ル・アーヴルの靴みがき
[2012年05月13日(Sun)]
「ル・アーヴルの靴みがき」
ずっと見たかった映画、やっと見てきました。
ストーリはかなり単純明快。でもしみじみ。
こんなさもしい世の中だからこそ、こういう映画はブラボーだなー。
大好きだ!すっごく大好き。
フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督の作品なのですが、
フランスの移民問題をテーマに描いたヒューマンドラマです。
ところは北フランス、ノルマンディー地方の港町ル・アーヴル。
元芸術家のマルセル・マルクスは靴磨きを生業にしているのですが、
日々の稼ぎはほんのわずか。
家で待つのは自慢の女房アルレッティと愛犬ライカ。
マルセルは奥さんと愛犬と超質素につつましく暮らしています。
洋服ダンスにかけられた洋服は一枚か二枚。
貯金はカンカンに入れられた靴磨きの日々の収入のみ。つまり小銭。
パン屋のおかみさんに怒られながら万引きして?持ち帰るフランスパン。
奥さんは淡々と、では夕食を作ります、とニンジンを手に取る。
私はそんな様子を描いたシーンがとても好き。
なんでだか胸がぐぐぐっと。
奥さんはマルセルに、夕食できるまでこれで一杯やってこいと送りだすのです。
で、毎晩呑みに行く行きつけのバーがまたよいのじゃ。
港町のよいどれ男が集って、しょーもない話を肴にカルバドス。
マルセルはカウンターでママさんに「できた奥さんね。」とささやかれる。
ふふふ。きっと365日、同じパターンの暮らしなんだと思うけど。
ちっとも貧相だと思わない。
ある日、港にアフリカ・ガボンからの不法難民が乗ったコンテナが漂着する。
そこから二人の生活は一変。ドラマが生まれてくるのですよ。
警察の検挙をすり抜けた一人の少年イドリッサは、港でマルクスと出会う。
少年をかくまい、イドリッサの母親がいるロンドンに送り出してやるため、
密航費を工面しようとマルセルは奮闘するのです。
が!なんと妻アルレッティは体調の不調をうったえ入院することに。
医師から不治の病を宣告されるのでしたー。
もう手の施しようがないけど、奇跡が起こるかもという医者に対して
「うちの近くでは起こったことはないわ」と表情も変えずに返す奥さん。
マルセルはお花を手にお見舞いに通いながら、お金集めの画策も。
近所の人が皆、密入国少年を匿っていることを知って、力になってくれます。
パン屋のおかみさんや八百屋のおっさん。飲み屋のマダム。靴磨きの仲間、、、
うまく警察から少年とマルセルを守ってくれるシーンが小気味いい!
最後にや、マルセルと少年をつけ狙っていた警察官まで味方に。
そう、ハッピーエンドもびっくりするぐらいの。
まだまだ続く超ハッピーエンド、ポジティブストーリー。
まあ、いいじゃございませんか。
愛犬のライカは監督自身の犬らしいです。
「愛犬ライカ」の名演にカンヌ映画祭でパルム・ドッグ審査員特別賞が。
まあ、とにかく気持ちがあったかくなる映画です。
大きな劇場でやっていないので難しいかもだが、いつか見てね。
マルセルと奥さんのつつましさと愛情、
私が今一番欲しいものって、それだ〜〜〜。って。
思いました。
そしてこんな街に住みたいなあ。