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総合海洋政策推進事務局長、村田茂樹氏から宮沢康一氏へ [2023年06月30日(Fri)]
今年も霞が関の中央官庁の幹部人事の季節がやってきた。6月27日のネット上のニュースに始まり、28日の各紙朝刊が幹部人事を一斉に報道した。

その中で毎年気になるのは内閣府総合海洋政策推進事務局長の人事である。我が国の海洋政策を海洋ガバナンスの視点に立って総合的に推進するこのポストにはそれに必要な知見の蓄積が求められる。そのためには事務局長の任期が1年では短すぎるので総合海洋政策推進事務局長は少なくとも2年務めてほしい、1年では交代しないでほしい、と毎年このブログで訴えているが、残念ながら、今年も在任1年での交代が報じられた。

即ち、今度の内閣府の人事では、宮沢康一さん(国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官)が7月11日付で内閣府総合海洋政策推進事務局長に発令されると発表された。

では現局長の村田茂樹さんはどうなるのかと国土交通省の人事の方を覘くと、7月11日付で鉄道局長と出ている。

村田さんは昨年6月末に総合海洋政策推進事務局長に就任した。村田さんはかつて国土交通省総合政策局で海洋政策課長を務め、総合的海洋政策についての知見をお持ちである。
総合海洋政策推進事務局長、平岡成哲氏から村田茂樹氏へ [2022年06月24日(Fri)] 
https://blog.canpan.info/terashima/archive/2052 参照

そして総合海洋政策推進事務局長就任1年目に第4期の海洋基本計画(本年4月28日閣議決定)の策定に取り組み、そのとりまとめに尽力した。村田さんにはできればもう1年その任にとどまり、今度は第4期海洋基本計画が充実した内容で実施されていくよう陣頭指揮を執っていただきたかったが、残念ながらこれは叶わなかった。

村田さん、昨年6月末から事務局長として総合的な海洋政策の推進に励んでいただいていたのにこれからいよいよ新しい海洋基本計画の施策の実施というところで交代というのは残念な気がします。ですが、事務局長在任中にはいろいろご苦労いただいたと思います。総合的な海洋政策の前進に向けた真摯なご尽力、ご貢献に心から感謝します。ありがとうございました。

村田さんの後任の総合海洋政策推進事務局長は宮沢康一さんである。1990年に旧運輸省に入省し、2022年から国土交通省危機管理・運輸安全政策審議官を務めている。宮沢さんとはこれまであまりお付き合いはなかったように思うが、その経歴見ると、京大法卒、長野県出身とある。宮沢さんが、私と同じように、海のない信州で生まれ育ち、都会に出てきて大学で法学を学び、旧運輸省の時に入省して引き続き国土交通省で公務に取り組んできた人であること知って親しみが湧いてきた。

宮沢さん、グローバル化の進展の中で益々重要性を増している海洋国日本の総合的な海洋政策推進の舵取りをどうぞよろしくお願いします。
Posted by 寺島紘士 at 01:02
総合海洋政策推進事務局長、平岡成哲氏から村田茂樹氏へ [2022年06月24日(Fri)]
一昨日(6月22日)の新聞が6月28日付の中央省庁の幹部人事を報じていた。
そこで内閣府人事のところを見ると、「総合海洋政策推進事務局長 村田茂樹氏」という文字が眼に飛び込んできた。

急いで国土交通省人事をみると、現総合海洋政策推進事務局長の平岡さんは、「国際統括官 平岡成哲氏」とでていた。

平岡さんが運輸省(現国土交通省)に入省した時、私のいた課に配属となり、私たちは同じ課で一緒に仕事をした。今から30余年前のことではあるが、そのご縁は今もつながっている。

だから平岡さんが昨年総合海洋政策推進事務局長になったときは嬉しかった。早速メ−ルなどで連絡を取りあったが、折からの新型コロナウィルスの感染拡大などで、直接訪問するのを差し控えているうちに時が過ぎて今回の異動になってしまった。
平岡さんには総合的な海洋政策の推進についていろいろと前向きに政策を考えていただいていたようなので、それについて直接会って意見交換をすることができなかったのが悔やまれる。

ここ数年、総合海洋政策推進事務局長は1年ごとに交代していたので、平岡さんにはできれば2年ぐらいは在任してじっくりとわが国の海洋政策の総合的・計画的推進にリーダーシップを発揮していただきたいと思っていたのだが…。

平岡さん、昨年7月から事務局長として総合的な海洋政策の推進に励んでいただいていたのに道半ばで交代というのは残念です。いろいろご苦労いただいたと思います。政策の前進に向けた真摯なご尽力、ご貢献に心から感謝します。ありがとうございました。

さて、平岡さんの次に総合海洋政策推進事務局長に就任するのは村田茂樹氏(現観光庁次長)である。村田さんの名前を見て2013年に国土交通省総合政策局で村田さんが海洋政策課長を務めていたのを思い出した。国土交通省には海洋に関する行政を所掌する部局があちこちにあるので総合政策局に海洋政策を総合的に扱う海洋政策課が置かれている。 

私もかつては海洋政策研究の一環で海洋政策課を訪問して課長さんとお話をする機会を持ったりしていたので、村田さんとも当時はかなり連携協力させていただいたと思う。2013年に東アジア10 カ国の35地方自治体等が出席して志摩市で開催した「PNLG(PEMSEA地方政府ネットワーク)フォーラム2013」では、2日目の「東アジアの沿岸域総合管理(ICM)に関するワークショップ」で村田さんが沿岸域活性化に向けた日本のICMの取組について基調講演をしたことを懐かしく思い出した。

本ブログの『志摩市で「PNLGフォーラム2013」開催』
https://blog.canpan.info/terashima/archive/926 参照

このように村田さんは海洋政策についても知識経験を積んでいる。村田さんが、これから総合海洋政策推進事務局長として海洋国日本の総合的海洋政策の推進に力を発揮することを期待したい。

村田さん、重要性を増している海洋国日本の海洋政策推進の舵取りをどうぞよろしくお願いします。
Posted by 寺島紘士 at 01:32
北海道新聞連載『海と国境』で包括的なEEZ法整備の問題取り上げられる [2022年04月25日(Mon)]
先日北海道新聞編集委員の本田良一さんから本田さんが北海道新聞夕刊に連載中の『海と国境』で海洋基本法について取り上げた掲載紙及びそのコピーを送っていただいた。

『海と国境』は2017年11月からスタートした長期連載で、昨年10月から第7部「境界地域のこれから」の掲載が始まり、その83〜89回(4月1日〜8日)が海洋基本法関係である。

各回の見出しは次の通り。

83回 海洋の権益を守る根拠法
84回 中国の調査活動に危機感
85回 司令塔の不在 守れぬ権益
86回 海洋政策示す基本法成立
87回 有識者会議 3年開催なく
88回 管理法整備 必要なはずが
89回 基本法15年 包括法はまだ

本田さんは、海洋基本法の制定に尽力した参議院議員の武見敬三さんや私等への取材を基に、国連海洋法条約発効から海洋基本法制定に至る経緯、制定後も途中で参与会議が3年間開催されないなどの紆余曲折を経てきたこと、近年ようやく施策を進める体制が整備されてきたこと、しかし、EEZや大陸棚などの海域の総合的な管理に係る包括的な法体系の整備が依然として進んでいないことを述べ、最後に私の言葉を引用して次のように結んでいる。

「元海洋政策財団常務理事・寺島紘士は「世界に発信する意味でも漁業や海底資源などの個別法ではなく、全体をカバーする法律が必要だ。国連海洋法条約が定める国際ルールの中で、きちんと主張すべきことを主張していかないと、日本の海洋権益も危うくなる」と包括的なEEZ法の必要性を強調する。
日本の海洋権益を守り、総合的、計画的に活用する目的で海洋基本法が成立して15年。目的はまだ達成されていない。」

海洋基本法が抱える問題についてメディアの眼で鋭く切り込んでいる中々の内容である。この連載を海洋に関心のある皆さんにも読んでもらいたいと思い、本田さんにこの連載が載っているネット上のアドレスを聞いたところ、残念ながらこの連載はネットでは見ることはできないとのこと。

このように今のところこの連載を皆さんが直接読む方法が見つからないのは残念である。
しかし、本連載に特に関心のあるという方は、どうぞ本田さん(あるいは私)に連絡をとってみてください。
Posted by 寺島紘士 at 11:39
参議院「国際経済・外交に関する調査会」で参考人として述べた意見(2) [2022年04月20日(Wed)]
前回に続いて、私が参考人として参議院「国際経済・外交に関する調査会」に出席して提言した2つ目の施策「「沿岸域の総合的管理」の推進」を紹介したい。

(2)「沿岸域の総合的管理」の推進
「沿岸域の総合的管理」は、沿岸の陸域と海域を沿岸域として一体的にとらえ、地域として沿岸域の環境保全と開発利用を総合的・計画的に管理する取り組みである。20世紀後半の高度経済成長期に世界各地で発生した沿岸域の環境・生態系の劣化、生物資源の減少、沿岸域の利用の競合などの問題に対処するために生まれたこの取組は、米国で始まり、世界的な経済発展の流れの中で同様の問題に対応を迫られたカナダ、ヨーロッパ諸国、オーストラリア、中国、韓国、東南アジア諸国等々に広まっていった。
 1992年の地球サミットで「持続可能な開発」原則とともに採択された行動計画『アジェンダ21』の第17章が、「沿岸国は、自国の管轄下にある沿岸域及び海洋環境の総合的管理と持続可能な開発を自らの義務とする」として沿岸域・海域とその資源の総合的管理の行動計画を定めたことにより、「沿岸域の総合的管理(ICM)」は海洋・沿岸域の重要施策として国際的に位置付けられ、世界各国は法律、政策を定めてこの問題に進んで取り組んでいる。その重要性にかんがみ国際社会では途上国の取組みの支援も行っている。

<参照>リオ+20の『リオ海洋宣言』(2012)
1. 総合的海洋管理 生態系に基づく管理/統合的海洋沿岸域管理(EBM/IOCM)の成功している取り組みを拡大する。
・国家レベルでは、統合的海洋沿岸域管理機関と意思決定プロセスの強化を通じて、全体の海岸と海を含め、国家の管轄下にある海洋と沿岸の法律の制定を含む。
(以下略)

 わが国でも、各地で発生している沿岸域の環境等の問題に対して地域の人々が沿岸域の環境回復や森川里海の連携などに取り組み、政府や地方もそれなりに対応してきてはいるが、国際的にICMとして通用する「沿岸域の総合的管理」が制度的にまだ確立していない。
海洋基本法は「沿岸域の総合的管理」を基本的施策の一つとして取り上げている(25条一項)が、これを受けて「沿岸域の総合的管理」を正面から取り上げて、国のリードと支援の下に地方自治体が中心となって地域の人々とともにこれに計画的・順応的に取り組むことを定める沿岸域管理法は未だ制定されていない。
しかし、陸域と海域を沿岸域として一体的にとらえてこれを地域が主体となって計画的・順応的に管理することが本格的に実現すれば、海を活かしたまちづくりによる地方創生などの大きな効果が期待できる。今は市町村の区域に海域は原則として含まれていないが、目の前の生活の場である海を自分たち市町村の海域として管理できれば、わが国の長い海岸線で沿岸市町村による海域の保全、開発、利用等が行われるようになり、住民の眼が海域にも行き届く。沿岸域の持続可能な開発利用、海洋環境・生態系の保全を総合的にきちんと行なうことができるとともに、海からの不審船・不審物等の侵入などにも目が行き届いて海洋の安全にも対応が可能となる。沿岸域の地方創生とともに、わが国の社会の健全な発展、国際交流、さらには沿岸域の安全の確保にも貢献する。

<我が国の「沿岸域の総合的管理」の推進に関する提言>
@ 我が国の長い海岸線に沿った沿岸域を、海洋・沿岸域の総合的管理と持続可能な開発利用のための国際的な取り組み等を念頭において総合的に管理するため、「沿岸域管理法(仮称)」を制定する。同法は、我が国沿岸の陸域及び海域を沿岸域として一体的にとらえて、その環境・生態系の保全、開発利用等に、国−都道府県−市町村が重層的に、総合的に取り組むシステムを構築する。
A 沿岸域管理法に盛り込む国、地方の役割分担は次の通り。
・国は、海洋の総合的管理の一環として、わが国の沿岸域の環境・生態系の保全と持続可能な開発利用を目的とする「沿岸域の総合的管理」を推進することを法律上明確にし、そのための制度・計画を定め、これに自らの問題として取り組む地方自治体を政策・技術・財政面から指導・助言・支援する。
・「沿岸域の総合的管理」の実際の取り組みは、基礎自治体である市町村と広域自治体である都道府県が中心となって、自らの沿岸域の開発・利用、環境・生態系の保全等の問題に総合的・計画的・順応的に取り組む。
・自治体では、住民を含む地域の関係者が広く参加する協議会等を設置して、沿岸域の総合的管理に「Plan(計画)―Do(実行)―Check(評価)―Action(改善)」の連続的サイクルプロセスで順応的に取り組む。
B 内湾や島と島の間の海域をはじめとして住民の日常生活に密接な関係を有する海域を市町村区域に編入することを認め、その海域を地方交付税の算定面積に加える。
C 沿岸域の総合的管理が地方創生にとっても重要であることにかんがみ、これを支える資金面での支援制度を検討する。(米国のシー・グラント制度等参照)
Posted by 寺島紘士 at 12:42
参議院「国際経済・外交に関する調査会」で参考人として述べた意見(1) [2022年04月19日(Tue)]
前回私が参考人として参議院「国際経済・外交に関する調査会」に出席して我が国に必要な総合的海洋政策ついて意見を述べ、「我が国の広大な排他的経済水域等の開発、利用、保全、管理を総合的に進めるための提言」、「我が国の「沿岸域の総合的管理」の推進に関する提言」の二つの提言をしたことを知らせした。私の意見はそのうち公開される調査会の会議録でご覧いたただけるが、とりあえず私が調査会で提言した2つの施策の推進をここで紹介したい。

(1)「排他的経済水域等の開発、利用、保全等」の推進
我が国には、国連海洋法条約(以下「UNCLOS」)に基づいて、海洋の天然資源に関する主権的権利と、施設・構築物、海洋の科学的調査、海洋環境の保護及び保全についての管轄権、及び条約の定めるその他の権利義務を有する広大な排他的経済水域及び大陸棚(以下「EEZ等」)がある。各国は、EEZ等を管理するために法制度を整備し、海洋空間計画(MSP)などを策定し、自国の周りのEEZ等の管理の取り組みを進めている。(英国:海洋及び沿岸アクセス法・海洋空間利用計画、中国:海域使用管理法・海洋機能区画等参照)
しかし、残念ながらわが国のEEZ等の管理の取り組みは遅れている。UNCLOSの批准に際して「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定したが、わずか4条のこの法律だけでは、条約が定める権利義務をどのように行使するかを具体的に定めて内外に示すというニーズを満たしていない。
海洋基本法は、これらを踏まえて、「国は、排他的経済水域等の開発、利用、保全等(以下「開発等」という)に関する取り組みの強化を図ることの重要性にかんがみ、海域の特性に応じた排他的経済水域等の開発等の推進、(中略)その他の排他的経済水域等の開発等の推進のために必要な措置を講ずるものとする。」(19条)と定めている。しかし、第2期及び第3期海洋基本計画に「包括的な法体系の整備」が盛り込まれはしたがはかばかしく進捗しておらず、また、各国が導入している「海洋空間計画」については第3期海洋基本計画で「その必要性と課題及び利用可能性につき検討を進める」と記述しているに留まる。
EEZ等は、わが国の天然資源等の確保、海域の円滑な利用、海洋環境・海洋生態系の保全にとって重要であるが、それだけでなく、国家の安全保障並びに国際協調・協力にとっても重要な基盤である。
EEZ等の境界画定の協議が進まない中でも積極的に海洋進出を進めている周辺諸国との関係でも、我が国がUNCLOSや持続可能な開発利用の国際的取り組みに基づいてEEZ等をきちんと管理していることを示すことは極めて重要である。

<我が国の広大なEEZ等の開発、利用、保全、管理を総合的に進めるための提言>
@ 我が国の排他的経済水域等を、国際約束、並びに海洋の持続可能な開発利用のための国際的な取り組みに基づいて総合的に管理するため、「排他的経済水域管理法(仮称)」を制定する。同法には海洋空間計画の策定、施策の推進体制その他排他的経済水域等の管理に必要な事項を定める。
A わが国の排他的経済水域等は亜寒帯から熱帯までをカバーする広大な海域なので、これをいくつかの中規模の海域に分割し、その海域ごとに海洋環境、海洋生態系、天然資源、海域利用等に関するデータ・情報を整理・分析し、それに基づいてその海域の持続可能な開発・利用、海洋生態系の保全、多様化する海域利用の円滑な推進などのため海域計画を策定する。
(続く)
Posted by 寺島紘士 at 18:24
参議院「国際経済・外交に関する調査会」に参考人として出席 [2022年04月15日(Fri)]
参議院の調査室から今後のわが国の海洋政策の在り方について意見・提言等を聞きたいので4月6日(水)の「国際経済・外交に関する調査会」に参考人として出席してもらいたいという連絡が飛び込んできたのは3月中旬だった。

調べてみると、参議院は、大局的な見地から国政の基本的事項に関して長期的かつ総合的な調査を行い、議員立法、決議、政策提言などを行う調査会(その存続期間はおよそ3年間)を参議院独自の制度として設けている。

「国際経済・外交に関する調査会」は、2019年に設置され、「海を通じて世界とともに生きる日本」を大きなテーマとして、「海」に関わる諸課題についても調査を進めていて今年が最終年。

小生には「「海を通じて世界とともに生きる日本」のうち、今後のわが国の海洋政策の在り方について」意見を求めたいとのこと。

世界各国は、1994年に発効した国連海洋法条約による新しい海洋秩序と、リオ地球サミットの「アジェンダ21」第17章から始まった海洋・沿岸域の総合的管理と持続可能な開発に関する国際的行動計画の下で、法律・政策を整備して自国の周辺海域・沿岸域の総合的管理を進めてきている。
しかし、残念ながらわが国の海洋の総合的管理の取り組みは遅れていた。私は、それを憂慮して海洋基本法の制定を提言し、皆さんと協力してそれを実現して海洋の総合的管理に取り組んできた。
しかし、海洋基本法制定から15年が経過しても、我が国の沿岸域、排他的経済水域など周辺海域の総合的管理がなかなか進まずその遅れが常々気になっていたので、これはいい機会をいただいたと思い、調査会への参考人としての出席をお受けした。

すると、早速参議院の特別調査室から調査会のメンバーに配布する事前資料の提出を求められたので小生の海洋政策に関する意見を記した次の資料4点を提出した。

1.拙著『海洋ガバナンス 海洋基本法制定 海のグローバルガバナンスへ』(西日本出版社)特にp196〜p202
2.平和政策研究所の『政策オピニオンNo.216 2021.10.1』に掲載した「持続可能な開発目標(SDGs)と海洋−海を活かしたまちづくりによる地方創生−」
3.海人社『世界の艦船』2004年11号に掲載した「どうなる!? 海底資源をめぐる日中の角逐」
4.東海大学出版部『東アジア海洋問題研究』に掲載した「表 日本および中国の海洋政策の概要」

そして、4月6日(水)には参議院議事堂分館で開催された「国際経済・外交に関する調査会」に参考人として出席した。
会議場に入ると長方形に連なって設けられた会議机の奥正面側に鶴保庸介会長と理事の皆さん、その両側のそれと直角に連なる机には調査会の残りの理事とメンバーの皆さん(全部で23人!)がずらっと並んでいた。参考人の北岡伸一氏(国際協力機構特別顧問、東京大学名誉教授)と私はそれらと向かい合う位置に置かれた机に案内されて着席した。

調査会は鶴保会長のリードで始まり、最初に北岡さん、続いて私がそれぞれ20分程度ということで意見陳述がはじまった。

私の順番が来たので予め作成・提出しておいた意見のレジュメ「海を通じて世界とともに生きる日本のために−我が国に必要な総合的海洋政策−」に沿って意見を述べた。その最後に「我が国の広大な排他的経済水域等の開発、利用、保全、管理を総合的に進めるための提言」、「我が国の「沿岸域の総合的管理」の推進に関する提言」の二つの提言をし、その内容を具体的に述べて意見陳述を締めくくった。20分を若干オーバーしたが述べたかった意見の重要ポイントはきちんと伝えることができたと思う。

その後参考人に対する質疑が、各人質疑、答弁を併せて10分を目途に2時間程度行われ、出席メンバーが順番に活発な質疑を行なった。一対一路と自由で開かれたインド太平洋(FOIP)及びJICAの取組について意見を述べた北岡氏に対する質疑の方が若干多かったが、わたしにも質問が飛んできたので、丁寧にお答えした。

調査会は時間通り終了し、出席議員の方々と名刺の交換などをした後、私の意見が有効に活用されることを願いつつ会場を後にした。(続く)
Posted by 寺島紘士 at 00:16
「海洋技術フォーラムシンポジウム」に参加して考えたこと [2021年09月14日(Tue)]
9月6日に開催された「令和3 年度第1回海洋技術フォーラムシンポジウム」(テーマ:第4期海洋基本計画における科学技術・イノベーションの在り方)に、その開催趣旨に興味をそそられて参加した。

【開催趣旨(抜粋)】
「…、海洋の各分野において、科学技術・イノベーションの進展により、産業振興、地域活性化、環境保護、国際競争力の向上などが課題として顕在化した今、第4期海洋基本計画策定において科学技術・イノベーションの強化が必達となっている。

さらに、2007年の海洋基本法制定以来、わが国において推進してきた海洋の大規模開発の多くが商業化に至っていない事実を真摯に受け止め、実証実験と商業化の間にあるギャップの検証を行い、包括的なビジョンを以って課題解決のための施策を推進する必要がある。

以上を踏まえ、海洋技術フォーラムでは、第4期海洋基本計画において重点的に取り上げるべき科学技術イノベーションの課題を議論するためここにシンポジウムを開催し、広く産官学から意見を募り、これを意見書としてまとめて社会に公表することとした。」

オンラインで参加したこのシンポジウムは、海洋政策の懸案について考えさせるなかなか有意義なものだったので、私が感じたこと、考えたことを皆さんと共有してみたい。

このシンポジウムは、東京大学大学院教授佐藤徹さんの開会の辞で始まり、参議院議員の武見敬三さんが来賓挨拶を述べた。

武見さんは、海洋基本法の制定など海洋政策の推進に最初から積極的に取り組み、今も自民党海洋戦略小委員会委員長、海洋基本法戦略研究会代表世話人代行として取り組みの先頭に立っている。

武見さんは、海洋政策を総合的・戦略的に進めるために海洋基本法を制定し、それに基づいて海洋基本計画を策定して取り組んできたが、必ずしもまだ十分な成果を挙げるまでには至っていないとして、第1期、第2期、第3期の各海洋基本計画の取り組みを振り返り、それぞれの進展とまだまだ不十分な点を指摘した。そして、海洋政策の推進に特に重要な産官学の連携が第3期計画には盛り込まれたが、紙の上の記述にとどまり現実の動きには結びつけられず不十分だったと述べた。

そして、洋上風力の問題と海洋産業―海洋資源の問題を取り上げ、洋上風力については、これは欧州が主導していて日本は大きく後れをとっていると指摘して、官民連携、政府の役割、資金の調達の在り方などを具体的に議論して洋上風力、ゼロエミッションを進める手立てを考えるべきと述べた。また、後者については、官民の横のつながりができていないので横に連携して開発を進めてほしいと述べた。

私は武見さんと一緒に総合的な海洋政策の推進に取り組んできたので、その挨拶を聞いてこれまでの海洋基本計画の取り組みに対する武見さんの評価に同感するとともに、特に武見さんの洋上風力発電に対する指摘・提言に大いに共感した。


武見さんに続いて内閣府総合海洋政策推進事務局長の平岡成哲さんが来賓挨拶をした。それは、参与会議の提言、第3期海洋基本計画の取り組み、第4期海洋基本計画が令和5年夏ごろ閣議決定の予定であることなど総合的海洋政策の推進の現在の状況を的確に述べたいい挨拶だった。7月1日に就任した平岡さんが、この重要ポストをしっかり務めているのを見て嬉しかった。 

この後、田中明彦さん(政策研究大学院大学学長、総合海洋政策本部参与会議座長)が「激動する国際情勢と日本の海洋政策の今後」と題して基調講演を行った。

そして、第1部 講演「日本の海洋科学技術の商業化に向けて」が始まり、次の4つの講演が行われた。(敬称略)
「洋上風力への期待と課題」織田洋一 長崎大学海洋未来イノベーション機構 コーディネーター
「国際海運ゼロエミッション化の技術と経済と造船業の役割」大和裕幸 東京大学名誉教授ほか2人
「海底熱水鉱床はなぜ10年程度で商業化が実現しなかったのか」山崎哲生 大阪府立大学 大学院工学研究科 客員研究員・名誉教授
「国連海洋科学の10年における海洋空間計画の意義」道田豊 東京大学大気海洋研究所 教授、日本ユネスコ国内委員会IOC分科会主査

聞いていて何れも傾聴に値するいい講演だった。

第2部は、長崎大学の織田洋一さんがモデレータ、次の6人がパネリストの「日本の浮体式洋上風力が目指すべき姿と取り組み課題」というテーマのパネルディスカッションだった。(敬称略)
山田剛:Equinor/山田睦:イデオルジャパン合同会社/佐藤郁:戸田建設株式会社/吉本治樹:ジャパンマリンユナイテッド株式会社/藤原敏文:国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所/松井泰宏:株式会社日本政策投資銀行

日本と世界の開発状況、商業開発と国際競争に必要な条件、日本の将来像などを論点として行われたこのパネルディスカッションでは、洋上風力発電に関するお隣の韓国を含む世界の取り組みの進展と日本の立ち遅れが厳しく指摘され、産学官が連携し、役割分担して、広い視野を以って日本の洋上風力が目指すべき姿とその際の課題が議論された。

わが国も洋上風力に取り組む国際社会の状況をきちんと認識し、これから浮体式洋上風力にきちんと取り組んでいくことの重要性を強く感じさせるいいパネルデスカッションだった。

最後に笹川平和財団海洋政策研究所所長の阪口秀さんが閉会の辞を述べてシンポジウムは終了となった。
コロナ禍でオンラインの会議やシンポジウムは多く開かれているが、私にとっては、久しぶりにいろいろ考えさせてくれるいいシンポジウムだった。
Posted by 寺島紘士 at 01:25
総合海洋政策推進事務局長、一見勝之氏から平岡成哲氏へ [2021年06月27日(Sun)]
今日(6月26日)、新聞を開いたところ各紙が中央省庁の7月1日付の主な幹部人事を報じていた。
そこで早速内閣府人事のところを見てみると、「総合海洋政策推進事務局長 平岡成哲氏」という文字が目に飛び込んできた。

このところ総合海洋政策推進事務局長の交代を取り上げた昨年7月23日の海洋政策ブログへのアクセスがかなりあったので、ひょっとしたらそろそろ人事異動があるのかな、しかし事務局長の一見勝之氏は就任してからまだ1年にもならないのに…、と思っていた。 

ここ数年、総合海洋政策推進事務局長が1年ごとに交代していたので、できれば一見さんには2年ぐらいは在職してじっくりと海洋基本法が定めるわが国の海洋政策の総合的・計画的推進にリーダーシップを発揮していただきたいと思っていたので、また1年足らずで交代となってしまったのはちょっと残念である。しかし、それとは別に、昨年8月から事務局長の職務に励んできた一見さんには、お務めどうもご苦労様でした、ありがとうございましたと申し上げたい。

さて、一見さんの後任の総合海洋政策推進事務局長が平岡成哲さん(現国土交通省大臣官房総括審議官)と知って驚くとともに嬉しく思った。というのは、平岡さんが運輸省(現国土交通省)に入省した当時、私たちは同じ課で一緒に仕事をしたことがあるからである。今から30余年前のことではあるが、そのご縁は今もつながっている。

平岡さんが、総合海洋政策推進事務局長として海洋国日本の総合的海洋政策の推進に力を発揮することを期待したい。

平岡さん、おめでとうございます。重要性を増している海洋国日本の海洋政策推進の舵取りをどうぞよろしくお願いします。
Posted by 寺島紘士 at 02:00
新たな参与就任 [2020年08月02日(Sun)]
先日海洋政策の仲間から総合海洋政策本部参与会議の新しい参与が任命されたという知らせをもらった。早速参与会議のホームページを覘くと、令和2年7月24日からの「参与一覧」が載っていた。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/sanyo.html
もうご存知の方も多いとは思うが皆さんと情報を共有したい。

参与会議の10人の参与のうち5人が入れ替わり、新たに参与に就任したのは次の5氏である。

今村文彦 東北大学災害科学国際研究所教授
佐藤徹 東京大学大学院教授
内藤忠顕 日本郵船(株)取締役会長・日本船主協会会長
中田薫 水産研究・教育機構理事
原田尚美 海洋研究開発機構地球環境部門地球表層システム研究センター長

佐藤さん、中田さん、原田さん、それに今村さんもこれまで海洋の問題にいっしょに取り組んだことのある方々である。皆さんそれぞれ海の分野の造詣が深い。

また、今回再任された参与は次の5氏である。

尾形武寿 日本財団理事長
兼原敦子 国際法学会代表理事・上智大学法学部教授
杉本正彦 NTTデータアドバイザー・元海上幕僚長
田中明彦 政策研究大学院大学学長
水本伸子 IHIエグゼクティブ・フェロー

今は第3期海洋基本計画が中盤に差し掛かっていて重要な時期である上に、3月以降急速に感染が拡大している新型コロナウィルスに対する海洋分野での対応も急務となっている。

第3期海洋基本計画では実施段階でも参与会議が総合的海洋政策の着実な実施に重要な役割を担うことが盛り込まれているので、参与の皆さんどうぞよろしくお願いします。
Posted by 寺島紘士 at 12:20
総合海洋政策推進事務局長、平垣内久隆氏から一見勝之氏へ [2020年07月23日(Thu)]
7月は中央官庁の幹部の人事異動の季節なので、毎年この時期には政府の総合的な海洋政策を所掌する総合海洋政策推進事務局のトップの人事が気になる。

しかし、正直に言えば、ここ数年は総合海洋政策推進事務局長が1年ごとに交代していたので、できれば総合海洋政策推進事務局長には2年ぐらいは在職してじっくりと海洋基本法が定めるわが国の海洋政策の総合的・計画的推進にリーダーシップを発揮していただきたいと願っていた。

中央省庁の幹部人事は21日にはだいたい出そろったが、その中には「総合海洋政策推進事務局長」という文字は見当たらなかったので、これは現事務局長の平垣内久隆氏がもう1年やるのだなと思いかけていた時、7月22日の各紙朝刊が総合海洋政策推進事務局長に一見勝之氏就任(8月1日付)という内閣府の人事を報じているのを見つけた。

平垣内さんも1年で交代となったのである。 
平垣内さん、総合的な海洋政策の推進ありがとうございました。事務局長の任を離れても引き続き海洋ガバナンスへのご支援、ご協力、どうぞよろしくお願いします。

一見勝之氏は、前職は国土交通省自動車局長であるが、その前は海上保安庁次長を務めるなど、海洋に関して豊かな識見を持っておられる方である。
一見さん、ますます重要になってきている海洋国日本の海洋政策推進の舵取りをどうぞよろしくお願いします。
Posted by 寺島紘士 at 01:20
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