NPOの会計の問題点(1)
[2007年11月17日(土)]
NPOの会計基準を作ろうという動きが出ています。
内閣府国民生活局からでている「特定非営利活動法人制度の見直しに向けて」でも、「民間主導で会計基準を策定することが提言されています。
会計基準の策定が提言されている背景にはいろいろなことがありますが、このブログでは、今のNPOの会計で何が問題になっているのか、いくつか私見を述べたいと思います。
NPOの会計の問題点として
@収支計算書の定義がないこと
A貸借対照表の定義がないこと
B内閣府の手引きが実質的なスタンダードになっていること
を挙げたいと思います
今回は、「収支計算書」に定義がないことについて述べます
12月6日(木)にNPO支援東京会議では、「NPO法人の会計書類とその問題点」の定例勉強会を行います。
NPOの会計基準についても取り上げ、みなさんのご意見も聞きたいと思っています。
誰でも参加をできますので、ぜひご参加下さい
詳細と申込はここを参照下さい
1.収支計算書に定義がないこと
NPO法人は、NPO法で会計関係の書類として、収支計算書、貸借対照表、財産目録を所轄庁へ提出することになっています。
しかし、収支計算書とは何か、ということについてはどこにもでていません。
つまり、「収支計算書」の定義がないのです。
収支計算書は、大雑把に言えば、収入から支出を引いて当期収支差額を求めます。
この際に、収入とは何か、支出とは何か、差額の当期収支差額は何を意味するのか、ということについて、NPO法についてはどこにもでておらず、会計基準もありません。
そのために、同じ収支計算書といいながら、収入、支出が意味するもの、あるいはその差額である当期収支差額が意味するものがいろいろな収支計算書が混在しているわけです。
収支計算書
収入―支出=当期収支差額
収入、支出、当期収支差額が何を意味するのか、法人によっていろいろ
2.現金主義の収支計算書
一番素直に考えれば、
収入=現金+預金の収入、
支出=現金+預金の支出、
当期収支差額=現金+預金の当期の増減額
ということになると思います
いわゆる家計簿と同じ方式です。
この方法で収支計算書を作っているところもたくさんあると思います。
これは異存のないところでしょう
しかし、必ずしもこの方式で収支計算書を作っていないところもたくさんあります
3.旧公益法人会計方式の収支計算書
(1)旧公益法人会計方式とは
NPO法人には会計基準はありませんが、財団法人や社団法人には「公益法人会計基準」があります。
「公益法人会計基準」は平成18年4月1日から新しくなっていますが、NPO法が成立した時は古い公益法人会計基準でした。
この古い公益法人会計基準を使って収支計算書を作っているNPO法人がたくさんあります。
これを「旧公益法人会計方式の収支計算書」と呼ぶことにします。
この収支計算書が、現金主義の収支計算書と違うところは、ざっくりと言うと、収入に未収金などを加えること、支出に未払金などを加えることです。
例えば、今期中に活動は既に終わっているが、お金はまだ入金がされていないようなものも収入に加えます。
また、今期中に活動は終わっているが支払がされていないものも支出に加えます
収入=現金、預金収入+未収金
支出=現金、預金支出+未払金
(2)なぜこのようなやりかたをするのか
なぜ旧公益法人会計がこのようなやり方をとっているかというと、収支計算書を、今期の最初に総会などで承認された予算どおりに実行したかどうかをチェックする機能を果たすものと考えているからです(予算準拠主義といいます)。
例えば、今期の3月にセミナーを開催する予定で予算を組んだとします。実際に3月にセミナーを開催しました。
しかし、会場費の支払いが4月にずれ込んだとします。計画通りに実行したにもかかわらず、単に支払いが遅れただけの話です。
この会場費の支払いを今期の収支計算書に反映させないと、予算対比ができなくなってしまいます。
だから、このような未払金も支出に計上するわけです。
収支計算書を予算どおり実行したものであるかどうかをチェックするためのものであると考えると、単純な現金主義の収支計算書では不都合なのです。
当然、ここで作成される収支計算書は、現金主義の収支計算書とは、収入、支出の意味するものも違い、差額である当期収支差額も違ってきます。
4.損益計算書方式の収支計算書
(1)損益計算書方式とは
NPO法人の収支計算書には、営利企業の損益計算書と同じ意味を持っているものもあります。
これを損益計算書方式の収支計算書と呼びます。
営利企業の損益計算書では、収益から費用を差引いて、当期利益を求めます。
つまり、この方式は、
収入=収益
支出=費用
当期収支差額=当期利益
とする方法です。
損益計算書の場合にも未収金や未払金を計上します。
この方式が、旧公益法人会計方式の収支計算書とどう違うかというと、ものすごく大雑把に言えば、固定資産と借入金の扱いが違います。
現金主義及び旧公益法人会計方式の収支計算書では、固定資産を購入したときは、
「固定資産支出額」として、購入金額が支出に計上されます。
しかし、損益計算書方式では、固定資産の購入金額は支出には計上されず、当期の価値の減少分である減価償却費だけが支出(費用)に計上されます。
また、お金を借りたり返した場合には、現金主義と旧公益法人では、収入、支出に「借入金収入」「借入金支出」として計上されます。
しかし、損益計算書方式では、お金を借りたり返したりしても得したわけでも損したわけでもないため、収入(収益)、支出(費用)には計上されません。
そして、この方式では、当期収支差額は、「当期利益」を表すことになります。
(2)なぜこの方式をとるのか
収支計算書を損益計算書と読み替えるこの方式には専門家の間では異論もありますが、
NPO法の成立に関わったシーズの松原氏は、収支計算書を損益計算書方式で作って問題がないと言い切っています(ここを参照下さい)。
営利企業の会計をしていた人がNPOの会計をする場合には、損益計算書と同じ方式であるこの方式が一番作りやすいです
また、法人税の申告がある団体は、法人税の申告をするためには損益計算書を作成する必要があるので、この方式をとることが多いと思います
さらに、新しい公益法人会計基準も、この方式を採用しました(正味財産増減計算書という名前にしています)
5.まとめ
ここまでをまとめると、
NPO法人の収支計算書には、同じ名前でありながら
@現金主義の収支計算書
A旧公益法人会計方式の収支計算書
B損益計算書方式の収支計算書
が混在しており、収入、支出、その差額である当期収支差額の意味するものが違っているということです
(他にもこの中間的なものが混在していると思います)。
しかも、違いについて、「資金の範囲」として注記すれば、本来はわかるのですが、そこまでの知識のある会計担当者もNPOにはほとんどいないし、決算書を見る人も、そんな知識がある人はほとんどいません。
だから、実態としては、Aという団体とBという団体の収支計算書を比較しても、その収支計算書の意味するところが違うため、比較に意味がないということが起こるわけです。
この事態が好ましいとは思えません。
これが会計基準をつくる一つの目的ではないかと考えています
次回は貸借対照表のことを述べます

内閣府国民生活局からでている「特定非営利活動法人制度の見直しに向けて」でも、「民間主導で会計基準を策定することが提言されています。
会計基準の策定が提言されている背景にはいろいろなことがありますが、このブログでは、今のNPOの会計で何が問題になっているのか、いくつか私見を述べたいと思います。
NPOの会計の問題点として
@収支計算書の定義がないこと
A貸借対照表の定義がないこと
B内閣府の手引きが実質的なスタンダードになっていること
を挙げたいと思います
今回は、「収支計算書」に定義がないことについて述べます
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12月6日(木)にNPO支援東京会議では、「NPO法人の会計書類とその問題点」の定例勉強会を行います。
NPOの会計基準についても取り上げ、みなさんのご意見も聞きたいと思っています。
誰でも参加をできますので、ぜひご参加下さい
詳細と申込はここを参照下さい
1.収支計算書に定義がないこと
NPO法人は、NPO法で会計関係の書類として、収支計算書、貸借対照表、財産目録を所轄庁へ提出することになっています。
しかし、収支計算書とは何か、ということについてはどこにもでていません。
つまり、「収支計算書」の定義がないのです。
収支計算書は、大雑把に言えば、収入から支出を引いて当期収支差額を求めます。
この際に、収入とは何か、支出とは何か、差額の当期収支差額は何を意味するのか、ということについて、NPO法についてはどこにもでておらず、会計基準もありません。
そのために、同じ収支計算書といいながら、収入、支出が意味するもの、あるいはその差額である当期収支差額が意味するものがいろいろな収支計算書が混在しているわけです。
収支計算書
収入―支出=当期収支差額
収入、支出、当期収支差額が何を意味するのか、法人によっていろいろ
2.現金主義の収支計算書
一番素直に考えれば、
収入=現金+預金の収入、
支出=現金+預金の支出、
当期収支差額=現金+預金の当期の増減額
ということになると思います
いわゆる家計簿と同じ方式です。
この方法で収支計算書を作っているところもたくさんあると思います。
これは異存のないところでしょう
しかし、必ずしもこの方式で収支計算書を作っていないところもたくさんあります
3.旧公益法人会計方式の収支計算書
(1)旧公益法人会計方式とは
NPO法人には会計基準はありませんが、財団法人や社団法人には「公益法人会計基準」があります。
「公益法人会計基準」は平成18年4月1日から新しくなっていますが、NPO法が成立した時は古い公益法人会計基準でした。
この古い公益法人会計基準を使って収支計算書を作っているNPO法人がたくさんあります。
これを「旧公益法人会計方式の収支計算書」と呼ぶことにします。
この収支計算書が、現金主義の収支計算書と違うところは、ざっくりと言うと、収入に未収金などを加えること、支出に未払金などを加えることです。
例えば、今期中に活動は既に終わっているが、お金はまだ入金がされていないようなものも収入に加えます。
また、今期中に活動は終わっているが支払がされていないものも支出に加えます
収入=現金、預金収入+未収金
支出=現金、預金支出+未払金
(2)なぜこのようなやりかたをするのか
なぜ旧公益法人会計がこのようなやり方をとっているかというと、収支計算書を、今期の最初に総会などで承認された予算どおりに実行したかどうかをチェックする機能を果たすものと考えているからです(予算準拠主義といいます)。
例えば、今期の3月にセミナーを開催する予定で予算を組んだとします。実際に3月にセミナーを開催しました。
しかし、会場費の支払いが4月にずれ込んだとします。計画通りに実行したにもかかわらず、単に支払いが遅れただけの話です。
この会場費の支払いを今期の収支計算書に反映させないと、予算対比ができなくなってしまいます。
だから、このような未払金も支出に計上するわけです。
収支計算書を予算どおり実行したものであるかどうかをチェックするためのものであると考えると、単純な現金主義の収支計算書では不都合なのです。
当然、ここで作成される収支計算書は、現金主義の収支計算書とは、収入、支出の意味するものも違い、差額である当期収支差額も違ってきます。
4.損益計算書方式の収支計算書
(1)損益計算書方式とは
NPO法人の収支計算書には、営利企業の損益計算書と同じ意味を持っているものもあります。
これを損益計算書方式の収支計算書と呼びます。
営利企業の損益計算書では、収益から費用を差引いて、当期利益を求めます。
つまり、この方式は、
収入=収益
支出=費用
当期収支差額=当期利益
とする方法です。
損益計算書の場合にも未収金や未払金を計上します。
この方式が、旧公益法人会計方式の収支計算書とどう違うかというと、ものすごく大雑把に言えば、固定資産と借入金の扱いが違います。
現金主義及び旧公益法人会計方式の収支計算書では、固定資産を購入したときは、
「固定資産支出額」として、購入金額が支出に計上されます。
しかし、損益計算書方式では、固定資産の購入金額は支出には計上されず、当期の価値の減少分である減価償却費だけが支出(費用)に計上されます。
また、お金を借りたり返した場合には、現金主義と旧公益法人では、収入、支出に「借入金収入」「借入金支出」として計上されます。
しかし、損益計算書方式では、お金を借りたり返したりしても得したわけでも損したわけでもないため、収入(収益)、支出(費用)には計上されません。
そして、この方式では、当期収支差額は、「当期利益」を表すことになります。
(2)なぜこの方式をとるのか
収支計算書を損益計算書と読み替えるこの方式には専門家の間では異論もありますが、
NPO法の成立に関わったシーズの松原氏は、収支計算書を損益計算書方式で作って問題がないと言い切っています(ここを参照下さい)。
営利企業の会計をしていた人がNPOの会計をする場合には、損益計算書と同じ方式であるこの方式が一番作りやすいです
また、法人税の申告がある団体は、法人税の申告をするためには損益計算書を作成する必要があるので、この方式をとることが多いと思います
さらに、新しい公益法人会計基準も、この方式を採用しました(正味財産増減計算書という名前にしています)
5.まとめ
ここまでをまとめると、
NPO法人の収支計算書には、同じ名前でありながら
@現金主義の収支計算書
A旧公益法人会計方式の収支計算書
B損益計算書方式の収支計算書
が混在しており、収入、支出、その差額である当期収支差額の意味するものが違っているということです
(他にもこの中間的なものが混在していると思います)。
しかも、違いについて、「資金の範囲」として注記すれば、本来はわかるのですが、そこまでの知識のある会計担当者もNPOにはほとんどいないし、決算書を見る人も、そんな知識がある人はほとんどいません。
だから、実態としては、Aという団体とBという団体の収支計算書を比較しても、その収支計算書の意味するところが違うため、比較に意味がないということが起こるわけです。
この事態が好ましいとは思えません。
これが会計基準をつくる一つの目的ではないかと考えています
次回は貸借対照表のことを述べます








