灘校の国語教師 [2013年02月14日(Thu)]
ずっとほったらかしにしていた一冊の本をやっと読んでいます。
『奇跡の教室〜エチ先生と「銀の匙」の子どもたち』という本です。あの超進学校灘校の一国語教師、橋本武さんと、彼の授業を受け現在日本のリーダーになっている子どもたちの物語です。 橋本武さんは、98歳。中高一貫の私立校で、中学3年間をかけて一冊の薄い文庫本『銀の匙』を読みつくす授業を実践し、赴任当時公立校のすべり止めだった灘校を東大合格日本一へ導きました。東大合格日本一という実績にはおよそ似あわない驚異のスロウ・リーディングの授業とはいったいどのようなものだったのかというのを、各界の第一線で活躍する卒業生たちの証言を織り交ぜながら解き明かすのがこの『奇跡の教室』です。 灘校とういのは、一教科一教師が6年間持ち上がるそうです。だから、運の良い6年に一度の学年だけが『銀の匙』の授業を受けられるというわけです。その3代目の生徒だった濱田純一さんは現在東京大学の総長になられています。この本のなかで 「知識を伝えるのは、一種の『美しいもの』を伝える、そういう面をもっているんじゃないでしょうか。」と語っておられます。知識を受ける側に美しさにたどりつく力が育ってなければ、どんな学問もそのおもしろさや素晴らしさを伝えることはできない。橋本先生は『銀の匙』の美しい文章を、細部にまでとことんこだわって、時間をかけて味わいつくすことで、生徒たちに鋭い感受性や、世の中の美しいものに気づく力、センスを教えました。世の中のさまざまな事象、分野にある美しさに気づく力を持った生徒たちは、成長してから出会う学問の中に美しさを見出し、知識をどんどん取り込み、自ら応用し編集し、新しい学びを切り開いていきました。学びだけでなく仕事においても、どんな局面にも対応できる高い能力を発揮しました。 3年間かけてゆっくりと一冊の本を読む。どんどん横道にそれて、樹木が空に向かって枝を広げるように学びを広げていきながら、1人1人が最終的に一冊の自分だけの研究ノートを作り上げるという、なんとも勇気のある授業。だれもが、やってみたいと思うけれど、なかなかできるものではない。総合学習なんていうのも、理想はそれなんでしょうが志半ばにして頓挫してしまった感があります。 せめて、家庭では、子どもが興味をもったことにとことんつきあってみてはどうでしょうか。残念なことに我が家は子どもが大きくなりすぎましたが、二階で大学受験生が必死で知識をつめこんでいるときに、「知識を伝えるとは、『美しいもの』を伝えること」なんて優雅な話を読んでいるのもまた乙なものだなぁとにんまりしています。 |
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おやこ劇場でまってるよ
at 20:19