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凄い奴だ! [2017年12月09日(Sat)]
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 イワンは頭を掻きました。
 「ちぇっ、汚らしい奴! また出て来た! きっとあいつらの親分にちがいない。凄い奴だ!」



 立派な紳士が櫓の上から転落して地面の穴に吸い込まれていくのを見て、やっとイワンは彼の正体に気付いたようです。ただ、子分たちはイワンが「神様」という言葉を口にしたことによって地面に吸い込まれたのですが、親分の老悪魔はそうではありません。また、小悪魔たちの場合は「水の中へ石を投げ込んだように、すーっと地面にもぐり込ん」だのですが、老悪魔の場合は「突然地面が裂け」、その中に吸い込まれたのです。
 これはきっと、単に老悪魔が空腹のためにふらふらになって地面に落ちたというだけの話ではないのです。そうではなくて、老悪魔が完全にイワンに敗れたということであり、それはすなわち神に滅ぼされたということなのです。
 つまり、こういうことです。老悪魔は、言葉によってイワンを誘惑しようとしました。肉体労働しか知らない彼に対し、「頭を使って働く方法を教えてあげよう」と言ったのです。これは、旧約聖書の創世記で、ヘビが「善悪の知識の木を食べなさい」と誘惑したのと似ている気がします。「自らの知恵によって富や力を手に入れ、自らの幸福を求めて生きなさい」というのは、実は悪魔の誘惑なのです。そのような誘惑に負けて、悪魔に魂を売り渡してしまう人も確かにいます。しかし、イワンのようにそれを見事にはねつける人もいるのです。
 とにかく、このようにして悪魔は滅ぼされました。そしてその後、イワンは・・・


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