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東シナ海のタンカー事故について考える [2018年02月05日(Mon)]
1月6日の中国上海の沖合約300qの東シナ海で、パナマ船籍のタンカーSANCHI号が香港船籍のばら積み船CF CRISTAL号と衝突・炎上、南東方向に漂流し、1月14日に奄美大島の西約315qの海域、日本のEEZ内で沈没した。

SANCHI号は、軽質油(コンデンセート)136,000トンを積載してイランから韓国の港に向かっていた。衝突後、中国の国家海洋局及び交通部を中心に韓国の海洋警察庁海警船や日本の海上保安庁巡視船などが連携して船舶・航空機を用いた救助・消火・油防除活動に当たったが、SANCHI号の乗組員32名が犠牲となった。

この事故は、国際的には、ロイター、BBC、AFP、CNNなどで大きく報じられた。例えば、1月15日ロイターは、「上海沖の東シナ海で貨物船と衝突し、日本の排他的経済水域(EEZ)内で14日沈没した石油タンカーから、大量の原油が流出しており、海洋生態系に与える悪影響への懸念が高まっている。」と報じている。

しかし、日本国内では毎日新聞が、1月17日に「EEZ内 沈没タンカーから油 日中海洋当局が対応」という記事を掲載したぐらいで、あまり大きなニュースにはならなかった。

ようやく、1月28日に鹿児島県十島村の宝島で油のようなものの漂着物が見つかり、2月1日には奄美大島で黒い油状の物体が確認されて、これらが沈没タンカーから流出したものである可能性があるということで新聞等が取り上げ、首相官邸の危機管理センターに情報連絡室が設置された。

2月3日の産経新聞は、社会面で「奄美の海岸に「油」 沈没タンカーから?漂着」とかなり大きく取り上げている。そこには、1月6日の衝突地点、1月14日の沈没地点、1月28日に漂着物が確認された宝島、2月1日に漂着物が確認された奄美大島を地図上に示した図が掲載されており、これをみるとそれらの位置関係がよくわかる。タンカーの沈没地点は、東シナ海の日中中間線より日本側に寄っており、日本のEEZ内である。

そうだとすると、この事故は、「油」が漂着して初めて取り上げるというのではなく、もっと早くから日本の中でも情報提供を含めてきちんとした対応がなされ、それを受けてメディアもこの事故をもっと取り上げて報道してもよかったのではないかと思った。

なぜならば、海洋環境に関しては、国連海洋法条約が、「いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有する。」(192条)と定め、さらに、沿岸国は、排他的経済水域において、天然資源等の主権的権利とともに、海洋環境の保護及び保全等の管轄権、さらにこの条約に定める義務を有する(56条)、と定めているからである。

この事故を契機として、わが国もEEZの開発・利用・保全・管理の問題にもっと総合的に取り組むことを検討してはどうか、と思った。。

海洋政策研究所では、今回の衝突海難に関し、各国政府・国際機関が公表した内容を基に整理し時系列に取りまとめた調査レポートを作成したので、今回の問題を考える際の参考にしていただければ幸いである。
https://www.spf.org/opri-j/news/article_24487.html
Posted by 寺島紘士 at 23:58
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