「第1回世界洋上風力規制当局フォーラム」開催 [2019年04月23日(Tue)]
先日送られてきた日本海難防止協会ロンドン研究室のLROニュースを見ていたら「第1回世界洋上風力規制当局フォーラムがニューヨークで開催」という見出しが目に飛び込んできた。
4月8日、米国海洋エネルギー管理局(Bureau of Energy Management: BOEM)の主催で第1回世界洋上風力規制当局フォーラム(Global Offshore Wind Regulators Forum)が開催されたとある。
「規制当局フォーラム(Regulators Forum)」とう言葉はややきついが、フォーラムでは、洋上風力発電に関するベストプラクティスやこれまでの経験に関する情報を交換し、洋上風力発電の分野における国際協力を強化していくことで合意した、とあり、各国の洋上風力発電の管理当局が集まって情報と経験とベストプラクティスを共有し合った有意義な会議だったようである。 洋上風力発電が、CO2の排出削減の方策として国際的に取り組みが進められていることはご承知のとおりであるが、世界各国が洋上風力を管理する政府機関をどのように整備して取り組んでいるかについては情報が少なかったので、この世界会議に関心が湧いてきた。
この米国海洋エネルギー管理局(BOEM)が主催した第1回の世界会議には、豪、加、デンマーク、独、蘭、ノルウェー、スコットランド、英、米の9か国の洋上風力発電を管理する当局が集まって開催された。
洋上風力発電については日本も力を入れ取組んでおり、昨年11月30日には「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」が臨時国会で可決され、成立している(本ブログ2018年12月8日参照)
しかし、残念ながら、今回の世界会議には日本からの参加はなかったようである。主催者のBOEMに日本の取組みが伝わっていなかったのか、それとも政府のどこかの部局には打診はあったが全体で共有されず出席に至らなかったのか、…その辺りの事情はわからない。
いずれにせよ、世界洋上風力規制当局フォーラムの次回会合は、2020年にデンマークの主催で開催されるとのことなので、その時には日本からもぜひこれに参加して、世界各国の洋上風力発電管理当局とネットワークを組んで洋上風力発電の問題に取り組んでにいただきたいと思う。
なお、LROニュースは、BOEMとオランダの外務・貿易・開発協力省が覚書を締結して、洋上発電の分野における情報・経験・ベストプラクティスを交換するなど二国間の協力関係をさらに強化していくことで合意したこと、そしてBOEMは3年前にデンマーク政府とも同様の覚書を交わしていることを伝えている。わが国でもこのような二国間の協力関係の強化に取り組むことも検討してはどうかと思った。
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「第4回 三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド検討委員会」出席 [2014年01月27日(Mon)]
1月20日(月)、岩手県の「第4回 三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド検討委員会」が盛岡で開催された。(なお、第3回については、本ブログ2013年11月10日参照)
前回は、実証フィールドの設置がその付近の海域の漁業にどのように影響があるのか、影響がある場合にどのような形でそれに対応するのか,という海域利用に関するかなり基本的な問題に多くの時間が費やされたが、その場では明確な解決の方向は見いだせないままに終了した。
その後その問題が地元でどのように検討されたのか、そして、協議がいい方向に進んだのかを心配しながら今回の委員会に出席したが、どうやら地元の協議が前進しているようなのでホッとした。
昨年の10月31日開催の前回委員会以降、11月27日には「第3回釜石市海洋エネルギー実証フィールド誘致推進協議会」、12月26日には「海洋エネルギーと漁業協調に関する意見交換会」、年明け早々の1月5日には「実証フィールド設置海域(釜石沖合)の検討案に係る説明会」などが開催され、また、個別にも意見交換が行われ、ようやく関係者が共有できる枠組みが具体化してきたようである。
今回の委員会では、2月末が締め切りとなっている海洋再生可能エネルギー実証フィールド公募の申請書の素案が協議された。
それによると、実証フィールドについては、発電装置の実証実験を行うとともに、環境影響調査や漁業協調モデルの実証も併せて行う、漁業協調型の複合的な実証フィールドの設置を提案し、実証フィールドの管理運営体制において、漁業者はじめ関係者との協議・調整の場を明確に位置づけるとしている。
また、実証フィールド候補海域を見直して沖合3か所、約4.5q2とし(沖合サイト)、それに加えて「湾口サイト」「湾内サイト」を独自に提案している。
さらに、実証フィールドの管理運営体制として、施設・設備の管理・メンテナンスやデータ提供等を行う管理運営主体とともに、地元関係者等による調整組織を設置し、調整組織において、漁業等との連携による取組を促進するとともに、事故等の不測の事態への対応などに万全を期すとしている。
漁業協調の取り組みとしては、漁業者をはじめ、大学や試験研究機関などの関係者との連携・協働のうえ、環境調査や漁業協調モデルの実施などに取り組むとしている。
この素案に対しては出席した各委員から肯定的な意見が多く出されて、地元関係者の間の協議がいい方向に進展していることが窺われた。
帰りの新幹線の時刻との関係で、委員会の終了目前に会場を後にせざるを得なかったが、実証フィールドの申請書の内容が固まってきて、申請の目途がついたことを岩手県をはじめ関係の皆さんとともに慶びたい。
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第3回「三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド検討委員会」に出席 [2013年11月10日(Sun)]
10月31日(金)、岩手県主催の第3回「三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド検討委員会」に出席するため早朝に東京を発ち、釜石に向かった。新幹線列車は秋晴の好天の中を走って行ったが、仙台を過ぎるころから曇って一時空がかなり暗くなった。そして盛岡に着くころには曇ってはいるが大分明るくなってきて、細長い日本列島の天候の多様さを感じた。
盛岡駅で検討委員会の皆さんと一緒になり、バスで釜石に向かった。今回は、委員会の前に実証フィールド候補海域等の洋上視察があり、遠野で昼食をとった後、バスは釜石市唐丹町の小白浜漁港に向かった。
そこで乗船前にライフジャケットを着用してから、船で唐丹沖波浪観測ブイ設置地点に向かった。海は穏やかだったが、湾口を出るとやはり波や風が強く感じられ、時々波しぶきが飛んできた。
かなり沖まで出たところに波浪観測ブイ設置地点があり、その周辺はかなり強い流れがあり、そのせいか我々が行ったときには標識ブイの目印の竹竿が水面に横倒しになっていた。 このあたりの水深は約130m、海底の土嚢と標識ブイは長さ180mの策でつながれ、ブイの振れ回り半径は120m以内という。波浪観測ブイは、この標識ブイにつながれる。辺りを見渡すと沖を通る大きな船の姿が遠くに見えた。そのあたりが三陸沖を通る航路となっているのだろうか。
波浪観測ブイ設置地点のあと、視察船は、沖に伸びた尾崎の先を回って釜石港に向かった。海面のところどころに赤い旗の着いたブイが見えた。タコ漁の標識だという。
やがて、前方に釜石湾の湾口防波堤が見えてきた。南提と北提があり、3.11の大津波が襲ってきたとき、向かって右側の北提の上部が破壊されて水没し、北提の上にあった赤い灯標が傾いてその上部が水面上に出ていた。近くには修理のためにやぐらのある大きな作業船が停泊していた。防波堤は津波にやられはしたが、それによって津波の到達時間を遅らせ、また、その強さを減殺するなどそれなりの効果を上げた。釜石港の北部ではその復旧ためのケーソンなどが製造されているのが見えた。
視察船は、湾を横切るようにして平田漁港に向かったが、その手前の県水産技術センター前の岸壁に漁業指導調査船の岩手丸と北上丸が係留されているのが見えた。大津波の時、センター長のとっさの判断で船を沖に出して被害をまぬかれたが、その無事が確認されるまで関係者が大いに心配したことなどがひとしきり船中で話題になった。
3時から第3回「三陸復興・海洋エネルギー実証フィールド検討委員会」が岩手大学三陸復興推進機構釜石サテライトセミナー室で開催された。
委員長の豊島正幸教授(岩手県立大学総合政策学部 学部長)のリードで審議に入り、報告事項に続いて、まず、@実証フィールド設置海域について、協議が行われた。
議論は、実証フィールドの設置がその付近の海域の漁業にどのように影響があるのか、影響がある場合にどのような形でそれに対応するのか、にかなりの時間が費やされた。私は、前年度の三陸復興・海洋エネルギー導入検討委員会に参加して委員長を務めた。しかし、今年度はこれまでどうしても都合がつかず検討委員会に出席できなかったので、しばらく皆さんの議論を聞いていた。
海洋再生エネルギーの開発の必要性、その地域振興への有用性の認識は、漁業者を含む地域関係者の間で共有されてきているようである。問題は、その影響の認識、その軽減と負担をどう工夫するかに収斂してきているように思われた。
検討委員会は、この問題の協議にかなりの時間を割いたので、A実証フィールドの管理運営については、深く議論をする時間がなくなってしまったが、Aの問題も@の議論に関係するところがかなりあるので、これも含めてさらに議論していくのがよいように思われた。
翌日の11月1日は、三陸復興・海洋エネルギーシンポジウム等が開催され、欧州海洋エネルギーセンター(EMEC)を拠点とするオークニー地域の振興についてのEMECアジア統括取締役のAllan Davidson氏の講演などが組まれていて興味があったが、都合により、残念ながら朝一番の列車で帰京した。
岩手の実証フィールドプロジェクトが、生み(海)の苦しみを乗り越えて、大きな一歩を踏み出す日が来ることを期待している。
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第1回「三陸復興・海洋エネルギー導入検討 委員会」開催 [2012年09月27日(Thu)]
9月21日(金)、第1回「三陸復興・海洋エネルギー導入検討委員会」が開催された。
この委員会は、東日本大震災津波からの復興に取り組む岩手県の三陸復興・海洋エネルギー導入調査事業の委託を受けた東京大学、(社)海洋産業研究会、芙蓉海洋開発(株)、みずほ情報総研(株)のコンソーシアムが設置したものである。
私に委員長をというお話があったとき、この委員会の審議内容が、私が関心を持って取り組んでいる東日本大震災からの復興、海洋エネルギー、地域振興、漁業者との協調などの問題に関連しているのに惹かれてお受けした。副委員長には、岩手県立大学の豊島教授が就任した。
委員には、海洋政策、地域連携、水産技術、水産業、都市再生、漁業調整、沿岸漁業、水産政策、海洋ポテンシャル、商工業などの様々な分野の方々がなり、また、文化を通じた地域振興の専門家がアドバイザーとして参加している。
さらに、当日は、岩手県、コンソーシアムの関係者のほか、総合海洋政策本部をはじめとする関係各省庁、独法・漁業関係者が多勢オブザーバーとして出席し、主催者・関係者の意気込みが伝わってくる委員会となった。
会議では、海洋エネルギー発電の海外最新動向、海洋再生可能エネルギー・ポテンシャル調査、海域利活用に向けた社会的・地理的要因調査の経過などが報告された後、総合討論が行われた。
会議全体を通じて、議論が集中したのは、本年5月に総合海洋政策本部が決定した「海洋再生可能エネルギー利用促進に関する今後の取り組み方針」で実用化に向けた技術開発の加速のための施策の筆頭に取り上げられた「実証フィールドの整備」に関して、岩手県沿岸域でどのように取り組みを進めるのかについてであった。委員及び事務局の間で、漁業との調整・協力を中心に、率直、かつ、基本的には前向きな意見の交換が行われ、第1回として、いい議論のスタートを切ることができたのではないかと思う。
これから年度末に向けて行われるこの委員会の審議が、大震災からの復興、海洋エネルギー導入という時代の強い要請に対して、いい答えを用意できることを願っている。
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