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緊急災害対策本部の議事録未作成に思う。 [2012年02月03日(Fri)]
1月23日の「原子力対策本部、議事録まったく作成せず」という東京新聞の報道に端を発して、東日本大震災や福島原発事故に関して政府が設置した会議の議事録が作成されていなかったことが明らかになった。
この問題で、野田総理が1月30日の参議院代表質問で「誠に遺憾」と陳謝している。

これらの報道を見て、まず頭に浮かんだのは、3月11日に東日本大震災が起こった後直ちに設置された「緊急災害対策本部」のことである。報道は、どちらかというと原発事故関係の会議の議事録に焦点をあてているが、私は、わが国で初めて設置された総理を本部長とする「緊急災害対策本部」が議事録を作成していなかったことにもショックを受けた。

4月16日の本ブログで取り上げたように、マグニチュード9.0という巨大地震、千年に一度という大津波に襲われて、わが国で初めて総理を本部長とする「緊急災害対策本部」を設置したのは、迅速かつ適切な判断である。ちなみに、あの阪神・淡路大震災のときでも設置されたのは国務大臣を本部長とする「非常災害対策本部」であった。

「緊急災害対策本部」は、次の所掌事務が示す通り、まさに非常災害時における中央、地方の行政組織の司令塔である。

1. 所管区域において指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関が防災計画に基づいて実施する災害応急対策の総合調整に関すること
2. 非常災害に際し作成される緊急措置に関する計画の実施に関すること 等

私は、「緊急災害対策本部」が、災害対策基本法が定める災害対応の仕組みに則ってここが中心となって今回の未曾有の大震災の災害応急対策が着実に推進されることを期待したのである。

しかし、その後の状況を見ると、ちょっと期待外れであった。「災害緊急事態の布告」(同法第105条)も行われず、「緊急災害対策本部」は開かれてはいたようだが、あまりその活動は報じられなかった。

その上、大震災発生直後に緊急災害対策本部及び原子力災害対策本部が設置された後も、いろいろな震災関連の組織が発足して、そのことがかえって震災への対応を分かりにくいものにし、問題になったりした。

私は、当時、そのように組織を増やすよりは、わが国が長年に亘って築き上げ、共有してきた災害への対応のノウハウが詰まった災害対策基本法や防災関係の仕組み・組織・要員を最大限活用して災害応急対策などを実施すべきではないか、と本ブログで指摘したものである。(本ブログ2011年4月16日

今回議事録未作成が指摘された10の会議のリストを見て、原子力災害対策本部と並んで緊急災害対策本部が入っているのを見て、正直がっかりするとともに、緊急災害対策本部の大震災への対応及び復旧の中心としての社会的存在感がいまひとつだった理由の一端をここに見たような気がした。

会議の議事録すらないようでは、緊急災害対策本部がどのような議事経過を経て災害応急対策を総合調整し、決定し、実施したかがわからないから、それらが社会に伝わらないだけでなく、後からそれを検証し、評価しようとしても、それをすることもできない。

いま、東日本大震災を経験してみて、近い将来の発生が想定される東海、東南海、南海地震に対する防災対策、災害対応が改めて問題になっている。それには、今回の東日本大震災の緊急災害対策本部の経験から学ぶものが多くあるはずである。

それなのに、その重要な資料となる本部の議事録が作成されていなかったと聞いて、言葉を失った。政府は、議事録未作成(むしろ非作成)の重大性を認識し、原因を究明して、このようなことが二度と起こらないようにしてほしい、と思う。
Posted by 寺島紘士 at 01:29
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https://blog.canpan.info/terashima/archive/713
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コメント
 おはようございます。
 この報道を聞いて、私も、3.11後の東電福島原発人災事故以上の衝撃を受けました。何と表現したらよいのか、言葉が見つかりません。
 日本という国に住む人々1億2千万人の生活を支えるための首相・閣僚、議員、国家公務員たちが、基本的な行為をしなかった事実。
 しかも、この非常に重い行為に対して、「誠に遺憾」くらいの表現しかできない内閣総理大臣とは、どういう存在なのでしょうか?
 この非常に重い問題に対して、日本国憲法下で民主主義の政治を行うことを教えている政治学や法学の学者・研究者から、本質的な言及が聞こえてこないのは、どうしてでしょうか? 
 日本社会は、その規範を為政者から壊しているのでしょうか? 
Posted by:黒坂三和子  at 2012年02月05日(Sun) 09:47

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