チュア博士と宿毛湾訪問 [2013年12月08日(Sun)]
11月27日(水)−28日(木)、ICM「 パワーアップ研修会」(本ブログ12月1日参照)の講師を務めたチュア博士とともに沿岸域総合管理のモデルサイトのひとつである宿毛湾を訪問した。現地を直にみてもらってアドバイスもらうためである。
先ず、宿毛市役所を訪問して、安澤伸一副市長、黒田厚産業振興課長と宿毛湾の沿岸域総合管理について意見交換をした。 こちらから、4月に閣議決定された新海洋基本計画が「…。各地域の自主性の下、多様な主体の参画と連携、協働により、各地域の特性に応じて陸域と海域を一体的かつ総合的に管理する取組を推進することとし、地域の計画の構築に取り組む地方を支援する。」と定めたことを説明しつつ、宿毛湾における総合的な取り組みの促進を提案した。 安澤副市長も、冒頭に、宿毛における最近の漁協、農協、森林組合間の連携の進展などを紹介して、総合的管理の取組みに前向きに応じたので、話がスムーズに進み、いい意見交換を行うことができた。 その後、宿毛市の河野さん、大月町の松田さんの案内で田ノ浦漁港にある市場を訪れ、すくも湾漁業協同組合の浦尻和伸組合長に挨拶して午後の入札の状況などを見学した。あいにく波が高くて、水揚げされた魚は少なかったが、いろいろな種類の魚がならべられていて、それが順次入札されていった。現場の空気を肌で感じる貴重な機会となった。 夕方には、宿毛市の安澤副市長等及び大月町の岡田順一町長等と意見交換を行った。宿毛湾の関係市町の皆さんと、宿毛湾の状況から観光客誘致に至るまで、海を活かしたまちづくりについてざっくばらんに話し合うことができて今後の沿岸域総合管理の取組みにとって大変参考になった。 翌日は、当初の予定では、船に乗って海から宿毛湾を視察する予定であったが、あいにく風が強くて波が高かったので、予定を変更して陸上からの視察に切り替えた。河野さんと松田さんに案内してもらって、大月町の先端の柏島に向かって海岸沿いの曲がりくねった道を辿って、途中の点在する浦々を見て歩いた。 車で走っていくと、泊浦、椎ノ浦、橘浦、安満地など、ところどころに入り江があってその奥に漁港と漁業集落が張りついている。上から見下ろすと各湾内には養殖のいかだが並んでいるのが見える。丸くて大きいのがマグロで、四角いのがタイだとのこと。 絶えず進行方向が変わる道路を延々と走って、船酔いならぬ車酔い気分に襲われたころ、ようやく柏島が見えてきた。ここも見下ろすとマグロなどの養殖いかだが見える。 柏島には、前にも一度来ている(本ブログ2013年8月3日参照)。その時にはダイビングのメッカという印象が強かったのだが、改めてみると、養殖などの漁業が盛んなことがわかる。 帰りがけに、ふと見ると、岸壁で大きなクレーンがマグロを釣り上げている光景が目に飛び込んできた。早速そちらの方に行ってみると、湾内の養殖場から船で運んできたまぐろを氷の入った冷蔵容器に積み替えている真最中だった。大きなマグロを10尾近くまとめて船からクレーンでつり上げては、岸壁上に置かれた台の上に一旦並べ、それを手際よく容器に移すという作業を繰り返している。週3回、1回に40〜80尾ぐらい出荷しているとのこと、ここから宇和島に運んでそこで加工包装して、松山空港から全国に出荷しているとのことだった。 近代的な養殖事業の実態を目の当たりにして感心していたところ、最近は、養殖に必要なマグロの稚魚が足りなくて困っていると、その場に居合わせた大洋エーアンドエフ(株)柏島事業所の舘昌廣所長が厳しい状況を話してくれた。これ聞いて、最近の漁業・養殖業を取り巻く厳しい環境の一端に触れた思いがした。 最後に、太平洋側の大月町西泊に回り、研究会のメンバーである黒潮生物研究所の中地シュウ所長を訪問して、今回の視察は終了した。 今回の視察を終えて、チュア博士は様々な感想を述べてくれたが、その中で、宿毛湾沿岸地域は豊かな自然に恵まれており、退職者の定住地として適しているのではないか、全国から移住を誘致してはどうか、退職者は、退職後もしばらくは、その知識能力を活かして地域の活性化に貢献できるし、また、高齢化しても、その介護・医療などを通じて働く場を地域に提供すると強調していた。 チュアさんの発言には、意表を突かれることがよくあるが、よく考えてみると的を射ていることが多い。今回の提案も、なかなかいい着眼点であると思えてきた。 これらを含めて、今後の沿岸域総合管理研究会の議論の中で、地元の皆さんと語り合い、知恵を出し合っていきたいと思う。 今回の私たちの訪問では宿毛市及び大月町の皆さんに大変お世話になった。温かく迎えてくれた皆さんに厚く御礼申し上げたい。 |
Posted by
寺島紘士
at 16:24