特定収入に係る消費税の計算
[2006年11月16日(Thu)]
NPO法人の消費税の本則課税の計算には、「特定収入にかかる仕入税額控除の特例」という非常にわかりにくい制度があります。
この制度はどのようなものなのか、先日講座を行ったときに受けた「私たちの団体は収入のほとんどが会費収入で、消費税はかかりません。しかし、備品などを購入しているので、支払には消費税がかかっています。このような場合には、支払った消費税は戻ってこないのでしょうか?」という質問を基に説明しようとしました。
11月1日に、消費税の計算体系の基本的なものを解説しました(ここを参照)。この続きをすぐにアップする予定でしたが、NPO会計基準の影響があり、遅れてしまいました。今日は、NPOの税務でも一番難しい事項の1つである「特定収入に係る仕入税額控除の特例」について、どんな特例であり、どんなNPOがこの特例の影響を受ける可能性があるのかを把握してもらうことを目的とします。

目標のベストテン内陥落です
復活を目指し、地道にがんばります!
1. 特定収入に係る消費税の特例の趣旨
「収入は会費収入しかないが支出は備品など消費税を支払っている」という場合を取り上げてきましたが、似たような例として、「収入として寄附をもらって、その寄附金で建物を購入した」という場合を取り上げてみます。
これも、会費の場合と基本的に同じで、寄附金という収入には消費税がかかりませんが、建物の支出には消費税を支払います。とすると、消費税の基本的な考えからいえば、消費税の申告をすれば、建物の支出にかかった消費税が還付されることになります。問題は、この還付を認めるかどうか?ということです。このような還付を認めないのが「特定収入に係る仕入税額控除の特例」です。
<まとめ>
消費税のかからない会費や寄附金、補助金で消費税のかかるものを購入した場合
→支払った消費税の還付は受けられない
2. ペンションの場合との違い
前回、ペンションを購入した場合について、還付申告をして消費税が戻ってきたパターンで説明をしました。 このペンションを購入した場合と、寄附金で建物を購入する場合とでは、似ているようで全く違うのです。
なにが違うのかというと、ペンションの購入の話は、「売上(収入)に係る消費税―仕入(支出)に係る消費税の差額を納付又は還付する」という消費税の基本の計算体系は守っているのですが、単に、1年目は売上(ペンション収入)がほとんどなかったため、たまたま還付になったという時期のずれの問題なのです。2年目以降は、逆に、ペンション収入に係る消費税はでてきますが、支出はあまり出てこなくなります。つまり、トータルとしては「預った消費税から支払った消費税の差額を納付する」という消費税の基本は守られているのです(消費税の免税制度を利用して必ずしもそうならない場合もありますが、複雑なのでこの説明は省略します)
それに対して、「寄附金で建物を購入する」という話は、時期のずれではなく、そもそも収入に係る消費税(預った消費税)がありません。このように、そもそも消費税がかかっていない寄附金や補助金、会費で購入したものについては、消費税の控除を認めないのです。
「特定収入」とは寄附金、補助金、会費などの収入です。「仕入税額控除」とは、納付する消費税を計算する場合に、売上(収入)に係る消費税から引く金額のことです。寄附金や補助金、会費などの特定収入がある場合には、基本的に、その収入から支払われた消費税は、仕入税額控除ができない、というのが「特定収入に係る仕入税額控除の特例」の規定です。
<まとめ>
ペンション用の建物を購入した→控除を受ける時期の問題なので、仕入税額控除の適用がある
寄附金で建物を購入した→時期の問題ではない。仕入税額控除は基本的に受けられない
3.具体例
もう少しNPOで実際にありそうな例を考えます。
あるNPO法人が行った事業について、事業収入が1050万円(1000万円+消費税50万円)、で、別に補助金を1000万円受取っているとします。(この補助金は使途が特定されていないものとします)。この事業の事業費は2000万円だったとします。2000万円の中には、人件費のように消費税のかからない支出もあるでしょうから、消費税のかかる支出は1260万円(1200万円+消費税60万円)だったとします。充分ありそうな話です。
これを、消費税の原則どおり計算すれば、売上(収入)に係る消費税50万円―仕入(支出)に係る消費税60万円=10万円の還付になります。これでいいのか?ということなのです。つまり、「支払った消費税60万円のうち、半分は消費税のかかっていない補助金から出ているのでしょう、その部分は控除を認めません」というのが、「特定収入に係る仕入税額控除の特例」です。この場合には、仕入(支出)に係る消費税は、60万円ではなく、30万円(60万円×50%)とされます。従って、消費税は10万円還付ではなく、20万円の納付(50万円―30万円)となります。
この例ですと、「還付を受けるのは変だなあ」と思うかもしれませんが、消費税のかかる支出が1260万円ではなく、840万円だったらどうでしょうか?売上(収入)に係る消費税50万円―仕入(支出)に係る消費税40万円=10万円の納付で、わりと何の抵抗もなく申告してしまうのではないでしょうか?もちろん、この計算は誤りで、実際には、50万円―20万円(40万円×50%)=30万円の納付となります。
前者のパターンで本則課税を計算しているNPOが多いのではないか、というのが私の危惧するところです。
<まとめ>
売上(収入)に係る消費税―仕入(支出)に係る消費税=納付税額
↓
特定収入(会費、寄附金、補助金等)に対応する部分をカット。その分だけ納付する税額は多くなる。
4.例外その他
そうすると、少しでも会費や補助金があるとこんな面倒な計算をしなければいけないか、というと、そんなことはありません。特定収入割合が5%以下の場合にはこの特例は適用されません。全額支払に係る消費税は控除できます(つまり、会費や寄附金、補助金などがわずかな場合にはこの特例のことは気にしなくてもいい)。特定収入が少ない場合には大目にみるということでしょうか。
また、この計算は、特定収入が使途が特定されているかどうか(寄附や補助金がひも付きであるかどうか)などによって計算が非常に複雑になっていて、ここに述べたほど単純ではありません(だから税理士泣かせです)。
5. アドバイス
以上をまとめます。
@「特定収入に係る仕入税額控除の特例」が適用されるのは、
・寄附金や補助金、会費収入が多い(5%超)
・消費税の納税義務がある
・簡易課税を選択していないという場合です
この3つの条件を満たしているNPOは気をつけてください
A このようなNPOは、「売上(収入)に係る消費税―仕入(支出)に係る消費税=納付税額」という計算よりも、実際には多く納税しなければいけない可能性があります(仕入に係る消費税が一部カットされるので)
B @に思いあたるような場合には、この「特定収入に係る仕入税額控除の特例」のことをじっくり勉強する必要があります。もしこの計算に自信がなく、選択が可能であれば、簡易課税にするということも考えられます。
この制度はどのようなものなのか、先日講座を行ったときに受けた「私たちの団体は収入のほとんどが会費収入で、消費税はかかりません。しかし、備品などを購入しているので、支払には消費税がかかっています。このような場合には、支払った消費税は戻ってこないのでしょうか?」という質問を基に説明しようとしました。
11月1日に、消費税の計算体系の基本的なものを解説しました(ここを参照)。この続きをすぐにアップする予定でしたが、NPO会計基準の影響があり、遅れてしまいました。今日は、NPOの税務でも一番難しい事項の1つである「特定収入に係る仕入税額控除の特例」について、どんな特例であり、どんなNPOがこの特例の影響を受ける可能性があるのかを把握してもらうことを目的とします。
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目標のベストテン内陥落です
「収入は会費収入しかないが支出は備品など消費税を支払っている」という場合を取り上げてきましたが、似たような例として、「収入として寄附をもらって、その寄附金で建物を購入した」という場合を取り上げてみます。
これも、会費の場合と基本的に同じで、寄附金という収入には消費税がかかりませんが、建物の支出には消費税を支払います。とすると、消費税の基本的な考えからいえば、消費税の申告をすれば、建物の支出にかかった消費税が還付されることになります。問題は、この還付を認めるかどうか?ということです。このような還付を認めないのが「特定収入に係る仕入税額控除の特例」です。
<まとめ>
消費税のかからない会費や寄附金、補助金で消費税のかかるものを購入した場合
→支払った消費税の還付は受けられない
2. ペンションの場合との違い
前回、ペンションを購入した場合について、還付申告をして消費税が戻ってきたパターンで説明をしました。 このペンションを購入した場合と、寄附金で建物を購入する場合とでは、似ているようで全く違うのです。
なにが違うのかというと、ペンションの購入の話は、「売上(収入)に係る消費税―仕入(支出)に係る消費税の差額を納付又は還付する」という消費税の基本の計算体系は守っているのですが、単に、1年目は売上(ペンション収入)がほとんどなかったため、たまたま還付になったという時期のずれの問題なのです。2年目以降は、逆に、ペンション収入に係る消費税はでてきますが、支出はあまり出てこなくなります。つまり、トータルとしては「預った消費税から支払った消費税の差額を納付する」という消費税の基本は守られているのです(消費税の免税制度を利用して必ずしもそうならない場合もありますが、複雑なのでこの説明は省略します)
それに対して、「寄附金で建物を購入する」という話は、時期のずれではなく、そもそも収入に係る消費税(預った消費税)がありません。このように、そもそも消費税がかかっていない寄附金や補助金、会費で購入したものについては、消費税の控除を認めないのです。
「特定収入」とは寄附金、補助金、会費などの収入です。「仕入税額控除」とは、納付する消費税を計算する場合に、売上(収入)に係る消費税から引く金額のことです。寄附金や補助金、会費などの特定収入がある場合には、基本的に、その収入から支払われた消費税は、仕入税額控除ができない、というのが「特定収入に係る仕入税額控除の特例」の規定です。
<まとめ>
ペンション用の建物を購入した→控除を受ける時期の問題なので、仕入税額控除の適用がある
寄附金で建物を購入した→時期の問題ではない。仕入税額控除は基本的に受けられない
3.具体例
もう少しNPOで実際にありそうな例を考えます。
あるNPO法人が行った事業について、事業収入が1050万円(1000万円+消費税50万円)、で、別に補助金を1000万円受取っているとします。(この補助金は使途が特定されていないものとします)。この事業の事業費は2000万円だったとします。2000万円の中には、人件費のように消費税のかからない支出もあるでしょうから、消費税のかかる支出は1260万円(1200万円+消費税60万円)だったとします。充分ありそうな話です。
これを、消費税の原則どおり計算すれば、売上(収入)に係る消費税50万円―仕入(支出)に係る消費税60万円=10万円の還付になります。これでいいのか?ということなのです。つまり、「支払った消費税60万円のうち、半分は消費税のかかっていない補助金から出ているのでしょう、その部分は控除を認めません」というのが、「特定収入に係る仕入税額控除の特例」です。この場合には、仕入(支出)に係る消費税は、60万円ではなく、30万円(60万円×50%)とされます。従って、消費税は10万円還付ではなく、20万円の納付(50万円―30万円)となります。
この例ですと、「還付を受けるのは変だなあ」と思うかもしれませんが、消費税のかかる支出が1260万円ではなく、840万円だったらどうでしょうか?売上(収入)に係る消費税50万円―仕入(支出)に係る消費税40万円=10万円の納付で、わりと何の抵抗もなく申告してしまうのではないでしょうか?もちろん、この計算は誤りで、実際には、50万円―20万円(40万円×50%)=30万円の納付となります。
前者のパターンで本則課税を計算しているNPOが多いのではないか、というのが私の危惧するところです。
<まとめ>
売上(収入)に係る消費税―仕入(支出)に係る消費税=納付税額
↓
特定収入(会費、寄附金、補助金等)に対応する部分をカット。その分だけ納付する税額は多くなる。
4.例外その他
そうすると、少しでも会費や補助金があるとこんな面倒な計算をしなければいけないか、というと、そんなことはありません。特定収入割合が5%以下の場合にはこの特例は適用されません。全額支払に係る消費税は控除できます(つまり、会費や寄附金、補助金などがわずかな場合にはこの特例のことは気にしなくてもいい)。特定収入が少ない場合には大目にみるということでしょうか。
また、この計算は、特定収入が使途が特定されているかどうか(寄附や補助金がひも付きであるかどうか)などによって計算が非常に複雑になっていて、ここに述べたほど単純ではありません(だから税理士泣かせです)。
5. アドバイス
以上をまとめます。
@「特定収入に係る仕入税額控除の特例」が適用されるのは、
・寄附金や補助金、会費収入が多い(5%超)
・消費税の納税義務がある
・簡易課税を選択していないという場合です
この3つの条件を満たしているNPOは気をつけてください
A このようなNPOは、「売上(収入)に係る消費税―仕入(支出)に係る消費税=納付税額」という計算よりも、実際には多く納税しなければいけない可能性があります(仕入に係る消費税が一部カットされるので)
B @に思いあたるような場合には、この「特定収入に係る仕入税額控除の特例」のことをじっくり勉強する必要があります。もしこの計算に自信がなく、選択が可能であれば、簡易課税にするということも考えられます。
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当方はNPO法人で一昨年度に売上が1千万を超過し、21年度が対象年となり、簡易課税の手続きを忘れていたこともあり、現在、消費税の計算中に奮闘しております。
少しお知恵を貸していただければと思いコメントしました。
課税対象の事業収入が約1,100万、不課税の助成金(使途は様々)が約800万で、会計処理の際に助成金原資の事業費は、区別して仕訳しております。
この場合、課税対象の1100万に関わる課税仕入れのみを控除対象にして申告、つまり、特定収入の計算はしないという選択の余地はないものなのでしょうか?
お忙しい中とは思いますが、コメントいただければ幸いです。