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一段ずつ、こつんこつんと頭をぶっつけながら・・・ [2017年12月01日(Fri)]
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 ・・・頭から先に櫓の段の上にぶっ倒れ、一段ずつ、こつんこつんと頭をぶっつけながら落ちて行きました。



 立派な紳士に化けた老悪魔は、空腹のためふらふらになり、遂にはよろけて柱に頭をぶつけてしまいます。そしてさらに、柱に頭を強打して脳震とうでも起こしたのでしょうか、なんと今度は頭から櫓の外に転落し、櫓の段の上にこつんこつんと頭をぶつけながら落ちて行ったのだそうです。
 この櫓は、高い段が付いていて、最上部が望楼になっていたそうです。恐らく、イワンの国で一番高い建物だったのではないでしょうか。そのいくつもある段に頭をぶつけながら転落して行ったのですから、相当痛かったのではないかと思います。
 それにしても、どうして紳士はこんなにふらふらになるまでの極度の空腹に苦しむことになったのでしょうか?
 それは、彼が「体を使って働くよりも頭を使って働く方が優れている」「だから、私があなた方に頭で働く方法を教えてあげよう」と言ったからです。
 紳士の論理では、「頭を使って働けば、お金を手に入れることができる。そして、その稼いだお金があれば、食べ物でも何でも手に入るのだ」ということだったのでしょう。ところが、イワンの国の人たちはお金というものを知りません。だから、働くと言えば自分の生活に必要な物を実際に生産することだと思っているのです。
 このように、「お金さえあれば何でも手に入る」という紳士の考えは、実は決して普遍の原理ではありません。そのようなメカニズムが機能しないことだって、当然ありうるのです。一方、「人間は食べ物を食べないでは生きていけない」ということの方が、ずっと間違いのない真理だと言えるでしょう。
 しかし、この紳士のような考えの人は実際たくさんいるのではないでしょうか? すなわち、「都会は豊かだが、田舎は貧しい。我々都会の者が、田舎の人々を養ってあげているのだ。(自分たちの食べている物は、田舎で生産されたものなのに)」とか、「工業化の進んだ先進国では人々の所得が高く、農林漁業以外に産業のない発展途上国に住む人たちは貧困に苦しむしかない。(自分たちの衣食住のかなりの部分を、その発展途上国の人々の労働に依存しているのに)」とか・・・。
 しかし、人間の生活に必要なものを実際には生み出さず、ただお金の金額だけを増やすような経済が、果たして本当の経済と言えるのでしょうか?
 この紳士の姿を見たイワンは・・・
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