団体情報ステップ
[2008年08月29日(Fri)]
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CSRな事例
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かわさきコンパクト(神奈川県川崎市) 〜自治体がグローバルな視点から取り組む地域のSR〜 執筆者:鈴木暁子(ダイバーシティ研究所) __________________________________________________________________________________________________________________________________ 日本の自治体として初めて「グローバル・コンパクト」参加 神奈川県川崎市は2006年1月、国連が提唱する「グローバル・コンパクト」に日本の自治体として初めて署名しました。現在の川崎市は、臨海部での鉄鋼・化学などの重工業に加えて、IT産業などの先端産業が集積する工業都市ですが、1960年代には大気汚染を初めとする公害が深刻化していました。公害を乗り越えるために市民と行政が一体となって努力してきた経験や環境技術を活かそうと、川崎市では2003年から「国際貢献事業」として、「アジア・太平洋エコビジネスフォーラム」の開催や、人材育成プログラムや都市交流を行っており、この事業で連携があったUNEP(国連環境計画)や海外の自治体との交流と通じて、国際社会への一歩として「グローバル・コンパクト」への参加を実現しました。 国連の「グローバル・コンパクト」とは、1999年にアナン国連事務総長(当時)が提唱した企業や組織のための自主行動原則で、参加する団体に対して、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野で10原則の支持を呼びかけるプログラムです(図表1)。世界で120か国、5226団体が参加し(2008/4/1現在)、近年では、オーストラリア・メルボルン市など自治体による参加もみられます。 「グローバル・コンパクト」は、代表者が署名をして国連事務総長に参加書簡を提出し、承認を得られれば「参加」したこととなりますので、参加した後の「実効性」をどう担保するのか、10の項目を満たしているかをどう実証していくのかが課題です。企業の場合は自社の取り組みを通して表現していくこととなりますが、自治体の場合は地域での取り組みをどう促していくのかがポイントとなります。そこで市内の事業者や市民にも「グローバル・コンパクト」の理念を広める試みとして、検討委員会での約2年間の議論をふまえた「かわさきコンパクト」を始動しました。 【図表1】 グローバル・コンパクト 10原則 各企業に対して、それぞれの影響力の及ぶ範囲内で、人権、労働基準、環境に関して、国際的に認められた規範を支持し、実践するよう要請しています。その狙いは、各企業がそれぞれの事業を遂行する中で、これらの規範を遵守し、実践することを通じて、世界に積極的な変化をもたらすことです。 人権 原則1.企業はその影響の及ぶ範囲内で国際的に宣言されている人権の擁護を支持し、尊重する。 原則2.人権侵害に加担しない。 労働 原則3.組合結成の自由と団体交渉の権利を実効あるものにする。 原則4.あらゆる形態の強制労働を排除する。 原則5.児童労働を実効的に廃止する。 原則6.雇用と職業に関する差別を撤廃する。 環境 原則7.環境問題の予防的なアプローチを支持する。 原則8.環境に関して一層の責任を担うためのイニシアチブをとる。 原則9.環境にやさしい技術の開発と普及を促進する。 腐敗防止 原則10.強要と賄賂を含むあらゆる形態の腐敗を防止するために取り組む。 出典:国連広報センターウェブサイトhttp://www.unic.or.jp/globalcomp/ 「かわさきコンパクト」の挑戦 〜持続可能な都市づくり、世界に貢献できる都市づくり〜 「かわさきコンパクト」は「グローバル・コンパクト」の理念の市内展開として位置づけられたもので、グローバルな視野から設定した諸課題に対して、市民、企業、行政等の連携により、課題解決を目指す取り組みです。「グローバル・コンパクト」の地域版ともいえます。「かわさきコンパクト」は企業などの事業所を対象とした「ビジネスコンパクト」と、市民を対象とした「市民コンパクト」の2つからなります(図表2)。 「ビジネス・コンパクト」は、川崎市内に本社・事業所を有する企業が、グローバルな経営環境変化を自らの課題として認識し、社会からの要請を踏まえた主体的な活動を展開していくことを促すために策定されており、9つの自主行動原則(図表3)を定めています。自治体による地域でのコンパクトですが、9項目の中に「国際貢献」を入れており、公害を克服した工業都市としての経験と環境技術をセールスポイントとして内外に発信しようという強い自負が伺えます。 【図表2】かわさきコンパクトの概要図 ![]() 【図表3】 かわさきビジネス・コンパクト 9原則 原則1:わたしたちは、一人ひとりの人権を大切にします。 原則2:わたしたちは、全ての働く人を大切にする職場をつくります。 原則3:わたしたちは、環境問題に対する基本的な活動方針を作り公表します。 原則4:わたしたちは、環境問題の解決に向けた予防的な活動を展開します。 原則5:わたしたちは、環境にやさしい技術の開発と普及を促進します。 原則6:わたしたちは、公正な経済取引の実現に努めます。 原則7:わたしたちは、安全かつ安心な商品・サービスを提供していきます。 原則8:わたしたちは、地域社会の一員として、地域社会に貢献していきます。 原則9:わたしたちは、自らの特徴を活かし国際社会に貢献していきます。 図表2〜3出典:「かわさきコンパクト」オフィシャルサイトhttp://kawasaki-compact.com/index.html
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参加申請の流れ
企業や市民への普及推進にあたっては、各セクターの代表から構成される「かわさきコンパクト委員会」と、実務を担う「かわさきコンパクト推進事務局」が主体となって行います。参加を申請する事業所(参加単位)は、理念への賛同文や取り組み実績、活動方針を文書にして公開することが求められます。審査にかかる費用は無料で、参加申請書の送付後、同委員会による審査が実施されます。認定された事業所(参加単位)は、自社のウェブサイトでの情報発信や「かわさきコンパクト」のロゴマーク(図表4)の使用が認められます。 2008年6月現在、参加している事業所は8件で、地元の企業や企業の支社、工場、商店街振興組合となっています。地域でのSRを考えるうえでは、地元の商工業者の参画はもちろん、工場などをおく大企業の参画も不可欠です。「かわさきコンパクト」は事業所単位の参加で大企業の参画も促しています。また大企業にとっても地域から支社や工場への評価が得られることで、トップや本社の担当部署とは別の視点から、地域での取り組みを再確認するきっかけとなっています。 【図表4】 「かわさきコンパクト」 ロゴーマーク ![]() 自治体が地域のSRに取り組む意義 一方の「市民コンパクト」は、3つの宣言(図表5)に基づいて、今年度から具体化していく予定です。「企業と市民団体とがどのような方法で付き合っていくのかについての議論を深めたい、市民コンパクトを自分たちで作りたい、というご意見が、市民団体の方々から寄せられるので、市民活動とビジネスコンパクトとのマッチング作業はこれからの取り組みとして進めていきたいと思っています」(川崎市環境局地球環境推進室 長瀬一郎さん)。 ビジネスコンパクトを含めた運用方法などの道筋は、今後具体化していくこととなりますが、市民にもコンパクトを用意し責務を明らかにしようとする「市民コンパクト」は、「CSR」として企業を中心に考えがちだった社会責任の概念を、「SR」として地域全体に広める試みとして注目できます。 自治体による地域SRへの関わりには、条例や基本計画などの策定による市民や事業所への行動促進や、ISO14001の認証取得や障碍者雇用の状況を公共事業の入札時に要件に加味する「総合評価入札制度(*)」の導入などもありますが、市民に責務を求めたり、地域全体で評価制度を設けて事業所とコンパクトを結ぶといった取り組みもまた、自治体にできる重要な役割です。CSRから地域でのSRへ、視点が広がっていく中、雇用やコミュニティ貢献の視点で熱心に取り組む企業を応援する施策を通して、自治体には地域SRを推進する重要な責務を果たしていくことが求められています。グローバルな視点に立ちながらも地域での取り組みを促そうとする「かわさきコンパクト」は、他の自治体にもSRへの関わり方のモデルとなりそうです。 ![]() 第1回 「ビジネスコンパクト」登録証授与式の様子(2008年3月) 【図表5】 かわさき市民コンパクト3つの宣言 宣言1:私は川崎の町と人と自然を大切にします。 宣言2:わたしの‘地球温暖化対策’を進めます。 宣言3:かわさきビジネスコンパクトパートナー企業と協働します。 図表4〜5出典:かわさきコンパクトオフィシャルサイトhttp://kawasaki-compact.com/index.html 第4回(後編)終わり 第4回(前編) 関連コラム *総合評価入札制度については、CSRプラスコラム「自治体の総合評価入札制度の採用により地域企業も変化」(執筆者:大谷強氏、2007年7月)をご参照ください。 http://blog.canpan.info/column/archive/49
第2回 児童労働をなくす「SFIDA」の挑戦〜フットサルボールを 作る人 売る人 買う人を笑顔に〜(前編)
ケーススタディ:CSRな一品 このシリーズでは、CSRの考え方がギュッと詰まった「商品」や「サービス」を、「CSRな一品(逸品)」として、市民をはじめとした読者の皆様に分かりやすく、ご紹介していきます。 第2回 児童労働をなくす「SFIDA」(スフィーダ)の挑戦 フットサルボールに熱い視線 日本に約200万人はいるといわれているフットサル人口。子どもからシニア、男性も女性も楽しめるスポーツとして愛好者が増えている。フットサルはサッカーに似ているが、ボールは一回り小さく、一チームの人数は5人から。テニスコート程の広さがあれば楽しめる気軽なスポーツだ。9月にはブラジルで、FIFA (国際サッカー連盟)フットサルワールドカップの開催を控え、ファンにとっては、熱い年になりそうだ。 最近では、写真のような、フットサルボールも登場し、スポーツ用品店だけでなく、インテリアショップでも販売されている。写真の「SFIDA スマイルボール」は、結婚式会場にwelcomeボードとしてペアで飾られたり、色紙代わりに寄せ書きに使われたりと、競技以外の用途にも利用されているユニークなボールだ。 ![]() スマイルボール 写真提供:イミオ スマイルボールを企画・製造・販売しているのは、株式会社イミオ。イミオがフットボールを扱うようになったきっかけは、代表の倉林啓士郎さんが、パキスタンに旅した2005年にさかのぼる。 パキスタンのシアルコットと、インドのジャランダールでは、世界で生産されるサッカーボールの約8割が生産されている。サッカー好きの倉林さんは、ボールづくりの現場が見たいと、シアルコットの町を訪問した。 子どもから教育の機会を奪う 児童労働 そこで二つの衝撃を受けた。一つは、ボールの生産は、職人が地べたに座って全て手縫いで行っていたこと。二つ目は、子どもが学校に行かずにボールの縫製をしていたことだった。ボールを蹴って遊んでいた自分の小学生時代とのギャップに驚き、児童労働の問題について考えたという。この経験が「フットボールで世界を変えたい」という思いにつながり、イミオのフットボールブランド「SFIDA」(スフィーダ)の誕生につながった。 児童労働とは何か。国際労働機関(ILO)によると児童労働とは、子どもの健康や精神的・社会的な発達に悪影響を与え、子どもから教育の機会を奪う労働を指すとある。 堅い皮に針を通す手縫い作業を必要とするサッカーボールの縫製は、指を傷め、長時間同じ姿勢でいることから、子どもの健康に悪影響がある。また、パキスタンでボールづくりに従事していた子どもの7割は、一日8〜9時間働き、学校に通えない状況だった。 フェアトレードでフットサルボールを イミオが取り組んだのは、子どもがボールづくりに関与せず、大人が適正な賃金をもらってつくったボール、つまり、「フェアトレード」(公正な取引)によるボールの生産だった。イタリア語で「挑戦」という意味の「スフィーダ」というブランド名からは、イミオの「ビジネスを通じて生み出される豊かさを生産者・販売者・消費者、そして社会と分かち合いたい」という前向きな意気込みが感じられる。 広報ディレクターの沼田健彦さんは、SFIDAは、現在はフットサルボールに力を入れていると語る。「1チーム5人で、テニスコート程の広さがあれば楽しめる気軽なスポーツだからです」。女性や子どもの参加が多いのも、フットサルが誰にでも親しみやすいスポーツだという証だ。 ![]() (左)「顔が見える貿易を行うため、発注者と生産者の間に入る業者を減らし直接取引を行っています。中間業者に支払っていたマージンを、児童労働撲滅のために使うことができますから」と、話す沼田さん。 イミオが契約しているパキスタンの工場は全て、ILOの規定に基づいた第三者モニタリングを定期的に受け入れており、児童労働を禁止し、適切な労働環境が保たれている。労働者には、適正な賃金が支払われている。 当初イミオは、「フェアトレードで作られている」という認証を、第三者機関から取得し、認証ラベルをボールに表示していた。しかし、現在は方針を変更し、認証は取得していない。それでも以前と変わらず、公正な取引を続けている。方針転換について沼田さんはこう説明する。 「第三者認証を取得するにはコストがかかります。その分を、現地の職人に還元したり、児童労働をなくす活動をしているNPOに寄付するほうが、よりフェアな取引という目的の達成に貢献できると考えたのです」 こうした考えからイミオは、NPO法人ACE(エース)を支援することにした。ACEが毎年開催する「チャリティフットサル大会」に協賛し、大会の試合で使う試合球に、フェアトレードのボールを寄付している。 「SFIDAのフットサルボールで、多くの人にフェアトレードや児童労働の問題についてアピールしています」と、ACE事務局長の白木朋子さんはいう。また、イミオは、ボールの売り上げの一部も、ACEの活動支援のために寄付しているそうだ。 「フェアトレードに取り組むことで、具体的に何がどう変わったのか、「見えること」が重要です」と沼田さん。ACEの支援は、こうした「見える」活動の一つだという。 ![]() イミオから寄付されたフェアトレードのボールを使用したチャリティフットサル大会。 試合には必ず、女性と小学生以下の子どもが参加していることが条件。 20代、30代を中心に、老若男女が参加している。(写真提供:ACE) |











