2010年08月13日(Fri)
これまでの経緯
NPO法人会計基準について書いています
今回は、NPO法人の会計が、この会計基準ができる前はどのような状況であったのかを書くことにします なお、NPO法人会計基準の全文がHP上にアップされました 下記をご覧ください NPO法人会計基準 実務担当者のためのガイドライン NPO法人会計基準のQ&A前半 NPO法人会計基準のQ&A後半 学習会用パワーポイント資料 NPO法人会計基準のポイント |
1. NPO法の規定
NPO法の中には、会計に関する規定がいくつかあります。それを紹介します @ 財務諸表に関する規定(第28条) NPO法人が作成する財務諸表として、収支計算書・財産目録・貸借対照表の3つとしています A情報公開規定(第28条、29条) NPO法人は、事業年度終了後3ヶ月以内に所轄に事業報告書及び計算書類等を提出するとともに、事務所に備えおくことになっています。所轄庁でも閲覧できることになっています。 最近は、インターネット上で公開している所轄庁も多くあります B会計原則(第27条) NPO法人の会計原則として、以下の4つが規定されていましたが、このうち、1.の予算準拠原則は、平成15年の改正で削除されたので、現在は3つが規定されています 1.予算準拠原則(H15年 改正で削除) 2.正規の簿記の原則 3.真実かつ明瞭性の原則 4.継続性の原則 C区分経理(第5条第2項) その他の事業を行う場合には、その他の事業の会計は特定非営利活動にかかる事業に関する会計から区分し、特別な会計として経理しなければならないことが規定されています 以上がNPO法で規定されている会計に関する規定です しかし、@は提出する財務諸表の種類、Aは情報公開の規定で、Bの会計原則は抽象的な規定、Cはその他の事業を行っている場合の特別な規定であり、いずれも実務の指針になるものではありません。 つまり、NPO法人は、会計基準がない状態で10年以上やってきたのです 会計基準を作らなかった理由としては、NPO法制定時にはどのような法人がでてくるのかわからなかったので、基準を作れなかったという理由があるそうです NPO法制定から10年が経過して、会計基準を作成する機が熟したのではないか、と考えています 2.「特定非営利法人に関する会計の手引き」 会計基準がない代わりに、今までは、内閣府が「特定非営利法人に関する会計の手引き」(以下「手引き」とします)というものを出していました。 全国の所轄庁が、この内閣府が出している「手引き」に基づいて、独自に「様式例」のようなものを提示しています。 この「手引き」は、強制力はなく、あくまでも例示ですが、所轄庁が例示したため、多くのNPO法人が影響を受けました この「手引き」は、昭和52年、 60年公益法人会計基準の影響が強く、収支計算書を資金収支の部と正味財産増減の部に2区分に分け、作成するには一取引二仕訳が必要 になります。 普通の会社の会計をやっていた人にとってもなじみのないやり方であり、私たちのような税理士・会計士にとっても理解するのが相当困難なものでした 3. 特定非営利活動法人制度の見直しに向けて そのような状況の中で、2007年6月に、国民生活審議会総合企画部会報告より「特定非営利活動法人制度見直しに向けて」という報告が発表されました。 その報告の中で、NPO法人の会計基準がないため、以下のような問題点が指摘されました NPO法人の計算書類が正確に作成されていない 計算書類の記載内容に不備が見られる 会計処理がまちまちでNPO法人間の比較が難しい そして、会計基準の策定の必要性について言及がされました。 さらに、NPO法人の会計基準の策定は、所轄庁が策定すると、NPO法人に対して必要以上の指導的効果を及ぼす恐れがあるため、民間の自主的な取り組みに任せるべきであるとされました 4. NPO法人会計基準協議会の発足 これを受けて、全国18のNPO支援組織がNPO法人会計基準協議会を発足させ、NPO法人会計基準の策定作業を2009年3月に開始しました。(最終的に79団体が加盟しました) さらに、専門家、研究者、実務家、助成財団等の24名で構成されるNPO法人会計基準策定委員会に会計基準の策定を諮問しました。 次回は、2009年3月以降の具体的な策定プロセスについて触れていきます |