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2019年06月17日(Mon)

代表理事に支給する給与や業務委託費A

NPO法人や一般社団法人・一般財団法人の代表理事や副理事長で、実際には、スタッフ的な働き方をしている人に給与を支払う場合の取り扱いについて見ています。

前回は、法人税法上の定期同額給与の取り扱いについて見てきました。

今回か、使用人兼務役員について見ていきたいと思います。


1.NPO法上の使用人兼務役員

役員に対する給与は、法人税法では、基本的に定期同額給与の要件を満たしていないと損金にできないことになっています。

しかし、使用人兼務役員の使用人分の給与については、損金に算入できます。

そうすると、理事長や副理事長に対する報酬であっても、実際には、役員という地位に対する報酬の支払いではなく、スタッフとしての仕事に対する給与の支払いであるという考え方もあります。

NPO法では、この考え方を認めています。

以下、内閣府のNPO法Q&Aの内容です。

https://www.npo-homepage.go.jp/qa/ninshouseido/ninshou-yakuin#Q2-3-14

2-3-14 理事長などの特別職にある者が、事務局の職員を兼務し、職員としての労働の対価を受け取った場合、その対価は役員報酬とみなされるのでしょうか。 【第2条2項1号】

法第2条第2項第1号ロにおいて、役員のうち報酬を受けるものの数は役員総数の3分の1以下であることが求められています。

ここでいう「報酬」とは、「役員としての報酬」であり、役員が同時に職員としての身分をも有する場合には、当該職員としての職務執行の対価としての給与は、これに当たらないと考えられます。

なお、監事については、法第19条により職員との兼務は認められません。


NPO法では、「役員のうち報酬を受ける者の数は役員総数の3分の1以下であること」という規定があります

この役員報酬の3分の1規定の判定においては、理事長であったとしても、毎日出勤し、他の職員と同じ給与規定に基づいて支払われる給与については、役員報酬と考えなくてもいいという解釈が出されています。

これは、例えば、理事が3名で、3名がともに代表権を有する場合や、3名のうち2名が理事長と副理事長であるような場合で、3名とも常勤の理事だとすると、そのうち1名しか報酬を支払うことができないと、他の理事は無報酬で働かなくてはならず、このようなことを法が強制することはできないからです。

非営利法人は、利益の分配を禁止している法人です。

利益の分配は、役員への過大な支払いの形で実際に行われることがあります。

この利益分配の禁止を担保するための仕組みととして、NPO法の役員報酬の3分の1規定はあります。

しかし、この役員報酬の3分の1規定は、他の法人法にはない、NPO法独自の規定であり、特殊なものである上に、これがあるから利益分配の禁止にどれだけつながっているのか、という疑問があります。



2.法人税法の取り扱い

一方で、法人税法の使用人兼務役員の取り扱いは違います。

法人税法では、役員に対する給与は定期同額要件等をみつぃていないと損金になりませんが、その際の「役員給与」には、使用人兼務役員の使用人分の給与は含まれません。

従って、理事に対する支払いでも、使用人兼務役員の使用人分の給与については、定期同額要件を満たしていなくても損金に算入することができます。


スタッフ的な働きをしている方に、残業手当を出したり、特別の届出をしていなくても賞与を出したりすることが可能です。

しかし、法人税法では、「使用人兼務役員」になれない人が規定されています。


国税庁 タックスアンサー <役員のうち使用人兼務役員になれない人>

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5205.htm

使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいますが、次のような役員は、使用人兼務役員となりません。

なお、同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者も使用人兼務役員となりません。

@ 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人

A 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員

B 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員

C 取締役(委員会設置会社の取締役に限ります。)、会計参与及び監査役並びに監事

D @からCまでのほか、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、一定の要件を満たす役員


ここで、非営利法人に関係する役職としては、代表理事、副代表理事、専務、常務、監事は、使用人兼務役員になれないことになっています。

従って、理事長、副理事長などに支払う給与は、仮にスタッフ的な働き方に対して支払ったものであったとしても、NPO法上の役員報酬の3分の1要件を判定する際の役員報酬にはなりませんが、法人税法上は役員給与になります。


定期同額要件等を満たしていなければ、その支払った給与の額は損金に算入できない可能性があります。


3.業務委託費で支払った場合

もし理事長に対して、業務委託費で支払った場合にはどのような取り扱いになるでしょうか。

法人税法上は役員給与の定期同額要件が適用され、変動する業務委託費は損金に算入されない可能性が強いと思います。

もし、業務委託費で支払う場合に、定期同額給与の規定が適用されなけば、理事長に対する支払いが自由にできてしまい、法人税法上の役員給与を規制する意味がなくなってしまいます。


4.会計上の表示

このような場合に、活動計算書にはどのように表示をするのでしょうか?

NPO法人会計基準では、理事長、副理事長などへの報酬の支払いは、「役員報酬」という科目で表示することを原則としています。

スタッフ的な仕事に対する支払いであれば、それは事業費に「役員報酬」として表示します。

もし、役員という地位に対して支払ったものであれば、管理費に「役員報酬」として表示します。


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コメント
「非課税部門で代表理事の使用人として給料を支給する場合であれば、損金という概念は関係ないので、定期同額給与である必要はない」というところですが、税務上の扱いについてはその理解でいいかと思います。ただ、法人の運営として、理事(特に理事長)の給与を自由に決められるということだと、それがいいのか、という問題はあります。旅費については、株式会社等における旅費と同じ扱いになりますので、旅費規程に基づいて支払われるのであれば、問題ないかと思います。

Posted by: 脇坂誠也  at 2021年01月05日(Tue) 17:00

いつも分かりやすいご説明ありがとうございます。

これは言い換えますと、NPO法人や一般社団法人において、非課税部門で代表理事の使用人として給料を支給する場合であれば、損金という概念は関係ないので、定期同額給与である必要はないという理解であっていますでしょうか。

また課税部門において、規定に基づき、代表理事に常識の範囲内の旅費(宿泊費例1万円・日当例3,000円)を支出した場合、損金となるという理解であっていますでしょうか。

Posted by: マッシュ  at 2021年01月04日(Mon) 17:55