2007年03月13日(Tue)
NPOの会計処理方法(1)
先週の金曜日にCANPAN道場で講師をつとめました。 そこで、以下のような質問を受けました。 「以前、NPOの会計講座で、企業会計にはない難しい会計処理方法を勉強したが、さっぱりわからなかった。この方法でNPOは会計処理をしなければいけないのでしょうか?」 といった質問です。 この「企業会計にはない、難しい会計処理方法」とは、旧公益法人会計方式による処理方法と思われます。 この方法の影響が強いのは、「内閣府の手引き」がこの旧公益法人会計基準方式でできていることです。 NPOの会計を難しくしている要因のうち、最大のものは、この旧公益法人会計の影響のためではないか、と私は思っています。 今日から何回かにわたって、この「旧公益法人会計」について取り上げてみたいと思います。 @ 旧公益法人会計とはどのようなやり方か A なぜこのような会計のやり方をするのか B 旧公益法人会計のやり方でNPOは会計処理をしなくてはいけないのか といったような問題を取り上げていきたいと思っています。 今日は、最初のテーマである「旧公益法人会計」とはどのようなやり方か、という話をします。 人気ブログランキングに参加しています 下記のバナーに応援クリックお願いします |
1. NPOの会計処理方法
NPO法人は、毎事業年度終了の日から3ヶ月以内に、所轄庁に、収支計算書、貸借対照表、財産目録の3つの計算書類を提出することになっています(それ以外に事業報告書等もあります)。 このうち、貸借対照表と財産目録については、会計処理によって実態が違ってくることはあまりありません(高度な部分では違いはあります)。 初歩的なNPOの会計で問題になるのは「収支計算書」です。 「収支計算書」は「収入」から「支出」を引いて「当期収支差額」を算出するという計算体系をとっていますが、問題は、この場合の「収入」「支出」とは何か?(専門用語で言えば「資金の範囲」をどうとるのか?)ということです。 この「収入」「支出」の範囲のとり方(資金の範囲の取り方)によって会計処理が大きく異なってくるのです。 これが、簿記の知識のない方はもちろん、簿記の知識のある方でもまったくなじみのない考え方なのです。 2.3つの考え方 「収入」「支出」の範囲のとり方には、大雑把に言うと、3つの考え方があります。 (1)「収入」「支出」を「現金収入」、「現金支出」とする方法 一番簡単な方法は、「収入」を「現金収入」、「支出」を「現金支出」ととるやり方です。 このやり方ですと、収支計算書の「当期収支差額」は「現金の今期の増加額」ということになります。 普通預金などがあれば、「現金収入」に「預金収入」が加わるだけです(当然、現金と預金の振替についてはカウントしません) 「家計簿」と同じ考え方であり、この方法をとる限りは、簿記の知識も必要ないし、もちろん、旧公益法人会計の知識などは必要ありません。 (2)「収入」「支出」を「収益」「費用」とする方法 「収入」「支出」を企業会計の「収益」「費用」と考える方法です。 つまり、「当期収支差額」を「当期利益」と同じ意味であると考える方法になります。 「現金収入」と「収益」はどう違うのか?というと、 例えば @ 商品はすでに販売したけれど、お金はまだ入金されていない、といったような場合に、お金ははいっていませんが、すでに販売した時点で「売上」に計上しますので、今期の「収益」となります。 A お金を借りた場合には「収入」になりますが、儲かったわけではないにで、「収益」とはなりません。 「収入」「支出」を「収益」「費用」とする方法、つまり、「収支計算書」を企業会計でいう「損益計算書」と同じと考える方法については、異論があるのは事実です。 この件について述べると、これだけで1テーマとなりますので、今回は割愛しますが、実務上、「収支計算書」を「損益計算書」と同じと考えて提出されている収支計算書がたくさんあることは事実です。 (3)旧公益法人会計の方法 今回のテーマである「旧公益法人会計」とは(1)と(2)の中間のやり方です。「修正現金主義」などということもあります。 ごく大雑把に言うと、 (2)@で述べたような、商品の販売や購入(サービスの提供も同様)などについては、企業会計方式である「販売」「購入」した時点で「収入」、「支出」に計上するという方法をとり、 (2)Aのような借入金や固定資産の購入については、お金を借りた時点で借入金収入、返済した時点で借入金支出あるいは固定資産を購入した時点で「固定資産購入支出」とする方法です。 少し専門的に言うと、「未収金」「未払金」などについては企業会計と同じやり方をし、「借入金(とくに長期の借入金)」「固定資産」などについては、企業会計方式ではなく、現金主義で会計処理をする方法です。 どこまでを企業会計方式でやり、どこまでを現金主義方式でやるのか?というのが「資金の範囲」の問題です。 この旧公益法人会計方式をとると、会計処理が非常に複雑になってくるのです。 次回は、「旧公益法人会計」はなぜこのような方式をとったのか?この方式を採用する積極的な意味はどこにあるのか?ということについて述べたいと思います。 |