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海上交通の要衝、マラッカ・シンガポール海峡 [2018年03月19日(Mon)]
3月14日のLROニュースを開くと、マラッカ・シンガポール海峡を通航するVLCCがこの10年間でほほ倍増したと伝えていた。その情報ソースはシンガポールのNippon Maritime Center(NMC)がマレーシア海事局の統計に基づき作成した資料とのこと。

マラッカ・シンガポール海峡は、インド洋と南・東シナ海、太平洋を結ぶ海上交通の要衝で、経済大国日本の資源・エネルギー等の輸入、製品等の輸出に重要な役割を担っている。

私は、1990年代後半と2000年代前半を中心にこの海峡(そのころはよくマラッカ・シンガポール海峡を略して「マ・シ海峡」と呼んでいた。)の航行安全、環境保全、海賊問題等に深くかかわり、沿岸3国(インドネシア、マレーシア、シンガポール)の人たちとも密接に交流したので、マラッカ・シンガポール海峡と聞くといろいろなことが脳裏に浮かんできて、懐かしい。

(2007年7月以降については、本ブログのカテゴリアーカイブ:マラッカ・シンガポール海峡の航行安全等、及び2011.2.1、2011.7.27等も参照ください。)

さて、マラッカ・シンガポール海峡を通航した船舶数は2011年から一貫して増加してきて、2017年にはこれまでで最高の84,456隻が通航した、という。1日平均231隻の船舶が通航、ということはほぼ毎時10隻、6分ごとに1隻ということなる。

船種別では、コンテナ船が33%で一番多く、その次がVLCC(20〜30万重量トンクラスの巨大タンカー)を含むタンカーで全体の29%を占めている。VLCCは2017年に6,711隻通航した。過去5年間は年率7.8%で増加しており、この10年間では倍近くに増加している。(2007年は3,753隻)

中小型のタンカーも過去3年間は平均3.8%で増加しており、2017年は20,629隻通航。LNG船・LPG船も4,137隻通航している。

鉄鉱石、石炭、穀物、塩、アルミ塊、銅鉱石など様々な貨物を、梱包せずに大量にそのまま輸送する「ばら積み船」も2017年は15,411隻通航している。

こう見てくると、マ・シ海峡が世界の海上交通の大動脈の要衝であることがわかる。

これらの情報に久しぶりに接して、マラッカ・シンガポール海峡の世界および日本経済に占める重要性、及び、この重要な海峡の航行安全、環境保全、海賊問題等に1960年代末から日本が先頭に立って取り組んできたことが大きく脳裏に甦ってきた。

そして、皆さんもこの重要なマラッカ・シンガポール海峡に関心を持っていただきたいと思った。

とは言っても、マラッカ・シンガポール海峡のことは私たちの日常生活では情報がなかなか思うようには手に入らない。

そう思っていたところ、ひとつ面白いサイトを見つけたので、この際みなさんにも紹介したい。それは、日本船主協会の「海運雑学ゼミナール」で、そのアドレスは次のとおり。
https://www.jsanet.or.jp/seminar/index.html

これを覗くとマラッカ海峡のこともあちこちに載っている。その例を2つ挙げると次のとおり。

マラッカ海峡:日本の輸入原油の80%が通るタンカー銀座
https://www.jsanet.or.jp/seminar/text/seminar_117.html

原油タンカー:VLCC約3.6隻分の原油で東京ドームがいっぱいに
https://www.jsanet.or.jp/seminar/text/seminar_015.html

関心のある方はどうぞ覗いてみてください。
Posted by 寺島紘士 at 23:18
マラッカ・シンガポール海峡の航行安全及び環境保全と海峡利用者の社会的責任(CSR) [2008年12月30日(Tue)]
2008年11月24日、日本財団と国際海運団体円卓会議が主催する「マラッカ・シンガポール海峡における航行安全及び環境保全に関する国際シンポジウム」がマレーシアのクアラ・ルンプールで開催され、出席した。

2007年9月に合意されたマラッカ・シンガポール海峡の安全・環境に関する沿岸国と利用国・利用者との「協力メカニズム」に基づき、2008年4月には海峡の航行援助施設の維持・更新のための「航行援助施設基金」が設置された。

これを受けて日本財団と海峡の利用者である海運業界の主要な国際海運団体のBIMCO(ボルティック国際海運協議会)、ICS(国際海運集会所)/ISF(国際海運連盟)、INTERCARGO(国際独立乾貨物船主協会)、INTERTANCO(国際独立タンカー船主協会)が主催者となって開催したのが今回のシンポジウムである。
国際海運業界がマラッカ・シンガポール海峡の航行安全等の問題を自らの問題として取り上げ、企業の社会的責任(CSR)に基づき航行援助施設基金への任意の拠出に踏み切るとともに、これについて議論の場を設けたことは、画期的なことである。

それにつけても、海峡利用者の社会的責任(CSR)に基づく拠出を掲げ、海峡利用者が応じるならば日本財団は当初5年間はその必要額の3分の1を支援すること表明して国際海運団体の説得に当たり、ついに基金への任意拠出のコミットメントを引き出した日本財団、特に笹川会長の先見の明とその行動力に敬意を表したい。

日本は、1960年代末から唯一の主要な海峡利用国としてマラッカ・シンガポール海峡の航行安全、環境保護等についてインドネシア、マレーシア、シンガポールの海峡沿岸3国に協力してきた。それは、日本政府だけでなく、海運、石油、保険、造船などの関係業界、及び日本財団などの多様な関係者が協力して行ってきたものである。特に日本財団が行ってきた資金的貢献はきわめて大きい。この日本が行ってきた貢献は、沿岸3国が機会あるごとにわが国に感謝の意を表することからも明らかなように、国際協力の成功例である。

しかし、1990年代後半からはマラッカ・シンガポール海峡の航行安全、環境保護等のためにさらに新たな多国間の「協力メカニズム」の構築が求められるようになっていた。それは、1994年に国連海洋法条約が発効し、その第43条が国際海峡の航行安全、環境保護等のための利用国と沿岸国の協力を定めたこと、また、近年は中国をはじめ多くの国々がマラッカ・シンガポール海峡の利用を拡大してきたことなどの理由による。

これは、国際法の枠組みの進展、海峡の利用実態の変化から見て当然の流れであったが、それまで40年間の日本の協力が海峡沿岸3国に感謝される成功事例であっただけに、その成果を無にしないようにして新しい協力メカニズムをいかに構築するかは大きな課題であった。その時期に私自身もマラッカ海峡の安全・環境の協力問題に関わっていたが、そのことがいつも心にかかっていた。

しかし、振り返ってみるとその課題も日本財団の一連のイニシアチブにより最良の解決が図られたと考える。その結果、日本のイニシアチブとプレゼンスが発揮される中でマラッカ・シンガポール海峡の「協力メカニズム」が構築された。そしてさらに今回、日本財団の尽力により国際海運団体円卓会議が主催者の一員となった国際シンポジウムが海峡沿岸国マレーシアで開催された。多くの関係者が参加するこの国際シンポジウムに身を置いてみて、時代が大きく動いたのを実感し、感無量であった。(了)

Posted by 寺島紘士 at 01:31
第32回海洋会議「海洋の自由、通航権および1982年海洋法条約」とマラッカ・シンガポール海峡の安全等の「協力メカニズム」 [2008年02月12日(Tue)]
新年早々の1月9‐10日にシンガポールで開催された第32回海洋会議「海洋の自由、通航権および1982年海洋法条約」に参加した。この会議は、バージニア・コメタリーで有名な米国バージニア大学法学部海洋法・政策センターが毎年開催しているもので、今回はシンガポールのナンヤン大学S.ラジャラトナム国際研究所(RSIS)との共催であった。

会議は、主催者からの歓迎の挨拶、ジャヤクマールシンガポール副首相の基調講演等に続いて次の7つのパネルが2日間にわたって行なわれた。

1. 航海の自由の背景
2. 排他的経済水域(EEZ)内における科学的調査および水路測量
3. EEZ内における軍事活動
4. 国際航海に使用されている海峡の通過通航
5. 群島航路帯の通航
6. 船舶起因汚染と海洋環境保護
7. 非旗国による法令執行と海洋環境の保護

会議の参加者は、海外から40名強、シンガポールが90名弱であり、主催者バージニア大学のジョン・ノートン・ムーア、第3次国連海洋法会議議長を務めたシンガポールのトミー・コーなど第3次国連海洋法会議に参加した海洋法マフィアといわれる人々、並びに国務省、国防省、海軍等からなる米国勢が目立つ会議であった。12月に当財団に来訪した国際海洋法裁判所所長ウォルフラム博士も参加していた。

会議は、航海の自由と国連海洋法条約の関係に焦点を当てて行なわれた。オーストラリアが国内措置だけでトーレス海峡に強制水先制度を導入したことに関して米国・シンガポールとオーストラリアからの参加者間で、また、EEZ内での情報収集を含む軍事活動については米国と中国の参加者間で意見が対立するなど、厳しいやり取りが行なわれる場面もあったが、他方でジョークや笑いが随所に混じるなど、一種の“同窓会”的雰囲気があって印象的であった。

日本からは、海洋政策研究財団から小生と小谷研究員が参加したほかは、例によって参加者はなかったが、会議での情報や討議内容には参考になるものが多く、海洋法学者、海洋・海事政策研究者等が日本からももっと多く出席しても良いのではないかと感じた。

小生は、国際海峡における通過通航制度を取り上げた第4セッションにおいて、パネリストとして「国際海峡の通過通航とマラッカ・シンガポール海峡の安全等に対する利用者の協力」というテーマでプレゼンテーションを行なった。

その要旨は次のとおり。

目下、海峡の沿岸3カ国を中心に、IMO等が協力して、国連海洋法条約第43条に基づくマ・シ海峡の安全等に関する協力を具体化する取り組みが進んでおり、
・ 沿岸3カ国が提示した「協力フォーラム」「プロジェクト調整委員会」「航行援助施設基金」からなる「協力メカニズム」を構築すること
・ 利用国、海事産業、その他の利害関係者が、ボランタリーベースで協力メカニズムに参加し、資金的貢献をするように努めること
などが昨年合意された。

沿岸3カ国は、「協力メカニズム」の下で航行安全・環境保全に関する下記の6つのプロジェクトの推進および「航行援助施設基金」の設立を提案しており、これに対していくつかの利用国等から支援表明がなされている。

 @ TSS(分離通航帯)内における沈船の除去
 A HNS(有害危険物質)への対応体制整備
 B 小型船舶用のAIS(船舶自動識別システム)クラスBの実証支援
 C 潮流・潮汐等の観測システムの整備
 D 既存の航行援助施設の維持・更新
 E 津波の被害を受けた航行援助施設の復旧整備

このうち、Dの既存の航行援助施設の維持・更新は、国際海峡の安全等の確保のための基盤的プロジェクトである。これについて、これまで海峡の航行安全対策等に多大の貢献をしてきた日本財団が、次のような提案を国際海運産業団体に行なってきた。

<日本財団が行なった提案>

・ 経済のグローバル化にともなって海峡を通過する物流量が増加している。その膨大な物流量と経済負担力から見れば、灯台等の航行援助施設の維持・更新の費用負担はごくわずかである。海峡の直接の利用者である海運産業は、海の利用はタダという既成観念を捨てて、「協力メカニズム」の「航行援助施設基金」に社会的責任(CSR)活動として任意の資金拠出を行なってはどうか。
・ 海運産業が資金拠出を行うのであれば、日本財団は、同基金設立当初5年間その予算額の1/3相当額を拠出する用意がある。

このような日本財団の積極的な働きかけを受けて、INTERTANKO(国際独立タンカー船主協会)、ICS(国際海運会議所)、BIMCO(ボルチック国際海運評議会)など主要国際海運団体は、「協力メカニズム」に対する支持を表明し、「航行援助基金」の設立が実現に向けて大きく動き出している。

今回合意された「協力メカニズム」が人々の関心をひきつけ、新しい本格的な協力の実現を予感させているのは、海峡通過の直接受益者である海運産業界がCSRという21世紀的コンセプトの上に立って任意の協力を具体的に検討していることに負うところが大きい。このような日本財団・海事産業の積極的対応に刺激を受けて、航行援助施設基金に対してさらに積極的協力を申し出る国が利用国や産油国の中からでてきて、「協力メカニズム」全体の実現可能性が高まったのは喜ばしい。

今回の合意は、国連海洋法条約第43条の協力を初めて実現するものであり、また、海峡の沿岸国と利用国だけでなく、海運産業その他の多様な関係者が任意で参加出来るようにしている点では条約がその制定当時期待した協力の内容を超える優れたものである。国際海峡の安全確保等の問題を海運産業の社会的責任(CSR)活動として捉えて海運産業界の自発的意思を引き出した日本財団の取り組み、およびそれと呼応した海事産業および沿岸国の対応は高く評価されるべきである。

本プレゼンテーションに関して、トミー・コー氏をはじめ沿岸3カ国の参加者から、日本財団の活動と海運産業の取り組み等に対して積極的な評価と期待が寄せられた。 (了)
Posted by 寺島紘士 at 16:24
マラッカ海峡の安全協力メカニズム [2007年09月20日(Thu)]
9月4−6日、シンガポールで世界海事機関とシンガポール政府が共同で開催した「マラッカ・シンガポール海峡に関するシンガポール会議:安全・保安・環境保全の増進に向けて」に出席した。

会議は、長年懸案であったマ・シ海峡の航行安全および環境保全に関する国際協力メカニズムについて画期的な合意に達して大成功だった。

会議の「シンガポール声明」は、@ a.協力フォーラム、b.プロジェクト調整委員会、c.航行援助施設基金からなる「協力メカニズム」を創設すること、A利用国、海運業界その他関係者は、「協力メカニズム」の活動に、任意のベースで、参加し、拠出するよう努めること等5項目の合意事項を発表した。

インド洋と南・東シナ海、太平洋を結ぶ海上交通の要衝であるマラッカ海峡の航行安全、環境保全等に関する沿岸国と利用国・利用者の協力メカニズムの構築は、長年の課題であった。

特に、国連海洋法条約(以下「海洋法条約」)で領海の幅が12海里に統一され、これにより多くの国際海峡でそれまであった海峡中央の公海部分がなくなり、国際航行に支障が出るのを避けるため、海峡とその上空を通過する船舶及び航空機に通過通航権を認める国際海峡制度が設けられてからは、円滑・安全な海上輸送を確保するための協力の仕組みづくりが大きな論点であった。

1990年代半ばから、沿岸国は、海洋法条約が、沿岸国の過重な負担に配慮して、航行および安全のための施設の設定および維持並びに環境保全について利用国は協力すべきとした同条約第43条に基づき、利用国の協力を求め続けてきた。

しかし、海洋法条約採択から25年、発効から13年すでに経過しているが、これまでこの条文に基づく協力の仕組みはマ・シ海峡だけでなくどこの国際海峡でも実現していない。その意味で、今回のマ・シ海峡についての協力メカニズムの合意は、画期的な出来事である。

しかし、画期的なのはそればかりでない。

今回合意された協力メカニズムは、利用国だけでなく、さらに海峡利用の当事者である民間海運産業が海峡の安全に具体的に協力する仕組みをも明らかにしたのである。これは、海洋法条約第43条を越えて、さらに一歩前進である。

経済のグローバル化が進展する21世紀の社会においては、企業の社会的責任について新しい考え方が求められている。

すなわち、実際に国際社会の輸送活動を担っている海運産業は、その活動が影響を与える海洋、国家、ローカルコミュニティの安全や環境保全に貢献すべき社会的責任を負うというCSR(企業の社会的責任)の考え方である。今回の協力メカニズムにはこのCSRに基づいた協力が組み込まれている。

これには、1重量トン当たり1セントというわかりやすい例を引いて、海運産業はわずかな任意の拠出により、マ・シ海峡の円滑・安全な航行の確保に貢献できると主張し、国際世論をリードした日本財団笹川会長の貢献が非常に大きかった。

海事産業の任意かつ積極的な参画なくして協力メカニズムの構築は難しいと看破してその実現に尽力した会長の慧眼に脱帽である。

今回の会議には、アジア地域だけでなく、世界から50カ国が参加し、そのほか17の関係機関が出席し、盛会であった。インドネシア、マレーシア、シンガポールの沿岸3国からも旧知の人たちが多数参加していたが、彼らも今回の会議の成果を高く評価していた。

私も、日本財団でマラッカ・シンガポール海峡の安全協力問題に深く係わって以来、この問題に関心を持ち、自分なりのインプットを続けてきたが、今回の協力メカニズム、特に「航行援助施設基金」創設の合意を見て感慨ひとしおである。

国連海洋法条約を採択した第3次国連海洋法会議の議長を務めたシンガポールのトミー・コー大使とコーヒーブレークで話しているとき、彼が発した言葉に共感した。

“Dream has come true!”  (了)


マラッカ海峡協議会金子専務と議長席で


Posted by 寺島紘士 at 10:25
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