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2019年01月09日(Wed)
一般社団法人・一般財団法人、任意団体の会計基準
Q:NPO法人会計基準は、「小規模法人問題」が大きなテーマであったということですが、小規模な非営利団体はNPO法人以外にもたくさんあります。
一般社団法人、一般財団法人、任意団体などの小規模な非営利団体がNPO法人会計基準を使うことは可能でしょうか?
A:一般社団法人、一般財団法人は「一般社団・財団法」で損益計算書、貸借対照表、附属明細書の作成が義務付けられています。
NPO法人会計基準で定められている活動計算書は損益計算書に相当するものですので、一般社団・財団法人がNPO法人会計基準を適用することは問題ありません。
任意団体は、決算書の形式は法定化されていないので、NPO法人会計基準に基づいて決算書を作成することは問題ありません。
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<解説>
世の中には、複数の人が集まって活動する団体には、大きく「営利団体」と「非営利団体」があります(ほかにも行政機関がありますが、ここでは議論の対象から外します)。
営利団体の会計は、企業会計基準をベースにしたものにほぼ統一されています。
上場企業と、街の中小企業では、規模も、必要な情報も、会計の目的も違いますが、決算書の形式は、ほぼ一緒です。
個人事業者の場合でも、確定申告書に記載する損益計算書は、細かい取り扱いで違いはあっても、企業会計の損益計算書とほぼ同じものです。
ところが、非営利団体は、社会福祉法人、学校法人、公益社団・財団法人、NPO法人それぞれ、会計の形式からやり方から、全く違います(公益法人会計基準とNPO法人会計基準が一番近いと思います)。
任意団体に至っては、それぞれの団体が独自のやり方をとっており、全く統一性はありません。
非営利団体がこのような様々な決算書の方式になっているのには、以下のような理由があるのではないかと考えます
(1) 日本の非営利法人制度は許可主義で、会計は、行政にとって指導監督をしやすいようにすることが第一の目的であったため、他の非営利法人のことは考慮せずに会計基準が策定されていたこと。
(2) 小規模な団体に配慮した会計基準がなかったため、小規模な任意団体等の非営利団体は、会計基準に沿った会計を行うことができなかったこと。
私は、非営利団体の会計のやり方がバラバラであることは様々な意味で不幸ではないか、と思います。
(1) 小規模な法人は、指針になる会計基準がないために、みんな手探りで会計をしており、独自のやり方をしていると、会計ソフトなどもないために、非常に手間もかかっている。
(2) 私たちのような会計・税務の専門家も、非営利団体の会計のやり方をそれぞれの法人格によって覚える必要があり、非営利団体に関与することのハードルが非常に高くなっている。
(3) 決算書の利用者の立場に立ってみても、会計のやり方が法人格によって違っていることは、非常に不便である。
私は、非営利団体の会計基準は、基本的に同じものをベースにして、法人格によって独自に必要な部分を付加していくという形式をとるのが好ましいのではないかと思います。
例えば、公益法人であれば、公益認定をする際に必要な会計情報があるので、その部分については、通常の会計にプラスアルファをするというイメージです。
NPO法人会計基準は、小規模な団体に配慮して作られた初めての非営利法人の会計基準です。
非営利団体の会計基準の統一はもう少し先かもしれませんが、今まで会計の指針がなかった任意団体には、NPO法人会計基準をぜひ使っていただければと思っています。
また、一般社団法人、一般財団法人でも、小規模な法人が多いと思います。
公益法人を目指している法人でなければ、公益認定に資することを目的とした公益法人会計基準は重装備すぎます。
法律的に、公益法人会計基準で作成することが義務付けられているわけではありませんので、NPO法人会計基準で作成することにまったく問題はありません。
一般社団法人、一般財団法人の方にも、NPO法人会計基準をお勧めします。
将来的に、小規模法人をベースにして、そこから徐々に大規模法人に必要な情報やそれぞれの法人格によって必要な情報を付加したような会計基準ができることを目指していければと思っています。
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