『震度7 新潟中越地震を忘れない』文・絵 松岡 達英
発行所 ポプラ社
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新潟県中越地震の被災地・川口町にアトリエを持つ著者が、地震発生から数ヶ月の間の出来事をイラスト・写真まとめた本。
地域の被災者から見聞きした体験談が、「となりに住むおじさん」の視点から、人間味あふれるタッチのイラストとともに描かれています。
2004年10月23日に起こった新潟県中越地震では、日本財団からも発生直後から職員が現地入りし、ボランティアセンターの立ち上げ支援や、県外ボランティア団体のための活動拠点の提供など、様々な支援を行ってきました。
私も財団に就職して1年目(当時)のひよっこですが、厳しい上司(?)と暖かい先輩とともに計7回に渡り現地入りしました。4月に訪れた際、まだ雪の残る川口町の道の駅で、名産品のせんべいや野菜とともに店頭に並んでいたのがこの本。
パラパラと中を見て、その場は買わずに帰ったもののなんとなく気になっていたところ、数ヵ月後に東京の日本財団ビルを訪れてくださった川口町の町長さんが偶然にも持ってきてくださいました。
(それを上司からお借りしたまま、勝手に紹介しちゃいます)
印象に残った部分を下に抜粋します。
「“さいそくのない借金はしておくものだ”っておやじがよくいっていたけど、今回の地震でその意味がよくわかったよ。ボランティアの人たちがしてくれたことは、さいそくのない借金のようなもの。ありがたく借りておいて、いつか、別の人に返せばいいんだ」(p.63)
「地震から2日め、避難していたホテル前の広場から、身のまわりで使うものをアトリエに取りに行き、重い荷物をかかえながら歩いていたときのことだ。
昨日までそびえるように立っていた川口町のメッセージタワーが大きくかたむいているのが目に入った。タワーの基部のまわりのアスファルトはめくり上がり、赤土がむき出しになっている。
ため息をつきながら何気なく地面を見ると、1輪のリンドウに、オレンジ色のアカタテハがとまっているのが目にとびこんできた。真っ青な秋空の下、太陽の光をあびて、リンドウはいつもと同じようにしっかりと青むらさきの花を咲かせ、アカタテハは何ごともなかったかのように悠然と舞いはじめた。人間がつくった巨大なタワーは地震で大きくかたむいてしまったが、足でふめば簡単に倒れてしまう可憐なリンドウは、昨日と変わらない姿で静かにいのちをつないでいる。
(中略)
人間のつくった建物は動物にとっての巣のようなものだが、人間の巣はあまりにも巨大化してしまった。自分の巣に押しつぶされる動物は人間以外にはいない。人間と自然との距離をつくづく感じさせられた。
しかし、落ち込む私を元気づけてくれたのは、その人間だった。(中略)自然は今まで築きあげてきたものを奪っていったが、他人を思いやることの大切さや、自然とともに生きている人の強さを教えてくれた。
(中略)
山はくずれ、地面が引き裂かれても、自然は必ずよみがえる。
地震に打ちのめされた人びとも、やがて、ひび割れた田んぼを修理し、壊れた家を建て直して、新しい生活をはじめるだろう。
ふるさとはきっとよみがえる。
あの1輪のリンドウは、私にそのことを教えてくれたのだ。」(pp.68-70)
自然災害が起こり現場に入る度に、「自然の威力」と、電気や水道が通じなくなり、家や身の回りのものを失い身一つになった時の「人間の無力さ」と、その状況の中で感じる「人の温かさ」を痛感します。
数ある災害に関連する書籍の中で、その「人の温かさ」の部分を感じとれる本です。
巻末には、「自分の身を自分で守るための地震マニュアル」(イラスト入り)もついています。
家族で持ち出す物品の例など、具体的で解りやすい。(この部分だけ抜粋して日本財団のホームページで公表したいくらい)
どこかで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。