験したことのない状況、ギリギリの財政運営をしている場合は、推計も、評価検証もきわめて大切です。

言い方は少しきついですが、いまでも"大本営発表"というのが、経済財政政策に関する推計や評価検証の実態であり、これを改めなければなりません。

では、どうするか、各国の動きを見ると二つのトレンドを見ることができます。一つは民間シンクタンクの活用、もう一つは立法府の活用です。
立法府を活用する米国では、CBO(議会予算局)があります。
皆さんもご存知の「財政の崖」はCBOが警鐘を鳴らし問題提起し、その後の活発な議論の背景にもCBOの存在がありました。政府とは独立した機関が経済財政の推計と評価検証を担うのです。それこそが政策決定の基盤として機能しているのです。

我が国の政治のひとつの問題が"単線思考"だということです。
強すぎる執行が違う意見を封殺してしまう、うまくいっているときはよいけれど、一度間違えれば、どんどん外れ、その修正もできない、そんな仕組みです。
これは政府のみならず、企業等の組織でも見られることです。東電しかり、オリンパスしかりですよね。
私たちは3.11の経験を通じて、単線思考の危うさをイヤというほど痛感したはずです。

・将来推計の抜本見直しを −日本の経済財政社会保障に関する将来推計の課題と将来像−

この国の政治が本当の意味で決められる政治になるためには、こうした制度整備が必要です。
また、上記したように、本年のようなこれまで経験したことがない、また、リスクサイドがきわめて大きい政策総動員をする場合には不可欠の仕組みです。
昨年の提言発表以来、超党派での検討の動きも始まっていて、なんとか、カタチになるよう、漕ぎつけたいと思っています。

日本に残された時間はそんなに多くはありません。
やらなければならないこともたくさんあります。
丁寧に、そして、確実に。一つひとつ、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
Posted by 亀井善太郎 at 16:40 | この記事のURL
人様の役に立つという志/2012年度週末学校修了式を終えて [2012年10月29日(Mon)]
2012年度東京財団週末学校(市区町村人材育成プログラム)の修了式を昨日行いました。
全国から集まった基礎自治体職員30名の代表者によるプログラムの集大成「私の政策提言」の発表で幕を閉じました。
じつは、この金曜日と土曜日の二日間、30名全員の発表を行い、ほとんどの人が"いろんな意味で"ダメだしをうけて(というか、別の言い方をすれば"炎上"し)、その最終提出期限は来月に持ち越さました。週末学校に終わりはない、つまり学びと実践はずっと続くと申し上げている僕としては、まあ、それでよいのかなあと思っています。

僕にとってもたくさんの学びと気付きを得た半年でした。
講師の皆さんはポートランド州立大学の西芝先生をはじめ、僕自身、心から尊敬する方々ばかりです。
彼らの言葉、彼らの行動から学ぶことは大いにありました。

たくさんの学びから、僕自身の心の中でいまも大きな鐘のように響いている言葉があります。
それは「人様の役に立つという志」です。
水俣から興った"地元学"の中心にあり、日々実践を重ねていらっしゃる吉本哲郎さんの言葉です。
吉本さんの一連の講義「地元学の実践」
吉本さんから研修生へのメッセージ


以前のブログにも書いたかもしれませんが、この週末学校でもそうですし、全国を回っていても気付くのが、公務員の元気の無さです。
先日の旭川で行った市民リーダーと行政職員共同の勉強会でも、自己紹介の前に「すいません」という言葉をつけたのは役場の職員でした。
その背景にはいろんなことがあるのだと思います。あえてここで書くつもりはありませんが、公務員バッシングという言葉もあります。
自分たちは怒られてばかりで感謝されていないと愚痴る職員も決して少なくはありません。日々の仕事はルーティンワークばかりで生産的でないという人もいます。たしかに現実はそのとおりかもしれません。

しかし、よく考えてみれば、すぐにわかることなのですが、叩かれようが、褒められなかろうが、僕は公務員というのはやりがいのある仕事のはずだと思っています。

それは人様の役に立つ仕事ができるからに他なりません。

もちろん、人様の役に立つことができるのは公務員だけではありません。
営利企業にいても、NPOやNGOにいても、主婦だって、学生だって、人様の役に立つことはできます。
みんなにとってよいことは何か、みんなで決めて、みんなで担う社会に日本はなってきていますし、そうしていかねばなりません。

しかし、人様の役に立つことができること、そのものを対象にし、それで生活を営むことができるというのが公務員という仕事のすばらしいところです。

僕はそれだけでよいのではないかと思うのです。
たとえ、理解されないことがあったとしても、そして、褒められなかったとしても、人様に役に立つために、愚直に誠実に進んでいくという志をもっていさえすれば、こんなに幸せな仕事はありません。

被災地で自治体職員とお会いします。
家族といまも離れ離れになっている方もいらっしゃいます。
ふと夜中に、そして、家族のもとから一人のアパートに帰るときに誰にもぶつけようのない怒りにおそわれるのだと言います。
しかし、それでも、彼は毎日目の前の仕事に取り組みます。
感謝の言葉があろうがなかろうが、頑張り続けています。
それは、人様の役に立つ仕事ができることに感謝しているからなのだと言います。
人様の役に立ちたくても、そんな場を持つことすらできない人がいまもいる。そこまで考えれば、自分は恵まれているのだと言うのです。彼らが人様の役に立つようになれるまで、自分ががんばらなければならないともおっしゃっていました。
頭が下がります。吉本さんの言葉を聞いて、彼らのことが心に浮かびました。

これは自分自身に照らしてもそうありたいと思います。
立場は違えども、人様の役に立つ志を持つという意味では、文字通り"同志"です。この気持ちを忘れずに、お互い切磋琢磨して頑張っていきたいと思います。

全国30の地元に帰る今日こそが本当のスタートです。
全国のみんなの奮闘を期待しています。



Posted by 亀井善太郎 at 08:32 | この記事のURL
大震災の経験から考えたこと/ポートランド報告D「日本の自治体職員による発表」 [2012年09月21日(Fri)]
しばらく空いてしまいましたが、ポートランド報告の続きです。

前のブログにも書きましたが、帰国以来、喘息が出ていて、ちょっとつらい状態でした。地道にいろいろやっているのですが、なかなかブログをアップするまでには至らず・・・。まあ、考えてみれば、9月はいつもダメなんですがね。

さて、水曜日の午前は市役所に行き、市長との面談に続いて、議会訪問、そして、マイノリティのリーダーシップ養成に取り組むお話を伺いました。

そういえば、民主主義の本質という前回の話について、先日のオバマの演説から大いに学ぶところがありました。

オバマ氏民主党大会演説(動画)

オバマ、ロムニー、どっちの支持でもないですが(個人的にはロムニーは前にいた会社の出身なので、そういう縁は感じますが・・・)、このスピーチの後半部分(27:11あたりから後)はちょっと感動します。

民主主義、自由、市民、責任、権利・・・。
自分たちの国や社会をかたちづくる根源について、それこそが自分たち自身のものであると認識し、国のリーダーがこれをスピーチのもっとも大切な部分に使うのです。

その後の日本の新聞の報道を見ると、彼の演説の前半部分の「政策と成果」に集中しています。それも大切なのでしょうが、後半部分を書こうとするメディアがいないことが、いま、日本にこういう議論や考えが無い象徴なのだと思います。

翻って私たちはどうなのか、政治家やメディアばかりでなく、いろいろな意味で自分のこととして改めて考えたいと思うのです。

-----------------------------
さて、話はポートランドに戻ります。
午後からは東日本大震災の被災地やこれを支援した自治体職員がポートランドやオレゴンの皆さんに自らの体験を訴えるという貴重な機会を得ることができました。
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東日本大震災では、基礎自治体(市町村)職員は言葉では何とも言い難い経験をしました。
それは被災地の職員のみならず、全国から応援に行った職員もそうです。

震災から1年半を経ようとする今こそ、彼らが経験し、そして考えたことをポートランドの皆さんに伝えることにしました。
ポートランド州立大学の西芝先生が中心となって準備をしていただいたおかげで、会場いっぱいの市民の皆さんにお話をする機会をいただくことができました。
予定された3人の発表者のみならず、他の基礎自治体職員も質疑応答には積極的に発言しました。

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地域に暮らす人々のつながりの強さ、そして、地域に対する誇りについて話し、彼らと共に生きていく決意を改めて示す人がいました。

津波を何度も経験した地域だからこその教えを自分のものにして、だからこそ地域の人たちといっしょにがんばっていこうと訴える人がいました。

基礎自治体お互いの助け合いの大切さ、地域におけるコミュニティが緊急時だからこそ立派に機能することを自分自身の体験を踏まえた話もありました。

非常時だからこそ実感した食と農の大切さを訴える人もいました。
地域コミュニティが農業を支える取り組み(community supported agriculture)を実践しているポートランドだからこそ、深く伝わるものがあったと思います。

涙なしでは聞けない話がたくさんありました。
単に悲劇としてではなく、いまそこにある事実として受けとめ、そして、そこから一筋の光を見出し、地域の人たちと共に地域の未来に踏み出す彼らの姿に感動しました。

それは、国も言葉も違っても、ポートランドの皆さんにかならず伝わったものと確信しています。

中には全米ネットワークの取材を受けた人もいて、いろんな意味で心に残る時間となりました。

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ポートランドから学ぶばかりでなく、彼らがポートランドの人たちに与えた勇気は"実践者"であるからこそホンモノです。
単なる学びを超えて、命を守る、暮らしを守る、そのために立場は違えども日々努力を重ねる、ポートランドと日本、それぞれに同じ考えやビジョンを共感するよいきっかけになったのではないかと思います。
Posted by 亀井善太郎 at 12:10 | この記事のURL
民主主義の本質(マイノリティをリーダーにする取組みから考える)/ポートランド報告C [2012年09月10日(Mon)]
水曜日の朝は市役所へ。
まずはサム・アダムス市長のお話を聞きました。
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彼からは住民とのコミュニケーション、とくにITを使ったやりとりについて、そのやりとりの背景にある彼自身の思いも含めて、いろいろと話を聞くことができました。
議会が始まる時間なのに、予定よりも大幅に時間を超過してしまい、市長スタッフと共にヒヤヒヤしましたが、興味深い話を聞くことができました。

その後は市議会への表敬訪問です。
アダムス市長と共に議場に向かいました。
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ここでは、ポートランド州立大学の西芝先生、東京財団の稲垣さん、研修生代表の二人が代表して表敬のあいさつをしました。

その後は市長および4人のコミッショナーたちと日本の行政制度やポートランドの印象についてもお話しています。
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ポートランド市議会議員は5名で構成されています。
うち、1名が市長、残りの4名が市役所の各部門責任者であるコミッショナーに就任します。
シティマネージャーという執行部門の責任者を登用(議会が任命)することが多い米国の自治体においては、異例の制度を選択しています。
言わば、議院内閣制のようなものですが、市長やコミッショナーたちは議会においてはポートランド市の全体最適のための議論を心がけているようです。
執行の責任者と全体の経営の責任者の両立、興味深い制度です。

時間がおしてしまい(市長の話のおかげで・・・)、その後の議事のやりとり、市民の議会参加の様子をゆっくり傍聴することはできませんでしたが、市民に開かれた議会を実感することができたのではないでしょうか。

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議会訪問の後は、ポートランド市において、マイノリティ(少数派)の意見反映や彼ら自身の活動を活発化させるためのリーダーシップ養成を手掛ける取り組みについて伺いました。

彼女たち自身はネイティブアメリカン出身です。
もともとは市役所をまったく信頼していなかった彼女たちが様々なきっかけを経て、市民活動家となり、いまや市役所職員として活躍しています。

日本では、民主主義とは多数決だと誤解している人がいます。
多数決というのは最後の意思決定をする手段のひとつであり、これそのものを民主主義と考えるのはあまりに無理解と申し上げざるをえません。

民主主義とは「みんなにとってよいことをみんなで決め、みんなでその実現を担うこと」にほかなりません。
多数決はそのための手段のひとつにすぎません。
かつての日本でも行われたように、すべての人が納得するまでとことん話し合うのもひとつのやり方です(宮本常一氏の著作を読めば、そう書いてあります)。

現在、米国も日本もそうですが、経済環境が悪化し、以前と比べても、マイノリティにとってはより厳しい課題に直面するようになりました。
また、マイノリティの参加についてもよりハードルが高くなっていることが多いように感じます。

みんなにとってよいことをみんなで決め、みんなで担うのが民主主義であるならば、それぞれがお互いに直面している課題をもっと共有していくことこそが不可欠です。
つまり、民主主義の実現とは、あるべきプロセスを愚直に丁寧に取り組むことに他ならないのです。
そのプロセスの一歩として、彼女たちは、地域のリーダーとして多様な人々の意見を受けとめ、これを地域から発信し、そして、その声の実現を図る、そうした人材の育成等に取り組んでいます。

もうひとつ留意すべきは"マイノリティ"は肌の色や祖先の出身地によるものばかりではありません。
さまざまな理由によって声を発することができない人たちはどこにでもいます。もちろん日本でもそうです。

例えば、現代のマイノリティは「子どもたち」であり、これからこの世に生まれるであろう命だと僕は思います。
その証拠に、世界中の民主主義を選択している国の多くは財政赤字問題に直面しています。
目の前の果実を得んがために、問題を先送りし、将来世代の負担を増しているのは我が国ばかりではありません。

そう考えれば、彼女たちが私たちに教えてくれたのは、民主主義そのもののことであり、私たちこそが取り組まねばならないことばかりなのです。
彼女たちの"思い"の強さには心動かされるものがありました。
改めて、民主主義とは何か、皆さん考えてみませんか。
Posted by 亀井善太郎 at 14:25 | この記事のURL
ネイバーフットの現場から・・・/ポートランド報告B [2012年09月10日(Mon)]
チップスさんの興味深いお話のあと、火曜日の午後はポートランド市内のリーチ植物園に移動しました。

元々はリーチ夫妻が保有していた敷地を子供がいなかったためポートランド市が引き取り植物園とし、その後、財政等の理由で市が手放した後、市民団体が管理運営を引き受けたものです。ポートランド市ではこういう事例は多数あるとのこと。行政ばかりが公の担い手ではないことを実感します。リスとも遭遇し、すてきな植物園でした。
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その後、ポートランド市のゴミの堆肥化運動について、市の担当者から話を聞きました。
いわゆる"迷惑施設"ですが、地域の理解を得ながら、丁寧に進める様子を感じることができました。

夕方からはネイバーフット・アソシエーション(住民協議会)の定例会議が開かれるレンツ地区へ。

ポートランドの住民自治のベースはネイバーフット・アソシエーションに他なりませんが、これらは皆、地域の方々のボランティアによって運営されています。
会場のアクティビティ・センターは地域の協会に隣接しています。
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この地域は多様な人種によって構成される地域であり、また、先ほどアップした堆肥化事業の処理工場を引き受ける地域でもあります。

ここでの目的は@ネイバーフットの会議の実際の様子を体験すること、A堆肥化事業に対する地元の考えを聞くことの二つです。

会議の様子ですが、本日は議論すべき用件があまりなかったものの、多くの地域住民が集まっていました。最初に各々の自己紹介もする等(僕たちもしました)、フレンドリーな雰囲気です。
案件が無いにしては、たくさんの人たちが参加しているのが驚きでもあります。

地域活動の報告がされたり、じっさいの成果物がもちこまれたりと話題も豊富です。考えの対立する案件では、激しいやりとりが行われるようですが、本日は残念ながら(?)、そういうことはありませんでした(会議の様子はたくさんの関係者がいたので写真を撮れませんでした)。

堆肥化事業については、会議の後、地域の代表とお話しする機会をいただきました。
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彼女の意見は、基本的には賛成の立場とのことですが、それよりも興味深かったのは本音の話です。
地域の中には根拠のない議論がおきたり、文句だけ言って、さいごの地域の方針を決める会議には出てこなくなってしまうような人も多いとかなり本音ベースのお話を聞くこともできました。

それにしても、彼女は出産後わずか5週間とのこと、旦那さんに赤ちゃんをあずけて、ここに来たというのです。母は強しですね。

そもそも、ネイバーフットの活動について尋ねたところ、こういうのはポートランド特有のもので、私たちは当然だと思っているけど、米国の中でもそうでない地域がたくさんあるとの答えでした。

自分たちの地域を自分自身のこととして考える、そして、自分たちで決めていく、それがネイバーフット・アソシエーションなのだということを垣間見たような気がしました。
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Posted by 亀井善太郎 at 14:08 | この記事のURL
基礎自治体のない地域だからこその"自治"/ポートランド報告A「非法人化地域で見えたもの」 [2012年09月08日(Sat)]
前回に続いてポートランド報告です。

ポートランドでの活動の全体像は週末学校事務局の稲垣さんが簡潔にまとめてくれました。こちらも併せてご覧いただくとわかりやすかと思います。

本論に入る前にちょっとだけ。
前回のポートランド訪問の後も感じたのですが、喘息持ちにとって米国西海岸はよいところのようです。
気圧の関係なのか、喘息らしきものが消え失せます。帰国後はなんだか胸に何かがいるようで気持ちが悪い・・・。
気のせいなのかなあと思っていたら、木曜日にお会いした方が同じことをおっしゃっていました。
そこらへんの謎が解けるといいのかとも思いますが、だからといって日本を出ていくわけにもいかず・・・。

さて、前回は到着した翌日の日曜日までお話ししました。
月曜日ですが、午前中はその日曜日のグループ活動の共有と振り返りでした。
今回、ポートランドを訪問したのは全国の基礎自治体職員30名と私たちです。
6チームに分かれましたので、それぞれが見てきたことを共有します。同じチームの中でも改めて話をしてみるとそれぞれの見え方の違いも参考になります。
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ランチは、水曜日にも改めてお会いする、マイノリティのための地域活動の推進に取り組む方とお話させていただきました。
ご自身もネイティブ・アメリカンでいらっしゃいますが、世界中のいろんな地域出身の人たちが、文字通り「住民自治」にもっと参加できるよう、さまざまな取り組みをされていること、そして、その熱意に感激しました。あんまり充実していたので写真を撮る時間もなかったくらいです。
この話はとっても興味深いものですので、改めて記事にしたいと思います。

午後からは米国の行政制度、そして、米国の行政における監査制度について、それぞれの専門家からお話しを伺いました。
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米国の行政制度については渡米前に一度講義はありましたが、改めてお話を伺うといろいろな意味で勉強になります。
統治という意味では日本の会社法のようでもあります。

監査については、事業仕分けの話を聞いているようでこれも興味深いものがありました。
同じ役所の中とはいえ、職​員としてちゃんとそのスジのプロフェッショナルを登用し、独立性を確保しながら取り組んでいるのが印象的でした。
もっと印象的な言葉は「監査はパラシュートと同じで開かれなければ意味が無い」という話です。監査のための監査ではなく、次のアクションにつながる、つまり、自分自身の仕事をもっとよくするために監査をするということです。
愚直に取り組んでいることが伝わる一つひとつの言葉が印象的でした。

火曜日の午前には、ポートランド市を出て、近隣のオーク・グローブにバスで​向かいました。
オーク・グローブは市(基礎自治体)に入っていない地域​です。
米国では市に入らないことを住民自身が選択することがで​きます。(日本ではなかなか考えにくいですが・・・)
そうした市がない地域において、地域の課題をいかに解決​するのか、そこらへんを地域のリーダーと案件を担当した​広域自治体の担当者に聞きました。
具体的には、公共交通(路面電車)の延伸による駅の新設​と、これに併せた緑化の推進(オーク・グローブの名前の​由来である樫の木の森の再生)について、どう取り組んで​きたのか、その工事現場前で彼らの話を聞きました。
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何より印象に残ったのが地域リーダー(チップスさん、白髪の帽子をかぶ​った男性)の思いです。
地域をよりよいものにしていきたい、そのために地域の人​たちとコミュニケーションを重ね、アイデアを生み出し、​合意を重ねていく。
聞けば、彼はこの地域に住んでまだ5年とのこと、それでも地域のリーダーとして活躍されています(なかなか日本ではないことですが・・・)。
誰でも理解できるわかりやすい言葉、地域や地域の人々への強い思いと危機感、けっしてあきらめない粘り強さ、失敗したとしてもそこからも学ぶ謙虚な姿勢・・・。
いずれもリーダーとして不可欠な何かをチップスさんは持っています。
一歩踏み出すこと、そして、小さな成功の積み重ねこそが必要なんだという彼の言葉に​大きく頷きました。

チップスさんとは帰国後facebookで"友だち"になりました。
彼はこう言います。

ポートランドで見たこと、ポートランドで感じたことは日本全国から来た自治体職員にとって大きな刺激となったことだろう。
自分もがんばってみよう、一歩踏み出してみよう、そう思った人も多かったにちがいない。
しかし、彼らには現場がある。現場があれば、その思いも吹き飛んでしまうかもしれない。
彼らの日常に戻ったとしても、それで元に戻ってしまえば何の意味もない。
そうならないためには"志"や"思い"を持ち続けることだ。
米国もそうだが、日本も難しい時期にある。
そうした中にあって、彼らが前に向かって踏み出すことこそが大切なのだ。
自分にできることがあれば、なんでもやる。
彼らが困難にぶつかったときにはメールしてほしい。スカイプでもよい。
諦めないこと、忘れないことが大切なのだ。

遠い日本のために、そして、一度しか会ったことのない彼らのために、チップスさんが送ってくださった言葉は重いものです。

もうひとつ言えば、チップスさんのような方は日本にもたくさんいらっしゃいますし、これは日本にもある光景だということです。
川根の辻駒さん、鳴子の上野さんや板垣さん・・・、そして彼らが活躍する地域です。
日本にも、合併等や基礎自治体の広域化により、行政がな​かなかカバーできない(しない)実質的な"非法人化地域​"が多くあります。
そうした地域にあっても、彼や彼の仲間のように、自分た​ちの地域と仲間を愛し、どうにかしたいと考えている人た​ちはたくさんいます。
じつは彼らが欲しているのは"カネ"ではなくて自分たち​のアイデアを実現するために何が必要かを知りたいのであ​ったり、そのための専門知識を有するディスカッションパ​ートナーだったりします。
ひとつ、基礎自治体の行政職員が何をすべきかといえば、​こうしたことを踏まえれば、僕は地域に暮らす人たちの声​に耳を傾けること、そして、その背景として不可欠なのは​、彼らを信頼することではないかと思います。
日本の自治体職員さんたちとお話すると、自分たちは信頼​されていないことを嘆く人が多いですが、そういう人にか​ぎって、地域に暮らす人たちを信頼していないことが多い​です。
お互いの信頼はすべての礎です。まず変わるのは自分から​、そして自分自身の意識からではないかと思うのです。

"自治"を実践するチップスさんから教えられたことを忘れずに、それぞれの地域で"一歩"を踏み出してほしいと思います。
Posted by 亀井善太郎 at 20:05 | この記事のURL
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