リンクスの妖精と妖怪 [2009年07月23日(Thu)]
![]() 上空で海鳥たちが風に向かって飛んでにるのに一行に進まない。暗雲が一瞬のうちに現れると、煩かった海鳥の鳴き声が消えて、鳥たちはブッシュに隠れ忍んだ。牧草地はおろか何の役にもたたない自然の砂丘地帯がリンクス、そのままを生かしたのがゴルフコースだ。強風にあおられる灰色の砂丘、いまにもとけ込んでしまいそうな乏しい色彩の砂丘に、海鳥の姿もない。妖精と妖怪が一緒に隠れ棲んでいるようなダークグリーンの世界に、強風に対する太く低いピンフラック、僅かな緑色を染めたグリーンの上に、墓標のように立っている。妖精と妖怪が一緒に隠れ棲んでいるような世界に、ひょっとするとジョナサン・スウィフトの「ガリバー」か、ジエームス・ジョイスの「ユリシーズ」に会えるかもと、同伴プレーヤーのアイルランド人のジョデイ・バークは、笑いながらキャディバックからレインコートをだして着始めた。リンクスには一日に春夏秋冬が突然やってくるが10分ほどでもとの青空になる。 ブラックブッシュトーナメントは、毎年六月に北アイルランドの北東海岸コーズウェイで開催される。全英オープンも行われたこともあるロイヤル・ポートラッシュなど、百年以上も古い歴史がある四つのリンクスコースが試合の舞台になる。世界十四ケ国から集まったアマチュアが千人以上も参加した。大会は所属クラブハンディが十八以上であれば。四日間の試合料金、九千円ほどのグリーンフィー込みの費用で誰でも出場資格が得られる。日本人参加者は我々東京キラーズ会の翻訳家、編集者等十三人だ。還暦を迎える五人の仲間が汗を流しに行った。五年連続参加した後、アイルランド、スコットランドのリンクスを回って全英オープンを観戦した良き時代であった。 今年の全英オープン2日目、注目の17歳、石川遼は予選で夢破れ、同組で回ったタイガー・ウッズもこの日74、通算5オーバーで、1996年のプロ転向後、メジャー大会では2006年全米オープン以来2度目の予選落ちとなった。遼くんは10番のドウナツバンカーに入れたので運が切れ、ダブルボギーをきっかけに11番から5連続ボギー。バンカーは羊たちが雨と強風から逃れるためにリンクスに造られた避難場所だ。59才のトム・ワトソンもプレーオフでバンカーに入れて崩れた。全英オープンを五回制覇している。健闘は驚くべきだ。「ガリバー」の妖怪が現れたのかも知れない。セントアンドリユースの支配人、キース・バーハーさんは「今年も来ましたね、世界一予約で混雑しているボロコースへようこそ。スコットランドはリンクス以外に美しいコースがいっぱいありますよ、明日案内しますよ」高齢にもかかわらず自分の車で連れてってくれたが、五年ほど前からクリスマスカードが来なくなった。 1888年2月、ニューヨークのハドソン河上流、マンハッタンのリンゴ園にスコットランド人のジョン・リードの仲間が3ホールを造った。アメリカ最古のゴルフ場セントアンドリユースの誕生だ。聖アンデレは青地に白、クラブハウスに元リンゴの木の枝が飾られていた。 |




