2011年04月28日(Thu)
震災税制特例法(その1)
今日、震災税制特例法が成立しました
震災税制特例法は多岐に渡りますが、このブログでは、寄付税制に絞って見ていきたいと思います 寄付税制については、NPO側から理解しておいた方がいいことと、寄付する人側から理解しておいた方がいいことを分けた方が分かりやすいのではないかと思いましたので、今日は、まず、NPOが理解しておいた方がいい、現在の寄付税制の状況を見ていくことにします |
1.23年度税制改正大綱
今日(23年4月27日)、震災税制特例法が成立しましたが、その内容に入る前に、23年度の税制改正大綱ではどうなっていたのかを確認したいと思います。 税制改正大綱とは、毎年12月に、翌年の税制の大枠を示すもので、通常は、1月以降に具体的に法律になっていき、4月から施行されるものです 23年度の税制改正大綱では、法人税の減税や相続税の基礎控除引き下げなどとともに、NPOの税制が市民公益税制という位置づけのもので大改正されることが盛り込まれました 具体的には @ 所得税の税額控除制度の導入(成立した時点で、23年1月からの寄付に遡って適用) A 認定NPO法人の認定要件の緩和(絶対値PST:3千円の寄付者100人の導入) B 条例指定NPO法人制度の創設 などです。 通常であれば、とっくにこの内容は成立していたはずですが、国会情勢の紛糾の中で、子供手当や法人税減税などに巻き込まれ、いまだにこの23年度の税制改正大綱の内容は法律として成立していません。 従って、@〜Bの内容は、23年4月段階でまだ実現していないわけです 2.震災税制特例法 そんな中で、3月11日に大震災が起こり、状況は大きく変わります。 震災により税制改正大綱の内容については棚上げになっていますが、その代わり、被災者や被災企業を支援するための税制として、震災税制特例法が成立し、その中に、23年度の税制改正大綱の内容を先取りした寄付税制が一部実現しました。 23年度の税制改正大綱は、法人税減税などとセットになっているため、与野党合意が難しく紛糾していますが、震災税制特例法には法人税減税などは入りませんので、与野党合意も容易であったという事情があるようです。 震災税制特例法の寄付税制の内容は以下の3つです @ 大震災関連寄付について、寄付金控除の控除可能限度枠を総所得の80%に拡大(現行40%) A 認定NPO法人が大震災に関連して被災者の救援活動等のため募集する寄付について、指定寄付金とする→法人が支出した場合に全額損金算入が可能になる B 上記Aの寄付金について、23年度の税制改正法案と同じく所得控除との選択制で、、税額控除制度を導入する(中央共同募金会に対して支出された寄付金についても同様)。税額控除率は40%とする(所得税額の25%を限度) @ については、次回に書く予定の寄付する側から現在の寄付税制の内容をまとめた部分で詳しく書きますので、AとBについてもう少し詳しく見ていくことにします 3.法人が支出した場合の取扱い 法人(株式会社など)がNPO法人に寄付をした場合には、従来の制度であれば、認定がされていないNPO法人(あるいは任意団体、一般社団・財団法人等)に寄付をすれば、一般寄付金としてわずかな金額しか損金算入が出来ないが、認定NPO法人や公益社団・財団法人、社会福祉法人に寄付をした場合には、特定公益増進法人に対する寄付として、一般の寄付とは別枠で損金算入が認められる制度があります しかし、それにしても、必ずしも全額が損金(経費)扱いできるとは限らないという問題があります。 今回の震災特例税制では、認定NPO法人が大震災に関連して被災者の救援活動等のために募集する寄付については、「指定寄付金」として指定されれば、全額損金扱いされるという、今までにない大きな優遇措置が与えられました 今まで、NPO法人に対する寄付が指定寄付金扱いされることはありませんでした しかし、ここで注意が必要なのは、この全額損金扱いがされる法人からの寄付金は @ 被災者の救援活動等のために募集する認定NPO法人に対する寄付金であり、公益社団・財団法人や社会福祉法人は対象にはなっていない A 認定NPO法人だと無条件にこの扱いになるのではなく、指定寄付金として指定されなければならない B あくまでも全額損金扱いになるのは指定された後の寄付金であり、指定される前の寄付金は全額損金扱いにはならない ということです 具体的に指定されるための手続きについては、5月11日に東京で国税局の方を及びしての説明会があります この記事の最後に、説明会について内容・申込みを詳しく書いています 4.個人が支出した場合の取扱い 個人がNPO法人へ寄付をした場合には、従来は、認定がされていないNPO法人への寄付は寄付金控除の適用なし、認定NPO法人への寄付金は寄付金控除の適用がありましたが、今回の震災特例法では、大震災関連の認定NPO法人への寄付は、従来の所得控除方式である寄付金控除に加え、税額控除方式を選択できることとなりました つまり、23年度の税制改正大綱の内容を、震災に関連している認定NPO法人への寄付で、指定寄付として指定されているものに限って、実現したものです しかし、23年度の税制改正大綱の内容とはいくつか違っています @ 23年度の税制改正大綱では、税額控除の対象になるのは、認定NPO法人以外にもパブリックサポートテスト等の条件を満たしているしている公益社団・財団法人、社会福祉法人も対象でしたが、震災特例法では、税額控除の対象になるのは認定NPO法人だけです A 税額控除を受けるのは、被災者救援活動等のため募集する寄付で、指定寄付として指定されたものに限りますので、それ以外の寄付は、仮に認定NPO法人が受けた寄付であっても税額控除の対象になりません B 23年度の税制改正大綱では、法律が成立次第、23年1月分の寄付に遡って適用があることになっていましたが、今回の震災特例法では、指定寄付であることから、あくまでも税額控除の対象になる寄付は、指定寄付として指定された後の寄付だけです。従って、震災直後の寄付については適用がありません 5.まとめ 震災特例法についてまとめてみたいと思います 法人が寄付した場合に全額損金扱いになるというのは、23年度の税制改正大綱にも入っていなかった内容で、これにより指定寄付として指定された認定NPO法人への寄付は、法人にとっては、とっても出しやすくなると思います 企業は、今のところ義援金として出しているところが多いと思いますが、義援金は被災者へ の見舞金ですので、ずっと続くものではありません。 今後の主役はNPOへの支援金になると思います その時に、全額損金扱いできる指定寄付金として指定されていることはとってもお金が集まりやすくなると思います 企業にとって、「全額損金扱いできる」というのは、やっぱり相当大きいと思います 一方で、個人の寄付については、23年度の税制改正大綱の内容を実現するというのが本命かと思います 23年度の税制改正大綱の内容が通れば、今回の震災特例法の税額控除については、網羅されます(控除可能限度額が総所得の80%というのは、今回の震災の特例として、23年度の税制改正大綱にはない) さらに、23年度の税制改正大綱の内容が通れば、1月から遡って税額控除が適用されますので、震災直後の寄付も対象になります しかし、その成立は不透明なのが現実です 私が理事をしているシーズが、この実現に一生懸命活動していますので、ぜひ多くの方に支援をお願いできればと思っています 緊急寄付のお願い 5月11日の指定寄付の説明会も、シーズが主催で開催することになっています 以下、その内容について掲載します −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ●日 時 2011年5月11日(水)10時半〜12時 ●対 象 今回の指定寄附金制度にご関心のある 認定NPO法人(認定申請中を含む)関係者 ●会 場:文京シビックセンター26階 スカイホール 〒112-0003 東京都文京区春日1−16−21 26階 http://www.b-academy.jp/b-civichall/access/access.html 【交通アクセス】地下鉄後楽園駅・春日駅から徒歩3分 JR中央・総武線水道橋駅から徒歩10分 ●定 員 100名(事前申し込み制・先着順) ※できるだけ多くの団体にご参加いただくため、1団体からお申し込みは【最大2名】ま でとさせていただきます。 ●参 加 費 無料 ●内 容 ・震災特例税制に盛り込まれた認定NPO法人向け指定寄附金制度の概要 ・指定の申請や指定後の報告など実務的な手続き ・その他 ※本説明会は、要望の場ではございません。制度・税制に関するご意見・ご要望は別途、 シーズが承ります。当日は、円滑な進行にご協力をお願いいたします。 ●講 師 財務省・国税庁の指定寄附金制度ご担当者(調整中) ●主 催 特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 ●お申し込み方法 下記をご明記の上、件名を「認定NPO法人向け指定寄附金制度説明会 参加申し込み」 としていただき、メールでシーズ事務局 E-Mail: npoweb@abelia.ocn.ne.jp までお申し込み下さい。 ----------------------------------------------------------- 認定NPO法人向け 指定寄附金制度 説明会 参加申込書 ふりがな: 氏名: 所属:認定NPO法人 ご連絡先:ご自宅・ご所属先(どちらかお選びください) 郵便番号・住所:〒 電話番号: FAX番号: メールアドレス: シーズのメールマガジン配信(月2回):希望する・希望しない・配信済み(どれかお選び ください) 今回の説明会で聞きたい・知りたい内容: −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
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