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2018年04月21日(Sat)

みなし譲渡課税非課税(措置法40条)の改正(平成30年)
30年度の税制改正で、租税特別措置法40条(みなし譲渡所得税非課税)の承認特例制度が改正されました。


詳細が国税庁と内閣府のHPに掲載されました。

国税庁

「公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例」の税制改正のあらまし

内閣府

公益社団法人・公益財団法人に対する個人からの現物資産寄附のみなし譲渡所得税非課税承認〜証明申請等の手引き〜



この承認特例の対象になるのは公益社団、財団法人等で、NPO法人は認定NPO法人であっても対象にならないのですが、どんな改正内容なのか、紹介します。



1.みなし譲渡所得税非課税制度について

 まず前段として、従来からあった租税特別措置法40条(みなし譲渡非課税制度)について簡単に説明します。

 個人が法人に不動産や有価証券(以下「不動産等」とします)などの現物資産を寄付(遺贈も含みます)し、その不動産等に含み益があると、その含み益部分に所得税、住民税が課税されます。

 税を負担するのは、寄付者です。

 これを、みなし譲渡課税といいます。

 みなし譲渡課税の趣旨は、寄付者の過去の年々の値上がり益に対する税金を、寄付者の手から離れたときに精算すると説明されています。

 ただし、一定の要件を満たしていると、みなし譲渡が非課税になります。

 これが租税特別措置法40条です。

 非課税になるには、具体的には、以下の3つの要件を満たす必要があります。

@公益増進要件:

その寄付が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること

A事業供用要件:

寄付財産を寄付があった日から2年を経過する日までの期間内に受贈法人の公益目的事業の用に直接供する、又は供する見込みであること。

B不当減少要件:

その寄付が寄付者又はその親族等の相続税、贈与税の負担を不当に減少する結果とならないと認められること

 ただ、この措置法40条には大きな問題があります。

 1つは、みなし譲渡課税が非課税になるには国税庁長官の承認を受ける必要があるのですが、その承認を受けるまで2〜3年かかるといわれていることです。

 2つめは、事業供用要件で、「直接公益目的事業の用に供すること」と「直接」という文言があるために、不動産や有価証券の寄付を受けても、寄付を受けた公益法人等が、その不動産等を売却したり、家賃収入を公益事業に使った場合には、非課税措置が受けられないことです。

 不動産であれば、その不動産を、例えば障害者のグループホームに使うなど、直接公益事業に使う以外は非課税措置が受けられませんでした。

 ただし、有価証券については、直接公益目的事業に使うのができないため、その運用益を公益目的事業に使っていれば、措置法40条の非課税が認められます。



2.29年度の承認特例の改正

 
 29年度の税制改正で、従来公益法人には適用のなかった承認特例の適用を受けることができるようになりました。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000163980.pdf

 承認特例とは、措置法40条の非課税に関する書類を提出して1月以内にその申請について国税庁長官の承認がなかった、あるいは承認しないことの決定がなかった場合には、承認があったものとみなす、というものです。

 公益法人の場合には、この承認特例を受けるためには、寄付をした人が寄付を受けた法人の役員等及び社員等並びにこれらの親族でないことや、寄付財産が寄付を受けた法人の不可欠特定財産であることなどの要件が課されていました。

不可欠特定財産とは、例えば、一定の目的のもとに収集、展示され、再収集が困難な美術館の美術品や歴史的文化的価値があり、再生不可能な建造物等が該当するのですが、相当なレアケースで、実際にはほとんど使えない制度でした。



3.30年度改正(今回の改正)


 それが30年度改正で、この承認特例が大きく拡充されました。
 
 大きな改正は以下の2点です

@承認特例の適用を受けることができる寄付財産が、不可欠特定財産に限らず、行政庁の確認を受けた「基金」の中で寄付資産を管理する等の一定の要件を満たす場合には、この承認特例が受けられることになりました。


A基金に組み入れて管理し、その後買い替えた資産をその基金の中で管理する等の一定の要件を満たす場合には、公益法人が国税庁長官へ必要書類を提出することで、引き続き非課税措置を受けることができるようになりました(特定買換資産の特例)。


@の意味するところは、事前に公益法人が行政庁が承認した基金を設定していれば、その法人の役員等及び社員等(その親族等を含む)以外から不動産や株式等の寄付を受けた場合には、承認特例を使って1月(株式等は3月)待てば承認を受けたものとみなされる、ということです。

今まで2〜3年かかっていたことを思うと、画期的なことです。

Aの意味するところは、例えば、基金に組み入れ、公益目的に使っていた不動産について、何らかの理由で公益目的に使えなくなった場合には、株式等に買い替え、その株式等を基金内で運用することによって、引き続き非課税を継続できるということです。


4.手続き


 この特例を受けるためには、@の場合には寄付前に、Aの場合には対象資産を譲渡する前に、公益法人において一定の要件を満たす基金を設置して、行政庁の証明を受ける必要があります。

 また、基金の管理や運用について審議する合議制の機関を設置することが条件になります。

 さらに、監事の監査を受けた基金明細書を事業年度終了後3月以内に行政庁に提出する必要があります。


5.公益法人にとっての意味

 公益社団、財団法人にとって、今回の改正がどのような意味があるのかについて、私見ですが、有価証券と不動産に分けて、まとめてみました。

@有価証券

含み益のある有価証券の寄付を受ける場合について、従来であれば、措置法40条の適用を受けるために2〜3年の期間を要していたといわれ、寄付者に多大な負担を強いていました

今回の特例ができたことで、公益法人内に基金を設置し、行政庁の承認を受けておけば、税務署に非課税の申告書を提出し、3カ月以内に国税庁から連絡がなければ承認されたものとみなされますので、寄付者にとって、負担が非常に少なくなります。

逆に言うと、公益法人側は、行政庁から承認を受けた基金を設置している旨をアピールすることで、より現物寄付を受けやすくなるのではないかと思います。

ただし、この特例が使えるのは、「寄付を受けた法人の役員等及び社員並びにこれらの親族等」以外の寄附ですので、例えば、寄付者自身や寄付者の親族が役員である社団法人や財団法人に株式を寄付するような場合には適用がありませんのでご注意ください。


A不動産

含み益のある不動産の寄付を受ける場合についても、措置法40条の適用を受けるのに、従来であれば2〜3年かかっていたのが、1カ月(株式等は3カ月ですが、それ以外は1カ月)以内に国税庁から連絡がなければ承認されたものとみなされるのは同様です。

一方で、基金に組み入れる資産は、公益目的事業に充てることが必要であり、不動産を収益目的で貸し付けてその賃貸収入を公益目的事業に充てることは、今回の改正でも認められていません。

そして、基金に組み入れた不動産を有価証券等に買い替えて、その運用益を公益目的事業に充てることは、今回の改正で認められることになりました(特定買換資産の特例)。

したがって、公益法人側が公益目的事業に充てる予定がある不動産の寄付を受ける場合には、基金に組み入れることで、寄付者は1カ月以内に国税庁から連絡がなければ承認されたものとみなされますので、寄付者にとって、負担が非常に少なくなります(役員等からの寄付は除かれるのは株式と同様です)。

また、寄付を受ける公益法人側も、不動産を途中で公益目的事業に使う用途がなくなったとしても、有価証券等に買い替えることで非課税が継続できますので、不動産の寄付の受け入れの判断が容易になります。

さらに言うと、すでに措置法40条の適用を受けて公益目的事業の用に供している不動産についても、基金に組み入れることで、公益目的事業に使えなくなった場合に有価証券等に買い替えても非課税を継続することが可能になりました。

一方で、寄付を受ける不動産について、公益目的事業に使う用途がまったくないようなものであれば、不動産を基金に組み入れることができませんし、そもそも措置法40条の特例が使えません

不動産の寄付の申し出があった場合には、公益法人側で公益目的事業の用に供することができるかどうかを検討する必要があるかと思います。


※一部加筆訂正しました。



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