オバマの中間選挙大敗とユーラシア外交と日本への影響 [2010年11月04日(Thu)]
|
米国中間選挙で与党の民主党が歴史的な大敗を喫した。オバマ大統領も負けを認め、shellackingという言葉を使っている。これはスラングで「ボロ負け」ということだ。シェラックとはバイオリンなどに塗装されるニスの中にふくまれる樹脂で、ラックカイガラ虫という虫の分泌物ということだが、「ボロ負け」という意味との因果関係は不明だ。(だれか教えてください。)オバマ政権の弱体化と引き換えに、また一つ英語のボキャブラリーが増えた。
ユーラシア外交の関心でみれば、まず重要なことは、オバマの対ロシア外交、特にロシアとのリセット、および「核なき世界」に向けての核軍縮政策について直接のダメージがあることだろう。なぜなら、ロシアとのリセットとの肝であり、すでに両政府が署名している新戦略兵器削減条約(新START)の批准には、上院の三分の二、つまり67議席の賛成が必要だからだ。上院外交委員会はすでに9月16日、米国とロシアの新たな新STARTの批准を14対4の賛成多数で承認し、上院の採決を待つばかりの状況にある。 今回、上院で与党民主党はかろうじて過半数を維持したが、59議席から大幅に議席を減らしたので、(まだ確定してないが52議席+ぐらいになるだろう)批准が遅れれば採決は困難が予想される。おそらく、今回の中間選挙で当選した議員で新しい議会が始まる前に、古い議席での議会(いわゆるレイムダックセッション)が開かれるので、ここで駆け込み採決をすることが予想されている。しかし、それがうまくいったとしても、オバマ政権が「核なき世界」を目指すための包括的核実験禁止条約(CTBT)の上院批准はきわめて困難になった。 それでは日米関係や日本には直接どういう影響があるのか。この質問は私のところにも頻繁によせられる。11月3日付の毎日新聞の二面の「日本冷静に受け止め」という記事に私の見方が掲載されている。「(オバマ政権の)対日政策の大きな変化はないだろうが、普天間問題など中途半端になっている問題について、日本の民主党政権が日米同盟重視の行動を起こすことが大事」というのが私の答だが、どのような背景からこう発言しているかを説明する必要があろう。 今回のオバマ政権の「ボロ負け」は、日米関係に直接の影響はあまりないかもしれないが、同盟国の米国政権の力が弱ることは日本にとっては深刻だと考えたほうがいい。特に今の世界では、日本も経験しているように、民主主義国家が民主的プロセスゆえにリーダーシップの弱体化に苦しみ、中国やロシアなどの台頭する民主的ではない新興パワーに対し、相対的に弱体化しているという皮肉な現象が起こっているからだ。そのような中で、民主国家として米国と利益を共有し、アジア地域の安定のカギとなる同盟国の日本の役割はかなり大きいはずだ。 例えば、80―90年代の日米貿易摩擦の頃の日本は、米国の政治の変化に日本はどう振る舞うか、という受動的なことだけを考えていればよかった。しかし、日本が本当に自国の生き残りに真剣であるのなら、オバマ政権の弱体化をアジア地域と世界の不安定要因と理解し、日本がより積極的に責任を果たしていく覚悟を示すべき時期にきていると思う。自らの生き残りのためにも、日本人は日米同盟とアジアの安定への責任について、「受動性」や「お客様」意識から脱却すべき時期にきている。 |



