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海洋安全保障概念の拡大について考える [2017年10月04日(Wed)]
先日、国際シンポジウム「海洋安全保障のグローバル化−領有権非当事国による南シナ海討議」(本ブログ9月27日参照)で一緒だった関西外国語大学準教授の畠山京子さんが訪ねてきて、海洋安全保障について情報・意見交換をする機会を持った。

丁度、海上保安庁と日本財団主催の初めての「世界海上保安機関長官級会合」の開催を一面トップに掲げる海上保安新聞(公財)海上保安協会発行、週刊)9月28日号が届いたばかりだったので、話はそれを眺めながら始まった。

今回の世界海上保安機関長官級会合には、34か国1地域と国際海事機関(IMO)など海事3機関の長官級、局長級幹部が出席して海上安全と環境保全、海上セキュリティ、人材育成などについて議論した。

その結果、海上安全と遭難・災害対応、海洋環境保全とともに、法の支配に基づく海洋の秩序維持が「世界の人々が安心して海を利用し恩恵を享受するための不可欠の基盤だ」とする議長声明を採択した、という。

続いて、海上保安庁のこの20年ほどの間の国際面での活動とその発展の状況に話が進んだ。

まず、海上保安庁は、法令の海上における励行その他の事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務として昭和25年に設置されたが、その業務は、国連海洋法条約が発効した1990年代半ばから国際的に大きく発展してきた。

2000年4月には、東アジアの海上保安機関の代表が東京に集まり、「世界海賊会議」を開催、同年12月には第1回北太平洋海上保安サミット開催、2004年には、初のアジア海上保安機関長官級会合開催、と海上保安機関の国際的連携の輪の拡大に海上保安庁はイニシアチブを発揮してきた。

さらに、海上保安庁は、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどアジアの国々の海上保安機関の設立、研修・人材育成などにも活発に協力してきている。

この間の海上保安庁の活動は、私も近くで見、時には協力もしてきたので、自分の見聞を交えてそれらの動きを畠山さんに説明した。

また、先の国際シンポジウムでも問題となった南シナ海における中国の活動についても情報・意見交換をした。私からは、1980年代から今日までの中国が策定した計画や制定した法律の流れをみてくるとそこに一貫した政策・戦略があること、中国も批准して重視している海洋ガバナンスの枠組である国連海洋法条約と中国が管轄を主張する海域に対する権利と行動の根拠の論理との間に隙間があると思われることなどを話した。

話しているうちに、20世紀末からの国連海洋法条約による「海洋の管理」原則に基づく新しい海洋秩序の形成、海洋の総合管理と持続可能な開発に関する国際的な約束・行動計画の進展が、海洋安全保障の概念の拡大に深く関係している、ということが頭の中で段々明確になってきた。

このことは、現在進行中の第3期海洋基本計画策定作業の中で、第3期計画には広義の海洋安全保障をきちんと位置付けようという議論が行われていることとも深く関係していると思った。

このように見てくると、先日の国際シンポジウム「海洋安全保障のグローバル化−領有権非当事国による南シナ海討議」はなかなかいい企画だと改めて思った。

これをきっかけとして、新しい海洋秩序の構築、海洋・海洋資源の保全と持続可能な利用のための国際約束を踏まえた、国際的視野に立った新しい海洋安全保障の概念・理論の構築が進むことを期待したい。
Posted by 寺島紘士 at 23:56
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