日本の大陸棚がさらに31万平方キロ延長 [2012年05月02日(Wed)]
4月27日(金)、政府は、わが国が大陸棚限界委員会に申請していた大陸棚延長について、同委員会が4月20日、第29会期会合でわが国の大陸棚を約31万平方キロメートル延長することを認める勧告を採択した(この勧告のわが国の受領は4月27日(いずれも日本時間))と発表した。
長い年月をかけたわが国の大陸棚の調査には、そのいくつかの場面には私も個人的に関わってきただけに、これを聞いていささか感慨を催した。(ご関心のある方は本ブログ2008年12月3日「わが国大陸棚の延長」もご覧いただきたい。)
わが国は2008年11月12日大陸棚限界委員会に大陸棚延長を申請。このわが国の申請に対して、中国、韓国が沖ノ鳥島は排他的経済水域・大陸棚を有しない岩であると事あるごとに主張している。それだけに同委員会における審議の推移には格別の関心を払ってきたが、ついに同委員会の勧告が出たのである。
その内容を新聞報道により見てみると、新たにわが国の大陸棚として認められたのは、@四国海盆海域、A小笠原海台海域、B南硫黄島海域、C沖大東海嶺南方海域で、このうちB、Cはその一部だけが認められたようである。
懸案の中国・韓国が審査を行わないことを求めていた沖ノ鳥島関連の海域について見てみると、四国海盆海域については、沖ノ鳥島を基点とする延長が認められた。他方、九州・パラオ海嶺南部海域については、行動をとる状況にないとして勧告が行われず、先送りとなった。
また、南鳥島海域と茂木海山海域は、地形・地質的に地続きではないとして延長は認められなかった。
この勧告をどう受け止めるかについては、もう少し勧告内容やわが国の主張について詳しく聞いてみてからにしたいが、何はともあれ、国土面積の約8割に相当する31万平方キロメートルの海域が新たにわが国の大陸棚として認められたことをひとまず喜びたい。
そして、わが国としては、大陸棚の延長に浮かれることなく、これらの海域とその資源をわが国と国際社会のために持続可能な形で有効に活用するための取り組みを進めていくことが次の課題であると考える。
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浦辺東大教授、大陸棚限界委員会委員に当選 [2011年08月31日(Wed)]
すでにご存じの方も多いと思われるが、8月11日(木)(現地時間)にニューヨークで開催された国連海洋法条約締約国会議特別会合において、「大陸棚の限界に関する委員会」(CLCS)の委員補欠選挙が行われ、東京大学理学系研究科の浦辺徹郎教授が選出されたことをお知らせしたい。
この選挙は、4月の玉木賢策委員(東京大学教授)の逝去に伴い生じた空席を埋めるために行われたものである。(玉木さんのご逝去については本ブログ4月8日参照)
大陸棚限界委員会は、21人の委員で構成され、委員は、地質学、地球物理学又は水路学の専門家で、個人の資格で職務を遂行する。
国連海洋法条約は、沿岸国が200カイリを超える大陸棚を設定しようとする場合は、それに関する情報を大陸棚限界委員会に提出し、大陸棚限界委員会は「科学的・技術的ガイドライン」にしたがって沿岸国が提出した情報を検討し勧告を行う、沿岸国がその勧告に基づいて設定した大陸棚の限界は、最終的なものとし、かつ、拘束力を有する、と定めている。国家が国際法に基づいて大陸棚を決定する上で、重要な役割を担う委員会である。
浦辺さんは、人格識見ともに大陸棚限界委員会委員にふさわしい方である。委員ご就任をお祝い申し上げるとともに、各国からの山積みの申請を前にしてこれからますます委員会の活動が忙しくなると予想されるので、くれぐれも健康に留意しつつ取り組まれるようお願いしたい。(了)
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「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な管理に関する法制の整備」について提言 [2011年06月14日(Tue)]
6月13日(月)、総合海洋政策本部事務局を訪れ、海洋政策研究財団が取りまとめた総合海洋政策本部長宛の『排他的経済水域及び大陸棚の総合的な管理に関する法制の整備についての提言』を小野芳清事務局長に提出した。
当財団では、海洋基本法の制定直後から、有識者からなる「総合的海洋政策研究委員会」(委員長:栗林忠男慶応義塾大学名誉教授、法制ワーキンググループ主査:來生新放送大学副学長)で排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方について研究してきた(本ブログ3月10日、4月19日等参照)。
今回、4年間にわたるその研究の成果として「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法制」(骨子案)をとりまとめて提示し、排他的経済水域等の総合的管理に関する新たな法制の整備を速やかに行うよう提言したものである。
国連海洋法条約によって我が国は、世界で6番目に広大な排他的経済水域を管理するようになったが、この海域において具体的にどのような法令が適用されるのかは依然として不明確であり、開発行為や構築物の設置等を行う際に必要な手続きも明らかになっていない。
さらに言えば、排他的経済水域等においてどのような開発、利用、保全が行われているのかについて、国において一元的に把握する体制になっておらず、空間としての最適・合理的な開発・利用、保全等を確保する仕組みになっていない。 これでは、折角海洋法条約で認められた広大な海域を有効活用できないだけでなく、海域の実効的管理に空隙が生じ、何らかの形で国益を損なう恐れさえある。
海域の空間的管理は、水産、海上交通、海洋再生可能エネルギーの開発・利用、環境保全など様々な海洋の問題に総合的に取り組むために必要不可欠であるので、この提言を参考にして、新たな法制の整備に速やかに取り組むことを小野さんに要望した。
目下、東日本大震災の復興にあたって、海域の瓦礫の処理、海洋再生エネルギーの開発・利用の促進、沖合養殖の推進などの施策の推進が論じられているが、それらを推進するためにも海域の管理に関する法制の整備が必要である。
真剣な議論を積み上げて、排他的経済水域等の管理に関する法制のあり方を具体化していただいた委員の皆さんに心から感謝するとともに、今回の提言が、我が国の排他的経済水域等の総合的管理の法制整備に道を開くきっかけとなることを念願している。 なお、提言本文については海洋政策研究財団のブログをご覧いただきたい。(了)
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EEZ・大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法制 [2011年04月19日(Tue)]
海洋基本法は、我が国の排他的経済水域及び大陸棚の開発、利用、保全等(以下「開発等」)に関する取組の強化を図ることの重要性にかんがみ、海域の特性に応じた排他的経済水域等の開発等の推進のために必要な措置を講じる、と定めている。
しかし、世界ランキング第6位の広大な海域の開発等を管理する仕組み作りは、なかなか一朝一夕にはできない。そこで、民間の海洋シンクタンクである海洋政策研究財団では、海洋基本法の成立後すみやかに、有識者からなる「総合的海洋政策研究委員会」を設置して排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方について研究してきた。(本ブログ3月10日等参照)
そして、4年間にわたる審議を経て、このほどその研究成果として「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法制」(骨子案)等を取りまとめた。
この研究は、研究委員会委員長の栗林忠男慶応義塾大学名誉教授、法制ワーキンググループ主査の来生新横浜国立大学名誉教授をはじめとする多くの方々にご尽力いただいた。改めてあつく御礼申し上げたい。
骨子案の構成は次の通り。
1 法律の目的 2 排他的経済水域等の開発、利用、保全等に関する基本理念 3 排他的経済水域等の管理における国の役割 4 排他的経済水域等に関する調査の推進及び情報の一元的管理 5 基本方針の策定 6 海域計画の策定 7 特別海域の指定及び特別海域計画の策定 8 開発行為等の取扱い 9 海洋の科学的調査の取り扱い 10 海洋環境保全への配慮
これによって、広大な我が国の排他的経済水域等の開発、利用、保全、管理に関する法制度のあり方を具体的に示すことができたのではないかと思う。
もちろん、まだまだ、検討を要する点はある。しかし、今私たちが提言しないと我が国における排他的経済水域等の開発、利用、保全、管理に関する法制の検討はますます遅れる。そう考えて、この際、この研究成果を発表して、我が国の排他的経済水域等の開発、利用、保全等の推進を提言し、社会に一石を投じることとした。
近いうちに、本骨子案に基づいて、排他的経済水域等の総合的管理に関する新たな法制の整備をすみやかに行うよう、国政を預かる方々、政府関係機関その他の関係者に提言する予定である。
「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法制」(骨子案)を載せた「我が国における海洋政策の調査研究報告書」をご希望の方は、どうぞ遠慮なく当財団にご連絡ください。(了)
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玉木賢策教授御逝去 [2011年04月08日(Fri)]
東日本大震災への対応に振り回されているときに、思いがけない方向から悲報が届いた。
ニューヨークで開催中の大陸棚限界委員会に出席していた玉木賢策東京大学教授が突然倒れ、ニューヨークの病院で手術を受けたが、ついに帰らぬ人となったという連絡を総合海洋政策本部事務局の谷さんからいただいたのである。逝去されたのは日本時間4月6日11時37分で、享年62歳という。思いがけない悲しい知らせに茫然として言葉もでなかった。
玉木教授は、海洋地質学の権威で、2002年から9年間にわたり、大陸棚限界委員会委員を務め、国連海洋法条約に基づいて各国の200海里を超える大陸棚の延長申請を審査し、大陸棚限界画定に貢献してきた。その突然の逝去は、我が国のみならず、世界にとっても重大な損失である。
特に我が国は、目下、我が国の200海里を超える大陸棚の延長申請を大陸棚限界委員会に提出して審査を受けている最中であるだけに、玉木教授が亡くなられたことの影響は大きい。
海洋政策研究財団も、玉木教授には大変お世話になった。現在も3か年計画で取り組んでいる「島と周辺海域の保全・管理に関する調査研究」の調査研究委員会の委員をしていただいており、玉木教授には、お忙しい時間を割いて委員会に出席し、豊かな知見に基づいて適切なご意見を積極的にご発言いただき感謝していた。 最終年度となる平成23年度には、提言をとりまとめるので、玉木教授のご指導に期待していただけに、このようなことになって本当に残念である。
玉木教授には、これまでのご貢献とご厚誼に対して感謝の真をささげるとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。(了)
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第3回「総合的海洋政策研究委員会」開催 [2011年03月10日(Thu)]
3月7日(月)、第3回「総合的海洋政策研究委員会」を開催した。(第2回「総合的海洋政策研究委員会」については本ブログ2010年11月20日、同委員会第5回法制ワーキンググループ会合については本ブログ2月5日参照)
今回は、排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方についての議論のまとめの委員会である。
海洋基本法は、我が国の排他的経済水域及び大陸棚の開発、利用、保全等(以下「開発等」)に関する取組の強化を図ることの重要性にかんがみ、海域の特性に応じた排他的経済水域の開発等の推進のために必要な措置を講じる、と定めている。
しかし、世界ランキング第6位の広大な海域の開発等を管理する仕組み作りは、なかなか一朝一夕にはできない。そこで、海洋基本法制定以来、まず民間の海洋シンクタンクである当財団で排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方について研究し、その成果に基づき政策提言をして排他的経済水域等の管理を促進しようと考えて取り組んできた。
今回は、法制ワーキンググループの取りまとめた「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方について」及びそれの別紙「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法制整備」(骨子案)について審議した。
なお、別紙は、中間とりまとめでは「…に関する法律」(骨子案)としていたが、基本法的な規定、実施法的な規定をすべて一つの法律でまとめるのが適当かどうかについて議論があり、現時点ではそこをぎりぎりつめないでいくこととし、「…に関する法制(整備)」(骨子案)とした。
提案された骨子案の目次は、次のとおり。
1 法律の目的 2 排他的経済水域等の開発、利用、保全等に関する基本理念 3 排他的経済水域等の管理における国の役割 4 排他的経済水域等に関する調査の推進及び情報の一元的管理 5 排他的経済水域等の管理に関する基本方針の策定 6 海域計画の策定 7 特別海域の指定及び特別海域計画の策定 8 開発行為等の規制 9 海洋の科学的調査の取り扱い 10 海洋環境の保全への配慮
上記2つの報告文書について、排他的経済水域・大陸棚という地球の海洋空間を我々が新たに扱っていくポリシーの考え方を明確に表現すべき、今回の法律によって全体として開発・利用・保全について前進するのか、主務大臣はだれなのか、個別法との関係は?規制が過剰になるのではないか、等々、各委員からさらに意見が出され、活発な議論が行われた。
中でも、主務大臣、管理主体について、かなり議論が行われた。
この点について、法制ワーキンググループの来生主査は次のように述べていた。
主務大臣というのはある種の逃げである、管理主体をどう考えるのか、管理主体を一つにして排他的経済水域についてはすべてやるということになれば規制の体系はできる、しかし、骨子案でまとめたのは必ずしもそういう考え方に徹底していない、かなりの部分は個別法主義に基づいており、新しい部分についてはこの法律でという認識である、許認可権限をもっているところが他の外部性を持つところとどのように調整するのかのメカニズム、あるいは統合した許可基準までふみこまなければ完結しないということは認識しているが、海に関する多様な法制度の中でそれをやるのは大変である、今後の課題としておきたい。
この点については私も、今ある個別法の取組を新しい統一的制度に一気に統合するということは非現実的であり、基本方針や計画を踏まえて個別法の運用を行うという考え方で整理していくのがいいのではないか、(それしかない)と考えている。
今回、研究結果をまとめてみて、まだまだ、研究することがたくさんあるという認識は各委員が共有している。それでもなお、今提言しないとなかなか検討が進まないので、この研究成果を発表して、排他的経済水域等の開発、利用、保全等の推進のために一石を投じようということで委員会の意見が一致した。
今回出た意見を踏まえて報告書の最終化を図ることを栗林委員長と来生主査に一任して委員会は終了した。それを受けて当財団としても、この報告書の活かし方を考えることとなった。それらの結果については、また皆さんにも逐次お知らせすることとしたい。(了)
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第3回海洋マネジメントビジョン検討委員会 [2011年03月08日(Tue)]
3月7日(月)、国土交通省で開催された第3回海洋マネジメントビジョン検討委員会に出席した。(第2回海洋マネジメントビジョン検討委員会については本ブログ2010年12月18日参照)
本年度最後となる今回の委員会では、最初に事務局がこれまでの議論を簡単にまとめた「これまでの検討の取りまとめについて」をもとに議論した。海洋マネジメントビジョンの背景、目的、諸外国の取り組み事例、海洋台帳のあり方について簡単にまとめたペーパーそのものについては、大きな修正意見は出なかったが、「管理」の内容、「総合的」の意味するところなどについて、私を含めて各委員が様々な角度から補完的な発言をして、出席者の理解が深まった、と思う。
続いて、三菱総研が、民間事業者等(ヒアリング調査)及び地方公共団体(アンケート調査)に対する調査、並びに諸外国における海洋情報システム及びEEZ管理の事例についての調査の結果について報告した。
何れも興味深い調査であるが、特に英独の現地調査を含む諸外国の海洋情報システム(海洋台帳)及びEEZの管理事例についての調査結果は、大変参考になる内容だった。
それに続いて、海上保安庁海洋情報部の長屋課長が、海上保安庁における海洋情報管理の取組について発表した。即ち、海上保安庁の水路図誌、日本海洋データセンター、沿岸域環境保全情報などの取組、及び総合海洋政策本部の総合調整のもとで海上保安庁が運用面を担当している海洋情報クリアリングハウスについて報告し、さらに海上保安庁が平成23年度中にサービス開始を予定している「海洋政策支援情報ツール」についてその内容を説明した。
「海洋政策支援情報ツール」に掲載を検討している情報は、基盤情報、海域の利用制限に関わる情報、海域の利用状況・現況を示す情報に亘る。これは「海洋台帳」のベースになりうるものであると思った。
これらの報告・発表をもとに活発な意見交換が行われ、最後に平成23年度の検討内容について審議して委員会は閉会となった。
この会議には、国土交通省だけでなく、総合海洋政策本部をはじめ関係各省も出席しているが、それらの出席者も会議で積極的に発言して、なかなかいい検討委員会になってきたと思う。平成23年度の検討が楽しみである。(了)
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大陸棚セミナー開催 [2011年02月11日(Fri)]
2月9日(水)、海洋政策研究財団は、内外から講師を招いて大陸棚セミナーを開催した。セミナーのテーマは「大陸棚延長と海洋政策−勧告に基づく限界設定の先例に学ぶ−」である。
国連海洋法条約は、200海里を超える大陸棚の限界の設定について次のように定めている。
沿岸国は、領海基線から200海里を越える大陸棚の限界に関する情報を大陸棚限界委員会に提出し、この委員会が、当該大陸棚の外側の限界の設定に関する事項について当該沿岸国に対し勧告を行う。沿岸国がその勧告に基づいて設定した大陸棚の限界は、最終的なものとし、かつ、拘束力を有する。(第76条第8項)
沿岸国は、勧告に基づいて自国の大陸棚の限界が表示された海図及び関連する情報を国連事務総長に寄託し、国連事務総長は、これを適当に公表する。(第76条第9項)
これまでに54件の申請が大陸棚限界委員会(以下「委員会」)に提出され、このうち11件について委員会の勧告が発出されているが、その中で海図を国連事務総長に寄託して大陸棚限界設定に必要な一連の手続きを完了している国は、目下のところメキシコとアイルランドだけである。
なお、わが国は、2008年11月にわが国の大陸棚の限界に関する情報を委員会に提出し (本ブログ2008年12月3日参照)、目下、それが委員会に設置された分科会で審議されている。早ければ今年のうちにそれがまとまり、委員会にかけられて、勧告が出される見込みである。
そこで、大陸棚の限界設定に関する一連のプロセスについて理解を深めるため、今回、メキシコ、アイルランド及び日本の専門家を招いて大陸棚セミナーを開催した。
セミナーでは、先ず、上智大学の兼原敦子教授が、「200海里を超える大陸棚制度に基づく沿岸国の権利」 というテーマで、委員会の勧告はいかなる法的地位を有するのか、勧告に基づき沿岸国は何ができるのか等について、いろいろなケースを挙げて講演した。
続いて、メキシコのガロ・カレラ氏が「メキシコの大陸棚限界設定の経験−メキシコ湾西エリアを中心にー」というテーマで講演した。メキシコは、国連海洋法条約を批准していないアメリカ、およびキューバとも事前に粘り強く交渉して、それに基づいてメキシコ湾西部の大陸棚の限界に関する情報を委員会に提出し、大陸棚の限界の設定に他に先駆けて成功した。その戦略的取り組みの説明が印象に残った。
最後にアイルランドのピーター・クロッカー氏が「ポーキュパイン深海平原における大陸棚の外側の限界までのアイルランドの管轄権の拡張−現在までの進展、論点および経験−」というテーマで講演した。
3人の講師には、それぞれの持ち味を生かしていい話をしていただいた。セミナーには150人ほどが参加したが、難しそうなテーマにかかわらずなかなか面白かったという感想があちこちから聞こえてきた。
海外からきたお二人の講師はなかなか好感の持てる人たちだった。
特に、メキシコのカレラさんとは顔を合わせたときからどこかで以前にあったような気がしていた。話しているうちに、彼がカナダのハリファックスにあるダルハウジー大学やスウェーデン・マルメの世界海事大学で教えていることがわかった。
私が世界海事大学の理事をしているといったら彼も驚いていた。 また、昨年7月に国際海洋研究所(IOI)がダルハウジー大学で開催した海洋総合管理トレーニング・プログラムの国際円卓会議に招かれて出席したと言ったら、カレラさんも、自分も講師としてトレーニングプログラムに出ていたと言い、そのときにも互いに顔を合わせていたことがわかった。(本ブログ2010年7月17日、7月19日等参照)
海の世界はあちこちでつながっているということを改めて実感させられる出会いであった。(了)
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排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方(3 ) [2011年02月05日(Sat)]
2月4日(金)、総合的海洋政策研究委員会の第5回法制ワーキンググループ(WG)会合を開催した。(本ブログ2010年12月23日、11月20日等参照)
法制WG(主査:來生新放送大学教授)は、排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方について法律専門家により検討するために設置され、「排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方」及びその別紙「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法律」(骨子案)について審議している。
今回の法制WGは、前回(12月22日会合)に引き続き、第2回総合海洋政策研究委員会で提起された論点等を踏まえて、「排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方」等について審議し、WGとしての最終意見を取りまとめるために開催されたものである。
最初に、事務局から主な論点として、@新たな法律の基本的な枠組みの考え方について(情報の一元的管理、基本方針・海域計画・特別海域管理の意義・必要性)、A排他的経済水域と大陸棚との関係について、B排他的経済水域等における海洋環境の保全について、Cその他(科学的調査、遺伝資源開発、海上交通)について説明した。
そのあと議論が行われたが、「法律」(骨子案)が、排他的経済水域等の開発、利用、保全等に関する基本理念(又は基本原則)のような基本法的な規定から開発行為等の規制、科学的調査の許可のような実施法的なものまで含んでいることから、これをどのように考え、どう理屈付けるのかに関して多くの議論があった。
議論の結果、ここに提起されたすべての事項をひとつの法案に取りまとめるか否かについては、まだまだ検討すべき点もあるので、ここでは排他的経済水域等の管理に関する立法を促進するための考え方の整理というスタンスでまとめていくこととなった。
これに伴い、「法律」(骨子案)の題名を「排他的経済水域及び大陸棚の開発、利用、保全等の総合的管理に関する法制整備」のように変更するとともに、法制WGの取りまとめ文書「排他的経済水域及び大陸棚の総合的な管理に関する法制のあり方について」の別紙として、今回議論した論点に関する考察を「立法的課題の整理」として添付することになった。
また、これまであまり議論が進んでいなかった環境アセスメントについても、計画立案段階におけるアセスメントか・事業実施段階におけるアセスメントか、環境影響評価法との関係等について議論され、海洋空間という特性から特に開発・利用と環境保全との調和の要請が強いことを踏まえて、その仕組みのあり方を検討することとなった。
議論の中で、中原さんから、この排他的経済水域・大陸棚管理法制の制定理由のひとつが国連海洋法条約への対応にあるという重要な指摘があった。
まさにここに、基本理念から実施法的規定までが包含されている理由があり、また、のんびりと我が国だけのペースで議論だけをしているわけにはいかない理由がある。
したがって、年度末には、海洋基本法の基本的施策「排他的経済水域・大陸棚の開発・利用・保全等の推進」に関する法制度のあり方を示す具体的な内容を持った「法制整備」(骨子案)を政策提言する予定である。どうぞご期待ください。(了)
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尖閣諸島沖事件の覚醒効果 [2011年01月08日(Sat)]
昨年9月に起こった尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件によって明らかになった隣国の一方的な膨張主義的態度にわが国は愕然としたが、これを契機に、海がわが国の安全、経済、そして国民生活に果たしている重要な役割に対して社会の目が開かれたのは怪我の功名というべきか。
いろいろなところに見えてきたこの事件のプラス面の影響について今回は眺めてみたい。
まず、わが国の国際社会を見る目が拡がって、新聞の論調もこの事件を契機に物事の捉え方がかなり変わってきたように見える。
事件前はともすれば、日本と中国、日本と米国、日本と韓国、日本とロシアといった二国間の視野での報道が多かった。それがこの事件を契機に、中国と米国とそれと同盟関係にある日本、中国と東アジアとその中の日本、ロシアと中国・極東と日本、韓国と朝鮮半島情勢と米国と日本、というように現下の国際情勢を意識した報道が目につくようになった。国際社会の中での日本を考えるのに必要な視点であり、歓迎したい。
例えば、今回の事件を契機に、中国から見れば尖閣諸島や東シナ海の問題は、南シナ海で起こっていることと同じ「中国の海」の問題である、という認識が広まり、中国が南シナ海でやっていることに関する報道が大きく新聞に載るようになったのはいいことである。
世界各地の係争を取り上げ、日本が学ぶべき教訓を考える「領土」という読売新聞の特集の冒頭(1月3日)は、南シナ海のほぼ全域を中国の海と主張する中国の攻勢に懸命に対抗する沿岸国マレーシアの状況を「南シナ海をさらう中国」という見出しをつけて報じていて、参考になる。
また、今回の事件では、中国がレアアースの輸出を抑えたり、合意済みの石油・ガス田の共同開発の協議を遅らせたりしていることから、資源問題に対する関心が高まった。それにつれて海洋資源、特に日本の広大な排他的経済水域の海洋資源の開発に対する注目が集まったことは、この問題に国として本格的に取り組むことが求められていたときだけに、いい後押しになっている。
メタンハイドレートと並んで注目されている海底熱水鉱床について、1月7日の読売新聞は1面トップで「海底レアメタル採掘へ」と日本周辺の海底に眠る世界有数の金銀やレアメタル(レアアースを含む)を採掘する技術の実用化に政府が乗り出したと報じた。
10年後の商業化を目指す沖縄トラフ(伊是名海穴)や伊豆・小笠原諸島沖(ベヨネーズ海丘)における海底熱水鉱床の採掘の取り組みに対して社会の関心が高まれば、「新たな海洋立国の実現」に向けた取り組みを推進する力となる。
このほかにも、今回の事件がわが国に与えた覚醒効果はいろいろあると思う。
災いを転じて福となす、ことを願っている。(了)
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