2007年07月27日(Fri)
その他の事業と収益事業の違い
以前にこのブログでも書いたのですが、NPO法の「特定非営利活動」と「その他の事業」の区分と法人税法の「収益事業」と「非収益事業」の区分の混乱が多いようです。 「特定非営利活動のみをおこなっていれば法人税が課税されない」と思っている方や「その他の事業の収益を特定非営利活動に使えば法人税が課税されない」と思っている方、「その他の事業=法人税が課税される事業」と思っている方、など、NPOの会計、税務の中でも一番混乱しているところのように思います。 過去の記事もふり返りながら、もう一度、NPO法と法人税法の区分の違いについて確認したいと思います PS この内容について動画も作りましたので、ご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=w4jnJbIV7ac&t=40s ---------------------------------------------- 8月及び9月にかけて、NPO会計の初級講座及び中級講座をNPO事業サポートセンターで行います。 今日述べる内容も詳しく話す予定になっています。 ぜひご参加ください 詳しい内容や申込はここからお願いします |
1. NPO法の区分 (1)NPO法の規定 NPO法においてNPO法人とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とする法人とされていますが、特定非営利活動に支障がない限り、特定非営利活動に係る事業以外の事業を行うことができるとされています。 これを「その他の事業」と呼んでいます そして、「その他の事業」については @ その他の事業で収益が生じたときはこれを特定非営利活動に係る事業のために使用しなければならない(NPO法5条1項) A その他の事業に係る会計は特定非営利活動に係る事業に関する会計から区分し、特別の会計として区分しなければならない(NPO法5条2項) とされています (2)その他の事業とは ここで問題になるのが「その他の事業」とは何を指すのか?ということです。 多くの人が間違っているのが「対価を得て行う事業」や「収益が生じる事業」「法人税がかかる事業」を「その他の事業」と思っているということです。 あくまでNPO法では「特定非営利活動以外の事業」と定義されているだけです。 特定非営利活動とは、「別表に掲げる活動(17分野の活動)に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」です。 この定義に該当しないものだけが「その他の事業」ということになります。 例えば、国際協力を主たる活動としているNGOが海外で撮影された写真が掲載されたカレンダーや絵葉書をその他の事業としていましたが、国税庁からこれは「特定非営利活動に該当することを指摘されたことがあるそうです。 「その他の事業」は以外に広いわけです 特定非営利活動とその他の事業の詳しい区分けはここを参照ください (3)区分経理 その他の事業を行う旨を定款で定めている場合には区分経理を行わなければいけません。 特定非営利活動に係る事業の収支計算書とその他の事業に係る収支計算書を両方作成します。 そして、その他の事業で生じた収益は、特定非営利活動に係る事業のために使用しなければいけませんので、その他の事業の収支計算書の一番下で、「特定非営利活動に係る事業会計への繰出」として、その他の事業の収益を全額計上し、その他の事業の収支計算書の当期収支差額を0円にします。 また、特定非営利活動に係る収支計算書の収入の部で、「その他の事業会計からの繰入」として、同額を受け入れます。 区分経理の詳しいやり方はここを参照ください 2. 法人税法の区分 (1)収益事業とは これに対して法人税法の収益事業と非収益事業は、法人税が課税されるかどうかの区分です。 そして、「法人税が課税されるかどうか」ということと「特定非営利活動に該当するかどうか」ということは基本的に関係がないのです。 つまり、法人税が課税されるかどうかは、「その他の事業を行っているかどうか」と関係がなく決まってくるのです。 NPO法人の場合には、法人税が課税されるかどうかの理論的な根拠はイコールフッティングの考え方によっています。 イコールフッティングの考え方とは、NPO法人が営利企業と競合するような事業を行う場合には、これに課税しないと営利企業が競争上不利になるので、課税の公平のために課税しようということです。 具体的には、法人税が課税される事業を収益事業といい @ 継続して行われる事業であること A 事業場を設けて行われる事業であること B 政令で定める33事業に該当すること の3つに該当するものとしています。 くわしいことはここを参照ください。(その前後も参照ください) (2)収益事業から非収益事業へ NPO法では「その他の事業」で生じた収益は「特定非営利活動に係る事業」へ繰り入れますが、法人税法では、法人税が課税される「収益事業」から生じた利益(所得)を「非収益事業」に繰り入れて、利益(所得)を0円とすることはできません。 例外的に認定NPO法人には「みなし寄付金」という制度があり、一定の金額まで、収益事業から非収益事業への繰入を「寄付金」とみなす特例措置がありますが、一般のNPO法人では、収益事業から非収益事業に繰り入れても、単なる資金の移動であり、収益事業で生じた所得金額に法人税が課税されることになります。 詳しいことはここを参照ください 3. 区分経理 NPO法のその他の事業と法人税法の収益事業が同じになることはあり得ます。 しかし、NPO法は特定非営利活動に該当しても法人税法上収益事業に該当するものはいくらでもあり(代表的なものが介護保険事業です)、その逆もあります。 そのような場合には @ NPO法で「特定非営利活動に係る収支計算書」と「その他の事業に係る収支計算書」を作成し所轄庁に提出をするとともに A 法人税法の「収益事業に係る損益計算書」を作成し税務署に提出をしなければいけません(非収益事業=法人税が課税されない事業の損益計算書は不要です) 法人税の申告の方法について、くわしいことはこことここを参照ください 4. まとめ 以上をまとめますと @ 特定非営利活動以外にその他の事業を行っている場合には「その他の事業に係る収支計算書」も提出し、その他の事業から生じた収益は「特定非営利活動に係る事業会計への繰入」とします A 法人税の収益事業を行っている場合には、「収益事業に係る損益計算書」を作成します。これは「その他の事業に係る収支計算書」と同じになることもあり得ますが、基本的には別物です B 「収益事業に係る損益計算書」で余剰が生じても、それを非収益事業に繰り入れることは基本的にできません(例外的に認定NPO法人には「みなし寄付金」の制度があります) |