2006年10月19日(Thu)
NPO法人の理事の責任
私はいろいろなところでNPOの会計研修会の講師をしていますが、このブログでは、その研修会ででた質問をできるだけ取り上げたいと思っています。
先週の土曜日に葛飾市民活動支援センターでNPOの会計、税務の講師をしてきました(3回コースで、今週、来週の土曜日も行います)。そこで、「NPO法人の役員になるとどんな責任があるのか」という質問を受けました。私は専門でもなく、その場で正確に答えられませんでしたので、家に帰って調べてみました。その件についてご報告します。 なお、解答は、シーズの何でも質問箱での質疑応答を参考にしています。この何でも質問箱はNPO運営のナレッジの宝庫であると思います。 <人気ブログランキングに参加しました。応援クリックお願いします> |
まず、理事の責任を大きく、通常の業務の中での責任と、NPOが破産などにより解散するときの責任に分けて考えます。
1. 通常の業務の中での責任 通常の業務の中での責任は、「定款の目的外の事業による不法行為責任」と「善管注意義務違反」とがあります。 (1) 定款の目的外の事業による不法行為責任 定款に書かれていない事業を理事が行って他人に損害を加えた場合には、その行為を行うことに賛成し又は履行した理事は連帯して損害賠償責任を負います。 (2) 善管注意義務違反 NPOの理事は、『善良な管理者の注意』義務をもって、その職務を遂行する義務を負います。理事が、この善管注意義務に違反して法人に損害を与えた場合は、賠償責任を負います。 つまり、理事は、法人が行う活動における過失や事故などに対して、通常期待されている程度の抽象的・一般的注意義務を要求されています。仮に定款に書かれた目的内行為であっても、理事は責任を問われる可能性が出てきます。 具体的には、例えばグループホームで虐待が行われて、それを知りながら理事が適切な措置を講じなかった場合には損害賠償責任が問われるということです。逆に、法人が主催した行事に参加した人が怪我をして損害賠償を請求されるような場合には、事前に怪我を予知することは難しいですので、このような場合には善管注意義務違反とはなりません。 2. NPOが破産をしたときの責任 (1) 法人の債務を負わなければいけないのか NPO法人の理事は、NPO法人が破産したときに残った債務を負う責任はありません。NPO法人が破産した場合には、その法人の全資産を売却等して現金化し、それを債権者に平等に分配し、それでも賄えない分は債権者が泣くことになります。これは社員であっても同様です。NPO法人の理事も社員も、NPO法人に何らの出資もしていませんので、当該法人や団体の債務について、何らの「責任」もありません。「有限責任」ということではなく、そもそも出資をしていないのだから「責任がない」ということになります。 (2) 損害賠償責任 ただし、法人の役員が何か違法行為を働いて、その法人に損害を与えてるときには、破産管財人がその役員に対して損害賠償訴訟を起こして損害の賠償をさせることがあります。その賠償金は債権者へ支払う分配金の原資となります。 |