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八田與一の銅像と許文龍 [2017年06月26日(Mon)]
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坂元茂樹教授の講演を聴きに東京に出たところ、後藤、新渡戸に続き台湾を開拓した八田與一の講演会があると言うので足を伸ばした。

お孫さんの八田修一さんによる講演であった。
銅像の首が切られた後、随分早く修復できたのだなと思っていたら以前このブログでも紹介した台湾の許文龍氏が八田氏の銅像を3つ位持っていて、その一つを利用した、という。首の接着は簡単だったらしいが、おでこに当てた手の調整が困難だった、との話も。

『台湾の歴史』 許文龍著
http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/1801


八田與一の生涯を知ったのも初めて。しかもお孫さんから聞くというのは貴重な経験だった。
八田與一は1910年東大で廣井勇の教えを受け卒業。1910年と言えば新渡戸が同じ帝大で植民学を教えていた頃だし、廣井勇は新渡戸の札幌農学校の同級。八田與一は新渡戸からも植民学を学んでいるであろう。


そして八田與一のダム開拓だ。労働者とその家族のための住居、病院、学校、お祭り、。。。
これ、後藤新平である。きっと八田與一は後藤新平にも会っている。少なくとも後藤の植民政策を参考にしている。


質問した。
「八田のみならず、後藤、新渡戸の台湾での業績は、李登輝や許氏の本で初めて知ったのだが、日本ではなぜそんなに知られていないと思われますか?」
「日本が戦争に負けたからでしょう。」
大きく頷いてしまった。
本当は、終戦後ダムに身を投げて八田の後を追った奥様の事も聞きたかった。子供8人を遺して、である。残されたお子さんの一人が、講演者八田修一氏のお父上。戦後相当な苦労があったのではないだろうか、と頭を巡ったが、流石に聞けなかった。


<参考>
この問題が政治的である事を知る記事があった。
後藤、新渡戸、八田などを自由に語れない理由に現在の台湾政治の状況もあるのかもしれない。
「鄭成功」「八田與一」「蒋介石」――台湾「歴史評価」の難しさ 野嶋剛
http://www.fsight.jp/articles/-/42464
対立概念:EEZと人類共同財産 [2017年06月23日(Fri)]
ここ数ヶ月、海洋法関連の資料を沢山読んでいて、一部ブログに書いているが書かない文書も多くの線を引いている。
国連海洋会議の議論を読んでいて、EEZと人類共同財産の対立概念を誰が書いていたっけ?と探したらあった。柳井俊二氏の下記のペーパーである。

「我が国をとりまく海洋問題と国際紛争解決制度」
https://www.spf.org/opri-j/projects/information/forum/backnumber/pdf/050805_01.pdf

ここの冒頭の文章にあった。

「1967 年のパルド提案をきっかけとして、新たな海洋法秩序を形成すべく第三次国連海洋法会議が開始したが、そこには相反する概念が共存していた。すなわち 200 カイリまで経済水域を拡大(国家管轄権の拡大)しようとする立場と「人類の共同財産」として海洋の位置付けを行う立場である。」

そしてEEZの資源を囲い込もうとする途上国の思惑と日本等の先進漁業国のやり取りの末、UNLCSO62条等ができた、とこれは確か田中則夫先生の本に書いていあったと思うが。。

多分島嶼国始め多くの関係者がこのEEZは沿岸国のものであると誤解しているのではないだろうか?大きな海洋を抱えたものの、自らの力では開発できない小島嶼国の一群が今度は海洋問題をSDGsアジェンダにあげた。この大きな動き、流れを見ておく事は必要ではないだろうか?
「人類共同財産」は小島嶼国、途上国にとって対立概念にも成りうるのだ。


UNCLOS62条4項には既に小島嶼国を支援する内容が多々書かれているが、それでもいくらがんばたって、小島嶼国が行う水産資源の開発には限度がある。
資源量だけの話ではなく、流通、管理、等々水産産業として成り立たせるのは大きな話だ。私はこれを、ニュージーランドの例で認識した。(しっかり確認はしていない)ニュージーランドマオリが所有する水産産業が成功しているのは日本のニッスイが人材区政から国際流通ルートの確保までいっしょに行っているのだ。

太平洋島嶼国の水産資源政策から、支援してあげなきゃいけないんじゃないだろうか?大変な話だとは思うが。。。
『ヤルタとポツダムと私』長尾龍一著 [2017年06月23日(Fri)]
『カール・シュミットの死』という長尾龍一教授の本を手に取ったところ、表題のテーマは沢山ある小論やエッセイの一つで、長尾教授と満州の関係を知る『ヤルタとポツダムと私』エッセイも収録されていた。

後藤新平が開発した満州の最後にいた、日本人の一人でいらしたのだ。
これで、長尾教授がご専門の法哲学以外の「ラティアモア」に並々ならぬ興味をもたれ本を書かれたことも理解できた。

「五族協和」「王道楽土」の言葉に釣られて満州に移民した長尾家は、最後は日本軍に置き去りにされ、当時3ヶ月だった長尾教授の弟は移動中に亡くなられ、悲惨な状況に追い込まれたのだ。長尾教授ご自身も戦争孤児になる寸前であった。
長尾教授が米中vs日の関係を悪化させる一因を作ったであろう、太平洋問題調査会のラティモアに興味を持たれたのがわかったような気がした。

長尾教授の満州での記憶は、カール・シュミットへのご関心にもつながる要素、なのかもしれない。

長尾龍一著『アメリカ知識人と極東 ラティモアとその時代』
http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/1368
長尾龍一著『アメリカ知識人と極東 ラティモアとその時代』(2)
http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/1369
長尾龍一著『アメリカ知識人と極東 ラティモアとその時代』(3)
http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/1374

『中国と私』ラティモア(1992年 みすず書房)
http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/1379
王様がパスポートを売り、大統領が麻薬を売る(1) [2017年06月23日(Fri)]
島嶼議連の勉強会。貴重な経験であった。
当然、島嶼国の怪しい活動に関する詳細は、外務省現地公館から、もしくは国際金融犯罪に詳しいであろう財務省が把握し、議員にも上がっていると想像していたが、そうではなかった。

「王様がパスポートを売り、大統領が麻薬を売る」
タイトルは少し過激かもしれないがそのままなのである。
で、少しずつ当方の現場情報と学術研究と、etc. からまとめて掲載したい。
触れたくない、ましてや書きたくない内容だが、これを知らずに島サミットは行えない。


最初はツイッターで活躍されている「猫組長」が取り上げている『パレルモ条約』
ブログにもまとめられています。
http://ameblo.jp/nekokumicho64/entry-12286128540.html?timestamp=1498157711

数少ない11の未加盟国一つが日本。
勿論後の5カ国が太平洋島嶼国なのだ。

パラオ、ソロモン、ツバル、フィジー、パプアニューギニア

そしてブータン、イラン、南スーダン、ソマリア、コンゴの5カ国と、日本!


私は議連勉強会で、監視のない太平洋島嶼国のEEZは越境犯罪の巣窟なっています!と強調したが、実は海洋だけでなく、法機能が弱い(若しくは無いに等しい)島嶼国の存在そのものが越境犯罪の原因なのだ。
というより、極端に言えば、大英帝国が、ロンドンのシティがタックスヘイブンにするために独立させた、という側面も否定できないのである。
国連海洋会議(3)Our Ocean, Our Future(追記あり) [2017年06月22日(Thu)]
あまり期待していなかったが国連海洋会議の「成果文書」
面白い。多分国際海洋法に精通したマトモな人が関与している。
メガ海洋保護区もないし、マグロが絶滅するとも書いていない。
よかった!

まずは、パラオやキリバスの大統領と、一部日本のNGOや米国のPEWそしてイエロージャーナリストが騒いでいるメガ海洋保護区。下記の文書を読むとやんわり否定されているのでは?
例えば下線を引いた、「効果的で適正な」とか、「国際法に矛盾しない」とか。パラオやキリバスのメガ海洋保護区は明らかにこの範疇に入っていない、と解釈できないであろうか?

(j) Support the use of effective and appropriate area-based management tools, including marine protected areas and other integrated, cross-sectoral approaches, including marine spatial planning and integrated coastal zone management, based on best available science, as well as stakeholder engagement and applying the precautionary and ecosystem approaches, consistent with international law and in accordance with national legislation, to enhance ocean resilience and better conserve and sustainably use marine biodiversity.


パリMOU守ろう!
前回書いた、PSCのブラックリストに乗ったパラオとバヌアツ。東京MOUの方にも両国はブラックリストになっていた。この成果文書にもきっちり旗国の責任とPSCの事が書いてある。自分たちの違法行為を棚上げにしていない事は高く評価したい。

(m) End destructive fishing practices and illegal, unreported and unregulated fishing, addressing their root causes and holding actors and beneficiaries accountable by taking appropriate actions, so as to deprive them of benefits of such activities, and effectively implementing flag State obligations as well as relevant port State obligations.


内陸国への配慮
Our Ocean のOurって誰?島嶼国の議論を見ていると、Ourとは島嶼国の、自分たちの、という意味合いなのだ。この文書には内陸国が明示してある。このように島嶼国だけでない国連の途上国が入るグループでの議論は重要だ。海洋は島嶼国だけのものじゃない。内陸国(海がない国)への配慮も!

6. We underline the integrated and indivisible character of all Sustainable Development Goals, as well as the inter-linkages and synergies between them, and reiterate the critical importance of being guided in our work by the 2030 Agenda, including the principles reaffirmed therein. We acknowledge that each country faces specific challenges in its pursuit of sustainable development, in particular least developed countries (LDCs), landlocked developing countries, small island developing States (SJDS), and African States, including coastal ones, as do others recognised in the 2030 Agenda. There are also serious challenges within many middle income countries.


伝統的知識と先端科学
海洋開発のための先端科学の技術や情報は島嶼国は立ち後れる。しかしこの成果文書では伝統知識も述べられているが、科学技術や知識を否定していない。ノレッジハブを作ってよ、我々の政策決定の助けるデータを提供してよ、と前向きに読み取れるがどうでしょうか?

10. We stress the importance of enhancing understanding of the health and role of our ocean and the stressors on its ecosystems, including through assessments on the state of the ocean, based on science and on traditional knowledge systems. We also stress the need to further increase marine scientific research to inform and support decision-making, and to promote knowledge hubs and networks to enhance the sharing of scientific data, best practices and know-how.


そしていよいよ大詰めのBBNJに関して。
これは何も中身がない?議論に参加させろと。
もしや混乱している?「金だ金だ」と叫んだというナウルの国連海洋大使がその背景を暗示しているかもしれない。金にならないんだったら関心ない、ということかも?
(s) Actively engage in discussions and the exchange of views in the Preparatory Committee established by General Assembly Resolution 69/292 on the development of an international legally binding instrument under the United Nations Convention on the Law of the Sea on the conservation and sustainable use of marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction, so that the General Assembly can, before the end of its seventy-second session, taking into account the report of the Preparatory Committee to the General Assembly, decide on the convening and on the starting date of an intergovernmental conference.


<追記>
重要な水産資源に関する項目を忘れていた。
マグロが(日本人の手にかかって!)絶滅するなんて、PEWやイエロージャーナリストや、日本の一部NGOが叫んでいるのとは違った内容である。よかった。当たり前だけど。漁業資源調査もしないでメガ海洋保護区だけ叫んじゃだめよ、と。協力するんだったら適切な地域漁業機関と、SSやPEWなんかの支援受けちゃだめよ、とここは私の勝手な解釈です。
(l) Enhance sustainable fisheries management, including to restore fish stocks in the shortest time feasible at least to levels that can produce maximum sustainable yield as determined by their biological characteristics, through the implementation of science-based management measures, monitoring, control and enforcement, supporting the consumption of fish sourced from sustainably managed fisheries, and through precautionary and ecosystem approaches as appropriate, as well as strengthening cooperation and coordination, including through, as appropriate, regional fisheries management organisations, bodies and arrangements.
国連海洋会議(2)「違法な」Our Ocean, Our Future [2017年06月22日(Thu)]
Our Ocean, Our Future: Call for Actionと題した、SDG14の実施促進に向けた具体的な行動を列挙した成果文書。これに入る前に、パラオとバヌアツがパリMOUのブラックリストは入ったと、パラオのFBで騒いでいるのでこちらを書きたい。

まさに「違法な」Our Ocean, Our Futureを作り出しているのは、この会議に参加したSDIS、小島嶼国なのである。



パリMOUとは
「PSCに関する地域協力に関する覚書(MEMORANDUM OF UNDERSTANDING)」

そしてPSCとは
「船の安全基準等を定めている国際条約を満足しているかについて、条約上で許容されているポート・ステート・コントロール(Port State Control: PSC)と呼ぶ立入検査」

パリMOUの他に東京MOUなど国際協力でこれを行う組織で、現在9つあるようだ。

以上は下記の公益財団法人 東京エムオウユウ事務局のサイトから。
http://www.koueki-tms.or.jp/psc/



小島嶼国が国際輸送船を所有しているのではなく、便宜置籍船という旗を貸すシステムである。いわゆる主権ビジネスの一つ。
問題は、小島嶼国は法執行機能が弱いので、これがテロやあらゆる犯罪、違法行為に利用され、事故につながる可能性も高い、という事だ。

有名なニュースは、2002年のトンガ船籍の船がアルカイダに利用されていたり、昨年パラオ船籍の船が北朝鮮に物資を運んでいたり、というのがある。

「北朝鮮の港に寄港したのに中国の港だったと虚偽申告をしたパラオ船籍の中国人船長を書類送検」
http://camomilla.seesaa.net/article/436221411.html
(オリジナルのNHKのニュースがリンクが切れている)

「米が「海のテロ」警戒 アルカイダ関連の15隻特定」
http://www.asyura2.com/2003/war20/msg/694.html
(これもオリジナルのサイトは見つからない)


便宜置籍のブラックリストでSIDS(小島嶼国)は常習犯なのである。
漁船も同様だ。バヌアツは台湾に船籍を売っている。これが違法操業をしている。
だから、言っていれば水産資源枯渇の原因も、世界のテロの原因もSIDSが関与している側面がある。

水産庁の職員と、その話をした。なぜ島嶼国の便宜置籍船の問題を指摘しないのか聞いたところ、そんな事したら漁業権交渉に影響がでる。という回答であった。
「弱者の恐喝」まさにこれだ。


百歩譲ってパラオのレメンゲサウ大統領もキリバスのトン前大統領も知らない方ではないので擁護させていただくと、そんな方法しか、小島嶼国はお金を得る方法がないのである。
よって、日本パラオ友好協定など締結し、少なくとも島嶼国が怪しい主権ビジネスに手を出さなくてもよい環境を支援する事と、主権国家ではあるがその限られた法執行能力を支援する事を、早急に、来年の島サミットへ向け、検討していただきたい。
これは単に日本からの太平洋島嶼国への貢献に納まらない。世界の海洋の安全保障にもつながるのだ。
後藤新平の植民政策(7)対清政策 [2017年06月22日(Thu)]
藤原書店が2005年に出した「正伝・後藤新平」4巻は満鉄総裁時代を扱っている。
「厳島夜話」の前に「対清政策」(p. 402-486) があって、これも読んでしまった。読んだと言っても当時の歴史的背景やあそこら辺の地域の事を何も知らないので、とても正しく理解できていると思えない。
それでも対中、対ロ、そして英国の動向について後藤の分析記述は初めて知る事ばかりで面白い!

<対清>
後藤の公生涯の最大の関心は社会問題と外交問題であった、と鶴見は始める。
外交政策に関与するようになったのは満鉄時代からだ、そこには「ロシアの復讐的意図」と「支那の覚醒」があったと鶴見は記す。そして鶴見は明治40年4月20日に行われた東三省(満州、黒龍江、吉林、泰天)の政治改革が徐世昌、唐紹儀らによって行われ、天津の袁世凱を訪ねて密会の諜報が紹介している。(当時は日本は諜報活動をしていた!)
内容は現代語に訳されていないので、良くわかりませんでしたが、満鉄経営にとって看過できない一大事、と鶴見は書いている。(p. 403-407)

後藤は日本政府に満州経営に関し「植民高等政策」「北京特派大使派遣」等を提言する。

そして後藤は1907年明治40年5月29日に清国皇帝と西太后に謁見する。この詳細も書かれていて面白いのだが省略します。(p. 422-430)
袁世凱との「箸同盟」談義も興味深いが省略。(p. 430-433)

後藤が、多分時の首相、外相、閣僚にあてに書いた対清政策の中に「帝国がその本文の主張に拠って、露人の痕跡を南満州から削って以来、冷血で猜疑心旺盛な清国人は多く集まって頭を聳やかし、機会を捉えてその独善不遜の私欲を逞しくしようと望んで、利権回収、拝外自強の説が朝野をゆるがしている。」(p. 435)という書いている箇所だけ、書き留めておく。


<対ロ>
色々興味深い記述があるが全て飛ばして、日露戦争後にロシアのの脅威を書いている箇所に移りたい。(p.419から)
後藤は、日露戦争の結果、多くの日本人が露国の損害のみを語り、露国が得た利益に気づいていない事を指摘。その利益とは
1)露国シベリアは戦争の惨禍を蒙らず巨額の収入を得た。
2)シベリアの運輸力は増強した。
3)シベリア人民は戦争で外国品を利用し、工業産業が刺激された。
4)露国の流通経済がシベリアに道を開いた。
(p. 420)

後藤は「日露戦争の勝負は、たまたま列国国際の均衡に影響し、...戦の後に戦来る。日本は戦って露国に勝ったことがすなわち露国以上の強敵を作った原因であることを自覚する必要がる。そのために問う。この強敵は今どこにあるだろうか。・・・」(p. 455) とも書いている。この認識が当時どれだけの日本人に共有されていたのであろう?


<対英>
ここは唸ってしまった!始めて知った英国の狡賢さ!以下(p. 443-444)から。
日英同盟締結時は日本がロシアと戦うことも、まして勝つ事も察知していたわけではない。ところが日本が勝ったとたんに英国は攻守同盟を改訂し(知らなかった!)日本の声勢を利用して東洋の主となり、チベット、アフガン、ペルシア案件の複雑な事件を解決。さらにフランスは長年の嫌猜を解いて英国と手を結ばざるを得ない立ち場に。ロシアも排英を止めて連合を。
後藤は「英国の侮った笑いが、そのまま列国の軽重を制するのを見るのである。・・・日英同盟の利用は、もっぱら英国が行うことができるもので、日本はほとんどその分に与っていないようなものである。英国人ここにありと言うべきである。」(p. 444)と書いている。
この英国に対する認識は7年後にやってきた第一次世界大戦参戦に積極的だった秋山真之も共有していはたのではないだろうか?日英同盟のために日本は第一次世界大戦に参戦したのである。


<対独>
ドイツが意図的に日本を悪者にし、追いつめていた様子は平間洋一先生の本にあったが、後藤も詳しく書いている。以下P. 459-460から。

後藤は支那満韓シベリアに利権を求めるドイツこそ日本が留意すべきと指摘。
日露戦争の原因は、日本が負けると思ったドイツが、ロシアに「教唆」したこと。さらに一歩進めて、日露戦争の本因は三国干渉でこれもドイツが仕掛人。
日露戦争の結果、日英露仏連合ができ、米国がこれに好感を持ち、ドイツは憤悶の地に立たされているので、今後どんな陰謀を日本に仕掛けるか。この不測の禍因を閉ざす事を後藤は主張する。
後藤は外交官に批判的なようだ。
駐仏大使がドイツが東洋問題に関係を有さないと公言したことを「不穏な雰囲気を国際に遺すもの」(p. 460)と批判する。そしてドイツの東洋政策は「しきりに親清の野心を兆し、清国政界にあってもまた、次第に親独一派の勢力が認められるにいたった。」と解説。


<再び対清>
この外務官僚批判。今に続く日中関係の原因かもしれない。
日清関係について後藤が外相への覚書として書いた文章も掲載されている。(p. 469- 486) 日露戦争後、清に猜疑心を生じさせたのは日本の外交の不味さにあったのだ。ここは長くなるが、そのまま書き写したい。

「同時に、私は平生、心ひそかに疑惑に堪えないものがある。日露戦局がはじめて終わり、小村大使が北京に出かけ、天皇のお使いとして折衝したところ、満州内治の予後に関して、特に急に差し迫ってくるものがあった。ひとたび満州統治について具体的に記して清国の責任を条約条文に明らかにしようと要求するや、当時、非常に適切な清廷の言質が出されて、結局その条文は成立しなかったのだが、清国が満州統治策に関して過大な用心深さを加えるようになったのは、実にこの折衝に起因していたのである。その後西園寺首相やその他朝野の名士が満州視察に往来、それが頻繁となり、内には文人論客の気ままな談論となり、清国にだんだんと恐れを助長させ、皇族大臣の巡視となり、駐満官憲は傲慢となり、新官制が創定され、清朝廷を恐れ動かし、わが満州植民の強敵としてしまっただけでなく、それ以来、一事一事また一事、日本はほとんど常に清国に先着をゆずって、彼のうしろから目を見張っている実情である。これがはたして計を得たものなのか。」

この文章、専門家の意見を聞いてみたい。


7回に分けて後藤新平の植民政策を追って見た。満鉄時代を書いた4巻を再読すると共に、やはり台湾時代も読む必要があるであろう。それにしても先行研究があれば、私のようなこの時代、地域に無知な者でも多少は理解できると思うのだが。



後藤新平の植民政策(6)「厳島夜話」後半 [2017年06月21日(Wed)]
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厳島夜話の舞台となった広島の岩惣


伊藤に新旧大陸対峙論を披露した後、後藤は感想を書いている。

この新旧大陸対峙論は、後藤が児玉との最後の会談に述べた内容であった。児玉は翌朝死去する。よって後藤は児玉から4時間に渡って説得されたが躊躇していた満鉄総裁を受けざる得ない状況があった。その際後藤の心には「自ら満鉄経営の任にあたるに及んで、微力ながら欧亜文明融合の実現に努力を惜しまないと誓った理由である。」という思いがあった。(p. 506)

伊藤は「大アジア主義」にも「新旧大陸対峙論」にも冷たかったのだそうだ。その理由は伊藤によると「伊藤はいまだかつて後藤を無視したことはないが、後藤はしばしば伊藤を無視したではないか。」とのこと。
具体的には伊藤は後藤に満鉄だけでなく朝鮮鉄道経営も任せたかったのに、満鉄総裁就任にあたって一事も相談がなかった事を伊藤は怒っていたというのだ。
伊藤博文が1841年生まれ。後藤は1857年生まれ。16歳の差がある。16歳年下の後藤に朝鮮鉄道を任せたいと思い、3日間時間を取って意見を聞こうとした伊藤。この時の後藤は50歳だ。

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2日目、夜の11時半まで続いた議論を終えて後藤は白雲洞ミカドホテルに戻る。後藤は、伊藤が米国の将来の脅威を予見していることは共通しているが、と述べる。そして、午前2時近く伊藤に呼び戻される。(伊藤は岩惣に宿泊。会談は明治40年9月28−30日)

伊藤は後藤に、対支方策の枢要事は二人だけが知っているべき事で口外しない。また桂や友人にも話していないか、と念を押し、沈黙を守る事を誓わさせられた。(p. 513)
伊藤は続けた。この件を進めるのは陛下のお考えを仰ぐ必要がある。陛下は桂や山形に御下門されるかもしれない。そして桂が後藤に意見を求めた時、それは後藤から伊藤に提案した事である、と言われては誤解を招く事があるかもしれない。と。後藤は断じて他言しない事を近い、伊藤の快諾を得たのである。(p. 514)

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ココツェフ伯爵 外交官ヨッフェ


厳島の会談の後、後藤は第二次桂内閣で逓信大臣として入閣。清では西太后崩御。袁世凱の地位も一変。伊藤は韓国統監の任務と解かれていたところに、後藤と再会し、後藤に腹案を訪ねる。(p. 518-519) そこで後藤は、ロシアの宰相ココツェフ伯爵との面談を提案する。そして同伯爵と伊藤の面談を自らアレンジ、ハルビンで会談する事になる。(p. 518-521)

その時の詳細を後藤は記している。
伊藤は明治42年10月14日日本を出発。当時桂公が後藤に「伊藤公もじっとしてくれればよいのに。」とささやいたそうである。南満を訪ね至る所で歓迎を受けた後、26日午前9時にハルビンの到着。ココツェフ伯爵を車内に招き約半時間、通訳を通して親密に話し合った、と記している。(p. 522) そしてその直後暗殺されるのである。

伊藤は桂に厳島談話の以降の事を初めて打ち明け、伊藤の遺志を桂公と引き継ぐためシベリアを経てロシアに入る直前、明治天皇の崩御の凶電を受け取る。桂も世を去り、後藤は藤桂両公の遺志を継ぐべく、日露国交回復に向けて私人として折衝を重ねた。その一つがロシア外交官ヨッフェを大正12年、東京熱海に療養させた事であったようだ。(p. 526)


ロシア、中国、その他当時の国際政治及び桂、伊藤の確執などがわかっていれば、もっと面白いかもしれないが、私はここら辺が一切わからない。それでも小説を読んでいるよで面白い。伊藤が暗殺された事はさすがに知っているが、その背景を知って歴史の歯車を痛感する。広島厳島も再訪してみたい。

ここで後藤新平の植民政策、終わりにしようとおもったが、「厳島夜話」の前に「対清政策」という後藤の外交政策を知る項がある。そこに日露戦争が世界に与えたリパーカッションのような事が書いてある。バヌアツが英仏共同統治になったのはドイツのウィルヘルム2世のせいだとずっと思っていたが、そうではなかった。これも日露戦争で日本が勝利し、英国が漁夫の利を得た結果であった。
よって、もう一回後藤新平の植民政策を書いておしまいにしたい。
後藤新平の植民政策(5)「厳島夜話」 [2017年06月21日(Wed)]
いよいよ「厳島夜話」である。現代語に編集して下さった藤原書店さんには本当に感謝したい。スラスラ読めるだけで大分違う。
「厳島夜話」(p. 487-526)は、1.伊藤博文に大アジア主義を説く 2.新旧大陸対峙論の提唱、3.伊藤の快諾、 4.藤・桂両公の遺志継承 の4項からなる。
以下、満州の事も当時の時代背景も何も知らない当方が、気に止まったところだけメモする。「厳島夜話」に関する専門家の先行研究があれば、是非拝読したい。



たった1年半の満鉄の任務(えっ!1年半であれだけやったの??)で後藤が目指したのは、満鉄だけではなく、支那大陸とそれを基盤とする日本と世界の関係、即ち日本の世界政策であった、と鶴見は始める。(p. 487)

この後藤の世界政策を知る事ができるのが後藤自身の手記である「厳島夜話」だ、と。後藤は伊藤に向かって3日3晩この世界政策を説いたのである。

日露戦争後の対中、対ロ策は日本の急務であったため、後藤はこれを解決できるのは伊藤しかいないと考え、当時朝鮮統監であった伊藤にその職を辞して「単なる一個の大政治家」として大陸を訪れる事を提案。(p. 494) これが伊藤の死の旅となる。


日露戦争に勝利した日本はその戦後処理が上手く出来たいなかったようである。支那もロシアもそして米国からも猜疑の目が向けられていたようで、当時「米清同盟説」も噂されていた。そこで後藤は「中国の有力者を啓導して国際上の真の知見を会得させ、・・・大アジア主義の本旨に悟入させることこそ、東洋平和の根本策を定める理由である云々。」(p. 496)と説く。これに対し伊藤は激しく応酬した。
「・・・いわゆる大アジア主義とはそもそも何であるか。およそこの種の論法を口にするものは、深く国際間の虚実を察せず、ややもすれば軽率な立言を為すがゆえに、たちまち西洋人に誤解され、彼等に黄禍論を叫ばせるようになる」(p. 497)
これに対し後藤は「黄禍論が出て来るのは外交術が拙劣であるからである、」と反論するが伊藤は納得しない。


これに対し、後藤が用意していた「第二策」が「新旧大陸対峙論」である。
後藤は「世界の今後の趨勢は、これを大処より達観すれば、すなわち新大陸と旧大陸との対峙に帰着するからで、そして欧州各国は東洋諸国と共にひとしく旧大陸として、共通の立場と利害を有するものである」(p. 500)と、日英同盟を維持しつつも、露独英仏との協力を提案。

この「新旧大陸対峙論」について後藤は台湾時代に読んだEmile Schalkの"Natur und Staat"という仏独同盟論を骨子とした論文を伊藤に紹介している。鶴見はシャルクを「千古の卓論」であると形容し、ヨーロッパが米国に叩頭するに至ったのはシャルクの論を聞かずに独仏が戦ったせいである、と。(p. 502)

伊藤に、それでは日本はどうすべきか、と聞かれ、後藤は自論を展開する。シャルクの独仏同盟では狭すぎる。大西洋を挟んだ新旧大陸対峙論を太平洋に押し広げ「太平洋の両岸に国する新旧大陸を包含させることによって、はじめて日本帝国本意の世界の恒久的平和が維持され、人類全般の幸福を享有し得るべきもの信じられるもの、これが私の主張の由来である。」(p.504)

新渡戸の太平洋の架け橋はここにあったのである
また先般の安倍総理の"Asia's Dream: Linking the Pacific and Eurasia" も後藤とつながっている。
安倍総理は後藤の「新旧大陸対峙論」を知っているのであろうか?

「厳島夜話」長くなったので、2回に分けます。
国連海洋会議(1)森国際協力局審議官のスピーチ [2017年06月20日(Tue)]
6月5−9日に開催された国連海洋会議。正式には「持続可能な開発目標(SDG)14実施支援国連会議」についてまとめたい。

まずは下記の外務省のウェッブが簡潔のまとめているので、それを見て行く。

持続可能な開発目標(SDG)14実施支援国連会議
平成29年6月15日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/page25_000851.html

持続可能な開発目標(SDG)14実施支援国連会議
森国際協力局審議官スピーチ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000264781.pdf


成果としては下記の3点を上げている。中でも2番目の“Call for Action“が重要であろう。これは明日内容を確認したい。

1.パートナーシップダイアログの主要7議題
(ア 海洋汚染対策,イ 海洋・沿岸の生態系の管理,ウ 海洋酸性化対策,エ 持続可能な漁業に向けた取組,オ SIDS等の漁業資源及び市場へのアクセス向上,カ 科学技術の開発・技術移転,キ 国連海洋法条約(UNCLOS)

2.SDG14の実施促進に向けた具体的な行動を列挙した成果文書“Call for Action“

3.各国等による合計1300以上の自主的取組(Voluntary Commitment)



それから日本政府の具体的支援、即ち森国際協力局審議官スピーチである。

ー 小さい記述だが日本は「信託基金に4.4万ドル」拠出したとある。この信託基金は誰が運用、出資し、現在いくら位の基金があるのか?この資金で小島嶼国の代表がこのような国際会議に参加できるのである。

ー 安倍晋三総理大臣がSDGs推進本部の本部長であった。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/

ー 日本政府の支援は次の4点の他に来年の島サミットで海洋が議論されることを「期待」と述べている。「海洋ごみ」,「海洋酸性化」,「持続可能な漁業」「SIDS諸国への支援」


「期待」とはどういう意味なのか?
議案を決めるのは議長なので島サミットは共同義藤の日本の総理とPIF議長になる。今年のフォーラム開催国がサモアなので、来年の島サミット議長はサモアのはず。
ところで森国際協力局審議官のスピーチは島嶼議連の勉強会の結果を反映した内容なのであろうか?ここは「期待」なんて言ってないで日本に主導して欲しい。
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