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太陽光発電と電気買取[2009年11月03日(Tue)]
11月1日から太陽光発電での発電電力の買取価格が2倍になった。これを風力や地熱発電にまで拡大するそうだ。温室効果ガス25%削減には、住居の屋根は全て発電パネルにすべきとも言われるが、それでも不充分かもしれない。民家の屋根の面積など小さいのだ。極めて高地価で不動産価格も高い日本の事情も考えてほしい。
 耕作放棄農地や転作地等への太陽光パネルの設置は特に有効な対策だろうが、先日の管直人国家戦略室担当副総理の会見の部分的な放送では、そのような面への言及は聞かなかった。農水、経産、環境といった複数の官庁の政策領域にまたがる話であり、正に国家戦略室の指導、調整の対象になるはずの重大政策テーマのはずだが。

 「住居の屋根の面積とは」
 日本では地価が極めて高く、不動産価格が高い。住居は狭いから屋根も狭い。太陽光発電促進側に、その点への考慮はあるのか。
 太陽が輝く真夏の日中が電力消費のピークであり、屋根を全て太陽光パネルにするのは大変に良い事だ。自宅の電力は自分の屋根のパネルで作れば理想的だし、蓄電池の性能改善により効果の拡大も期待できる。一般の住宅地等でも一括コンピューター制御により地域全体で電力を融通し合う「スマート・グリッドシステム」等も構想されている。
 だが、屋根面積が小さいのでは発電量は限られる。人口が集中する大都市部の大規模高層集合住宅等も入れての平均では、日本人1人あたりの利用可能な屋根面積は、どの程度か。5坪に達するのか? 
 単純化の為、利用可能屋根面積を仮に1人当たり5坪とし、約1億3000万人の日本の人口を1億人、約3.3uの1坪を3uとすると、全屋根面積は約15万ha。より正確に端数を入れて計算しても約21万ha。大変なコストをかけ、家計に負担を強いて発電パネルを屋根に設置しまくっても、この程度にしかならないのか。
 では、他に何が出来るのか。農業という、多くの土地が余っている領域があるのに、それを利用しない手はない、あのような大変な目標を掲げるのであれば。

 「利用可能な農地面積」
 ・耕作放棄地
 以後は素人の単純な計算としておく。農業センサスという農政側の公式データを基にしても、日本には「約40万haの耕作放棄地」があるとされる。どちらかといえば耕作放棄地を認めたくない立場の側から出た数字でもあり、多少の過小表示の可能性もある。「実態は50万〜100万ha」といった所か。耕作放棄のレッテルを嫌い形式上は作物を植えても、他に有利な方法があれば乗り換えを願う農家の農地も相当にあろう。畑作の中心は農業としては小面積のビニールハウス等での施設型園芸等で、高齢化も更に進む中、面積をカバーできる畑作の復活は期待薄だ。「半耕作放棄地」や「潜在的耕作放棄地」「耕作放棄候補地」まで加えると、どれだけの面積になるか。200万haで足りるのか。ここでは仮にそれを最大限の数値としておくが。
 ・稲作からの転作地
 稲作からの「転作農地(元水田)は100万ha」。こちらは転作政策に関係する数字でもあり、おおよそは正しいと思われる。コメ余りの日本では、約250haの水田に対し、約100万haが転作。日本人の体に合ったコメを食べない日本人が招いたとはいえ、大面積だ。
 ・合計面積
 耕作放棄地、転作田、両者合わせて「最低でも140万ha」。潜在的耕作放棄地等まで含めて考えれば「300万ha」に達すると、一応仮定しておこう、それでも控え目かもしれないが。
 発電上の様々な条件や農業側の事情等もあろうから、この1〜2割のみにしか太陽光発電パネルを設置できないとしても、それでも最低で約14万ha、多ければ約60万haに達する巨大面積となろう。少なく見積もっても、利用可能な屋根面積を上回ると思う。

 「概算の材料」
 正確な数字は専門家に聞いてくれ。間違っていたら各自訂正してほしい。今も研究機関にいる専門家が計算機で計算する訳ではないから。しかし、素人的なごく簡単な概算根拠は出せる。単純化の為に1坪を3u、日本の人口を1億人とすると、
家屋の利用可能屋根面積は
1人平均1坪だと 全体で1億坪 3億u    3万ha
1人平均3坪だと                   9万ha 
1人平均5坪だと                 15万ha
1人平均7坪だと                 21万ha
1人平均10坪だと                 30万ha

 利用可能屋根面積を一人平均10坪という大きな値として計算しても、転作地面積どころか、公式に表に出ている耕作放棄地の面積に達しない。切り捨てた端数を入れて計算しても、ようやく上回る程度だ。
 
 「農地の巨大面積の活用を」
 農地は面積が大きい。基本的な単位が反(たん)、300坪、約1000uだ。「たんしゅう」とは一般的には「単収」(単位面積当たりの収量)だろうが、日本では「反収」の場合が多い、特にコメでは。「このあたりは8俵」とは、その地域のコメの平均収穫量は1反(約1000u)で約8俵という事。米価値下がり前でも、コメでは水田1反から10万円利益が上がれば「おんのじ」だった。農地としては1000uは大した面積ではない、特にコメやムギのような土地利用型作物では。
 ・転作水田
 水田の基本区画はかつては「1000u区画」(1反区画)だったが、大型機械には狭いので、高度成長期以降に整備されたものでは「3000u区画」(3反区画、30m×100m等)が基本となり、コメ自由化議論の頃からは「10000u区画」(1ha区画)等も多くなっていった。小さなタンボを1区画転作しても面積は小さく、転作作物は安いから、労ばかり多くてウマミはない。だが、そこに太陽光パネルを並べれば、発電面積としては巨大となる。古くて小さい1000u区画一つでも民家の屋根の100人(大都市居住者)分近くか。それが大きな10000u区画なら効果は当然10倍だ。例えば50haの水田をもつ村なら、多くの場合、少なくとも10ha以上は転作されている。1000u区画で100区画分以上。一割でも10区画以上。それだけで何人分の民家の屋根の発電力になるだろうか。
 ・耕作放棄地
 もうからないとはいえ、稲作からの転作地には他の作物が植えられる場合が多い。が、耕作放棄地は利益を生まないどころか、草が茂り雑草の種をまき散らし、病害虫や害獣等の巣となり、周辺農地の耕作環境も悪くする。特に畑では、最近は借り手もほとんどいない。首都圏近辺では、現場自治体の農政関係者にとっても、畑を中心とする耕作放棄地は20年ほど前にはすでに最大の問題だった。そこに太陽光発電パネルを設置して最低限の手入れがなされれば本当に助かるはずなのだ。面積が大きいから電気売却代金も小さくないだろうし。
 ・農業関係者の抵抗・消極
 だが、その現場自治体の農政関係者、特に農地管理事務を担なう農業員会事務局等が、農地の他用途転用だとか言って反対するだろう。農水省や農協は更に。今や地方政党となった旧社民党系の農水大臣も、どのように反応するか。農地向けの税制優遇等が消えるとなれば、大変に助かるはずの農家も二の足を踏もう。阻止の理屈付けに励む農業経済学者もいよう。農業経済学科は根なし草の文系学部などと違い、手抜きでない少人数教育が可能で、農政が強力なバックグランドなのは大変に良いが、農政の枠を超える連携等には関係しにくい。東大農学部は農水省の巨大な研究組織の幹部を育てる為に出来た。学者は細かい話で論文数を稼がねばならないし、現場を知らぬ数理系学者も旧マルクス系もいたし。
 このような状況だから、国全体での国家戦略的な強力な推進、調整等が必要なのだ。
 ・国家戦略での推進を
 これらの土地(農地)を利用しない手はない。このような重要テーマで役割が果たせないなら、国家戦略室など意味がない。新政権も意味はない。温室効果ガス25%削減とか大風呂敷を広げて自分のみいい顔をして、知恵は全てこちらにださせて、具体策は不足。「日本人はきっと乗り越える」とか他人事のようだ、まるで毒ギョーザ事件の見殺しで辞任した売国首相のようだ。まず政府がやれ。自分が率先して範を示せ。当然、ここで書いた事はやらねばならないが、今の所、まだ話は聞こえてこない。はやく動いてほしい、ぐずぐずせずに。それとも検討中か? 国内有権者や海外反対勢力への絶好のアピールともなろうに。

 「定額給付金問題との類似点」
 2兆円も税金を使った割には定額給付金の効果が薄かったとの批判がある。2000兆円を超えるとも言われる日本の個人金融資産のほんの1%でも動かせれば、税金も直接使わず、はるかに効果は大きいはず。この話に似ている。面積の小さな民家の屋根に苦労してパネルを設置しても効果は限られる。一方、面積の巨大な農地のほんの一部を使えば比較的苦労は小さく効果は大きいはず。クリアすべき制度的障害はあるが、それを新政権が解決せねばならないのだ。

 「食糧管理体制との類似点」
 太陽光発電電力の「高値買取」には類似の話があった。かつてのコメの政府による全量高値買取という「食糧管理(食管)体制」だ。その為に「食糧庁」が存在し、専門的な実務の大半は農業経済学科出身者が仕切った。私にも縁がある訳だ。もっとも、各領域で工学部卒の技師が名実ともにトップだった旧運輸省や、土木系技師の城だった旧建設省などと違い、戦前からの議会対策(専門技師を政治的圧力から守る)もあり、農水省の食糧庁では外向けの顔の長官は事務官、次長が農学部農業経済学科卒だったが。
 食管制度は戦後の深刻な食糧不足時に確立されたシステムで、戦後日本農政の中心と言われた。コメ余りの時代まで存続した為に非難されたが、食糧難時代には、それなりに合理的なシステムだった。そして、そのコメ買取の実行組織として政府の「お声がかり」で戦後に整備されたのが、コメを中心とする「総合農協」の全国組織とされる。
 コメ不足の状況下では、とにかく農家にコメを沢山作らせねばない。それには貧しい日本の農村・農家の生活を安定させ、生産へのインセンティブ(誘因、うま味)を上げねばならない。戦前は自由な作物で値動きも激しかったコメを、政府が全量、安定した高値で買い、国民に売ったのだ。農家収入は増加・安定し、安心して米作りに励む事が出来、投資計画も立てやすくなった。生活や人生の設計もだ。米価が高ければ政府や国民には負担だが、コメの増産と安定供給が何より重要だったのだ。そして、高度成長で食品輸入も増加し、日本のコメは余るほどになった。「食管」には社会主義的との批判もあるが、コメ農家を安定させ、コメ増産を促進した。
 食管的な買取を太陽光発電でやるのが、今の政策だ。政府も低所得家庭への電気代補助等を考えねばならないが、たとえ値上がり分が更に2倍になっても、忍耐不可能ではない。その程度でエコ発電が普及すれば良い。

 「国家戦略への期待」
 だが、今のままの状況では、いくら電力買取料金が高くなっても、効果に限界がある。買取料金値上げや対象拡大は大変重要とはいえ、枠組みにすぎない。中身も変える為の国家戦略的な政策立案や省庁を超えた調整等を行うのが国家戦略室を有する新政権と解釈したい。それとも、これは私の勝手な解釈か?
 
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