みなし譲渡とNPO
[2008年07月11日(金)]
先日、今年の12月から施行される新公益法人制度の勉強会にいってきました。
制度の複雑さももちろんなのですが、申請書類のあまりの複雑さに、膨大な量にびっくりしました。これは要件を満たすかという以前に相当の事務作業能力が求められるな、と実感しました。
もう少し勉強してから、新公益法人のこともまとめたいと思います。
今日は、NPOでしばしば問題になる、不動産や株式などの現物の寄付をした場合に、寄付をした人が課税の対象になる可能性がある「みなし譲渡」と言われるものを取り上げたいと思います。
寄付を受けたNPO側が課税されるのであればともかく、寄付をする人が課税されるというのはびっくりなのですが、このリスクは不動産や株式など現物の寄付を受ける場合には知っておく必要があります。
1. 譲渡所得とは
まず、みなし譲渡について理解する前に、通常の譲渡の原則を知っておく必要があります。
土地や建物などの不動産を譲渡した場合、株式などを売却した場合には、売却した金額から、取得費と譲渡費用を差し引いた売却益に対して課税がされます。
取得費とは、購入したときの金額ですが、不動産などでは、昔に購入したものや相続によって受けたもので、取得費が明らかでない時もあると思います。
その場合には、売却価額の5%を取得費としてもいいこととなっています。
譲渡費用とは、売却するときに不動産会社に支払う手数料などです。
これは、個人で不動産を持っている場合にも適用される話ですのでわかりやすいと思います
もちろん、購入した金額よりも売却した金額が安ければ「譲渡損」となり、課税されません。
2. みなし譲渡とは
みなし譲渡とは、不動産や株式などを持っているような人が、NPO法人へそれらを寄付したような場合に、それを、時価で他人に譲渡し、その譲渡代金を寄付をしたものとみなして、寄付をした時点で課税をしようとするものです。
これは、寄付だけではなく、低額譲渡といって時価の2分の1未満の金額で譲渡がされた場合にも適用されます。
例えば、時価2千万円の不動産で、先祖代々から引き継がれたものをNPO法人に寄付をしようとします。
この場合には、この寄付をした人が、2千万円−2千万円×5%=1900万円(取得費はわからないものとし、譲渡費用はかからなかったとします)に対して課税がされてしまいます。
税率は、土地、建物で5年以上所有しているものであれば、原則的に、所得税と住民税を合わせて20%、つまり、1900万円×20%=380万円が課税されてしまうということになります。
寄付をする方には、寄付をした上に税金まで支払わなければいけないというのは、納得できない話ですよね。
だから注意が必要です。
3. なぜみなし譲渡の適用があるのか
なぜこのようなナンセンスとも思える規定があるのでしょうか?
それは、「租税回避行為の防止」のためです。
具体的にはどのようなことでしょうか?
みなし譲渡の規定がないとして、次のような前提を考えて見ます
@ 含み益が1000万円(買ったときよりも1000万円値上がりしている)ある不動産をある人が持っています。
A その人が、オーナー会社を所有しており、その会社の繰越損失(過去の赤字部分で法人税上黒字と相殺できる金額)が1000万円あるとします
B その人が、個人で持っている不動産を会社に寄付をしたとします。
C みなし譲渡の規定がないとすると、その1000万円の含み益に課税されないとします
D 会社がその1000万円の寄付を受け、1000万円は会社の利益になりますが、繰越の損失1000万円があるので、相殺されて、法人でも課税がされません(寄付を受けた側がNPO法人であれば、受け入れた1000万円についても課税されない場合があります)
みなし譲渡の規定がないと、このようなことができて、実質的に法人を利用して課税回避ができてしまうのです。
このようなことを防止するために、法人に無償又は低額で譲渡をした場合に、時価で譲渡をしたものとみなして、譲渡(寄付)をした段階で、譲渡(寄付)をした人に課税するという規定があるのです。
(税法の原則として、財産の移転時に含み益部分を精算するという考え方が基本にはあります)
しかし、趣旨はわかるとしても、これを善意でNPO法人に寄付をする人にまで適用するというのは、どういうことなのか?と思ってしまいます。
4.認定NPO法人もこの適用を受ける
このみなし譲渡の規定は、寄付を受けた法人がNPO法人である場合ももちろん、認定NPO法人である場合にも受けます。
しかし、今度できる新公益法人の公益社団・財団法人に寄付をする場合にはこの規定の適用を受けないという不均等な規定になってしまっています。
寄付文化を伸ばすといいながら、NPOに現物寄付をする人に、まるで罰則のようなことになってしまうこの規定は、やっぱりおかしいと思います。
このみなし譲渡は、もしNPO法人にせずに任意団体のままでも適用を受けます。
<参考>国税庁質疑応答事例
5.寄付を受けたNPO法人の課税
一方、寄付を受けたNPO法人にとってこの現物寄付が課税されるかどうか、ということですが、この現物寄付が収益事業(法人税が課税される事業)に使われるものでない限りは課税されることはありません。
ただし、もしこれがNPO法人ではなく、任意団体だと、任意団体に贈与税が課税されるということになってしまいます。
法人税法やみなし譲渡の規定がある所得税法の規定では、「任意団体(人格のない社団等)は法人とみなす」という規定があるため、NPO法人に寄付をする場合と任意団体に寄付をする場合のみなし譲渡の扱いは同じになります。
しかし、相続税法には、この「人格のない社団等は法人とみなす」という規定がないため、任意団体に現物寄付をされた財産は個人と同様に、贈与税の基礎控除を超えれば、贈与税が課税されるのです。
まとめると
@NPO法人へ寄付をしてもその寄付を受けた財産を収益事業に充てていなければ、NPO法人側には税金はかからない
A任意団体への寄付は、任意団体に税金(贈与税)がかかる可能性がある
従って任意団体への高額な贈与、遺贈は慎重にしたほうがいい
B不動産や株式の贈与は、NPO法人、任意団体に関らずみなし譲渡の可能性がある。
寄付をしてくれた人に迷惑がかからないように、寄付をしてくれた人にしっかりと説明をし、どのようにして税負担をするのかを決めておかなければならない
なお、このテーマについて、税理士の柳澤賢仁さんが、人気ブログ「所長Blog」で4回にわたって、詳しく取り上げています。
とっても面白いブログです。
このブログは寄付を受けた側が株式会社であることを前提にしています。

制度の複雑さももちろんなのですが、申請書類のあまりの複雑さに、膨大な量にびっくりしました。これは要件を満たすかという以前に相当の事務作業能力が求められるな、と実感しました。
もう少し勉強してから、新公益法人のこともまとめたいと思います。
今日は、NPOでしばしば問題になる、不動産や株式などの現物の寄付をした場合に、寄付をした人が課税の対象になる可能性がある「みなし譲渡」と言われるものを取り上げたいと思います。
寄付を受けたNPO側が課税されるのであればともかく、寄付をする人が課税されるというのはびっくりなのですが、このリスクは不動産や株式など現物の寄付を受ける場合には知っておく必要があります。
1. 譲渡所得とは
まず、みなし譲渡について理解する前に、通常の譲渡の原則を知っておく必要があります。
土地や建物などの不動産を譲渡した場合、株式などを売却した場合には、売却した金額から、取得費と譲渡費用を差し引いた売却益に対して課税がされます。
取得費とは、購入したときの金額ですが、不動産などでは、昔に購入したものや相続によって受けたもので、取得費が明らかでない時もあると思います。
その場合には、売却価額の5%を取得費としてもいいこととなっています。
譲渡費用とは、売却するときに不動産会社に支払う手数料などです。
これは、個人で不動産を持っている場合にも適用される話ですのでわかりやすいと思います
もちろん、購入した金額よりも売却した金額が安ければ「譲渡損」となり、課税されません。
2. みなし譲渡とは
みなし譲渡とは、不動産や株式などを持っているような人が、NPO法人へそれらを寄付したような場合に、それを、時価で他人に譲渡し、その譲渡代金を寄付をしたものとみなして、寄付をした時点で課税をしようとするものです。
これは、寄付だけではなく、低額譲渡といって時価の2分の1未満の金額で譲渡がされた場合にも適用されます。
例えば、時価2千万円の不動産で、先祖代々から引き継がれたものをNPO法人に寄付をしようとします。
この場合には、この寄付をした人が、2千万円−2千万円×5%=1900万円(取得費はわからないものとし、譲渡費用はかからなかったとします)に対して課税がされてしまいます。
税率は、土地、建物で5年以上所有しているものであれば、原則的に、所得税と住民税を合わせて20%、つまり、1900万円×20%=380万円が課税されてしまうということになります。
寄付をする方には、寄付をした上に税金まで支払わなければいけないというのは、納得できない話ですよね。
だから注意が必要です。
3. なぜみなし譲渡の適用があるのか
なぜこのようなナンセンスとも思える規定があるのでしょうか?
それは、「租税回避行為の防止」のためです。
具体的にはどのようなことでしょうか?
みなし譲渡の規定がないとして、次のような前提を考えて見ます
@ 含み益が1000万円(買ったときよりも1000万円値上がりしている)ある不動産をある人が持っています。
A その人が、オーナー会社を所有しており、その会社の繰越損失(過去の赤字部分で法人税上黒字と相殺できる金額)が1000万円あるとします
B その人が、個人で持っている不動産を会社に寄付をしたとします。
C みなし譲渡の規定がないとすると、その1000万円の含み益に課税されないとします
D 会社がその1000万円の寄付を受け、1000万円は会社の利益になりますが、繰越の損失1000万円があるので、相殺されて、法人でも課税がされません(寄付を受けた側がNPO法人であれば、受け入れた1000万円についても課税されない場合があります)
みなし譲渡の規定がないと、このようなことができて、実質的に法人を利用して課税回避ができてしまうのです。
このようなことを防止するために、法人に無償又は低額で譲渡をした場合に、時価で譲渡をしたものとみなして、譲渡(寄付)をした段階で、譲渡(寄付)をした人に課税するという規定があるのです。
(税法の原則として、財産の移転時に含み益部分を精算するという考え方が基本にはあります)
しかし、趣旨はわかるとしても、これを善意でNPO法人に寄付をする人にまで適用するというのは、どういうことなのか?と思ってしまいます。
4.認定NPO法人もこの適用を受ける
このみなし譲渡の規定は、寄付を受けた法人がNPO法人である場合ももちろん、認定NPO法人である場合にも受けます。
しかし、今度できる新公益法人の公益社団・財団法人に寄付をする場合にはこの規定の適用を受けないという不均等な規定になってしまっています。
寄付文化を伸ばすといいながら、NPOに現物寄付をする人に、まるで罰則のようなことになってしまうこの規定は、やっぱりおかしいと思います。
このみなし譲渡は、もしNPO法人にせずに任意団体のままでも適用を受けます。
<参考>国税庁質疑応答事例
5.寄付を受けたNPO法人の課税
一方、寄付を受けたNPO法人にとってこの現物寄付が課税されるかどうか、ということですが、この現物寄付が収益事業(法人税が課税される事業)に使われるものでない限りは課税されることはありません。
ただし、もしこれがNPO法人ではなく、任意団体だと、任意団体に贈与税が課税されるということになってしまいます。
法人税法やみなし譲渡の規定がある所得税法の規定では、「任意団体(人格のない社団等)は法人とみなす」という規定があるため、NPO法人に寄付をする場合と任意団体に寄付をする場合のみなし譲渡の扱いは同じになります。
しかし、相続税法には、この「人格のない社団等は法人とみなす」という規定がないため、任意団体に現物寄付をされた財産は個人と同様に、贈与税の基礎控除を超えれば、贈与税が課税されるのです。
まとめると
@NPO法人へ寄付をしてもその寄付を受けた財産を収益事業に充てていなければ、NPO法人側には税金はかからない
A任意団体への寄付は、任意団体に税金(贈与税)がかかる可能性がある
従って任意団体への高額な贈与、遺贈は慎重にしたほうがいい
B不動産や株式の贈与は、NPO法人、任意団体に関らずみなし譲渡の可能性がある。
寄付をしてくれた人に迷惑がかからないように、寄付をしてくれた人にしっかりと説明をし、どのようにして税負担をするのかを決めておかなければならない
なお、このテーマについて、税理士の柳澤賢仁さんが、人気ブログ「所長Blog」で4回にわたって、詳しく取り上げています。
とっても面白いブログです。
このブログは寄付を受けた側が株式会社であることを前提にしています。









今回のエントリは、たぶん、税務の専門家の方でないと難しいかもしれません。
(すいません。)
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